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国家の罠 の商品レビュー

4.5

165件のお客様レビュー

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2012/06/20

今とはなっては懐かしい小泉政権のときの鈴木宗男関連国策捜査で逮捕された佐藤優。田中真紀子外相「外務省は伏魔殿」なんてのも懐かしい。当時単行本で読んだが文庫版を再読した。逮捕の理由であるロシア関連の政治問題の部分と、国策捜査における検察・特捜の取り調べ部分、どちらも興味深い。今読む...

今とはなっては懐かしい小泉政権のときの鈴木宗男関連国策捜査で逮捕された佐藤優。田中真紀子外相「外務省は伏魔殿」なんてのも懐かしい。当時単行本で読んだが文庫版を再読した。逮捕の理由であるロシア関連の政治問題の部分と、国策捜査における検察・特捜の取り調べ部分、どちらも興味深い。今読むと、自分の知識が増えたので内容がよく分かり、以前より楽しめた。本書で国策捜査における特捜のやりすぎが指摘されているが、まさに昨今の証拠捏造などの特捜問題に繋がっているし、橋本・小渕・エリティン・プーチン時代の平和条約・北方領土問題は、今年のプーチンの大統領復帰に関連して再登場しそうだ。

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2012/06/06

佐藤優という人は、何となくうさんくさいというイメージがあったが、印象がガラッと変わった。裁判の結論は知っているのに、ドキドキ感は最後まで持続した。官僚、外交官、検察官たちの裏側を暴露するネタであり貴重な本。ここまで書いて大丈夫なの?という感じ。彼も真面目に仕事をしただけなのに、ち...

佐藤優という人は、何となくうさんくさいというイメージがあったが、印象がガラッと変わった。裁判の結論は知っているのに、ドキドキ感は最後まで持続した。官僚、外交官、検察官たちの裏側を暴露するネタであり貴重な本。ここまで書いて大丈夫なの?という感じ。彼も真面目に仕事をしただけなのに、ちょっとした運のツキで犯罪者となってしまった。我々国民は、溜飲をさげるだけの公務員批判をするだけで、有能な公務員の活躍する場を与えていないのではないだろうか?と反省させられた。彼のケースはまさに「国策捜査」だったろうとは思うが、その理屈付けについてだけは理屈つけすぎ感が否めず、やや理解できなかった。

Posted byブクログ

2012/06/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2002年に起きた「鈴木宗男事件」。鈴木宗男氏の側近であり、一連の事件で逮捕・起訴された著者が、事件の真相、検察との攻防、「国策捜査」が行われた背景などをリアルに描いている。特に、著者と西村検事との間には、両者の立場が違うものの友情さえ感じられるような人間ドラマが展開されている。 国策捜査について、著者は「歴史的必然性がある」と述べている。日本が新自由主義、ナショナリズムの強化へと構造転換する上で、公平分配論者で国際協調主義者の鈴木宗男氏を断罪する必要があり、そのため氏が国策捜査の対象になったと分析している。そして、検察がそのシナリオを描くため、著者も逮捕されることとなった。しかし、著者はその逮捕を「運が悪かった」と割り切っているだけで、弁解を一切していない。時代の変化が自身の逮捕に繋がったと捉えている。当事者でありながら一連の事件を客観的に分析できているところに、著者の頭の良さを感じる。 先般の大阪地検の証拠改ざん事件などもあるため、著者、検察双方の言い分をどの程度信じて良いかは解らない。しかし、一人の外交官の見解として読む分にはおもしろい。

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2012/06/16

鈴木宗男事件に関わった元外交官の独白録。 事実がありのままに書かれているが、そこには今の日本の抱える問題がこれでもかというぐらいに描かれている。司法制度、官僚制度なりマスコミが決して手を伸ばさない内部を理解する、というよりむしろ「体感する」に近い表現力で迫られて圧巻の作品だった...

