幸福について-人生論- の商品レビュー
ショーペンハウアーは十九世紀のドイツの哲学者であり『意志と表象としての世界』という浩瀚な哲学書も残している。だが彼の名を世に知らしめたのは『パルエルガ・ウント・パラリポメナ』と題された数々の随想集であった。本書はその中の最大編「処世術箴言(生活の知恵のためのアフォリズム)」の全...
ショーペンハウアーは十九世紀のドイツの哲学者であり『意志と表象としての世界』という浩瀚な哲学書も残している。だが彼の名を世に知らしめたのは『パルエルガ・ウント・パラリポメナ』と題された数々の随想集であった。本書はその中の最大編「処世術箴言(生活の知恵のためのアフォリズム)」の全訳であり、名文家ショーペンハウアーの魅力を余すところなく伝える好著となっている。 ショーペンハウアーは人生の価値を「人のあり方」「人の有するもの」「人の与える印象」の三つに分け、「人のあり方」に絶対的な価値を置く。「大抵の人が自己の本質そのものよりも、他人の頭脳に映じた自己の本質の映像にむしろ関心をもっている」という皮肉は、現代社会でも充分通用するであろう。そして他人の目を気にしない自己が行き着く場所は必然的に孤独の境地となる。「早くから孤独になじみ、まして孤独を愛するところまできた人は、金鉱を手に入れたようなものだ」とショーペンハウアーは言う。 主著『意志と表象としての世界』で「意志の否定」を説いたショーペンハウアーが、あるはずのない幸福を求めて人生訓を語っている。妥協の産物に過ぎない本書を鵜呑みにしないよう注意する必要はあるが、決して嘘が書かれているわけではなく、特に「第五章 訓話と金言」はうなずかされることしきりである。 リズム感あふれる翻訳も素晴らしく、全集版よりもはるかに読みやすい。ショーペンハウアー入門として恰好の書であり、興味を持った読者の手が主著『意志と表象としての世界』へと伸びることを期待したい。
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ショーペンハウアーのパルレガの「処世術箴言」の部分の全訳。原著には「幸福について」という題は無い。 他人に期待しないで、適度にやんなさいよ、という内容だと読みました。
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多少読みにくいが,随所に綺羅星の如く珠宝の言葉多数. 幸福は容易に得られるものではない,幸福をわれわれのうちに見いだすのは至難であり,他の場所に見いだすのは不可能である. 幸福が「われわれのあり方」すなわち個性によってはなはだしく左右されることが明らかである.ところが大抵はわ...
多少読みにくいが,随所に綺羅星の如く珠宝の言葉多数. 幸福は容易に得られるものではない,幸福をわれわれのうちに見いだすのは至難であり,他の場所に見いだすのは不可能である. 幸福が「われわれのあり方」すなわち個性によってはなはだしく左右されることが明らかである.ところが大抵はわれわれの運命すなわち「われわれの有するもの」あるいは「われわれの印象の与え方」ばかりを計算に入れている. 人間の幸福に対する二大敵手は苦痛と退屈である
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頭に思い浮かんだことをダーッとすべて書きなぐったような面白い文章。文章を書きながら思考が猛スピードで止まらずアドレナリンが出ているのが伝わる。凄く独りよがりな感じで、私は結構好きだった。たまにこの没入感に浸る為に手に取ります。
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150年前のドイツの哲学者は、通勤電車に揺られる日本人女性が自分の著作を読む日が来るなんて思わなかったんだろうなぁ。それはさておき、けっこう面白かった。面白かったけど、物語でない本を読むのには時間がかかる。文庫本1冊に1か月以上かかった。ショーペンハウアーの言うことは、細かいとこ...
