袋小路の男 の商品レビュー
彼に似ていてせつなくなった。 でもわたしは日向子ほど思いこみ激しくないし、嫉妬深くもない。 指一本触れずに、なんてこと絶対ない。 純愛にむいていないのか。
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表題作の他、「小田切孝の言い分」「アーリオ オーリオ」の2作が収められている。 これはものすごい作品である。 「袋小路の男」は、「私」が高校の先輩である小田切孝(「あなた」)に恋愛感情を抱きながらも叶うことのないまま過ごす長い年月を描いた作品である。 登場人物同士...
表題作の他、「小田切孝の言い分」「アーリオ オーリオ」の2作が収められている。 これはものすごい作品である。 「袋小路の男」は、「私」が高校の先輩である小田切孝(「あなた」)に恋愛感情を抱きながらも叶うことのないまま過ごす長い年月を描いた作品である。 登場人物同士の距離感、作者と登場人物の距離感が本当に本当に絶妙だ。 つかず離れずの2人の関係性や、「私」の「あなた」への思い、「私」の視点を通して伝わってくる「あなた」の人間性が、行間にふんだんに埋め込まれている。 それは文字どおり「言葉にできない」ものであり、それをわざわざ言葉にしないまま受け取ることで、読者としての自分は、「私」に共感することができるのだろう。 絲山秋子という作家は、少ない言葉数の文章とともに、そのような共感を呼び起こすことのできる行間を書くことができる人だ。 だから天才なのだと思う。 44ページから45ページにかけての「問題は」から始まる一節は、その真骨頂である。 声に出して読みたくなるほどの完璧な一節である。 「私」の「あなた」への愛情がとつとつと語られ、読者は「私」の思いを痛いほど知る。 それとともに、「私」の視点を頼りにして、読者は「あなた」の「私」への思いを、もしかしたら、と予測する。 けれども、それらは次の「小田切孝の言い分」で、鮮やかなほど見事に裏切られるのである。 「小田切孝の言い分」は、「袋小路の男」における「私」と「あなた」の心情や関係性を三人称の視点から捉え直した作品である。 「袋小路の男」では語られることのなかった、「私」すなわち大谷日向子の「あなた」すなわち小田切孝への、愛情一辺倒ではない冷静な感情や、小田切の本心が語られる。 読み進めるうち、単なる恋する女と恋される男でしかなかった2人が、次第に人間臭さを帯びてくる。 これが、一人称と三人称の距離感の違いなのか、と思わされる。 そして、もう一度「袋小路の男」を読み返したくなる。 「袋小路の男」の、2人が初めて出会うシーンの中で、「私」は「あなた」の家の屋根に生えているぺんぺん草を「あなた」の「原点」だと決めるのだが、あのシーンが2人や2人の関係性を象徴している。 まさに「原点」である。 そのことに、この2作を読み終え、再び「袋小路の男」を読み始めた時、初めて気づかされる。 「アーリオ オーリオ」は、主人公松尾哲と、姪の美由のやり取りを描いた作品である。 「袋小路の男」や「小田切孝の言い分」と同様、2人の心の通い合いとすれ違いが危ういバランスで維持されている。 2人は主に手紙のやり取りをするのだが、2人が相手から受け取った手紙を読みつつ、文面には書かれていない相手の様子や心情に思いをはせるのと同じように、読者である自分も行間に思いをはせることができる。 近づきそうで近づくことのない2人の距離感は、結末部分に見事に表現されている。 前2作と同様、何度でも読み返したくなる味わい深い作品である。
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不思議な距離感と、 人を好きになったときのどうにもならない気持ちが 相変わらずサクサクと書かれていてヒジョーに読みやすい。 こんな風に私は好きな人を思い続けることは出来ないけれど、 気持ちは分からなくもないな、と思ってみたりね。
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『おすすめ文庫王国2008』の第8位。そうでもなけりゃあ、とても手にしないタイトル&装丁ね。高校時代から付かず離れずズルズルと恋愛とも言えぬ付き合いを続け人生の袋小路に嵌った男女ひと組。表題作「袋小路の男」&「小田切孝の言い分」には、このズルズル感が女の側、男の側それぞれから描か...
『おすすめ文庫王国2008』の第8位。そうでもなけりゃあ、とても手にしないタイトル&装丁ね。高校時代から付かず離れずズルズルと恋愛とも言えぬ付き合いを続け人生の袋小路に嵌った男女ひと組。表題作「袋小路の男」&「小田切孝の言い分」には、このズルズル感が女の側、男の側それぞれから描かれて、男と女の間には確かにこういうすれ違い感って有りますね。ただ、こういう付き合い方の切なさに、もはや胸が詰まる歳でもなく…。寧ろ私にはもうひとつの「アーリオ オーリオ」に描かれた、聞く耳を持たず未来について語りたがらない叔父と、その叔父が拘る世界に触発されしかし叔父とは違った方向で自分の世界を広げていく中学生の姪の関係のほうが、しっくり入りました。
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久しぶりにキタ。すごーく感動した訳ではないけど、何か好き。 この人の書いた本をもっと読んでみたい。
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短編「アーリオ オーリオ」が なんか…近年まれに見る(私にとっての)理想のお話…なんでだろ。 「私の手紙がおじさんに届くまでの三日間は、3光日の距離にある惑星アーリオオーリオの光が地球に届くまでの時間と同じです。」 あぁなんでだろう。なんでこんなに素敵な気がするんだろう。ゆっく...
短編「アーリオ オーリオ」が なんか…近年まれに見る(私にとっての)理想のお話…なんでだろ。 「私の手紙がおじさんに届くまでの三日間は、3光日の距離にある惑星アーリオオーリオの光が地球に届くまでの時間と同じです。」 あぁなんでだろう。なんでこんなに素敵な気がするんだろう。ゆっくり考えたい。
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この本には ・袋小路の男、と ・アーリオ オーリオ の2話が収録されているが、後者が秀逸。徐々に自分の世界を作り上げていく姪の描写がいい。 描写は、銘と主人公、手紙、星を通してえがかれている。 手紙をかいたら、もらったら、星をみたら、そんなときにぜひ読んでみてほしい。
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カタチにならない片思いって 虚しいですか? それでも、しあわせですか? 大好きだった人を、1番大好きだった頃を思い出して、ちょっぴり痛んだ。
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意見がコロコロ形をかえていつも感想を書いていてほとんどその時の気分に支配されているな。コイツって時々思って見下している。特に恋愛モノは。本書でなんだか共感できた箇所。「あなたの骨の小さなかけらをひとつだけくすねることを考える。」「何百回と会っているのに今日が一番好きだと思った。」...
意見がコロコロ形をかえていつも感想を書いていてほとんどその時の気分に支配されているな。コイツって時々思って見下している。特に恋愛モノは。本書でなんだか共感できた箇所。「あなたの骨の小さなかけらをひとつだけくすねることを考える。」「何百回と会っているのに今日が一番好きだと思った。」「判らないんだったら、帰りな。」以上。
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片思いは究極の純愛ですよね。 袋小路は女性視点。男性視点も同時収録されてます。 長く片思いしてる人はぜひ。
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