黄金の王 白銀の王 の商品レビュー
1冊で完結する、壮大な物語。 血で血を洗いつづける恨みの応酬を、年若い二人の王が水面下で手を組んで陰で協力しあい、お互い(の血族)を憎みあい殺し合うことが当然である世界を変えてゆこうと誓った。 しかし、何代もの間に積み重なった怨恨はすでに習慣に近く、昇華するのは容易でない。 自分...
1冊で完結する、壮大な物語。 血で血を洗いつづける恨みの応酬を、年若い二人の王が水面下で手を組んで陰で協力しあい、お互い(の血族)を憎みあい殺し合うことが当然である世界を変えてゆこうと誓った。 しかし、何代もの間に積み重なった怨恨はすでに習慣に近く、昇華するのは容易でない。 自分たち一代ではおそらく実現できないであろうこと、 だからこそ自身らがいなくなった後のことまでを瞠るかし、何事にも揺らがず、茨の道を往く薫衣(くのえ)の凛とした姿。 私情を一切挟まず正しく国を統べるための礎を築き続ける穭(ひづち)。 二人が同じ時代に生き人生を賭したからこそ為し得られたことは生半可なことではなく、その犠牲の上に訪れた平和の頑健さは疑うべくもない。 (今の政治家たちにこの本を読んでもらいたい!) 読み始めこそ、名前の漢字の難しさに辟易し、 異世界ファンタジーの舞台に時折差し込まれる「現代で言えば」という言い回しに、少しばかり興を削がれてしまった感は否めないけれど、 気づけば二人が思い描いた未来を私も観たい、という想いにページを繰る手が止まらなかった。 血筋ゆえ、なかなか素直になれなかった薫衣と稲積(にお)夫婦の純愛ぶりと睦まじさは、厳しいばかりの現実に、少しだけのほっこり要素。 でもそこは大事!
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沢村 凛 『黄金の王 白銀の王』 (2007年10月・幻冬舎) 穡(しょく)大王が翠(すい)の国を統一して百数十年。 王の嫡流でありながらも対立し、覇権を奪い合う二つの一族があった。 鳳穐(ほうしゅう)と旺廈(おうか)である。 時は鳳穐の世、翠の王であり鳳穐の頭領である穭(...
沢村 凛 『黄金の王 白銀の王』 (2007年10月・幻冬舎) 穡(しょく)大王が翠(すい)の国を統一して百数十年。 王の嫡流でありながらも対立し、覇権を奪い合う二つの一族があった。 鳳穐(ほうしゅう)と旺廈(おうか)である。 時は鳳穐の世、翠の王であり鳳穐の頭領である穭(ひづち)は、幽閉されていた旺廈の頭領薫衣(くのえ)にある企みを持ちかける。 疲弊した翠の国を立て直すため、海の向こうの大国の攻撃に対抗するため、争いをやめて陰で手を組もうというのである。 言うは易し行うは難し。 百年以上の長きに渡って憎みあってきた鳳穐と旺廈、しかもその頭領同士が手を組むというのだからおいそれとはいかない。 なにしろこの主人公二人がまず17歳と15歳。 初代の王が創始した迪学(じゃくがく)なる尊い教えのおかげでグッとこらえる大人の対応をするが、互いに殺意が芽生えることもしばしば…。 薫衣(くのえ)は穭(ひづち)の妹、稲積(にお)と結婚して同じ城に住むようになるのだが、ここで 強いられる我慢、味わう屈辱たるや、まさに筆舌に尽くし難し。 理由を知らされていない周りの者たちからの嘲笑、軽蔑、憐憫、さまざまな悪意に晒されることになる。 それをそばで感じながらも感情を押し殺して冷徹に国を統べる穭(ひづち)。 互いを認め合いながら、「なすべきことはなにか」をストイックなまでに追求する二人の王。 思慮深く先を見据え、時を待ち、人を動かす穭(ひづち)。 ひらめきに富み、大胆に行動し、人を惹きつける薫衣(くのえ)。 二人の思いは人を動かし国を救えるのか。 二人のために世界があるが如く感じた。(当の二人はそんなことを微塵も思わないだろうが) 動よりも静を描いた物語であるが、読んでいてこの世界にいつまでも浸っていたい気持ちになった。 傑作である。 敬愛する書評家、北上次郎氏のお墨付きとあらば、と急いで読んでみたが、これほどとは思いもよらなかった。 でも、作者の沢村さんを全く知らないのに、この本を本屋で一目見て買っておいたのだから、 我が慧眼もなかなかでは?とニヤリとする私であった。 100点(100点満点)。
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穭の広い視野を持った政治力も然る事ながら、薫衣の揺ぎない生き様にただただ感服! 幼い頃から叩き込まれた迪学の教えがあったとしても、敵陣の針の筵の様な場所で、まだ若い薫衣があれほどまでに使命を全うするとは…!! 特に、伝説の軍師・駒牽が現れ、とうとう蜂起するのかッ!? と誰もが思...
