五分後の世界 の商品レビュー
短い小説だが内容は濃く、読むのに体力がいる。 村上龍が考える、本来の日本人のあるべき姿が描かれているような気がする。
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突然始まる物語。状況の分からないまま(主人公も同じ立場)引き込まれていく。ページを進めるにつれ次第に明らかになる世界。五分後の世界の日本はゲリラ戦士は、日本や日本人、自分自身のあり方を強烈に考えさせられる。長く重い戦闘シーン・演奏シーンに圧倒されながら、最後まで息をつく間もなく物語は進み、そして突然終わる。「筆者自ら最高傑作と語る衝撃の長編小説(裏表紙より抜粋)」言うだけのことはある。
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この作品の戦闘描写の異様なまでの長さについては、解説で渡部直己氏が指摘している。 「しかし、『五分後の世界』の書き手はここで、余計なことはいっさい口にせぬ鍛え抜かれた戦士のように、主人公の内面についてはほとんど説明せずに、ただ、彼をこの圧倒的に均衡を欠いた戦闘場面に直面させつづ...
この作品の戦闘描写の異様なまでの長さについては、解説で渡部直己氏が指摘している。 「しかし、『五分後の世界』の書き手はここで、余計なことはいっさい口にせぬ鍛え抜かれた戦士のように、主人公の内面についてはほとんど説明せずに、ただ、彼をこの圧倒的に均衡を欠いた戦闘場面に直面させつづけるのだ。そして、一編に持ち込まれたこの不均衡じたいが、主人公を変えようとする。すなわち、主人公の決定的な改心(コンバート)を、戦闘描写(コンバット)の異様な持続そのもののなかから引きだそうとすること。」 作品の冒頭では、おそらく合っていない時計、という設定のためであろう。 どこか深沢七郎の「風流夢譚」を思わせるようなところがあった。 しかし、延々と続き、反復される戦闘描写や、拡大化される細部描写を経て(具体的には第四章。この章の名は、「戦闘」)、そうした印象は薄れていった。 それもそのはずである。 渡部氏は解説で、戦闘描写による主人公の改心が引きだそうとされていると述べているが、この戦闘描写によって、さらにテクスト自体の変形/転換(コンバート)が生じていることも付け加えうるだろう。 一文の長さだけを見ても、それは明らかに始まりよりも長くなっている。戦闘描写の「長さ」をなぞり、支えるかのように、読点によって続けられ、なかなか終わることのない一文の「長さ」。 つまり、この小説は、内部に大きな亀裂を抱えているのだ。しかもそれは、決して破綻としてではなく、それこそが最大にしてかけがえのない美点として。 そして、『五分後の世界』とは、まさにこの亀裂のなかで、作品が美事に転成を果した傑作である。
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とても感化された。 時間が5分進んだパラレルワールドの世界では、 日本はポツダム宣言を受諾せず、 地下にもぐりなおも抵抗を続けていた。 今の日本人の在り方を考えさせられるほど とても揺さぶられた作品だった。 描写がとても鮮明。 ぜひ映像化してほしい。 読んで損はない作品。
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おススメされて読んだ本。 現代から5分先の世界は「無条件降伏しなかった日本」の話 各国分割植民地となった日本国地上に日本人はいない。 日本人は地下帝国を築き残り何十万人となった今も応戦する。 現代から迷い込んだ一人の男が、そんな悲惨な5分後の日本で感じる事は。。 ☆マイナスは 戦闘の描写が長い! クレイモア?AK?スティンガー?そんな名称がよくでてくるので、戦闘シーンがより長く感じる! ただ、世界観、登場人物サイコー!サイコ! 大筋が見えた時点からすらすら読めます。 日本男子、読みましょう!泣きましょう!
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主人公の小田桐が、パラレルワールドの日本に迷い込んだところから始まる物語。 ゲリラ戦のリアリティー、現代の日本人は持っていないであろう戦時下の緊張感など、深く書かれた作品で一気に読まされてしまいました。
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2011/01/14 あとがきにのっとって言えば、間違いなく最高の「小説」である。 村上春樹の「読み物」が自己の輪郭を強調させるものなら、五分後の世界は自己をコンバートさせる。映像を見ているかのように、読んでいて強烈なイメージが頭に浮かんだ。
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去年の年末に読んだ。 正直なところめちゃめちゃ面白かったと思う。 兵士がどんな人たちかが分かりきらなかったので、もう少し長く書いて欲しかった。 ペレみたいなケツの人で、超人的な兵士やから、全然死なんのかなぁと思って読んでたし。
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日本が現実の通り、戦争をやめてアメリカの価値観を多く受け入れず、戦い続けていたらどうなったのか?というSFっぽい話ですが、1文の長さ、改行・段落の少なさに、非常に読むのに体力が要ります。 戦争シーンの描写が長く延々と続き、いかにも男子好みの印象。 せっかくの深いテーマですが、あま...
日本が現実の通り、戦争をやめてアメリカの価値観を多く受け入れず、戦い続けていたらどうなったのか?というSFっぽい話ですが、1文の長さ、改行・段落の少なさに、非常に読むのに体力が要ります。 戦争シーンの描写が長く延々と続き、いかにも男子好みの印象。 せっかくの深いテーマですが、あまりにもとっつきにくい。文章よりも映像のほうがいいのかも。
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「敵にもわかるやりかたで、世界中が理解できる方法と言語と表現で、われわれの勇気とプライドを示しつづけること、それが次の時代を生きるみなさんの役目です」 村上龍の問題意識がかなりストレートに描かれている。パラレルワールドという設定も今までになくて面白かった。 surviveという...
「敵にもわかるやりかたで、世界中が理解できる方法と言語と表現で、われわれの勇気とプライドを示しつづけること、それが次の時代を生きるみなさんの役目です」 村上龍の問題意識がかなりストレートに描かれている。パラレルワールドという設定も今までになくて面白かった。 surviveという意味での本能的な生きる(生き延びる)という感覚のなさへの警鐘は他の作品にも共通するけれど、結局のところ、村上龍の書くとおり、一度領土を占領されない限り気づけないのでは、と思えてしまう。
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