スローターハウス5 の商品レビュー
トラルファマドール星とWWII・ドレスデン無差別爆撃 あらかじめわかっている星人の過ちにはびっくりした。そこまで諦めてもよかったか。
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ヴォネガット自身が捕虜として体験した、1945年2月13日夜から14日朝に行われた「ドレスデン無差別爆撃」が自伝的に挿入されたお話。 『母なる夜』のキャンベルや、『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』のローズウォーター、『タイタンの妖女』のトラルファマドール星人も出てくる...
ヴォネガット自身が捕虜として体験した、1945年2月13日夜から14日朝に行われた「ドレスデン無差別爆撃」が自伝的に挿入されたお話。 『母なる夜』のキャンベルや、『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』のローズウォーター、『タイタンの妖女』のトラルファマドール星人も出てくる。 そういうところも、ヴォネガットの自伝的な作品なのだと感じる…。 みたいな、前置きはおいておいて。 (だいたい、私は『ローズウォーターさん』も『タイタン』も未読なのだ。読みたいと思っているけど!先にこっちを読んでしまった。) ドレスデン無差別爆撃のちょうど71年後の夜に、私はこれを読み終わった。 睡眠時間を削って。 主人公のアメリカ人捕虜ビリー・ピルグリム。 ドイツを移送されて行くアメリカ人捕虜、イギリス人捕虜、ロシア兵、ドイツ兵、ドレスデンの「屠殺場5号」、生々しく語られていく戦争体験なはずなのに、いつものヴォネガットのトーンで、良いも悪いも存在しない。そしてひたすら繰り返される「そういうものだ。」という言葉。 四次元を理解するトラルファマドール星人。 そういうものだ。 人生の様々な時間を、琥珀のように切り取ってみせられるなんて、うつ状態にならずにおれない。 そういうものだ。 四次元や、トラルファマドール星人のことを考えなくたって、本当は知っている。 「そういうものだ。」 【私的メモ】 読んでいる間、私の頭が一番混乱していた頃、入院していた時のことを強烈に思い出した。 認知症初期段階の人のことも思い出した。 前後の脈絡なく、切り取られた過去に吹っ飛ばされて、混乱して泣いている私たち。 未来も過去も混ざって、今を見失って混乱している人たち。 「退院したいなら、退院をあきらめることさ。そしたら良くなったように見えるんだ。」と言う、アルコール依存のおっちゃん。 うまく理解できなかったその言葉を、今なら理解できると思った。 「そういうものだ。」という言葉とともに、起きた事・あったもの全てを、良いとか悪いとかに分類せず「そういうものだ。」と受け入れ、もしくは受け流す。 私の中を通過していく時間。 私が通り過ぎた(過去か未来かはわからないけれど)出来事。 それはただただ、琥珀に閉じ込められた虫の一瞬。 琥珀に閉じ込められたことに気付かず息ができない私たちも、次の琥珀の中ではやっぱり違う何かに直面して泣いているかもしれない。 ただ、そういうものなのだ。 人生自体が、そういうものなのだ。 だから私は、『スローターハウス5』に救われた。
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内容 時の流れの呪縛から解き放たれたビリー・ピルグリムは、自分の生涯の未来と過去とを往来する、奇妙な時間旅行者になっていた。大富豪の娘と幸福な結婚生活を送り……異星人に誘拐されてトラルファマドール星の動物園に収容され……やがては第二次世界大戦でドイツ軍の捕虜となり、連合軍によるド...