鈴木宗男事件に関わった元外交官の独白録。 事実がありのままに書かれているが、そこには今の日本の抱える問題がこれでもかというぐらいに描かれている。司法制度、官僚制度なりマスコミが決して手を伸ばさない内部を理解する、というよりむしろ「体感する」に近い表現力で迫られて圧巻の作品だった。 北方領土、検察、この2つについてはもっと他の文献を読んで知識を深めたい。

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2012/04/15

外交政策に関する部分が難しくて時間がかかったが、ようやく読み終わった。ここに書かれていることは本当なのだろうか。だとしたら、私たちは皆国家のメデア操作の罠に落ちていることになる。世の中に流れている情報をそのまま信じてはいけないのだとつくづく考えさせられた。検察が犯罪を捏造すること...

外交政策に関する部分が難しくて時間がかかったが、ようやく読み終わった。ここに書かれていることは本当なのだろうか。だとしたら、私たちは皆国家のメデア操作の罠に落ちていることになる。世の中に流れている情報をそのまま信じてはいけないのだとつくづく考えさせられた。検察が犯罪を捏造することがあるということは大阪特捜部が断罪されたことで広く世間に知れ渡ったが、これはそれ以前に書かれ、一般人は検察特捜部を疑ってかかることなど思いもよらない時。まさか、これほど世の中に受け入れられることになるとは著者も思わなかっただろう。

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2012/06/28

『国家の罠』 読了後にすぐ読み返しました。そして、又、色々調べながらもう一度読み返しました。タイトルは、『国家の罠』ですが、「作家の罠」に完全に引き込まれました。国策捜査という得体の知れないものの輪郭が少し見えてきました。 国策捜査とは、 一義的には、政府や国民の意向を受け不正を...

『国家の罠』 読了後にすぐ読み返しました。そして、又、色々調べながらもう一度読み返しました。タイトルは、『国家の罠』ですが、「作家の罠」に完全に引き込まれました。国策捜査という得体の知れないものの輪郭が少し見えてきました。 国策捜査とは、 一義的には、政府や国民の意向を受け不正を糾弾するということ。ポピュリズムなのかもしれないということ。 二義的には、政府並びに時の権力者の意向のもと、本書の中での西村検事を借りていうならば「時代のけじめ」をつけるということ。パラダイム変換にともなう,象徴的な出来事を作るということ。 本書で非常に印象に残ることは、第5章の「再逮捕の日」の中での西村検事の「駐車違反といっしょなんですから『駐車場がないのがおかしい』などといった言い訳をしても無駄なんです。」という会話です。第4章、第5章で述べられている「可逆的違法性の観点」とも関連して考えさせられる点でした。これらのことをふまえると、人は誰でも立件され裁かれても不思議ではないということです。 しかし、第5章の「不可解だった突然の終焉」の中での西村検事の「目的のためには手段を選ばず、平気で法の線を越えるので僕はいわば法に対するテロリストとして、カネや出世を動機に連中よりア悪質だと自分に言い聞かせている。あなたたちは革命家なんだ。」ということば裁く意味として納得できるものでした。 本書の書かれた意義について、著者は『太平記』にならった橋本氏、小渕氏、森氏そして鈴木氏への鎮魂のためであると述べているが、外務省への「うらみ」、官僚機構への仕返しがあるのではと感じました。「矛盾」の明確化を目指したのではないでしょうか。

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2012/03/01

新聞などで読む彼の文章にほぼ必ずのように出てくる「国益」という言葉に、以前からひっかかっていた。 「国益」という言葉には、他国との利害対立があるなかで、自国の利益をいかに守るかというような含意がある。ゼロサムゲーム的な状況の中で主に使われる言葉であろう。 しかしそうした「国益」と...

