袋小路の男 の商品レビュー
プラトニックながら心は差し出す。 ただ期待したような反応がないだけ。 恋愛って大部分がそういうもんじゃなかろうか。 差し出したものと同等のものが感じられる恋愛は、 相当の観察と場慣れの成果だと思ってる。私は。 (少数派なのかも。わからない。。) それでもどちらかの熱量が大きくて、...
プラトニックながら心は差し出す。 ただ期待したような反応がないだけ。 恋愛って大部分がそういうもんじゃなかろうか。 差し出したものと同等のものが感じられる恋愛は、 相当の観察と場慣れの成果だと思ってる。私は。 (少数派なのかも。わからない。。) それでもどちらかの熱量が大きくて、その比重のデタラメさをもろともしない恋愛が、これなんだろう。 何度も傷を作って、泣いて、不貞腐れたり、腹を立てたり。そして落ち着いてホームと言うべきこの場所へまた戻る。そんな長くて辛い恋愛。 その大きな気持ちを受け取る男は、女のことを適当にしているわけではなかった。 《饒舌で自分の思うところはもちろん、関係のない仕事の話や友達の話までもしたがる。概して彼は聞き役に回ることを不快に思わなかった》 から解るように、一方通行と思われた恋愛にちゃんと応えていた。ただ、女が気づかなかった。空回り。 騒がしく空回りしながらも離れない2人を微笑ましく読みました。 小田切孝の言い分 を読んでから読み返すと全然違った話になって、再読おすすめです。
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高校時代から気になっていた異性とのドライ?クール?な付き合いに友達以上の関係性を感じられない主人公は連絡の途絶えた20歳の時に同じ大学の彼氏が出来るが卒業時に別れる、社会人になって東京を離れてもなんとなく恋人でもなかった筈の高校時のドライな彼を思い出す日々。。。 帰京の際に偶...
高校時代から気になっていた異性とのドライ?クール?な付き合いに友達以上の関係性を感じられない主人公は連絡の途絶えた20歳の時に同じ大学の彼氏が出来るが卒業時に別れる、社会人になって東京を離れてもなんとなく恋人でもなかった筈の高校時のドライな彼を思い出す日々。。。 帰京の際に偶然に彼と出会い、何となく近くて遠いドライなお友達関係が復活する。彼はバイトをしながら小説を書き作家デビューを目指しているがある時自殺未遂をしてしまう、、、 彼の棲む家の場所は袋小路だが執筆に悩む彼も袋小路に陥って居りそんなドライな彼に恋心を抱く主人公もまた袋小路に捕まった女なのだ。 二人ともリスの様にヒマワリの種を食べてグルグル同じ所を走り続けるだろうこの後も、、、 著者は私の大好きな作家の一人でその作品はせつない恋がテーマとなったものが多く、車・タバコ・アルコール・小説・音楽を小道具として遠距離・事故・怪我・友人等が効果として主人公を際立たせ男女の切なくもほんのり暖かい物語を創り上げてます。
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「袋小路の男」「小田切孝の言い分」 今までこういう話はやきもきしたりじれったいなあと思いながら読んで、最後は(軽い言い方になるけど)こういう恋愛にいい意味で酔って終わることが多かったけどこの作品だとなぜか穏やかな見守るような気持ちで見れたし、爽やかさすら感じる読後感だった かっこ...
「袋小路の男」「小田切孝の言い分」 今までこういう話はやきもきしたりじれったいなあと思いながら読んで、最後は(軽い言い方になるけど)こういう恋愛にいい意味で酔って終わることが多かったけどこの作品だとなぜか穏やかな見守るような気持ちで見れたし、爽やかさすら感じる読後感だった かっこいい小田切からかっこ悪い小田切への変化が全然嫌じゃなく、まさに「嫌いも含めて好き」というやつだった 「アーリオ オーリオ」も素敵だった
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表題作「袋小路の男」は、高校のときに好きになった先輩の小田切孝を見つめつづける大谷日向子の物語です。一方「小田切孝の言い分」は、二人の関係を小田切の視点を中心に、三人称の文体でつづっています。 ある意味では、著者の文章は小田切と日向子の自意識を容赦なく抉っているともいえるのです...
