ブラームスはお好き の商品レビュー

フランソワーズ・サガン(著者),朝吹登水子(訳者)

2012/09/14

はかなくて虚しくて美しい。
細かな心理描写は、レースを編むよう。
愁いを帯びたパリの情景が目に浮かぶ。

20代の今、きっとポールに共感しきれていない。したくないのかも。

数年後、十年後、十数年後、読み返したい。
そのときの自分は、何を思うのだろう。
そのときまでに、どれくらい自分は変わるのだろう。

2012/08/20

　「悲しみよこんにちは」を読んで衝撃を受けた。みずみずしい文章とはこのような文章かと思った。論理的で理知的な描写を積み上げながら、そこに映し出されるのは論理や理屈では説明できない人間の感情であることに気づく。

　この作品では、一回り以上年下の美男子のシモンと年上の恋人ロジェの間をたゆたう主人公ポールの心模様が描かれている。

　この作品が単なる男女の三角関係を扱ったありきたりな小説になっていないのは、その舞台がパリであり、何よりサガンの文章の美しさからだと感じた。まずは「悲しみよこんにちは」をおすすめする。この作品を十代で描くのは天才以外ありえないだろう

2012/08/20

いつの時代も好まれるのは恋愛なのかな。
そのうち世界史の教科書に載ってたようなものを読みたいと思ってる。

あまりにも、本を読まない空白期間が長過ぎた。
それは必要だったのだけれど。
親になるのなら、反抗しなくてもいいような親になりたい。

気持ちの動きは、そうだよなぁと思えるところが多くて驚いたけれど、今の私なら最終的にそっちは選ばないなぁとも思う。

2012/07/19

フランスの小説家、サガンの恋愛小説です。３９歳の女性が自分の年齢や相手との相性を気にしながらパリで生きている風景を描いた作品です。

登場人物が少なくシンプルなストーリーですが、主人公やその恋人の内省的な描写が秀逸です。悩んでいるシーンが多い割にはさわやかな印象の残る作品でした。

フランスの女性は３９歳と４０歳の間に大きなステップがあるようで（４０まではまだまだ元気な若造といった印象でしょうか）、作中でも主人公が自分の年齢と恋愛の仕方とのギャップを気にしています。

ちなみに、ブラームスの曲は出てきますが、曲自体になにか特別な意味があるわけではなさそうです。

デビュー作「悲しみよ、こんにちは」から４作目、訳のレベルも高く”魅惑的な小悪魔”サガンらしさが良く現れている作品です。

2012/06/20

恋愛小説は苦手なんだけど、サガンのはなぜか好き。
彼女の描く男女は自分の人生をどこか俯瞰してるところがあって
それがとても愛おしくて、共感できるからかもしれない。

2012/11/26

初サガン
癖になりそう……♡

「あなたが人間であることの責任を果たさなかったことで告訴します。この死人の名において、私はあなたが恋をとり逃がし、幸福である義務をないがしろにし、意義のない人生をおくり、あきらめをもってその日暮らしに生きたことにたいして告訴します。あなたは死刑を宣告されるべきです、あなたは孤独を宣告されるでしょう」(P44)

2012/02/06

『悲しみよこんにちは』より好き。年下をたぶらかす年上の女。けど、たぶらかすっていうか、たぶらかしてあげるわ、みたいなそんな雰囲気がめちゃめちゃいい。

2013/03/21

(1971.08.23読了)(1971.08.02購入)
内容紹介
美貌の夫と安楽な生活を捨て、人生に何かを求めようとした三十九歳のポール。孤独から逃れようとする男女の複雑な心模様を描く。

☆関連図書(既読)
「悲しみよこんにちは」F.サガン著・朝吹登水子訳、新潮文庫、1955.06.25
「ある微笑」F.サガン著・朝吹登水子訳、新潮文庫、1958.05.05
「一年ののち」F.サガン著・朝吹登水子訳、新潮文庫、1960.01.15

2012/01/21

孤独、安楽、生活、金、美貌。
恋はしていないけれど、何故か離れることができない彼。
一回りも年下の青年からの熱烈な恋。

40代を目前にした女性の複雑な心はいったい何処に、誰に救いを求め、そして満たされることはあるのか。

アラフォー向け？と思いきや10代の頃の私が読んでも十分に面白いと思えた作品。
女に生まれたからにはぜひ読んで共感して欲しい一冊。
これから迎えるであろう人生の半ばに、サガンを知っているのと知っていないのでは天と地ほどの差がでてくるのでは。

2012/01/08

全体に漂うは孤独。
サガンらしく、男と女がひらりひらりと浮いて消える話である。
皆一様に手に入らぬ願いを持っている。
若者は「愛」だとか「欲」だとか。主人公たちは差し詰め「未来」だろうか。それは手に入らず、皆孤独にふけっていく。

主人公は美しさにかげりさす39歳の女性。

解説してみたい場面はたくさんあったが、冒頭の美しい言葉が気に入ったので一文捧げる。
主人公ポールは、14年前に稲妻に打たれたように突如幸福を体験する。その記憶をうっすら思い出しながら、ポールはあの時の幸福を「果たされなかった約束」と表現する。
「果たされなかった約束」
叶わなかった未来、と言い換えられる。
悲しみや憧れが匂い立つ。なかなか甘美で寂しい言葉だ。

全編この言葉の匂いが支配する。
ポールが静かに、鮮烈な幸福と決別するところから物語は始まる。
最早幸福は空想となり、ポールは欲望を求める残酷で幼稚な恋人のため、皺の寄らぬシーツに耐える。

恋愛とは、叶えられない期待だ。
ポールの幸福と同じ。
私たちは生きているというのに、過去を思って未来を嘆く。
そうして今とは何か。
サガンの世界から答えるなら「孤独」の一文字なのかもしれない。