内容 時の流れの呪縛から解き放たれたビリー・ピルグリムは、自分の生涯の未来と過去とを往来する、奇妙な時間旅行者になっていた。大富豪の娘と幸福な結婚生活を送り……異星人に誘拐されてトラルファマドール星の動物園に収容され……やがては第二次世界大戦でドイツ軍の捕虜となり、連合軍によるドレスデン無差別爆撃を受けるピリー。時間の迷路の果てに彼が見たものは何か? 著者自身の戦争体験をまじえた半自伝的長篇。 -------------------------------
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人が過去を思い返す時、全てが順序立てて思い返されるわけではないよなと読んでいて思いました。自身の過去を振り返ることは、自分の物語を紡ぐようなことかなと感じます。 自分がおじいちゃんになって、ロッキングチェアーに揺られながら孫を飽きさせずに人生を語れるようになれてたら最高です。
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so it goes. so it goes. 面白くてそして鬱になれるという稀有な本。 確かにこれは名作である。
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著者の戦争体験を時間旅行の中に組み込むことによってより戦争の悲劇が浮き彫りになる。繰り返される「そういうものだ」という言葉はこの世の悲劇をなきことにしてはならないというメッセージなのか。
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SFの体裁を借りた第二次世界大戦のドレスデン爆撃を軸に語られる反戦小説。戦争が終わって10年経っただけで、平和な社会がやってきて、日常と非日常と悲劇と喜劇が前触れもなくやってくるという、唐突だけど実際に経験したらきつことが物語として上手く機能しています。戦後10年経って裕福になっ...
SFの体裁を借りた第二次世界大戦のドレスデン爆撃を軸に語られる反戦小説。戦争が終わって10年経っただけで、平和な社会がやってきて、日常と非日常と悲劇と喜劇が前触れもなくやってくるという、唐突だけど実際に経験したらきつことが物語として上手く機能しています。戦後10年経って裕福になってゴルフをしている昼間の意識が、死と飢えと不衛生に塗れた戦場にいきなりタイムスリップするなんて確かにエグイ。つまり忘れるな、それは実際にあったこと、みたいに伝えたかったんでしょうかねぇ、ヴォネガットは。その中にも割と登場人物たちは百年の孤独のような道化的性格の人が多く、ユーモラスも十二分に加えられています。不幸なことは見ないようにする、という生き方もなるほどね、と。悲劇はなかったことにできない、タイムトラベルすれば今として耐え忍ばなければならない。ヴォネガットが昇華したかった戦争の記憶を見たような気がしました。
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『ビリー・ピルグリムは時間から解き放たれ、自身の過去や未来に"けいれん的に"時間旅行することができた。ある時は第二次世界大戦でドイツ軍の捕虜になり、ある時は大富豪の娘との幸福な生活を送り、またある時は異星人の動物園に収容され……。著者の戦争体験を交えて描く、半...
『ビリー・ピルグリムは時間から解き放たれ、自身の過去や未来に"けいれん的に"時間旅行することができた。ある時は第二次世界大戦でドイツ軍の捕虜になり、ある時は大富豪の娘との幸福な生活を送り、またある時は異星人の動物園に収容され……。著者の戦争体験を交えて描く、半自伝的SF。』 わかりにくかった。 そういうものだ、と受け取ります。
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ドレスデン爆撃を語るためにビリー・ピルグリムの人生を断片的に描写している。これらの生き様、そして哲学こそが爆撃によって作者に生じた死生観なんだろう。 死は悲劇ではなく、いつでも会える。運命は変えられない。そういった思想がビリー・ピルグリムとトラルファマドール星人から語られる。 ...
ドレスデン爆撃を語るためにビリー・ピルグリムの人生を断片的に描写している。これらの生き様、そして哲学こそが爆撃によって作者に生じた死生観なんだろう。 死は悲劇ではなく、いつでも会える。運命は変えられない。そういった思想がビリー・ピルグリムとトラルファマドール星人から語られる。 祈りの言葉 「神よ 願わくばわたしに、変えることのできない物事を受け入れる落ち着きと、変えることのできる物事を変える勇気と、その違いを常に見分ける知恵とをさずけたまえ」 ヴォネガットの小説は「猫のゆりかご」「タイタンの妖女」に次ぐ三冊目。どれも人生を俯瞰的に見てシニカルかつユーモア語り口が魅力的。傑作だった。
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20150304 ヴォネガット。すごく久しぶり。まだわからない。読んだだけではダメなのだろうか?かんがえすぎなのか。
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