スローターハウス5 の商品レビュー
アメリカ60年代の作品のはず…。浮遊する精神。ヴォネガットのSF要素。極めて斬新な宇宙人の哲学。ピース。
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これも再読。 一回目より面白く読めた。自分はあんまり鋭い読者ではないから、面白さが分かるのに時間がかかる…。 トラルファマドール星人的な時間進行でヴォネガットさんのドレスデン空襲体験が語られる。時間が何回も遡ったり進んだりするけど、「ええと、これはいつの話だったけ?」てならない...
これも再読。 一回目より面白く読めた。自分はあんまり鋭い読者ではないから、面白さが分かるのに時間がかかる…。 トラルファマドール星人的な時間進行でヴォネガットさんのドレスデン空襲体験が語られる。時間が何回も遡ったり進んだりするけど、「ええと、これはいつの話だったけ?」てならないのは各時代に登場するわき役たちがとても印象的だからだと思う。 とくに憎たらしい登場人物たちは、本当に憎たらしく、でもどこか滑稽に書かれているので、読んでる途中に忘れてしまうことはなかった。 あと、ローズウォーターやキルゴアトラウトとか、他のヴォネガットさんの小説に登場してた人物がたくさん出てくるのも少し嬉しかった。 この話の中には(戦争の話だから)様々な死の話が出てくるけど、それらがすべて「そういうものだ」という言葉で締めくくられているのが印象的だった。悲しい死に方も、間の抜けた死に方も、イエスの死まで、すべて最後は「そういうものだ」という文章で終わっている。 たぶん、序盤で主人公が語っているように、「大量殺戮を語る理性的な言葉など何ひとつないから」なのだと思う。 そして、物語の最後は「プーティーウィ?」という鳥の鳴き声で終わる。 それにしても「トラルファマドール星人的に言うと、…」っていうジョークを一回言ってみたい。機会があればいいけど。
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【僕の勝手な解釈であり感想】 小説の主人公であるビリーピリグリムは著者のカートヴォネガットであり、 ヴォネガットは戦争によって、もしくは戦争とは程遠いが戦争がもたらした理不尽な死 そして妻の死、自分の死に対してまでも 受け入れようと していたのが すごく悲しい。 この小説には ラ...
【僕の勝手な解釈であり感想】 小説の主人公であるビリーピリグリムは著者のカートヴォネガットであり、 ヴォネガットは戦争によって、もしくは戦争とは程遠いが戦争がもたらした理不尽な死 そして妻の死、自分の死に対してまでも 受け入れようと していたのが すごく悲しい。 この小説には ランボーのような筋肉ムキムキでかっこいい軍人も グリーンデイのPVみたいなロマンチックドラマも 書いてない 出てくるのは、薄い粥のようなウンコをもらしたり、 歯が一個も無かったりするひと。 僕の周りに(僕自身)いる人が出てきて、 そのほとんどが、意味も無く、 一瞬で死んでいく。 だからまた悲しくてでも、それを受け入れようとしているビリーの「そういうものだ。」がまた悲しい その深い悲しさをヴォネガットは言いたいんだと思う 【そんな小説でいいと思った言葉】 神よ願わくばわたしに変えることのできない物事を 受け入れる落ち着きと 変えることのできる物事を変える勇気と その違いを常に見分ける知恵とをさずけたまえ 【恥ずかしながら】 小説を読んでこんなに笑ったり泣いたりしたのは初めてです
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小説冒頭で作者登場!この小説を書き上げる経緯や苦悩を切々と語る。第2章からやっと物語が始まったと思いきや、主人公ビリー・ピルグリムは時間に解き放たれる!時間旅行者ビリーは、自分の人生のあらゆる場面をアトランダムに訪問する。自分でコントロールすることはできない。そして、ついに彼は、...
小説冒頭で作者登場!この小説を書き上げる経緯や苦悩を切々と語る。第2章からやっと物語が始まったと思いきや、主人公ビリー・ピルグリムは時間に解き放たれる!時間旅行者ビリーは、自分の人生のあらゆる場面をアトランダムに訪問する。自分でコントロールすることはできない。そして、ついに彼は、トラファマドール星人に誘拐されて、トラファマドール星の動物園に入れられて、見世物にされるのだ!彼の見ている世界は本当なのか(SF)、それとも戦争体験のトラウマによる幻覚なのか。小説が終わってもなお、彼は自分の誕生日を、死を、戦争場面を、そしてトラファマドール星を巡礼(ピルグリム)し続けるのだ!「そういうものだ」 (九州大学 大学院生)
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失望、あきらめ、大人、優しさ、を強く感じた。「そういうものだ(So it gose)」ということばに、この4つが言い表されている感じ。戦争のことを、本で読んだり映画で見たりして知識やイメージは持っていても、実際に体験した人は「知ったような顔するな」って思うんだろうなぁ。 『「お...
