米原万里の「愛の法則」 の商品レビュー
小説家としてしか知らなかったけれど、まさか、こんな人だったとは! 語られている内容に、一々納得させられる。 いやー、一気読みでした。
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「愛の法則」というタイトルだが、愛について語っているのは、最初の1章のみ、残りの章は翻訳者ならではの国際感覚の話、語学勉強法の話など、タイトルとはそぐわない?というか、今のタイトルではもったいない話が満載。翻訳者を目指している人、国際化が必要と叫んでいるひとには一読を勧めたい。 ...
「愛の法則」というタイトルだが、愛について語っているのは、最初の1章のみ、残りの章は翻訳者ならではの国際感覚の話、語学勉強法の話など、タイトルとはそぐわない?というか、今のタイトルではもったいない話が満載。翻訳者を目指している人、国際化が必要と叫んでいるひとには一読を勧めたい。 個人的には、英語ともうひとつの外国語を学んでいたほうが良いという意見が斬新。また、読書が良い学習法というのも、読書好きにとってはうれしい提言である。 以下注目点 ・国際化(グローバリゼーション)とは アメリカ型:自分を世界の基準にしようとする。 日本型:世界の基準に自分を合わせようとする。 ・言葉とか文化は、自分たちが自分たちであることの結果の砦、よりどころとする重要なもの。日本人はこれが希薄。 ・サミットでは、他の国が直接同時翻訳してコミュニケーションしていたのに、日本だけが、28年もの間、英語経由(英語でフィルタリングして)でコミュニケーションしていた。 ・他国語の翻訳者に比べ、話がつまらなく、個性的な魅力に乏しいのが、英語翻訳者。優等生タイプが多く、角が取れてしまっているから。 ・外国文化を絶対化する病気。外国語を学ぶと必ずかかる病気。努力して学んだのだから、意味があって欲しいと思うのは、まあ人情。 ・英語命より、もう一つ外国語を学んでいるほうが、英語を学ぶ上でも、遠回りのようで近道。 ・フランス語とイタリア語とスペイン語とルーマニア語とポルトガル語は非常に近い。 ・日本語、ハンガリー語、トルコ語:膠着語 ・英語、中国語、ヴェトナム語:孤立語 ・ロシア語とかフランス語:屈折語 ・三つ目は、屈折語が良い。 ・新しい言葉を身につけるためにも、維持するためにも、読書はいちばん苦痛のない学習法。
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前半は、著者の経験をもとに「男女とは何か」を解いている。飾った言葉でなく、本心で語っているところが共感した。 中盤からは、自分を知ることとコミュニケーションの大切さを説明している。 自分も仕事で通訳者と接するこがあるが通訳が理解しないとステークホルダーにも伝わらないと思っている...
前半は、著者の経験をもとに「男女とは何か」を解いている。飾った言葉でなく、本心で語っているところが共感した。 中盤からは、自分を知ることとコミュニケーションの大切さを説明している。 自分も仕事で通訳者と接するこがあるが通訳が理解しないとステークホルダーにも伝わらないと思っている。 著者は「通訳とは何ぞや…」と説明しているが、自分は伝える側の責任も大きいと感じている。 時々「伝わらないは通訳のせいだ」と言ってる人もいるようだが、そのような人は伝わるように伝えておらず、自分の責任を放棄しているだけだと自分は思っている。とにかく通訳が理解しないと始まらない。
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亡き著者の講演録。なので全て話し口調。 才能も有ったのだろうが、ああ、こうして磨き上げて来たのか...と納得。 同時通訳ってのは、本当に脳の左右をフル回転させるのだろうなあと改めて感じた。
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4つの講演録。タイトルでやや損をしている気がするが(高校生向けの講演ではギリギリな感じの話も多少はあるが)、内容はまっとうすぎるほどまっとう。文章も読ませる人だったが、話しても上手い人だったのだなと知る。巻末にブックリストもついていて、米原万里入門としてはお手頃。
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著者がすでに鬼籍に入られた方とは露知らず、初めて読む。語学の学習法については早速、第3の言語選びを、といさむ。通訳の「わかるところを訳す」も身に染みる言葉。読書量の重要性の主張等、多くの先人が言っていることではあるが、改めて認識。少しは見習っているつもりではいたが、まだまだ・・...
著者がすでに鬼籍に入られた方とは露知らず、初めて読む。語学の学習法については早速、第3の言語選びを、といさむ。通訳の「わかるところを訳す」も身に染みる言葉。読書量の重要性の主張等、多くの先人が言っていることではあるが、改めて認識。少しは見習っているつもりではいたが、まだまだ・・ 言葉と文化の双方を学べるので、通訳という仕事は楽しい、という視点が素晴らしい。
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気取らない講演集で、とても読みやすかった。 書名は1つ目の講演にのみ関係したもの。他は、国際化や通訳業についてストレートに語られた講演で、その全てが興味深く読めた。 サミットでの同時通訳は、日本語だけが一旦英語に訳されそこから各国語に訳されることを紹介した上で、日本の国際化は強...