新聞などで読む彼の文章にほぼ必ずのように出てくる「国益」という言葉に、以前からひっかかっていた。 「国益」という言葉には、他国との利害対立があるなかで、自国の利益をいかに守るかというような含意がある。ゼロサムゲーム的な状況の中で主に使われる言葉であろう。 しかしそうした「国益」という、自分たちの利益の確保というような観点とは別に、彼の書く文章には、より普遍的な価値の達成というような観点も同時に強調されているように感じる。「国益」という概念の中にさえ、国内におけるさまざまな利益集団ごとの利益(たとえば外務省という集団の省益、さらには省の中のアメリカ・スクール、ロシア・スクールといった派閥の利益、など)に対する、ノン・ゼロサムゲーム的な観点が常にこめられていて、そうした(ラッセル=ベイトソン的な意味での)論理的な階層性が常に意識されているように感じていた。 そして彼の頭の中では、おそらく国益の追求は単に集団内での協調だけを意味するのではなく、対立が新たな価値を生み出すという弁証法的な発想がある。まさにこの本で描かれる彼の拘留期間中に(アメリカの司法制度を「当たり前」に感じている感覚からすると、検察の主張を認めなければ保釈が認められることはまずない、という日本の司法の仕組みにはうんざりさせられるが、それはおいておいて)、彼が繰り返し読んでいたというヘーゲルの発想だ。 その弁証法的な新しい価値の追求が、この本の中でもっともはっきりあらわれているのは、彼と立ち向かう西村検事とのやりとりの中で、国策捜査の意味を探し出そうとする両者の奇妙な共同作業の過程である。西村検事が進めようとしている国策捜査は、少なくとも彼らの観点からすれば間違いなく一つの国益の追求であり、しかもそこには勝ちすぎても負けすぎてもいけないという微妙なバランスの追求でもある。こうしたバランスは、アメリカの司法においては、共通ルールにしたがった双方の必死なたたき合いによって生まれるものと仮定されているようだが、検察と裁判官・弁護士が、対立・葛藤とは違ったひとつの大きな相互依存的システムを作りあげている日本においては、そのシステム全体がそうしたバランスを作り上げる。 この著作の物語は、そうしたシステムが自分自身の犠牲を要求してくるときに、個人はどのように振る舞うべきなのかという一つのケースを提示しているように感じた。

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2012/02/09

ロシア外交や北方領土政策に関わってきた著者による、「鈴木宗男事件」と国策捜査についての手記。 川上弘美の解説がとてもしっくりきた。まさに『鈴木宗男がすごく好きになってしまったかも』と思ったし、そして書いてあることを『うのみにしない』が大切だと思った。 政治的な駆け引きの裏側や、検...

ロシア外交や北方領土政策に関わってきた著者による、「鈴木宗男事件」と国策捜査についての手記。 川上弘美の解説がとてもしっくりきた。まさに『鈴木宗男がすごく好きになってしまったかも』と思ったし、そして書いてあることを『うのみにしない』が大切だと思った。 政治的な駆け引きの裏側や、検察官とのやりとりなど、読物としてもおもしろくとても読み応えがある一冊。

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2012/02/07

作者の外交官としての仕事から、当時の日本の外交戦略、鈴木宗男事件、収監生活が書かれている。 始めから終わりまで、後書きと解説含めて全て、読むべき箇所が満載の価値のある一冊だと思う。 「原理原則を忘れない」この事を忘れないようにする。

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2012/02/07

一連の田中・鈴木騒動に関する報道ははっきり覚えているが著者のことは記憶になかった。私事ながら著者とは同じ時期・同じ大学で学んだ。猫の額のようなキャンパスゆえ、すれ違ったこともある筈と思いながら読み進める。当事者の著作ゆえ丸ごと鵜呑みにすることはできないが、非常に興味深く納得性のあ...

一連の田中・鈴木騒動に関する報道ははっきり覚えているが著者のことは記憶になかった。私事ながら著者とは同じ時期・同じ大学で学んだ。猫の額のようなキャンパスゆえ、すれ違ったこともある筈と思いながら読み進める。当事者の著作ゆえ丸ごと鵜呑みにすることはできないが、非常に興味深く納得性のある内容であった。最後は何故か「カラマーゾフの兄弟」の法廷場面を思い出した。2030年には関連外交文書が公開される。はたして真相は何処に。何はともあれ、これからもフォローして行きたい書き手であることは間違いない。

Posted byブクログ