スローターハウス5 の商品レビュー
相変わらずの荒唐無稽 良いなぁ~! ヴォネガットさんの、確固たるメッセージがありながら、 そのメッセージをSFという手法で薄めるやり方がすごい好きです 直接語られた言葉ほど陳腐なものもありません ユーモアの陰に大切な事が散りばめられた素敵な本でした
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こんなことを言っては元も子もないのですが、とても面白い作品です。 構成や着想は当然ながらヴォネガット的で、ブレがありません。そして他の作品にも登場するあの人やこの人もいます。 途中、この作品のリズムに乗り切れず、ちょっと放棄しかけたのですが、「写真がトラルファマドール的である」と...
こんなことを言っては元も子もないのですが、とても面白い作品です。 構成や着想は当然ながらヴォネガット的で、ブレがありません。そして他の作品にも登場するあの人やこの人もいます。 途中、この作品のリズムに乗り切れず、ちょっと放棄しかけたのですが、「写真がトラルファマドール的である」ということを理解できたとき、すんなり読めるようになりました。 ドレスデン爆撃に関する記述を読んでいると、心が内側から削られるようでした。東京大空襲みたいな感じだったのでしょうか。ヴォネガットにとって人生を左右するほど重要なファクターだと思いますが、他の部分と同様、非常にドライに描かれています。ただ少し、感傷的にはなっていますが。こういう、消そうとしても匂い立ってくるもののある作品が、個人的には好きです。
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『タイタンの妖女』以来、2冊目のヴォネガット。『タイタンの妖女』を読んだのが確か高3だからかなり久しぶり。ヴォネガットらしい(といっても記憶が曖昧だけど)あっちへ行ったりこっちへ行ったりというストーリー展開は、とてもじゃないけど頭の中でプロットが整理できない。でも、読んでいて心地...
『タイタンの妖女』以来、2冊目のヴォネガット。『タイタンの妖女』を読んだのが確か高3だからかなり久しぶり。ヴォネガットらしい(といっても記憶が曖昧だけど)あっちへ行ったりこっちへ行ったりというストーリー展開は、とてもじゃないけど頭の中でプロットが整理できない。でも、読んでいて心地いい。それにしみったれた教訓話ってわけでもない。もちろん、幾度と無く「そういうものだ」って文中に出てくるように、物事をあるがままに受け入れるという姿勢は、この本の一種の教訓なのだろうけど。まぁ説教臭くないから良し。これを機に、近いうちにまたヴォネガット本読もうかな。
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この著者の作品の中では一番自分の肌に合った作品。 世界を斜めに見まくってる感がすごいです。 そんな中でもこの作品には心のどこかから切なくさせられました。 未だにその震源は確かめられてないですが。
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カート・ヴォネガットの半自伝的反戦小説で、戦争の悲惨さがユーモアとSF的展開で描かれている。生々しい表現は使われていないけど、ユーモラスな語り口だからこそ余計にその裏にあるやるせなさとか哀しみが際立っている。 この小説の中では悲惨なことが起こる度に"そういうものだ&qu...
カート・ヴォネガットの半自伝的反戦小説で、戦争の悲惨さがユーモアとSF的展開で描かれている。生々しい表現は使われていないけど、ユーモラスな語り口だからこそ余計にその裏にあるやるせなさとか哀しみが際立っている。 この小説の中では悲惨なことが起こる度に"そういうものだ"という台詞が出てくる。人はあまりに残酷な現実をつきつけられると、なんでこんなことが?とかなんで私が?とかって考えてしまうけれどそこには理由なんてひとつもないということだと思う。過去は勿論現在も未来も変えられない。物事を受け入れる落ち着きというよりもはや諦め。人生の良い時だけを眺めて生きよという言葉は、本当の不条理に遭遇したヴォネガットがそれでも生きるためにたどり着いた境地なのかもしれない。
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文体が好きだ。 現代の巨大な力に、ユーモアで応じようとするところ。 カラマーゾフの兄弟では、「足りない」。 「すてきなうそ」をつかないと、生きてくのがいやになっちゃう。 村上春樹的。「そういうものだ」 (オーウェルは、まじめすぎると思う) タイタンの妖女もそうだけど、...
