料理人 の商品レビュー
テレビでの紹介で興味を持ちました。ある田舎町に現れた凄腕料理人。得体のしれない高圧的な彼ですが腕は確かで雇い主一家に素晴らしい料理を提供することで完全に舌から彼らをつかんでしまいます。太っていた人を痩せさせ、痩せていた人を太らせていく彼の料理。途中で最後に待っているものはなんとな...
テレビでの紹介で興味を持ちました。ある田舎町に現れた凄腕料理人。得体のしれない高圧的な彼ですが腕は確かで雇い主一家に素晴らしい料理を提供することで完全に舌から彼らをつかんでしまいます。太っていた人を痩せさせ、痩せていた人を太らせていく彼の料理。途中で最後に待っているものはなんとなくわかるのですがそれでも先へ先へとページをめくる手は止まらず最後まで一気に読んでしまいました。ホラーなのかブラックユーモアなのか、読者を選ぶと思いますが、私はこのなんとなく居心地の悪い読後感は好きです。楽しみました。
Posted by
かなりの古典。今でいうとダークファンタジーなのか。謎の料理人が田舎町を怪しく染めてくんだが、料理は最小限、内面描写もほぼ無しで各人物の行動だけで読ませてく技量がすごい。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
途中までわたしはただコックが人々の胃袋を掴んで支配するというストーリーだと思っていた。しかし、ラスト城での生活を読んで違和感を感じた。単なる征服物語の結末としてはそぐわない…そこで気づいた。 この作品が単なる恐怖小説でもなく、はたまたユーモア小説でもなく、読後なんとも奇妙な味を残すのは、人々を操っている支配者のコック自身も美食の毒にあてられているからではないか。 一見、骨抜きにされていく人々の中でコックだけが意思を持った支配者であるように見えるが、真実、このコックの行動の原点にあるのは飽くことない美食への追求と異常な執着だ。 というのも、コックは屋敷の人々を召使い同然に扱って自分が主の席に座り満足しているのではない。ただそれだけだったならば読後は恐怖小説に感じられるだろう。 彼はただ最高級の料理を生み出すこと、最高級の料理たちに最高級な特等席(プロミネンス城)を用意してあげること、この2つを追求し続けただけではないか。それはすべて美食のための行動である。 彼にとって食は「手段」ではなく「目的」であり、そもそも彼にとって食は「手段」とするなんてとんでもないほど尊いものだったのだ。
Posted by
最後はコンラッドが一人勝ちなのかなと思ったがそうはならないところがリアルでいい。 これが人間なんだよなきっと。上手くやろうとすればするほど、滑稽になってゆく。 リアリズムとファンタジーが入り混じる不思議な魅力をまとった本でした。
Posted by
面白かった!狡猾に戦略的に、そして時に暴力的にじわじわと人々を支配していくコンラッド。反抗的な者を周到に片付けながら周囲の人々に自分を慕わせていく手際の良さと、主従関係の逆転の境目が綺麗なグラデーションになっている不気味さにぞくぞくしながら読み終えた。これをマインドコントロール...
面白かった!狡猾に戦略的に、そして時に暴力的にじわじわと人々を支配していくコンラッド。反抗的な者を周到に片付けながら周囲の人々に自分を慕わせていく手際の良さと、主従関係の逆転の境目が綺麗なグラデーションになっている不気味さにぞくぞくしながら読み終えた。これをマインドコントロールというなら、自分はそんなものには絶対にかからないと言いきれなくなるほどのコンラッドの邪悪な魅力が本当に面白かった。
Posted by
9/29 読了。 ひときわ高い丘の上にゴシック様式の古城が建つほかは、パッとしない田舎町のコブ。この町にはヒル家とヴェイル家という名家が並び立っていたが、2つの家は元々コブ家というプロミネンス城の城主の家系から出ているのだった。あるとき、得体の知れないコックがコブへやってきて、ヒ...
9/29 読了。 ひときわ高い丘の上にゴシック様式の古城が建つほかは、パッとしない田舎町のコブ。この町にはヒル家とヴェイル家という名家が並び立っていたが、2つの家は元々コブ家というプロミネンス城の城主の家系から出ているのだった。あるとき、得体の知れないコックがコブへやってきて、ヒル家の扉を叩き、自分を雇って欲しいと頼む。都市からやってきたコックは洗練された物腰と卓越した料理の腕前でヒル家の人びとを虜にしてしまう。やがて彼は周到に計算され尽くした高圧的な態度で屋敷の使用人や町の人びとを支配し、遂に屋敷の主人であるヒル家の人びとの権利をも掌握してしまう。謎めいたコックの目的は、丘の上のプロミネンス城だった。 細部にわたって計算された振る舞いによる人心掌握術がひたすら怖い…!ヒル家最後の砦だったエスターを1回のピクニックで陥落させちゃうとか…。最初は登場人物がカリカチュアライズされたユーモア小説としてのリアリティを持っているのだが、主従逆転してからはゴシックホラーになり、終わりに近づくにつれ寓話性が増していく。
Posted by
悪夢のような物語が教えてくれる「人の動かし方」。 読了一夜経って、あのラストは何を示唆していたのだろうかと考えています。 コンラッド自身は望むものを手に入れたのか? その身をもってまだ私たちに何か伝えようとしているのか?
Posted by
不気味。だけど、読むのを止められない。 主人公の感情が語られないから、淡々とストーリーが進むけれど、一種独特の作風が癖になる。作者の経歴や詳細も不明など、徹底している。 人間の三大欲求である「食欲」をつかむのは大事なんだなぁ。 とても面白い本でした。
Posted by
日本では感じられない情景等、知らぬ間に引き込まれていった。訳されている本は避けがちだが、これを読み他も読んでみようと思う。
Posted by
なんとなく買った本ですが、買ってよかったと思っています。一度読んだら忘れない内容。本棚に入れておくと謎の安心感が生まれる。 内容が最初から最後まで、きっちり収まっている印象。
Posted by