五分後の世界 の商品レビュー
もっと村上龍作品に触れたくて見つけてすぐ手に取った一冊。内容については、なにか今の日本を皮肉っているようなところがよく感じられた。しかし、国のもとをただせば個人の集まりであるし、P120の「誰も何が欲しいかわからないからみんなが買うものを買う」とか、P121の「みんな誰かの言いな...
もっと村上龍作品に触れたくて見つけてすぐ手に取った一冊。内容については、なにか今の日本を皮肉っているようなところがよく感じられた。しかし、国のもとをただせば個人の集まりであるし、P120の「誰も何が欲しいかわからないからみんなが買うものを買う」とか、P121の「みんな誰かの言いなりになっている」とか、P156の「アメリカ人の好きそうなものを好んで、それが異常だと気づけない」とか、この辺の言葉になぜか自分がヒヤッとさせられた。もちろん共通言語として英語を勉強したり、自分とは違う容姿、文化を持つ外人に憧れるのは、ないものねだりな人間の性からしてしょうがないことだと思うけどやっぱり日本人の精神的な強さとかそういうところは誇りに思わないといけないと思った(現代人にその強さが備わっているかは別として、、)。 また、本解説を読んで村上龍作品の楽しみ方がわかったような気がした。やはり本を読むからには「結末」が欲しいと思うのが普通だけど、村上龍作品には明確な結末がない(ように自分は感じる)。だからこそ、初めて村上龍作品を読んだとき、なんだこれ、、、と読了後には何も残っていないような感じ(物語の結末がよくわからないような感じ)がしたけれど、印象として描写とか表現がすごかったなあとしっかり覚えていて、その印象に残ったような残ってないような不思議な感覚にはまった。でも、本を読んだ後に結末をだれかに話すために本を読んでいるわけじゃないし、その場その場の描写とか表現を楽しむというのが独所の本質だとすれば、村上龍作品はやっぱりすごいと改めて感じた。 こんなにレビューを長く書いたのは久しぶりだし、やっぱりなんか他の本とは一線を画していると思う。もっと読みたい。
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面白いから読めと勧められた本作。 面白かった!ちょっとグロいんだけど内容を考えたら必要な描写だし、圧倒的な暴力と意思に圧倒されてグロいとか感じてる暇がなかったというのが正直なところ。 今の日本がこーでなくて本当に良かった。
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著者自ら自身の最高傑作ということを過去に明言した本作は、5分間の時間のずれによって発生したパラレルワールドとしての日本を舞台に、体験を経ながら1人の男が生を投企する様を圧巻の暴力の描写とともに描きだす。 パラレルワールドとしての日本は、第二次世界大戦の後、戦勝国により共同統治さ...
著者自ら自身の最高傑作ということを過去に明言した本作は、5分間の時間のずれによって発生したパラレルワールドとしての日本を舞台に、体験を経ながら1人の男が生を投企する様を圧巻の暴力の描写とともに描きだす。 パラレルワールドとしての日本は、第二次世界大戦の後、戦勝国により共同統治され、26万人に激減した人口と共にアンダーグラウンドに再建国されている。地上は国連軍が支配しながらも各国からの移民や混血児が跋扈し、東京や大阪のような都市はスラムの様相を呈す。このように、「第二次世界大戦を経て現れていたかもしれないもう一つの日本」を虚構上に作り出し、現在の日本社会を相対化しようとする試みは文学的に見れば新しいものではなく、その点では日本を舞台とするものでは矢作俊彦の「あ・じゃ・ぱん」のような傑作(社会風刺性を持ちながらも特有のスラップスティックコメディーとしての完成度も兼ね揃えている)には敵わない。 しかし、本書の価値はそこにはなく、むしろ著者が処女作の頃から一つのモチーフとしてきた、「戦争の暴力」のリアルさや、その暴力が人をどう変質させるかという点の説得力にある。それは、著者が尊敬する中上健次が、粗暴な男たちの暴力を描かざるをえなかったように、書かれるべき内的な必然性を感じ取ることができる。 蛇足となるが、坂本龍一の「1996」を聴きながらこれを書いていたら、作中に登場する音楽家ワカマツは、明らかに坂本龍一をモチーフにしていることに気づいた。
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村上龍は初めてでした。これが初めての本で良かったのか自信がありません。この本で終わってはいけないと思いますが、次を読むのが怖い、そんな風に感じました。
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現代とは違う歴史を辿った世界へ 迷い込んだ男の話。 原爆投下後も日本は降伏せず、 地下へ潜りゲリラ戦を続けていた。 パラレルワールドについての細かな設定、 作り込まれた世界観、 緊迫感溢れ生々しく激しい戦闘描写。 生への執着。 読ませる物語だった。 普段ミリタリ物は小説だけ...
