かたみ歌 の商品レビュー
昭和40年代の下町のアカシア商店街を舞台とした7編の連作短編。 40年代の流行歌が所々に登場したりとノスタルジーを感じさせます。 人と人の繋がりの温かさと心淋しさが同居した、黄泉の世界と現世を繋ぐ不思議なお話です。 言葉のひとつひとつに込められた想いが胸に響く『栞の恋』、なんとも...
昭和40年代の下町のアカシア商店街を舞台とした7編の連作短編。 40年代の流行歌が所々に登場したりとノスタルジーを感じさせます。 人と人の繋がりの温かさと心淋しさが同居した、黄泉の世界と現世を繋ぐ不思議なお話です。 言葉のひとつひとつに込められた想いが胸に響く『栞の恋』、なんともいじらしくいとおしい『ひかり猫』がお気に入り。 途中途中心に引っ掛かりを残した部分が最終話で鮮やかに回収され、不思議と心に温かいものを残してくれた作品です。
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なんとなく怖いタイトルだと思いながら読んだところ、どの話も心揺り動かされ、引きずられるような余韻の残る短編集でした。 現実と彼岸がぼんやりと入り混じったような、なんとも不思議な感覚に包まれた世界。 第一話目では、主人公が不思議な男を見かけますが、途中でどんでん返しが起こり、さら...
なんとなく怖いタイトルだと思いながら読んだところ、どの話も心揺り動かされ、引きずられるような余韻の残る短編集でした。 現実と彼岸がぼんやりと入り混じったような、なんとも不思議な感覚に包まれた世界。 第一話目では、主人公が不思議な男を見かけますが、途中でどんでん返しが起こり、さらに最後にもう一度話がひっくり返ったので、ウルトラC級的な話の構築力に驚きました。 きっちりとまとめあげており、本好きが想像するストーリー展開を、あざやかに裏切っていく点に、やられたと思いながらも、さわやかな爽快感を味わいます。 昭和の空気が匂ってくるような物語世界。 平成の世ではもはや失われた、「袖摺り合うも多生の縁」的な人間関係が、時に暖かく時にやるせなく、ゆっくりと展開していきます。 舞台は「アカシア商店街」。すべての話に共通して登場するのが、古本屋とその主人。 最後にその彼の隠されたほろ苦い思い出が登場します。 気持ちの落とし所のない虚しさ、侘しさを引き出されるため、読んだあとはしんみりと、かなり自分の感情を持て余してしまうような感じに。 時空を超える存在や、人外の存在を登場させるなど、かなり非現実的ではありますが、ファンタジーものにはせず、あくまで現実世界での話としているところに、著者の力量を感じます。 「泣きたくないけど、切なくなりたい」という時にお勧めの一冊です。
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久しぶりに、なんか、物語、読もー…と思っているところにたまたま行った本の森でみつけた、朱川湊人のこの本。高校生の時に「花まんま」を読んでフニャッとした気持ち悪いけど気になる感覚を覚えていたので、そのフニャッとした感覚を期待して読んだ。 でもこの「かたみ歌」はフニャッとした感覚では...
久しぶりに、なんか、物語、読もー…と思っているところにたまたま行った本の森でみつけた、朱川湊人のこの本。高校生の時に「花まんま」を読んでフニャッとした気持ち悪いけど気になる感覚を覚えていたので、そのフニャッとした感覚を期待して読んだ。 でもこの「かたみ歌」はフニャッとした感覚ではなくフワーとしていた。映画にしたらええのに、と思った作品だった。 古本屋のおじいさんを軸にその町で起こる不思議な(でも登場人物は皆、納得してしまう)できごと。
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ぞっとするような出来事の中に、じんわりと温かみや優しさを感じるお話ばかり。 読後はしんみりして、後味が良いばかりではないけれど、確かに救いはあるのだと思える。
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不思議な物語七篇でできた短編集。少しゾクっとする内容だけど、一昔前の下町の商店街が舞台だからか、全体的にほんわかとした温かみがある。 ちなみに、文庫本の帯に「涙腺崩壊」って大きく書いてあったけど、その言葉はちょっと違うかなぁと思う。書いた人はこの本をちゃんと読んだのだろうか?
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世にも奇妙な物語で映像化された「栞の恋」がキッカケでこの本に出会った。本を読んでもっとこの物語を好きになった。ぜひ、みんなにもこの本を読んで欲しい‼
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短編集。 その中の「栞の恋」が世にも奇妙な物語にでてたということで購入。 わたしもテレビで見ていた。 世にも奇妙な物語で期待してということなら、一冊としてみると少し物足りない気もする。 この世とあの世の間があいまいになった?そんな商店街のお話。 少し寂しさを感じさせる。
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読み味がよろしくて、ファンタジーが苦手なわたしでも十分楽しめた。 いわゆる昭和の商店街といったイメージのアカシア商店街の、お寺と古本屋界隈で起こる不思議なお話たちが、ほんのりと切なさを喚起させる。これがまた昭和という時代にノスタルジーを感じてしまう世代としては、雰囲気がマッチして...
