海の向こうで戦争が始まる の商品レビュー
戦争と祭りは、平常の規範を一時中断することであり、真なる力の噴出であって、同時にまた、老朽化と言う不可避な現象を防ぐための唯一の手段である。祭りの行われぬ間、また平和の時代においては、物事は皆重苦しく動きの鈍いものとなり、動きのとれぬ状態、あるいは死へ向かってゆく。それは逆に戦争...
戦争と祭りは、平常の規範を一時中断することであり、真なる力の噴出であって、同時にまた、老朽化と言う不可避な現象を防ぐための唯一の手段である。祭りの行われぬ間、また平和の時代においては、物事は皆重苦しく動きの鈍いものとなり、動きのとれぬ状態、あるいは死へ向かってゆく。それは逆に戦争と祭りは、いろいろな屑や粕を取り除き、虚構の価値を清算し、本源的なエネルギーの源へとさかのぼる。
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海辺で出会った女が僕の目に映る町を見て、海の向こうの町の3人の少年、大佐と愛人、若い衛兵、洋服屋の物語が始まる。それぞれの不満、恐怖から戦争へなだれ込み、すべてが一掃され物語は終わりを迎え、一日の日が沈む。最初、祭りの熱狂と興奮に沸く人々を冷めた目で見るマイノリティの普段の日常や...
海辺で出会った女が僕の目に映る町を見て、海の向こうの町の3人の少年、大佐と愛人、若い衛兵、洋服屋の物語が始まる。それぞれの不満、恐怖から戦争へなだれ込み、すべてが一掃され物語は終わりを迎え、一日の日が沈む。最初、祭りの熱狂と興奮に沸く人々を冷めた目で見るマイノリティの普段の日常やら葛藤とか混沌とかそんな感じかと思ったけど、突然の?待望の?戦争によってそんな簡単なものではなくなってしまった。解説のとおり、「戦争は人間の文明にとって老朽化という不可避な現象を防ぐための唯一の手段」として、この物語をみると確かに、各々の物語のキャストがみな戦争によって死んでいるので、欲望の実現ではなく、文明の刷新なのだろう。ハッピーエンドでないところが現実的であるし、町を見るのをやめた僕と女が何事もないように明日の約束をするのも、日常的な現実のひとつなのだ、気にすることはないと訴えているようでもある。
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海辺で出会った男女が遠い島影を眺め、 その島で起きている、 あるいはこれから起こるかもしれない事件について 空想を巡らす。 薄っぺらな語り手による超リアルで濃密な「遠くの街」の描写。 一読して、 対岸の火事を酒の肴にする悪趣味な有閑階級への批判なのかと 思ったが、実は深い意味など...
海辺で出会った男女が遠い島影を眺め、 その島で起きている、 あるいはこれから起こるかもしれない事件について 空想を巡らす。 薄っぺらな語り手による超リアルで濃密な「遠くの街」の描写。 一読して、 対岸の火事を酒の肴にする悪趣味な有閑階級への批判なのかと 思ったが、実は深い意味などないのかもしれない。
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限りなく〜にあった、活字だけで吐き気を誘うようなグロテスクさはないものの瞳の話とその男の話の対照がなんともいえません。
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村上龍は時折読点で一文を長く続ける、まるで長いワンカットのシーンみたいな文章を書くことがあるけれど、この小説はまるでそれをそのまま全体の作品にしたみたいだ、夢の中にいるように、気づくと違う場面になっている印象だった、とても写実的で、"don't think, ...
村上龍は時折読点で一文を長く続ける、まるで長いワンカットのシーンみたいな文章を書くことがあるけれど、この小説はまるでそれをそのまま全体の作品にしたみたいだ、夢の中にいるように、気づくと違う場面になっている印象だった、とても写実的で、"don't think, feel"というか、"don't think, imagine"という感じで、とにかく移りゆく場面を想像する、深く考えない、そんな作品と感じた。
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悪寒が、洋服屋の母親の発疹のように無数に広がっていく。 祭の中で狂っているのは、誰でもなく、あたしたち自身なんだ 本当に麻薬のようだ 背中を這った寒気が全全身にまわって、ひどく、寒い
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村上龍の2作目 章の区切れもなく次々と登場人物が入れ替わり、全く交わりの無いストーリーが淡々と続いて読みにくい.... 主人公の瞳の中に潜む街の中で繰り広げられる荒廃した人間模様と、その腐った世界に対する破壊願望 戦争は起こっていて、戦争による荒んだ世の中の全破壊と再生を求...
