私が語りはじめた彼は の商品レビュー
誰かを語るということは、つまりは自分を語るということなのだ。 直接は登場しない村川融という人物をめぐる、さまざまな立場の人達が、自分の物語を語る。 村川の妻が語る「男が浮気する理由」がすごい。女は自分以外の女の存在に敏感だから、男を引き止めるためになんでもする。男はそれを無邪気に...
誰かを語るということは、つまりは自分を語るということなのだ。 直接は登場しない村川融という人物をめぐる、さまざまな立場の人達が、自分の物語を語る。 村川の妻が語る「男が浮気する理由」がすごい。女は自分以外の女の存在に敏感だから、男を引き止めるためになんでもする。男はそれを無邪気に享受するが、その快楽に麻痺して次々と別の女を渡り歩くようになるのだ、という。 そんなもんなんだろうか。自分以外の存在を匂わせる男に、そこまでムキになる女心の方が私には理解しがたい。つまりはこの妻がそういう人であるということなのだ。 夫としての顔だけでなく、父親としての顔ももつ村川だが、こちらのほうはたいして魅力がない。でもこういう男を父親に持った子どもがどんなふうに感じるかという意味ではとても影響力が大きいのだ。 村川自身はさほど魅力のある存在ではない。でも、彼に関わることになってしまった人たちの物語はとても陰影に富んだものである。登場人物の誰にも好感を持てなかったし、彼らのあり方も好きではないんだけど、比喩が大変見事で、そこに人間や人生の真理を見たような気がした。 ちょろちょろと切れ目なく浮気する男というのは、表面的なわかりやすいよさがある。なんであんな男が、と思われるものだが、渡り歩くためには真の魅力などは邪魔なのである。 浅い水たまりでも溺れることはあるのだ。
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「船を編む」や「まほろ駅前多田便利軒」とは違って、重くて暗くて繊細。冒頭を読んでいると「うへえ、くどい!」と思わざるをえなかったが、異なる人物の物語が連動する形式で、文体も人物ごとに変わっていったのでよかった。 私は浮気性の人間になんのロマンチズムも美学も魅力も感じないので、登場...
「船を編む」や「まほろ駅前多田便利軒」とは違って、重くて暗くて繊細。冒頭を読んでいると「うへえ、くどい!」と思わざるをえなかったが、異なる人物の物語が連動する形式で、文体も人物ごとに変わっていったのでよかった。 私は浮気性の人間になんのロマンチズムも美学も魅力も感じないので、登場人物たちは寛容すぎるというか優しすぎるような気がした。みんなそれぞれ違う人のはずなのに同じような冷め方をしているような。 類は友を呼ぶ、みたいな感じなのかな。
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ごめんなさい。よくわかりませんでした。 ・・・で?みたいな。 章ごとに視点が変わり、これといって結末がないのが疲れた。
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文章はうまく読みやすい。けれど装飾が施されすぎていて却って現実味が失われている感じ。連作短編だが、全般的に漂っているのは「絶望感」だろうか。必要とするものが得られないことに対するあきらめ。或いは大切なものを失うのではないかという焦燥感。しかしこの作品を通じて何を読者に伝えたいのか...
文章はうまく読みやすい。けれど装飾が施されすぎていて却って現実味が失われている感じ。連作短編だが、全般的に漂っているのは「絶望感」だろうか。必要とするものが得られないことに対するあきらめ。或いは大切なものを失うのではないかという焦燥感。しかしこの作品を通じて何を読者に伝えたいのかわからない。
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気になった一文は、 「家路。その言葉に含まれる、盲信と違和感を突きつけられたような気がして。」 近くで観ていると何かわからなく、離れてみて初めて全体像が掴めるモザイク画をみるような感覚に読後なりました。
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結局彼はどんな人だったんだろう。 いろんな謎は謎のまま。 それぞれの愛と苦悩。 やっぱしをんさん好きです。
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暗い。じめじめねっとりな世界が、私には馴染めませんでした。 さすが三浦さん、文章はうまいし骨組みもしっかりしているのでそういった面では安心して読み進められたのですが、気が滅入りそうです。 どろどろの愛憎劇が好きな方にはお勧めです。
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またしてもたぶん読んだことある本を買ってしまった。ウサギのとこで何となく気づいた。 長く記憶に残る本ではない。
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なんとなく気が重たくなった。 しをんさんの描く世界は結構好きだけど、この作品は私には合わない感じ。 ドロドロ系。
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村川教授に人生を、性格を狂わされてしまった多数の男女。 妻・娘・息子・元息子・元娘・助手・愛人・愛人の夫 村川教授視点の話は何もない。 彼を取り巻く人物により彼の印象はガラっと変わる。 愛しているからこそ憎い 疑心暗鬼 「やられたら、やりかえす」の法則 「私が語りはじめた彼は」...
村川教授に人生を、性格を狂わされてしまった多数の男女。 妻・娘・息子・元息子・元娘・助手・愛人・愛人の夫 村川教授視点の話は何もない。 彼を取り巻く人物により彼の印象はガラっと変わる。 愛しているからこそ憎い 疑心暗鬼 「やられたら、やりかえす」の法則 「私が語りはじめた彼は」と、「むかしのはなし」って似てるよね。
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