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てるてるあした の商品レビュー

4.2

112件のお客様レビュー

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  3. 3つ

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2010/07/11

本書は、『ささらさや』の続編である。 今回の主人公は、さやではなく、 親の夜逃げのために、佐々良(ささら)にやってくることになった照代。 主人公の周りを固めるのが、 さや、ユウ坊、3人のおばあさん(久代、夏、珠子)、エリカにダイヤと 『ささらさや』の主要登場人物たちである。 ...

本書は、『ささらさや』の続編である。 今回の主人公は、さやではなく、 親の夜逃げのために、佐々良(ささら)にやってくることになった照代。 主人公の周りを固めるのが、 さや、ユウ坊、3人のおばあさん(久代、夏、珠子)、エリカにダイヤと 『ささらさや』の主要登場人物たちである。 照代は、頭がよくどこか冷めた目で周りを見ているような女の子。 というのも、彼女の両親が、まったく親らしくない人たちだから、 彼女自身が急速に大人にならなければ生きていけなかったのだ。 彼女の両親は、特に経済観念が壊れていて、お金をまったく計画なしに使う。 照代は高校受験で、第一志望校に合格していたのだが、 入学金が家になく、振込みの手続きがなされていなかったため、 進学することができなかったくらいなのだ。 本人はきれいだけれど、母親らしくない母親で、 母親はきれいで自分は似ていない、 娘は母親を恨んでいるという初期設定は、 『いちばん初めにあった海』に収録されていた「化石の樹」とどこか似ている。 大切な人の喪失と再生、母娘関係の再生は、 加納作品の根底を流れるテーマなのだろうと思う。 さて、照代の家には、とうとう、毎日のように借金取りがくるようになり、 家族は家にいられなくなって夜逃げすることになる。 両親は、照代を一緒に連れて行かず、 遠い親戚だという佐々良の鈴木久代さんを頼れという。 照代はわけがわからないままに、佐々良にくることになる。 その訪ね先、鈴木久代こそ、 さやの家によくやってくる3人のおばあさんのひとりだったのだ。 本書は、照代の視点で語られる。 そして、久代についても細やかに描かれている。 前作では、わからなかった久代の性格や生き方、 かつて教員をやっていた過去のことなどが見えてくる。 ところで、加納作品の特徴のひとつとして、 名付けに意味が込められていることが挙げられる。 主人公の名前、照代も実はある思いを込めてつけられた名前なのである。 だが、当の照代はそんなことは知らないし、冷めてもいるから、 回想で、同級生に「ヤダァ、うちのおばあちゃんと同じ名前」 なんて言われたなと思い出しているくらいである。 著者は、比較的若い女性の気持ちに焦点を合わせるところで リアリティを出すのが得意である。 前作のさやよりも照代の心情を描くほうが、 よりなじんでいるようだった。 また、前作は、ひとつひとつの事件が解決していくので、 短編集のような色彩が濃かったが、 本書は、中長編のような構成である。 高校生になっているはずだったのに 親が手続きをしなかったばっかりに高校にいけなかった照代は、 住む場所だけでなく、行く場所も持たなかった。 そんな照代に、久代は、「仕事を見つけるんだよ。 あんたは同級生より一足早く社会に出たんだってことを自覚するんだね」という。 厳しい久代に、照代はなじめない。 同級生以上に努力をして勉強してきたのに、 家庭環境のせいで今の状況に追い込まれていることにも納得がいかず、 なかなか周りの人たちにも心を開けない。 そんな素直ではない自分に腹が立ってもいる。 特に、やさしくてきれいなさやには心が開けない。 照代は、母親からプリペイド式の携帯電話を預かっていた。 鳴り出した着メロは、「てるてる坊主、てる坊主、あした天気にしておくれ・・・」。 メールが入ってきた。 件名は、「てるてる」   てるてる あした。きょうはないても あしたはわらう。 それは、落ち込みささくれ立っている照代の心を静かに励ますのだった。 この携帯電話だが、最初は母親と連絡が取れていたのだが、 のちには連絡すら取れなくなってしまった。 だが、その後、不思議なメールは、 絶妙なタイミングで入るようになる。 でも、送り主はわからない。母親からではなかったのだ。 不思議なことはメールだけではなかった。 照代は、預かってくれている久代の家で、女の子の幽霊を見るようになる。 その子は、照代の夢にも出てくる。 いったいそれは何を意味しているのか、幽霊は照代に何を伝えたいのか。 その謎が解けたとき・・・。 どんなに過酷な運命でも、生き抜ける、再生できるということを、 彼女の作品はいつも信じさせてくれるのだ。 そして、どんなに理不尽なことにも背景があり、 関わった者、対極にいると思った者にも その人なりの思いが、物語があることを、いつも教えてくれる。 私が加納作品に出会ったのは、2009年に入ってからなのだが、 この年の大切な出会いのひとつに数えたい。