読み味がよろしくて、ファンタジーが苦手なわたしでも十分楽しめた。 いわゆる昭和の商店街といったイメージのアカシア商店街の、お寺と古本屋界隈で起こる不思議なお話たちが、ほんのりと切なさを喚起させる。これがまた昭和という時代にノスタルジーを感じてしまう世代としては、雰囲気がマッチしていていいんだよなあ。しんみりとしてしまう。 「紫陽花のころ」:引っ越し同棲を始めた男女と、ある事件が絡み合う。事件の全貌と謎の男の正体に迫る内に、彼女との関係にも変化が表れて――。この話だけは入り込むのが難しかったなあ。 「夏の落し文」:身体が弱い弟とリーダーシップがありそして優しすぎる兄の話。商店街に弟の虚弱体質を揶揄るような張り紙が貼られたことを初めとして、ある事件が起きるのだが――。これはいい。話は見えてるんだけど、やはりファンタジーやホラーではなくて、どこか民話的な色合いが濃い設定で、王道はやはり強い。 「栞の恋」:古本屋に現れる彼に恋した女の子の話。一つの本を通して、彼との秘密のやり取りが始まったが――。おお、そうきたかっ。真相が突き止められるシーンでは、カタルシスの度合いが強い。 「おんなごころ」:近頃までスナックのママが雇っていた女の夫が死んだ。酔っぱらっては子供にまで無体を働く最低な奴がいなくなってせいせいしたとママは思っていたが、元従業員の女は夫が帰ってくるという。徐々に家事育児がおろそかになり――。ただの精神状態が不安定なための妄言なのか、それとも……。ママのセリフがたまらなく響く。うん、上手いわ。切なさやりきれなさにあふれ、そして死者の(への)執着が怖くもある。 「ひかり猫」:漫画家志望の青年の家に寄りつくようになった猫がふいに消えた。そして代わりに現れたのは光り輝くまあるい物体で、あの猫にそっくりの動きをするのだった。そうだこれはあの猫の魂に違いない。男はこの光りを可愛がり出した。何ともかわいらしい。宮部みゆきの「あんじゅう」を思い出してしまった。なんとなく話の展開は読めるのだけれど、何故彼の家にこの猫が来たのか……。切なくて哀しくてかわいらしい。満足な話。 「朱鷺色の兆」:レコード店の店主が話し出した死の兆しが見えてしまう男の話。それゆえ恐怖に付きまとわれていたが――。何度も言うように展開の予想はつくのよ。でも面白いんだから。切なくほの暗い話が多かった短編の中では、異色で、それだからこそスパイスが効いてる。 「枯葉の天使」:夫がこの度出版することになったのは、日の目を見ることはなかったが素晴らしい才能を持った女流詩人の詩集だった。仕事人間の夫に不満を持ち、なかなか子供が出来ないことを不安に思う妻は、自宅アパートの近くのお寺に毎日現れ謎の行動をする男を日々観察していて――。もちろんこうだろうと予想できる展開もあるけれど、「あ!」と思うシーンもあるわけ。ならいいじゃない、これで。連作短編集の締めくくりとして、しっくりきて、そしてすっきりする。 正直結構読める展開が多いけれど、本当に面白い本ていうのは、内容が解っていようともやっぱり面白い。不思議で切なくて幸せで。泣き笑いをしそになった。
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「直木賞」作家とは知っていたが、ノスタルジックホラー、レトロホラーとは何だろう、そんなジャンルがあるのか、と読むのを躊躇っていたが、読んでみると、「三丁目の夕日」の郷愁と「水木しげる」の感性をあわせたような作品。 昭和40年代の風物やヒット曲が次々とちりばめられ、「アカシア商店...
「直木賞」作家とは知っていたが、ノスタルジックホラー、レトロホラーとは何だろう、そんなジャンルがあるのか、と読むのを躊躇っていたが、読んでみると、「三丁目の夕日」の郷愁と「水木しげる」の感性をあわせたような作品。 昭和40年代の風物やヒット曲が次々とちりばめられ、「アカシア商店街」とその周辺に起こる不思議で死にまつわる体験の短編連作。 作者は1963年生まれとなっているが、ここに描かれている世界の多くは、それより前の世代のような気がするが、それを生き生きと描いている。 全く新しいジャンル小説。直木賞「花まんま」も続けて読みたい。
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一つの街を舞台にして物語がつながっていく連作短編集。 涙腺崩壊なんていう大げさなものではなく、じわじわと胸に響く感じ。
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