現代とは違う歴史を辿った世界へ 迷い込んだ男の話。 原爆投下後も日本は降伏せず、 地下へ潜りゲリラ戦を続けていた。 パラレルワールドについての細かな設定、 作り込まれた世界観、 緊迫感溢れ生々しく激しい戦闘描写。 生への執着。 読ませる物語だった。 普段ミリタリ物は小説だけでなく 映画等でも殆ど手にしないが、 この作品はかなり楽しめた。 特に終わり方は好みだった。 現代社会への批判も込めていたが、 90年代に様々な所で飽きるほど耳にした 今では黴の生えた批判だった。
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氏の「半島から出よ」や貴志祐介さんの「新世界から」と同様の仮想現実世界。 ミズノ少尉曰く「~最も大切なことがある、絶対に悪い想像をしてはいけないということだ、~大丈夫だ、と自分に暗示をかけるんだ、~」 この言葉を我が子に伝えたい。
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行動的にも精神的にも凶暴さを内包していて読み進めるのを躊躇いながらの読了。 個人的見解では、かつての日本が白旗挙げてくれてよかった……
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55歳からのハローライフを読んでからのこの本はちょっと重い内容だった。5分後のパラレルワールドに迷い込んだ主人公が理不尽さを徐々に消化し自分の世界として生きていく覚悟を決めた場面は何故か気持ちがスッキリした。ただ、登場人物のワカマツの役割が今一歩理解出来なかったというか、馴染めな...
55歳からのハローライフを読んでからのこの本はちょっと重い内容だった。5分後のパラレルワールドに迷い込んだ主人公が理不尽さを徐々に消化し自分の世界として生きていく覚悟を決めた場面は何故か気持ちがスッキリした。ただ、登場人物のワカマツの役割が今一歩理解出来なかったというか、馴染めなかった。
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「半島に出よ」に引き続き手に取った村上龍作品。 「半島に出よ」を超えるまでとは行かなかったが、十分に楽しんで読めた。 現在の日本とは異なり、他国に対してプライドを持ち戦い続けるパラレルワールドを描いている。 相変わらずの世界観、設定の巧さだと感じた。 最後はまだ続きが読みたくな...
「半島に出よ」に引き続き手に取った村上龍作品。 「半島に出よ」を超えるまでとは行かなかったが、十分に楽しんで読めた。 現在の日本とは異なり、他国に対してプライドを持ち戦い続けるパラレルワールドを描いている。 相変わらずの世界観、設定の巧さだと感じた。 最後はまだ続きが読みたくなった。 これもまた、時間を置いて再読したい作品。 ここまで作り込まれた、壮大な作品をかける作家は本当に一握りではないかと思う。
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自分も含めてナンパな現代において異端なほどサバイバル能力がありすぎる主人公である故、読者に染み入るような文学性は低い。 しかし、現在の日本のあり方への批判を含み、緻密なifで、表現したSFとしては、面白い。 セリフの中にある日本語の曖昧さを非難したり、闘うことよりも古典芸能だ...
自分も含めてナンパな現代において異端なほどサバイバル能力がありすぎる主人公である故、読者に染み入るような文学性は低い。 しかし、現在の日本のあり方への批判を含み、緻密なifで、表現したSFとしては、面白い。 セリフの中にある日本語の曖昧さを非難したり、闘うことよりも古典芸能だけで生き残りを賭けて、大切なプライドを放棄している登場人物を観て、考えさせられる作品。
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