文体が好きだ。 現代の巨大な力に、ユーモアで応じようとするところ。 カラマーゾフの兄弟では、「足りない」。 「すてきなうそ」をつかないと、生きてくのがいやになっちゃう。 村上春樹的。「そういうものだ」 (オーウェルは、まじめすぎると思う) タイタンの妖女もそうだけど、未来がどうだろうが、今の自分を受け入れるみたいな、諦観的なところが、一貫して描かれている。 自由意志、にこだわる人をあざけるかのような。 ヴォネガット自身、トラルファマドール星人なのかもしれない。
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名前だけは聞いたことのあるヴォネガット氏の代表作。なかなか読む気になれなかったのですがこの間タイタンの妖女を読んで面白かったので読んでみました。読んでいて作者の達観と言うか諦観のようなものを感じました。ものすごいシニカルな本だなあと思いましたが何となく考えさせられる本でした。 ...
名前だけは聞いたことのあるヴォネガット氏の代表作。なかなか読む気になれなかったのですがこの間タイタンの妖女を読んで面白かったので読んでみました。読んでいて作者の達観と言うか諦観のようなものを感じました。ものすごいシニカルな本だなあと思いましたが何となく考えさせられる本でした。 人間なんて卑小な存在に運命を変えるとか未来を変更するとか世界を改変するとかそんな力があるものなのか?人の命は世界より重いなどと言いつつ戦争が起きる。人の命が何の意味もなく失われていく。人は死ぬ。そういうものだ。 この話を読んで大学の時に受けた経済学の講義を思い出しました。 「人はパンのみに生きるにあらず」とありますが人はパン(食糧)が無くては生きていけない。それを重々承知でだからこそパンのみに生きないのだ、という決意の表れなのだ、と教授が熱弁しておりました。表現と主旨は違いますがそれと同じことを言っているような気がしました。 いかに人が卑小な存在でもその未来に絶望するでもなく、自分の運命をきちんと生きること。そして世界はきっと変えられると言う希望。そんなものを漠然と感じました。 まあでも時々鼻につく感じですね、「そういうものだ」は。So it goes が原文らしいですが訳って難しいものですね。そしてシンデレラの劇に出た人は多分フェアリーゴッドマザーだと思うのです。シンデレラの魔法使い役で良かったんじゃないかなあ。
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第二次大戦時ドイツに対して行われた、死者3万とも15万人とも言われるドレスデン爆撃。ヴォネガット自身も街の85%が破壊されたその余波を目撃しており、その体験を何とか語ろうとして語り切れなさを露呈したまま終わるのが何ともいたたまれない。SF小説の体裁を取りながらも登場人物は著者の過...
第二次大戦時ドイツに対して行われた、死者3万とも15万人とも言われるドレスデン爆撃。ヴォネガット自身も街の85%が破壊されたその余波を目撃しており、その体験を何とか語ろうとして語り切れなさを露呈したまま終わるのが何ともいたたまれない。SF小説の体裁を取りながらも登場人物は著者の過去の作品からの引用だし、プロローグやドレスデンでの体験は半自伝的でもある。となると、本書のSF要素でもある時間旅行は過去の追憶のメタファーか。So it goes(そういうものだ)、死者に対してこれ以上の言葉は、きっと嘘になる。
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主人公のビリー・ピルグリムは、けいれん的時間旅行者。異星人との接触により、時間のなかに解き放たれた彼は、自らの生涯の過去と未来をランダムに行き来します。 ある時は大富豪の娘との幸福な結婚生活を楽しみ、またある時は、異星人に誘拐される時間を振り返る。自らの死をも体験する時間旅行のな...