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2010/06/30

「ささらさや」の姉妹編であるこの1冊。 15歳の両親に捨てられた(?)少女の奮闘記っちゃー奮闘記か。 というよりかは人間関係の温かみにふれることの出来る作品かなぁと。 すごく素敵な1冊で「ささらさや」も大好きだったんですけど これもすごーく素敵な作品でした。 加納さんの...

「ささらさや」の姉妹編であるこの1冊。 15歳の両親に捨てられた(?)少女の奮闘記っちゃー奮闘記か。 というよりかは人間関係の温かみにふれることの出来る作品かなぁと。 すごく素敵な1冊で「ささらさや」も大好きだったんですけど これもすごーく素敵な作品でした。 加納さんの他の作品も読みたいなぁーvv

Posted byブクログ

2010/06/17

 主人公は、親が夜逃げしたため遠い親戚を頼って「佐々良」にやってくる。そこで出会う人々のなかで彼女は成長していく。  「ささらさや」の続編的な作品。  続編的というのは…「ささらさや」の登場人物はほとんど出てきます。が、主人公は中学を卒業したばかりの照代。それがゆらがないので、...

 主人公は、親が夜逃げしたため遠い親戚を頼って「佐々良」にやってくる。そこで出会う人々のなかで彼女は成長していく。  「ささらさや」の続編的な作品。  続編的というのは…「ささらさや」の登場人物はほとんど出てきます。が、主人公は中学を卒業したばかりの照代。それがゆらがないので、同じ町で同じ人物が登場していても、あまりつながっている感じがしない。  でも、「ささらさや」の物語の上にきちんと成立してるんだよね。  上手いな。  最初は、自分の身をなげくだけの子供の照代にいらだつばかりなんだけど……。  やられました。  滂沱です。  昨今、子供の虐待などがよく取り沙汰されてるけど、本当に伝えなければならないのは、フォローする人物の欠落なんだと思う。今も昔も、親がいつも正しいわけじゃない。むしろ、なんだかんだと間違っているもんだ。けれど、そういう理不尽さに打ちひしがれた時、フォローしてくれる大人が他にいるかどうか、それが虐待になるかどうかの境界なんだと思うことがある。  でもって、この物語は子供を育てるのは親だけじゃない、地域や周りの大人たちも子供を育てるんだと、しっかり伝えている。  面白かった。

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2010/05/16

金銭感覚のない両親をもった主人公。 これだけを聞くと大変そうですが、中学卒業後の15歳なので 理不尽な考えに陥ったり、分からない怒りを人に持ったり…。 この年頃って、人にしてもらうのが当たり前、ですから。 そんな彼女が、少しずつ変化していくのは 家主のおかげ…かとw 今までの暮...

金銭感覚のない両親をもった主人公。 これだけを聞くと大変そうですが、中学卒業後の15歳なので 理不尽な考えに陥ったり、分からない怒りを人に持ったり…。 この年頃って、人にしてもらうのが当たり前、ですから。 そんな彼女が、少しずつ変化していくのは 家主のおかげ…かとw 今までの暮らしがどれだけ恵まれていたか。 けれど生活を保障してくれるだけでも恵まれている気がします。 なぜ彼女は、両親に言わなかったのでしょう? ある意味、これは自分が招いたものだ、と思います。 不思議な事が起こる、不思議な場所。 すべてが終わる頃には、最初とはまったく違う少女になっています。

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2010/01/31

突然の事故で夫をなくしてしまったサヤさん。 息子のユウとともに違う町に移住し、そこで夫の声を聞きます。 心温まるストーーリーです。

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2009/12/27

第一希望の高校に合格し、前途洋洋だったはずの主人公の女の子が親のせいで高校には行けず、本人は会ったこともない親の知り合いのところにひとりでやっかいになることになってしまう。。。文章にすると悲劇以外の何者でもないのに加納朋子さんの手にかかるとなぜかふんわりやさしいお話になるのが不思...

