スローターハウス5 の商品レビュー
とにかく上手くてずしりとくる小説は何かと言われれば、 ヴォネガットを読めとしか言いようがない。 『スローターハウス 5』 ようやく読了。 短編は兎も角として、長編小説は上手い小説が必ずしもベストだとは限らない。 長編小説を書くには、作家の思想だったり哲学だっ...
とにかく上手くてずしりとくる小説は何かと言われれば、 ヴォネガットを読めとしか言いようがない。 『スローターハウス 5』 ようやく読了。 短編は兎も角として、長編小説は上手い小説が必ずしもベストだとは限らない。 長編小説を書くには、作家の思想だったり哲学だったり、ある種の覚悟といったもの否応なく求められるからだ。 その種の揶揄の対象となってきたのが、村上春樹だったり谷崎潤一郎だったり、或いは余裕派とくさされたあの漱石だったりする。 私見は別として。文学史的評価として。 一方で悪文を誹られながらもその思想性において、読者を獲得していった作家にドストエフスキーや大江健三郎がいる。 私見は別として。文学史的評価として。 何が言いたいかと言えば、要するに、余りにも簡単なことだけれど、長編小説はハードルが高いと言うことだ。 有史以来の数千年、星の数ほどの物語が産み落とされて、真に傑作と呼べる作品が幾つ在るだろうか。 長編小説とは即ち人間の精神性そのものであり、問題を孕んでいない作品などは存在し得ない。 逆に言えば、問題を孕んでいるからこそ、魅力があり、それぞれの人間にそれぞれの一冊があるのだと言えるのだろう。 僕の最も好きな作品は、『不思議の国のアリス』と言う永遠の例外を除けば、現時点でヴォネガットの『ローズウォーターさん あなたに神のお恵みを』になる。昨年読んだ。ヴォネガットは読み始めてまもない作家であり、まだ読んでいないヴォネガットの著作がいくつもあることは、惨めな生涯に残された数少ない希望である。 が、一般的に『ローズウォーター・・』はヴォネガットの最高傑作とは言い難い作品であることも間違いないだろう。『ローズウォーター』はあくまで僕の個人的な経験に基づく好みであり、ヴォネガットの最高傑作は『タイタンの妖女』か、この『スローターハウス 5』であると言うのが衆目の一致するところである。僕も異存はない。 『スローターハウス 5』は極めて優れた作品である。 まず、構成とユーモアがめっぽう上手い。極めて優れた短編小説でしか味わえない、飛躍、諧謔、或はトリックとも言える技巧がぽんぽんと飛び出てくる。文章を書くと言う病に取り憑かれた人間にとって、これほど勉強になる作家はいない。 そして、思想が簡潔にして明瞭である。 この物語の思想は次の通りである。 僕らは常に過去を生き続けているし、また常に未来を生き続けている。常に死に続けているし、常に生まれ続けている。人生の最良の時を見続けることが出来れば、幾分安らかに時を過ごせるだろう。 しかしそれが真実だったとして、何が救われるということではない。 (使いたくはないが) 「そういうものだ。」 この言葉にどれほどの説得力と諦めに似た諧謔があるのかは、小説という形でしか表し得ないだろう。 ーーロックンロールは、別に俺たちを苦悩から解放してもくれないし、逃避させてもくれない。ただ、悩んだまま躍らせるんだ。 とピート・タウンゼントは言った。 音楽は染める。 しかし文学は蝕む。 錆が鉄を駄目にするように。 幾ら音楽が有効なトランキライザーとは言え、文学の毒性が必要不可欠な理由はそこにある。
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ポップなフィリップ・K・ディックなような気もする感慨深い作品。 そういうものだと言わざるを得ない苦悩。 広島については、日本人には少ししっくりこない感じが。 逆にドレスデンについて、 日本人がどれだけ知っているのかということだが。
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ドレスデン空爆を軸に、シニカルに淡々と語られる過去と未来を行き来する旅が愉しい。それと同時に人の死のたびに繰り返される「そういうものだ」という言葉の裏にある諦念にも圧倒される。戦争体験という語り得ぬものを語ろうとする反戦小説でもあるのかね。
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時間軸、概念、おしゃれな言葉。著者の得意とするところだろうし、それが読者に心にグイグイ刺さるんだろう。そういうものだ
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主人公は過去、現在、未来を行き来できるようになったという設定なので急に話が飛ぶ? 文は読みやすかったのですが一瞬自分もどこにいるのか分からなくなったな…
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主人公ビリーが深夜映画で空襲を逆向きに見る場面が美しい。寓話的な、でも真逆のような。 トラファマドール的にはひとはどれほど死にきっているように見えようと、我々は永遠にいき続ける。 そういうものだ、というようにすべてはもう決まっている。 わたしはそれにスッキリと解釈をあたえられなか...
主人公ビリーが深夜映画で空襲を逆向きに見る場面が美しい。寓話的な、でも真逆のような。 トラファマドール的にはひとはどれほど死にきっているように見えようと、我々は永遠にいき続ける。 そういうものだ、というようにすべてはもう決まっている。 わたしはそれにスッキリと解釈をあたえられなかったけど。 映画ではグレン・グールドのバッハが流れるらしく、それもみたいな。
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「『スローターハウス』シリーズの1~4巻がどこを探しても見つからない…」と思っていた人、恥ずかしくないから手を挙げなさい!(笑)大丈夫です、シリーズものじゃないです。『5』まで含めて作品名なんです。
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フィクションで間違いないが、ビリー・ピルグリムは間違いなくドレスデン空襲を経験した作者。KVらしいSF劇場と戦争描写の交錯は面白かった。
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日本の小説を読んでいてもたまーにでてくる「そういうものだ」というフレーズ。 この言葉だけを聞くと「まぁしょうがないよね」「そういう運命なんだよ」といった諦めちゃった的印象を持ってしまうが、諦観の裏にある優しさなり美しさには心惹かれるものがある。
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So it goes. 「そういうものだ」 「神よ願わくばわたしに変えることのできない物事を受け入れる落ち着きと、変えることのできる物事を変える勇気と、その違いを常に見分ける知恵とをさずけたまえ」 everything was beautiful,and nothing hu...
So it goes. 「そういうものだ」 「神よ願わくばわたしに変えることのできない物事を受け入れる落ち着きと、変えることのできる物事を変える勇気と、その違いを常に見分ける知恵とをさずけたまえ」 everything was beautiful,and nothing hurt.
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