主人公のビリー・ピルグリムは、けいれん的時間旅行者。異星人との接触により、時間のなかに解き放たれた彼は、自らの生涯の過去と未来をランダムに行き来します。 ある時は大富豪の娘との幸福な結婚生活を楽しみ、またある時は、異星人に誘拐される時間を振り返る。自らの死をも体験する時間旅行のなかで、彼は、第二次世界大戦下、ドイツ軍の捕虜となり、連合軍によるドレスデン無差別爆撃攻撃を経験します。 一連の時の迷宮をさ迷う果てに彼が見たものとはなにか… 本書は、著者自身の戦争体験をまじえた半自伝的作品です。 物語の中心は、やはりドレスデンでの戦争体験。そこで起こる描写の数々は、著者が現実に経験した出来事なのでしょう。 読んでいてまっ先に感じたことは、この小説に登場する人物には感情が見当たらないということ。感情というよりも、意志の方が正しいのかもしれない。いづれにせよ、ただ淡々と配役をこなしている印象を受けた。 著者にしても、ビリーに自らを投影して当時の思いを吐露するというのではなく、観客席に座って本公演を鑑賞し、かつての出来事を冷静に顧みている─そんな姿が目に浮かんだ。 一方、ビリーからは「人生とはそういうものだ」という達観した態度が見られた。 すべての時間を往来する彼だからこそ到達できるポリシーなのかもしれないが、実は、この不条理な出来事に対する諦観やペシミズム的な姿勢こそが本書の主題だと思う。 そう考えると、末尾にて紹介する作中の言葉は、そんな厭世観のなかで生きる希望を、読者(若しくは著者自身)のために表現したように思える。 ただ、その希望はどこかで現実味がなく、夢かまぼろしのように儚く感じられてしまうのは、著者が狙った皮肉なのだろうか… うーん。 著者といえば「タイタンの幼女」とか「猫のゆりかご」とか有名な作品が他にもあるのに、なぜ初読をこの自伝的小説に選んだのか、自らの選択に少し疑問。自伝って、ある程度その作者の作品を読みとおした果てに、回顧と発見の意味を含めて読むのがセオリーなのに… しかし、著者のどこか達観した姿勢と書きぶりは、なかなか癖になりそうだ。 ▼以下、作中で特に記憶に残った言葉。その希望は、燦然と輝くのではなく、虚ろに燃える灯のように儚い。 「神よ願わくばわたしに変えることのできない物事を受け入れる落ち着きと、変えることのできる物事を変える勇気と、その違いを常に見分ける知恵をさずけたまえ」 「幸福な瞬間だけに心を集中し、不幸な瞬間は無視するように-美しいものだけを見つめて過すように、永劫は決して過ぎ去りはしないのだから。」 「一瞬一瞬は数珠のように画一的につながったもので、いったん過ぎ去った瞬間は二度と戻ってこないという、われわれ地球人の現実認識は錯覚にすぎない。」
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友人のすすめで読んでみました。。作者のヴォネガット氏の戦争体験と空想的逸話をつなげた不思議な感覚の小説でした。 第二次世界大戦末期の頃、東京大空襲の少し前あたりでしょうか、ドイツの都市ドレスデンで連合軍による無差別攻撃が行われ、短期間に都市は壊滅しました。その同じ年に広島に落とさ...
友人のすすめで読んでみました。。作者のヴォネガット氏の戦争体験と空想的逸話をつなげた不思議な感覚の小説でした。 第二次世界大戦末期の頃、東京大空襲の少し前あたりでしょうか、ドイツの都市ドレスデンで連合軍による無差別攻撃が行われ、短期間に都市は壊滅しました。その同じ年に広島に落とされた原子爆弾に匹敵するような犠牲者が出た悲惨な出来事だったようです。この小説は1960年代に刊行されましたが、初めのタイトルは「屠殺場5号」となっていたようです。これは主人公のビリー・ピルグリムが捕虜として連れていかれた建物の住所です。ビリー・ピルグラムは次の行先をみずからコントロールする力のない「けいれん的時間旅行者」という設定なので、自分の誕生と死を何度も経験しています。そのため、このスローターハウスに連れていかれた時もこの先起こる悲惨な出来事がすでにわかっているのでした。 この時間旅行という概念とユダヤ人のアウシュビッツの強制収容所と重なるような残虐な行為の記述は、タイムマシン物が流行ったこの頃の年代が持つ特有の回想に加え、「夜と霧」や「アンネの日記」それから「収容所列島」など、戦争に関連した文学に触れた昔の記憶が甦るものでした。それだけに若い頃に読んでいれば、もっと鋭敏な感性で読むことできたのにと思いました。 ビリーはさらに驚くべきことに空飛ぶ円盤で連れ去られ、地球からはるか遠く離れた星に住むトラルファマドール人たちとも交流を持ちます。この異星人たちも何故か懐かしい宇宙人たちで、その姿は言わずと知れた全身緑色なのでした。 この異星人たちから彼は貴重な時間に関する考え方を学びます。それは戦争や災害など不条理な場面で地球人が口にする「どうして?や・・何故・・?」の言葉を打ち消すものでした。・・時間は決して変わることはない。予告や説明によって、いささかも動かされるものでない。それはただあるのだ。という一文を目にして脳裏を去来するものがありました。 それは、東日本大震災で生き残った方たちは、どうして自分だけが助かったのだろう・・とか何故あの人が死ななくてはならなかったのか・・など何度も反芻していることです。この小説で繰り返される不条理な場面には、その度に何度も何度も「そういうものだ」という決まり文句が出てきます。 私たちにはどうすることもできない、大いなる神の意思ともいうべき圧倒的な現実が目の前にあるとき、こうした乾いた情念が人を我に振り返らせるきっかけになるのでしょうか。「そういうものだ」とただつぶやくことで・・
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