第一希望の高校に合格し、前途洋洋だったはずの主人公の女の子が親のせいで高校には行けず、本人は会ったこともない親の知り合いのところにひとりでやっかいになることになってしまう。。。文章にすると悲劇以外の何者でもないのに加納朋子さんの手にかかるとなぜかふんわりやさしいお話になるのが不思議なところです。

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2009/10/25

久代さんの言葉「本はいいよ。特に、どうしようもなく哀しくて泣きたくなったようなとき、本の中で登場人物の誰かが泣いてたりすると、ほっとするんだ。ああ、ここにも哀しみを抱えた人がいるってね。・・・・・・・・泣きたくなるようなことがあったら試してごらんよ。長い人生、そんな気分になること...

久代さんの言葉「本はいいよ。特に、どうしようもなく哀しくて泣きたくなったようなとき、本の中で登場人物の誰かが泣いてたりすると、ほっとするんだ。ああ、ここにも哀しみを抱えた人がいるってね。・・・・・・・・泣きたくなるようなことがあったら試してごらんよ。長い人生、そんな気分になることだっていっぱいあるだろうからね。」 私が読書したくなる時ってこういう理由からなのかも・・とハッとした言葉でした。 「親の夜逃げのため、ひとり「佐々良」という町を訪れた中学生の照代。そこで彼女が一緒に暮らすことになったのは、おせっかいなお婆さん久代だった。久代は口うるさく家事や作法を教えるが、わがまま放題の照代は心を開かない。そんなある日、彼女の元に差出人不明のメールが届き始める。その謎が解ける時、照代を包む温かい真実が明らかになる。

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2011/08/06

一言でいうといい小説。児童小説ってわけでもないんだろうけど、子供に読ませたい感じ。ほのぼので、ちょっと不思議なファンタジー?要素もあるのにやっぱりリアルな悲しみやせつなさが胸に染みる。だらしない両親の借金により夜逃げした15歳の女の子が不思議な街の久代ばあさんのところにお世話にな...

一言でいうといい小説。児童小説ってわけでもないんだろうけど、子供に読ませたい感じ。ほのぼので、ちょっと不思議なファンタジー?要素もあるのにやっぱりリアルな悲しみやせつなさが胸に染みる。だらしない両親の借金により夜逃げした15歳の女の子が不思議な街の久代ばあさんのところにお世話になる話ですが、この主人公が最初はとってもかわいくない。そのヒネクレ方がとっても繊細に書かれていてこの描写が絶妙。主人公の微妙に変わっていく様も予定調和というよりもちょっとずつちょっとずつ、うまくいかないことも含めて繊細に、結果的には全体をやわらかく仕上げられた印象。あんまり爺さん婆さんで泣かせにかかるような小説は好きではないのだが、この小説に限ってはOKかな。姉妹本・ささらさら は読みたい本リストに追加せねば。

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2009/10/07

主人公はひねくれてるけど、純粋でいい。 全体的にやさしい。 中高生に特におすすめ。大人もおすすめ。

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2009/10/07

どっかから抜粋。 『親の夜逃げのため、ひとり「佐々良」という町を訪れた中学生の照代。  そこで彼女が一緒に暮らすことになったのは、おせっかいなお婆さん、久代だった。  久代は口うるさく家事や作法を教えるが、わがまま放題の照代は心を開かない。  そんなある日、彼女の元に差出人不明の...

どっかから抜粋。 『親の夜逃げのため、ひとり「佐々良」という町を訪れた中学生の照代。  そこで彼女が一緒に暮らすことになったのは、おせっかいなお婆さん、久代だった。  久代は口うるさく家事や作法を教えるが、わがまま放題の照代は心を開かない。  そんなある日、彼女の元に差出人不明のメールが届き始める。  その謎が解ける時、照代を包む温かい真実が明らかになる。』 なんてむかつく子なんだって、読み始めは照代をよく思えなかった。 『ささらさや』の登場人物が照代をあたたかく支えてくれてるのに、照代にはなかなか伝わらなくてイライラ。 でも、次第に心を開いていく様子が微笑ましかった。 衝撃のラストに泣いた。

Posted byブクログ