“文学少女"と慟哭の巡礼者 の商品レビュー
“「コノハ、あたしのこと……好き?」 焦げ茶色の大きな目が、じっとぼくを見上げる。 「ねぇ……好き?」 昔から美羽はよく、「あたしが好き?」と、からかうように問いかけた。 ―――ねぇ、コノハ?あたしのことが好き?あたしの目を見て言ってみて。 ぼくは恥ずかしくて、頬を真っ赤に染...
“「コノハ、あたしのこと……好き?」 焦げ茶色の大きな目が、じっとぼくを見上げる。 「ねぇ……好き?」 昔から美羽はよく、「あたしが好き?」と、からかうように問いかけた。 ―――ねぇ、コノハ?あたしのことが好き?あたしの目を見て言ってみて。 ぼくは恥ずかしくて、頬を真っ赤に染めて口ごもってしまい、そんなぼくを見て、美羽はいつもおかしそうにくすくす笑っていた。 けれど、今、ぼくを見つめる美羽の眼差しは、あの頃よりもひんやりしていて、透明で、心に抜き身の剣を突きつけられているようだった。 「ねぇ?答えて。あたしが好き?コノハ?」 好きだよ……。 そう答えようとして、喉元で押しやられるようにして、言葉が止まってしまう。 「あたしのことを本当に好きなら、琴吹さんとも、一詩とも、もう口をきかないで」 「そんな約束は……」 「できない?」” 高校生の心の手の届かない所のキリキリ感がこの物語にはある。 あー、何か、辛い。 擦違い、勘違い、思い込み。 フツウ、とか。 色々と、考えちゃうような。 ジョバンニの思い、カムパネルラの願い。 美羽との再会。そして、彼女との過去の終わりと未来の始まりに向けて。 読んでるときにはどうしてそんな嘘にだまされちゃうのって思うけど、自分がその立場ならきっとどうしていいかわからなくなる。 ラストがすごく良かった。 “手袋の布越しにふれあっている手が、指先が、ジンと熱くなる。 遠子先輩が顔を上げる。 「ありがとう」 黒い瞳をなごませ、うんと幸せそうに微笑み、シャーペンを大事そうに握りしめて離れた。 「心葉くんのおかげで、明日は頑張れそうよ」 「寄り道しないで、まっすぐ帰ってくださいね。お風呂で本に夢中になって、水風呂になっているのに気づかないで熱出したとか、そういう間抜けなことはやめてくださいね。濡れた髪のままふらふらしないで、よく乾かして、すぐに眠ってくださいね。目覚し時計をセットするのを、忘れないでくださいね」 「はいは~い」 笑顔で遠ざかりながら、シャーペンを握った手を、あざやかに振る。 ほっそりした姿が、夜の闇の向こうへ消えてしまうまで、ぼくはいつまでもいつまでも見送った。”
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文学少女のターニングポイント。 心葉と美羽の話。題材は銀河鉄道の夜。 「読者は作家を裏切る」心葉を離したくない美羽の精一杯の愛情が綴られてる。ジョバンニとカムパネルラのように… 後、ラストシーンの遠子先輩のあなたはどんな人になりたい? これがいい台詞だ。
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今作は「銀河鉄道の夜」が下敷き。物語はとうとう美羽がメインのお話。 心葉の持つ「美羽」のイメージと現実の剥離、盲目的に溺愛していたゆえの悲劇と言うべきなのか。 美羽の言葉を「疑う事が出来ない」心葉の姿に前半では散々イライラ・ハラハラしましたが周りの人々の助けもあって無事集結。 今...
今作は「銀河鉄道の夜」が下敷き。物語はとうとう美羽がメインのお話。 心葉の持つ「美羽」のイメージと現実の剥離、盲目的に溺愛していたゆえの悲劇と言うべきなのか。 美羽の言葉を「疑う事が出来ない」心葉の姿に前半では散々イライラ・ハラハラしましたが周りの人々の助けもあって無事集結。 今まで心葉に関わってきた人々…心葉が自分の心を少しづつ開いていった結果ですが…その積み重ねが上手くまとまっていたと思います。
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なるほど、ってなりました。 やっぱりシリーズもののいいところは少しずつ物語の全貌が見えてくるところだと思う。 最終的にはすごくいい感じだったけれど、どことなくすごく好きだなって思えなかったのはちょっと美羽ちゃんが苦手なタイプだったからかも。 でもきっとこれからなのよね、うん。 ...