表題作「袋小路の男」は、高校のときに好きになった先輩の小田切孝を見つめつづける大谷日向子の物語です。一方「小田切孝の言い分」は、二人の関係を小田切の視点を中心に、三人称の文体でつづっています。 ある意味では、著者の文章は小田切と日向子の自意識を容赦なく抉っているともいえるのですが、突き放した視点でえがきつつも人間の哀れさのようなものを教えてくれるといったまとめ方には収まらない、不思議な読後感がのこりました。けっして温かいまなざしではないものの、どうしようもない二人をそのままに受け止めるといった感じでしょうか。 「アーリオ オーリオ」は、松尾哲とその姪の美由との手紙のやりとりを中心にした物語です。こちらは二人の心温まる交流がストレートにえがかれている、ロマンティックな内容でした。
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ばかだな、と言われるのが好きだと小田切は知っていて、それで毎回のようにばかだな、と言う。何度言われても日向子は快さを感じた。いつもきっちりしていて虚勢を張っている自分が、ばかだな、という言葉の前で角砂糖が紅茶に溶けるようにほろほろと崩れて、甘い気持ちになる。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
淡々とした文章だけど、降り積もって味わいが出てくる感じですごくよかった。 日向子は「かっこいい」の額縁を作って抱えてそれ越しに小田切を見ている感じ。一途と言えば一途だけど思い込みもあるし流されやすいし、平気で人んちの物パクったりする人間性。小田切は小田切でそんなかっこよくない、日向子以上にいい加減なダメ人間ではある。 あくまで日向子の額縁が前提で、額縁越しの関係だから続いてる関係なのは、二人とも薄々分かってる。日向子はあんなにしたがってるのに、そんな魔法が解けるようなことはお互い絶対しないという……。 長い年月を経て額縁が透明になってしまっても、それを掲げ続ける日向子の覚悟が好き。本当はかっこ悪いところも現実も全部見えてるのに、小田切さんは絶対大丈夫って確信する覚悟。 覚悟じゃなくて残った選択肢がそれしかないだけじゃないか、ということかもしれないけど、それにしたってきちんと自分の手で選び取った、というのが最後の決断で表明されているのだと思う。 そして最後の2行、小田切が自分の表明を受け入れてくれたことを日向子がそっと悟るのがあまりに良かった。関係は変化していないようで、決定的になったのだと感じる。「あなたにとって私って何なんですか」っていう自分の問いに、自分で答えを出したんだね。 アーリオ オーリオもロマンチックでよかったな、星と目に見えないエネルギー、終わりの話。ちょっとづつ距離を詰めてくる無邪気な美由がかわいいし、その純粋な終わりへの恐怖にせつなくなる。 「でもアーリオ オーリオがあるから大丈夫なのです」 彼女はそう最初に書いていた。そう、大丈夫なんだ、自分がいなくなってもそこに世界があるっていうのは、救いじゃないかなと思うのだけど。
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とても読みやすかった。 純愛小説と書かれていたので、少女漫画のようなものを想像していたけれど、少し違っていた。 肉体関係のない関係を純愛というのか、 精神的な繋がりの関係を純愛というのか、 人それぞれなのだろうけど。 私は好きになると、やっぱり触れたくなる。 でも触れてしまっ...
とても読みやすかった。 純愛小説と書かれていたので、少女漫画のようなものを想像していたけれど、少し違っていた。 肉体関係のない関係を純愛というのか、 精神的な繋がりの関係を純愛というのか、 人それぞれなのだろうけど。 私は好きになると、やっぱり触れたくなる。 でも触れてしまったら失ってしまうものも確かにあって、 触れられないでいるから失わないでいられる、その何かがとても羨ましいと思った。
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「袋小路の男」というこの本の中に収めてある三つの小説のうち、「袋小路の男」「小田切孝の言い分」という二つの小説は、いわゆる恋愛小説だが、ちっとも恋愛小説ではない。 同じ関係を男の側と女の側から描いて、二つの話にした感じだが、変な男と困った女の奇妙な関係が淡々と続くだけだ。まぁ、...
「袋小路の男」というこの本の中に収めてある三つの小説のうち、「袋小路の男」「小田切孝の言い分」という二つの小説は、いわゆる恋愛小説だが、ちっとも恋愛小説ではない。 同じ関係を男の側と女の側から描いて、二つの話にした感じだが、変な男と困った女の奇妙な関係が淡々と続くだけだ。まぁ、たとえば、高校生向けとはいえない。 三つめの「アーリオ オーリオ」という小説は中三の少女と叔父さんの話。叔父さんと宇宙の話なんかしているのは受験勉強の邪魔だとしかられた少女が叔父さんに出した最後の手紙には「私が死んでしまっても、世界はこのままなんでしょうか。宇宙もずっとあるんでしょうか。」と書かれている。 現実の生活の「終わり」に気づくと、現実は揺らぎ始める。自分がいつどこで生きているのかなんて、わかりきっていることだったのに。何万光年という宇宙の時間の、一体どこに私たちはさまよっているのだろう。そんな問いに、ふと取り付かれて小説は終わる。
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人の数だけ、絆の形 や 独特の距離感 があっていいんだと、肯定してくれる 女と男 双方の視点から書いているのがいい
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以前から読んでみたかった絲山秋子さん! 初読みです。 ただ…芥川賞受賞作家は…合う合わないがあるし…という事でたまたま出会った約170頁の薄い短編集のこちらを初読みに選びました。 #袋小路の男 #小田切孝の言い分 #アーリオオーリオ 3篇収録。 「袋小路の男」は女性目線の一人称で...
以前から読んでみたかった絲山秋子さん! 初読みです。 ただ…芥川賞受賞作家は…合う合わないがあるし…という事でたまたま出会った約170頁の薄い短編集のこちらを初読みに選びました。 #袋小路の男 #小田切孝の言い分 #アーリオオーリオ 3篇収録。 「袋小路の男」は女性目線の一人称で語られ、「小田切孝の言い分」では袋小路の男=小田切孝の目線も入り、三人称で語られている。 すると、この二作、同じ男女の関係を描いているのに、微妙にニュアンスが変わってくるんですよね。 この二作品は、うん、ちょっと癖になりそうな…面白い余韻が残りました。 でもでも今回声を大にして推したいのは! 「アーリオオーリオ」 この短編! 久しぶりに読みながらきたっ!きたっ!ってゾクゾクする感覚! いや、内容自体は簡単にいうと淡々とした叔父と姪っ子の交流の話なんです。 どこが?どういう風に?と上手く説明できないけれど… でも、でも、素晴らしかったのです〜✧‧˚ 傑作といってもいいのでは? 私の中では傑作決定ですよ✧‧˚ 30分もあれば読める作品なので、絲山秋子さん、興味あるけど未読…の方はぜひ! オススメいたします。 ただ純文学なので、読書にエンタメ性を求める方はご注意を!
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