気取らない講演集で、とても読みやすかった。 書名は1つ目の講演にのみ関係したもの。他は、国際化や通訳業についてストレートに語られた講演で、その全てが興味深く読めた。 サミットでの同時通訳は、日本語だけが一旦英語に訳されそこから各国語に訳されることを紹介した上で、日本の国際化は強国である米国の基準に合わせる形での英語重視だと指摘し、様々な国の文化・言語に触れ(英語を媒介とすることなく)直接の関係を築いて行くことで日本も世界も豊かになるはずという主張には、納得させられた。
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同時通訳者の頭の中を垣間見ることができる章が面白い。猛スピードの翻訳を持続するとは、要約・イメージ化能力を常時フル回転させること。日常の英語運用において真似できそうなのはここで、要するに何を言いたいかを右脳を使ってイメージ化するのがポイントと思う。
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4つのテーマにもとづく講演。 1 愛の法則 2 国際化とグローバリゼーションのあいだ 3 理解と誤解のあいだ 4 通訳と翻訳の違い ここまで、いっていいのかと思うほど 口が滑らかで 言いたい放題。 そのなかに 洞察力(インサイト)がきらきらと輝く。 さすが、米原万里。 その大胆...
4つのテーマにもとづく講演。 1 愛の法則 2 国際化とグローバリゼーションのあいだ 3 理解と誤解のあいだ 4 通訳と翻訳の違い ここまで、いっていいのかと思うほど 口が滑らかで 言いたい放題。 そのなかに 洞察力(インサイト)がきらきらと輝く。 さすが、米原万里。 その大胆さと下ネタの爽やかさは なんともいえない風情がある。 言語を理解するとは、記号と概念の間の変換プロセスを体験すること。 1 愛の法則 世界の名作は オトコ(ドンファン)がオンナあさりするものばかり。 そのオンナは 美人ばかりだ。 しかし、美人の基準は 時代と地域によって違う。 源氏物語にしろ、 一方 オンナの物語は 理想の男性を捜すものになっている。 沢山のオトコから 選び抜く物語。 メスは量をにないながら質を追求する。 オスは質をにないながら量を追求する。 結局 オトコは生き延びてつたえる サンプルなんだよ。 オトコには ①ぜひ寝てみたいオトコ②まぁ。寝てもいいのかなというオトコ ③たとえ大金をもらっても絶対寝たくないオトコ オトコの多くは 90%以上は ③ だとか。 オトコあまりの現象が 質の高い人間に進化する。 オトコが2600万人も余っている中国は まさに 進化の舞台かも。 2 国際化とグローバリゼーションのあいだ 「アメリカ人の言うグローバリゼーションは、自分たちの基準をおしつけることであり、日本人の思うグローバリゼーションは世界の基準に自分を合わせること。」 アメリカ人は 「自分たちは変わらない。自分たちは正当であり、正義であり、自分たちが憲法である。」と思っている。 すごい 本質的な定義。素晴らしい。 中華主義も アメリカ的発想に近いのだ。 陸続きであれば、こころの中にある国境が強くなる。 外国文化を絶対化する病気と自国と自国文化を絶対化する病気。 日本語の国語教育は、日本語を外国語として突き放して勉強していない。 日本語は ウラルアルタイ語とポリネシア語族が合体した。 3 理解と誤解のあいだ 他人まかせは しょせん 身に付かない。 孤立語;語順によって決まる 〈英語〉〈中国語〉 膠着語;たされてくっつく 「テニオハ」日本語 ハンガリー語 屈折語;言葉の語尾とか語頭が変化する。ロシア語、フランス語。 4 通訳と翻訳の違い 「モノを聞き取って正確に把握する能力」と「それをもう一度統合してまとめて表現する能力」 「文学こそが民族の精神の軌跡、精神の歩みを期したもので、その精神のエキスである。」 同時通訳のプロは 言葉に対して鋭敏な感性を持っているだけでなく 更に深く その国の文化さえもつかみ取る チカラを持っている。 そのことを、米原万里が 体現している。 ホントに、惜しい人をなくした。
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これは…米原さんが書くからこそ許されるし、説得力もあるということなのだろう。 例えば、男女の生物学的な性差の意味づけとか、英語は孤立語とか、そのあたりは目をつぶるとして。 日本人にとっては国際化は国際基準(往々にしてアメリカ基準、のことだったりする)に合わせていく動きとなるのに対...
これは…米原さんが書くからこそ許されるし、説得力もあるということなのだろう。 例えば、男女の生物学的な性差の意味づけとか、英語は孤立語とか、そのあたりは目をつぶるとして。 日本人にとっては国際化は国際基準(往々にしてアメリカ基準、のことだったりする)に合わせていく動きとなるのに対して、アメリカ人にとっての国際化(グローバリゼーション)は、自分は変わらず、自分の基準を普遍化する動きとなるといった指摘は面白かった。 乱暴な議論ともいえるけれど、本書の大部分の講演は米原さんが癌で闘病していた時期に重なる。 そのことを思うと、そこまでして伝えたかったこととして受け止めなければと思えてくる。 小学三年生でプラハのソヴィエト学校へ入れられ、一言も分からないのに登校しなければならないつらさ。 少しわかるようになっても、言いたいことが言えないもどかしさ。 母語の環境でぬくぬく育った身には想像を絶する経験だ。 そこで培ったアメリカに偏しない「国際」感覚は、私たちの社会にとって、どれだけ貴重であったことか
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