なるほど、ってなりました。 やっぱりシリーズもののいいところは少しずつ物語の全貌が見えてくるところだと思う。 最終的にはすごくいい感じだったけれど、どことなくすごく好きだなって思えなかったのはちょっと美羽ちゃんが苦手なタイプだったからかも。 でもきっとこれからなのよね、うん。 次も楽しみ*
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気づけばもう5巻。今回は遂に美羽の話。 相変わらず読んでると胸を締め付けられて、それでいてどこか綺麗な透明感のある話。 遠子先輩の謎やこの先流人と竹田さんがどうなるのか気になるところ。
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今回も本当に井上にはイライラさせられました。 それほど熱心に読んでしまっているということだけど・・・。 美羽は可哀相だけれど、高校生にしてはずいぶん子供っぽい。 遠子の次巻への振りも気になる。
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今回のモチーフは宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」。 とても有名な作品なのだが、よく考えてみるとちゃんと読んだことないや;; 文学少女たる遠子の出番は要所要所にしか出てこないが、今まで謎の存在だった美羽が表舞台に登場。 1巻からちりばめられてきた伏線をここで一気に解消。 今までどこか逃...
今回のモチーフは宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」。 とても有名な作品なのだが、よく考えてみるとちゃんと読んだことないや;; 文学少女たる遠子の出番は要所要所にしか出てこないが、今まで謎の存在だった美羽が表舞台に登場。 1巻からちりばめられてきた伏線をここで一気に解消。 今までどこか逃げ気味だった心葉だったのだが、美羽との関係を解決することで一つ大人になった感じがする。 これで大筋の話は終わったので物語として終了なのかな・・・と思ったら、なにやら遠子には大きな秘密があるらしい突然で強烈な引き;; 次巻でその秘密が暴かれるみたい? 後書きによるとその前に番外編が入るみたいだけれどね;; 毎回ハイクオリティな文学少女シリーズ。次巻も番外編も楽しみです。
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今まで心葉の中にしか居なくて謎だった「美羽」がやっと登場してくれました! 前からぽつりぽつりと心葉以外の登場人物たちにも接触しているような雰囲気はあったのですが、ここまで複雑に絡んでいるとは思いませんでした。 複雑な中にもそれぞれが必死で考えて行動して、それもまた空回りして…とい...
今まで心葉の中にしか居なくて謎だった「美羽」がやっと登場してくれました! 前からぽつりぽつりと心葉以外の登場人物たちにも接触しているような雰囲気はあったのですが、ここまで複雑に絡んでいるとは思いませんでした。 複雑な中にもそれぞれが必死で考えて行動して、それもまた空回りして…というのがもどかしくて、もどかしくて。 屋上のシーンでは泣きながら読みました。 心葉は本当に成長したね。 その成長した分、終わりが近い事を感じさせます。 また、今回は『銀河鉄道の夜』を題材としていて大学の講義で色々な角度から考えたりもしていたのですが、 「カムパネルラの望みはなに?」 という美羽の問いに、改めて原作を読み直したくなりました。
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文学少女の5巻です。 やっと心葉くんと美羽ちゃんのお話でした。 長かったなぁ。 登場人物たちがなんだか色々ちょこまか動きますが かみ合わないのがもどかしくて仕方がなかったです。 そして透子先輩はやはり素敵です。 大きな問題が解決したわけだから、 この先は純粋に楽しんで読めるかな。
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文学少女シリーズ第5作目 今作は宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』が題材です 今まで謎だった美羽が中心のお話です 心葉を愛していたのに、憎んでしまう 愛されたいという気持ちが彼女に無理をさせて、 悩んで苦しんで傷つけてしまう でもそんな美羽に共感してしまいました これでメインの人物が...
文学少女シリーズ第5作目 今作は宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』が題材です 今まで謎だった美羽が中心のお話です 心葉を愛していたのに、憎んでしまう 愛されたいという気持ちが彼女に無理をさせて、 悩んで苦しんで傷つけてしまう でもそんな美羽に共感してしまいました これでメインの人物が登場し終わり、 いよいよ卒業に向けたクライマックス開始といった感じでしょうか そしてまたもや気になる最後の一行でした
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