150年前のドイツの哲学者は、通勤電車に揺られる日本人女性が自分の著作を読む日が来るなんて思わなかったんだろうなぁ。それはさておき、けっこう面白かった。面白かったけど、物語でない本を読むのには時間がかかる。文庫本1冊に1か月以上かかった。ショーペンハウアーの言うことは、細かいところで共感できる。彼が21世紀の日本人だったら、仲良くなれたかもしれない。いや、仲良くはなれないか…。第五章、第六章は、何度か読んでもいいかもしれない。
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終始上から目線、自己中心的な論述であり、何度か叫びながら投げ破りたくなった。 特に哲学が、最も高級な幸福であると自分で言うのはいかがなものか。(他の立場を味わっていないのに) ただ、今後の人生に参考にしたい考え方も多分に含まれていた。 名誉というものは、必ずその窮極の根底において...
終始上から目線、自己中心的な論述であり、何度か叫びながら投げ破りたくなった。 特に哲学が、最も高級な幸福であると自分で言うのはいかがなものか。(他の立場を味わっていないのに) ただ、今後の人生に参考にしたい考え方も多分に含まれていた。 名誉というものは、必ずその窮極の根底においては、道徳的性格が不変なものだという確信の上に基づくものであって、道徳的性格が不変であればこそ、ただ一回でも悪行があれば、その後それと似た状況に置かれた場合のすべての行為がやはり道徳的に見て同じ性質のものであろうという断定がつくのである。 苦悩は積極的なものだが、幸福は消極的なものにすぎない 自分でも自分のあり方よりもましだと思うようなあり方に見られたいと思っているからには、その意味で、気取りは自分が自分で自分にくだす永劫の罪の判決だからである 人の一生はおびえ慄えて縮むほど大事なものではない。
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精神の貧困と空虚とから起きる『退屈』。そこを埋めようと招き入れてしまう『不幸』。 教養を積み、精神の「貧困」を解消する事が真の「富裕」 なによりも、健康に勝る幸福なし。“外部評価を得ようとする『虚栄心』ではなく、内発的な自分自身に対する評価を持つ『誇り』を。” 突き詰めると、『孤...
精神の貧困と空虚とから起きる『退屈』。そこを埋めようと招き入れてしまう『不幸』。 教養を積み、精神の「貧困」を解消する事が真の「富裕」 なによりも、健康に勝る幸福なし。“外部評価を得ようとする『虚栄心』ではなく、内発的な自分自身に対する評価を持つ『誇り』を。” 突き詰めると、『孤独へのススメ』と読めなくもない。。 読後から少し時間が経っても未消化の部分は多いが、心に留めようと貼った付箋の数もまた多い一冊。
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人生とは、幸福とは何かについて。学生時代のおすすめ本だったが気がするが、やっと読んだ。学生時代にはわからなかっただろう価値観かなあ。「他人の生涯に起こった痛快な出来事を羨む人は、そのことの重要性を認め得る才能を持っていると認識すべき」「主観と客観の両面で考えること。景色が美しくて...
人生とは、幸福とは何かについて。学生時代のおすすめ本だったが気がするが、やっと読んだ。学生時代にはわからなかっただろう価値観かなあ。「他人の生涯に起こった痛快な出来事を羨む人は、そのことの重要性を認め得る才能を持っていると認識すべき」「主観と客観の両面で考えること。景色が美しくてもレンズが曇っていれば劣悪なものとなるし、その逆も然り」「ことさらに民族や文化を主張することは、個人の特性に欠けることを表しているようなものだ」
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人は不幸になったら急に過去の平凡な日々を憧れる…つまり、何事もなく終わった一日を幸せと思えるかどうか、これがこの本の要点だったと思います。 視点を変えれば基本的に私たちは幸福な毎日を過ごしていたのですね。
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スミスの本棚で本谷有希子が勧めていて 興味を持って読んだ。 ショーペンハウアーと言えば哲学者だが この本は非常に読みやすい。 幸福に関する考察はとても的を得ているので 目から鱗の箇所が多かった。 彼自身について言えば晩年は幸福ではなかったので、後半は少し陰鬱な感じはあるが多くの事...
スミスの本棚で本谷有希子が勧めていて 興味を持って読んだ。 ショーペンハウアーと言えば哲学者だが この本は非常に読みやすい。 幸福に関する考察はとても的を得ているので 目から鱗の箇所が多かった。 彼自身について言えば晩年は幸福ではなかったので、後半は少し陰鬱な感じはあるが多くの事を学べる本。
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