失望、あきらめ、大人、優しさ、を強く感じた。「そういうものだ(So it gose)」ということばに、この4つが言い表されている感じ。戦争のことを、本で読んだり映画で見たりして知識やイメージは持っていても、実際に体験した人は「知ったような顔するな」って思うんだろうなぁ。 『「おやすみ、アメリカのかたがた」と、彼はドイツ語で言った。「ぐっすり眠りなさいよ」』
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書き手によっては相当に難解で分かりづらくなる設定とストーリーなのに(実際、この表題作に対する一般的な評論とかを見ると、さぞや敷居の高い作品に思えてしまうw)、とても明快で簡潔な読み心地なのです。 これを読んで以来、作品そのもの以上に、ヴォネガットその人に強烈に心を魅かれていますv...
書き手によっては相当に難解で分かりづらくなる設定とストーリーなのに(実際、この表題作に対する一般的な評論とかを見ると、さぞや敷居の高い作品に思えてしまうw)、とても明快で簡潔な読み心地なのです。 これを読んで以来、作品そのもの以上に、ヴォネガットその人に強烈に心を魅かれていますv ユーモアとウイットは、真摯に人生をとらえる人にほど似つかわしく、必要なのなのだと、再発見した気がします。
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「ドレスデン空爆」を取り扱った作品と云うことで読み始めた作品ですが、内容は驚く程に軽妙。 かえってそれが悲劇性をもたらしているような気がします。 昔見た、岡本喜八監督の「血と砂」も喜劇から悲劇へと変わっていく方法で、観終わった後、やるせない気持ちになった記憶が…。 (そういえば...
「ドレスデン空爆」を取り扱った作品と云うことで読み始めた作品ですが、内容は驚く程に軽妙。 かえってそれが悲劇性をもたらしているような気がします。 昔見た、岡本喜八監督の「血と砂」も喜劇から悲劇へと変わっていく方法で、観終わった後、やるせない気持ちになった記憶が…。 (そういえば、この監督も兵役の経験があったのでは?) しかし、この作品の救いのある所は、 「人生のよい部分だけを見ていけばいい」 その部分が本当に救い。 後、キルゴア・トラウトの小説のあらすじでしょうか。 かなりブラックで笑えました。
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この小説を読むと、無力感に襲われる。 だけど、その無力感は、そんなに不快ではない。気持ち良いくらいだ。 自己が肥大した窮屈な(自殺したくなるような)想いを、吹き飛ばしてくれる。 自分が思うほど、自分は大きくない。宇宙は広く、自分は小さい、そしていつも風が吹いてる。そういうものだ。...
この小説を読むと、無力感に襲われる。 だけど、その無力感は、そんなに不快ではない。気持ち良いくらいだ。 自己が肥大した窮屈な(自殺したくなるような)想いを、吹き飛ばしてくれる。 自分が思うほど、自分は大きくない。宇宙は広く、自分は小さい、そしていつも風が吹いてる。そういうものだ。それを楽しみたい。
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ヴィネガットのユーモアには何度助けてもらったことか。どんなときだって笑いがあれば何とかなります。どんなにネガティブな自分も、弱い自分も、絶望も、孤独も、不安も、恐れも、笑いに変える力をくれます。あれこれ細かいことは笑ってから考えたっておそくはないです。
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適当に考えたことを。。 普通小説というものは、「時間性」がある程度固まっているものなのよね。小説ってのは24時間すべてを記録したものではなく、ある程度恣意的に、線的な時間の中で組み立てられたものが大半。あとは小説構成上、作者によってある程度大きな枠組みで区切られて、前後すること...
適当に考えたことを。。 普通小説というものは、「時間性」がある程度固まっているものなのよね。小説ってのは24時間すべてを記録したものではなく、ある程度恣意的に、線的な時間の中で組み立てられたものが大半。あとは小説構成上、作者によってある程度大きな枠組みで区切られて、前後することがある程度。 まぁつまり小説の中での時間の概念というのは、ある程度メタ的なのです。そこは作品のものではなく作者によるもの。小説の中の時間性はメタ=作者の介在の大きな証左なのだな。 ところがこの小説では、その時間性が「物語の中で」機能している。ビリーは自ら選択して時間を前後させる。もちろんそれは読み手にもアナウンスされるけど。そうすることによって「時間の不可逆性」っていう事実を薄め、時間の並列っていうゾーンにまで引っぱる。並列させると今度は、不可避なものとしての死さえ意味のないものになる。トラファマドール星人の言う「永遠」はまさにこのこと。何も生まれないし誰も死にはしない。 そんな中では進歩それ自体だって無意味だ。成長とか拡大とかそんな膨張主義には何の意味もない。前に進んでいるつもりになって色んなものを生み出し、スクラップアンドビルドを続け、成長だの進歩だの月面を歩いただの核実験に成功しただのと、嬉々として語る僕らに対する、強烈な皮肉。 それが人類進歩の歪みである戦争の経験によるものだってのもこれまた皮肉。 忘れてはいけない、これは読み手以外の何物かへのアイロニーじゃなく、今ここに生きているあらゆる人類の、進歩へのまなざしに向けられたものだってことを。
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