村上龍の2作目 章の区切れもなく次々と登場人物が入れ替わり、全く交わりの無いストーリーが淡々と続いて読みにくい.... 主人公の瞳の中に潜む街の中で繰り広げられる荒廃した人間模様と、その腐った世界に対する破壊願望 戦争は起こっていて、戦争による荒んだ世の中の全破壊と再生を求めると言う感情を表現したかったのか、真意は掴めない 読みにくいがゆえに難解で、2回読み返したけど、多分、次作品『コインロッカーベイビーズ』による直接的な破壊と暴力に内包される作品なんだろうな それともコカインの効力が人間の本性、欲望を具現化させたのか? 相変わらずクレイジーな作品でした。 Android携帯からの投稿
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【新歓企画】ブックリスト:「大学1年生のときに読んでおきたい本たち」 タイトルだけでご飯が食べられますね。海の向こうの退廃的で暴力的な町と、こちら側の平和な海岸の様子が描かれている。その切り替わりが凄い。いきなりあっちに行っていきなり帰ってくる、その唐突さが上手に描かれている。だ...
【新歓企画】ブックリスト:「大学1年生のときに読んでおきたい本たち」 タイトルだけでご飯が食べられますね。海の向こうの退廃的で暴力的な町と、こちら側の平和な海岸の様子が描かれている。その切り替わりが凄い。いきなりあっちに行っていきなり帰ってくる、その唐突さが上手に描かれている。だから静と動の落差が、より胸に染み渡る。物語終盤の勢いが凄い。物語の山の作り方、魅せ方、終わらせ方、爆発のさせ方、色々学べる気がします。小説を書く際に、感情の爆発だけで物語を走らせ切っちゃう方は、ためになる部分が多いかも知れませぬ。【M.K.】
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『限りなく透明に近いブルー』の一節を広げた話。 「あなた何かを見よう見ようってしてるのよ、小さな子供みたいに」 と言うリリーに答えたリュウの言葉を。 村上龍はあくまで目を通じて小説を書いている感じ。 こちらのほうが『限りなく〜』よりもっとずっと “見ている”ということを強く意...
『限りなく透明に近いブルー』の一節を広げた話。 「あなた何かを見よう見ようってしてるのよ、小さな子供みたいに」 と言うリリーに答えたリュウの言葉を。 村上龍はあくまで目を通じて小説を書いている感じ。 こちらのほうが『限りなく〜』よりもっとずっと “見ている”ということを強く意識させられるような気がするけれど。 ものを見るって言うのはすごく受動的なようでいて、 いっぽうですごく能動的で破壊的なんだぞ!って言ってるような。 『限りなく透明に近いブルー』を読んだときに まるで無声映画みたいだな、という印象を持ったけれど、 巻末の系譜を見て、村上龍が武蔵野美大出身だってことを知った。 『限りなく〜』が作者みずからの監督で映画化されたことも。 なんか、すごく納得いった。
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海辺で出会った水着の女は、僕にこう言った。あなたの目に町が映っているわ。その町はゴミに埋もれ、基地をもち、少年たちをたくましく育てる町、そして祭りに沸く町。夏の蜃気楼のような、心象風景の裏に貼りつく酷薄の真実を、ゆたかな感性と詩情でとらえた力作。(裏表紙より引用) これ、好きで...
海辺で出会った水着の女は、僕にこう言った。あなたの目に町が映っているわ。その町はゴミに埋もれ、基地をもち、少年たちをたくましく育てる町、そして祭りに沸く町。夏の蜃気楼のような、心象風景の裏に貼りつく酷薄の真実を、ゆたかな感性と詩情でとらえた力作。(裏表紙より引用) これ、好きです。 まず表紙が好き。深い色合い。よくみると何か見えてくる。 それから、タイトルが好き。村上龍の小説のタイトルってなんでこんなにセンスがいいんだろう。 この小説も、他の作品同様、頻繁に場面が切り替わって、「ん?」ってなるんだけど、そこが良いです。 急に引き戻される感じが良い。 静的な浜辺と対照的な海の向こうが良い。 無国籍感が良い。 汗の臭いと、ゴミ、嘔吐物に汚れた感じが良い。 村上龍の作品は、どれも根底に怒りと破壊があって、好きです。 解説で、「限りなく透明に近いブルー」との関連が述べられているけれど、私は読んでいてどっちかというと「コインロッカー・ベイビーズ」との関係の方を感じました。 衝撃デビュー作「限りなく(略)」と、超大作「コインロッカー(略)」の間に書かれたこの作品、どうしても谷になってしまう感があるけど、私は好きです。一番好きになりそうな気がします。
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