穭の広い視野を持った政治力も然る事ながら、薫衣の揺ぎない生き様にただただ感服! 幼い頃から叩き込まれた迪学の教えがあったとしても、敵陣の針の筵の様な場所で、まだ若い薫衣があれほどまでに使命を全うするとは…!! 特に、伝説の軍師・駒牽が現れ、とうとう蜂起するのかッ!? と誰もが思ってしまいそうな場面で、事態の更に先の先を読み、穭と共に目指す平和の為に動く薫衣の、その明晰過ぎる判断力にとても驚かされた。 ただ、敢えて難を言うなら、登場人物の名前をもう少し読みやすいモノに変えた方が…^^; 覚えるまで何度も人物紹介のページを振り返らなければならないし、正直、このせいで前半部分で挫折しようかと思ったくらいなのでw
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一冊完結のファンタジー。 ……の形をとった架空歴史物というべきか。 固有名詞が独特なので、そこにひっかからなければすんなり読めるのではないでしょうか。 人は憎悪を忘れられるか。恩讐を越えて進めるか。これは一番困難な道を選んだ、仇同士の――後に戦友となる――二人の王の話。 かの国...
一冊完結のファンタジー。 ……の形をとった架空歴史物というべきか。 固有名詞が独特なので、そこにひっかからなければすんなり読めるのではないでしょうか。 人は憎悪を忘れられるか。恩讐を越えて進めるか。これは一番困難な道を選んだ、仇同士の――後に戦友となる――二人の王の話。 かの国の末を淡々と記した6行。あそこに行きつくためにこの物語はあります。
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光輝な精神を持った主人公(達)が立派。 ひたすら息を呑み、姿勢を正し、感動するしかなかった。おすすめのファンタジーでこれを上げる人が多いのが分かりました。 全ての出来事が格好よくて何回も読み直しちゃったよ。 1巻完結なのが惜しい。 もう少し薫衣の面白エピソードや会話を聞きたかっ...
光輝な精神を持った主人公(達)が立派。 ひたすら息を呑み、姿勢を正し、感動するしかなかった。おすすめのファンタジーでこれを上げる人が多いのが分かりました。 全ての出来事が格好よくて何回も読み直しちゃったよ。 1巻完結なのが惜しい。 もう少し薫衣の面白エピソードや会話を聞きたかった。善悪分かれすぎちゃって息がつけない・・・
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読むのに時間がかかった本・・・。 とにかく固有名詞の漢字が難しすぎる!! もちろん、ルビはふってあるんだけど、老いた頭ではすぐに覚えられず、何度もページをめくり確かめながら読んだ。 巻頭に人物紹介と地図が載ってある。 読む前から先入観を得たくないということもあり、人物紹介はいら...
読むのに時間がかかった本・・・。 とにかく固有名詞の漢字が難しすぎる!! もちろん、ルビはふってあるんだけど、老いた頭ではすぐに覚えられず、何度もページをめくり確かめながら読んだ。 巻頭に人物紹介と地図が載ってある。 読む前から先入観を得たくないということもあり、人物紹介はいらない派の私も、この本ばかりは人物紹介に助けられました。 読むのは大変だったけど、ものすごく面白かった。 数百年つづいた鳳穐一族と旺廈一族の争い。 生まれた時から「敵を殺したい」と植えつけられてきた二人の王が葛藤になやまされながらも、争いのない平和な世界を作ろうと動き始める。 「なすべきこと」のためには重臣を殺さなければならない。 「なさざるべきこと」のためなら自分の一族を殺すこともしなければならない。 それは想像以上に厳しいものだった。 物語はたんたんと進んでいくんだけど、人物描写というか人物設定といったらいいのか、とにかくキャラ設定がしっかりとできていて、読みごたえがある。 本当に二人の王がかっこいい! 何をなすべきなのかを見極め、周りになんと思われようとも貫く姿勢に感動。 本の世界から抜け出せなくなるという感覚を久しぶりに感じた。 ただ、もう少し一般的な漢字を使ってくれたらいいのに・・・。 まぁ、その読みにくい漢字も壮大な世界観を作るのに一役かっているのかもしれないけど。
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主人公たちが頭よすぎるうえに、慎重で、道徳的でもあるので、発生する問題がどれも意外とすんなり解決してしまうので、少し物足りなさを感じた。 主人公たちの子供の友情は胸が熱くなった。
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薫衣(くのえ)の気高さと稲積(にお)の強い愛に感動。治める者の孤独がとても良く描かれていて、頭領同士で敵対する二人であるからこそ、お互いが理解できるということ、相手の立場に立つということ、なかなか考えさせられる物語でした。ただ、漢字が難しくて、非常に読みづらかったです。
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自分の一生について考えてしまう。 不条理なことがあっても、人を妬まず嫉まず、精一杯生きれば、それなりに幸せに過ごせるのかな、とか?
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・良作。 ・人物の対比が面白い。 ・秀才タイプの王と、天才タイプの王。 ・容姿は普通だが人柄の良い妻と、容姿端麗だが我が儘な妻。
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