海の向こうで戦争が始まる の商品レビュー
ある海辺での男女の夢想とその終焉。海の向こうに黒い稜線になって見える町、そこに夢見る四つの物語。 すべて夢想は人々の堪えきれないような限界としての戦争や、自然な連綿とした流れのなかの戦争へと結びつき、暴力的に破壊されていく。コカインの刺激とともに。 あたかも「小説を書く」ことを代...
ある海辺での男女の夢想とその終焉。海の向こうに黒い稜線になって見える町、そこに夢見る四つの物語。 すべて夢想は人々の堪えきれないような限界としての戦争や、自然な連綿とした流れのなかの戦争へと結びつき、暴力的に破壊されていく。コカインの刺激とともに。 あたかも「小説を書く」ことを代弁するかのような、「僕」とフィニーの夢想。戦争とはつまりこの「海の向こうで戦争が始まる」というテクストなのだ。村上龍は小説という形で、戦争を生んだ。
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戦争と祭りは非日常の象徴。だからといって僕とフィニーが現実かと言えば、そうでもない。僕とフィニーは虚構の戦争を夢想し、その彼らの姿を私たちは空想する。
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こちらとあちら。 海辺で出会い妄想を繰り広げるこちら。 祭に湧き、戦争となり全てが崩壊していくあちら。 それを相変わらずのんびりと眺めるこちら。 でも実際はあちらをこちらのこっち側を通して見ている。 構成も設定も技工的だけどやっぱりエネルギーに溢れてる。でも会話がどことなくちぐ...
こちらとあちら。 海辺で出会い妄想を繰り広げるこちら。 祭に湧き、戦争となり全てが崩壊していくあちら。 それを相変わらずのんびりと眺めるこちら。 でも実際はあちらをこちらのこっち側を通して見ている。 構成も設定も技工的だけどやっぱりエネルギーに溢れてる。でも会話がどことなくちぐはぐにされてるように全体的にもふわふわ抽象的な印象を与える、不思議な文体が面白いし、やっぱり村上龍の言葉の使い方、描写、表現、迫力は筆舌に尽くし難い。 後に発表される『五分後の世界』は内側に殴り込みにいく。それとの対比もまた面白い。
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どんなに、村上龍が気に食わなくてもこの本だけは読んで欲しい。 初期の代表作、限りなく透明に近いブルーとコインロッカーベイビーズの間に書かれた本で、わたしは彼の作品の中でいちばんだと思っている。 俯瞰と想像、破壊と創造ふたつの小説のテーマがところどころに見られる。 腐敗寸前の街が...
どんなに、村上龍が気に食わなくてもこの本だけは読んで欲しい。 初期の代表作、限りなく透明に近いブルーとコインロッカーベイビーズの間に書かれた本で、わたしは彼の作品の中でいちばんだと思っている。 俯瞰と想像、破壊と創造ふたつの小説のテーマがところどころに見られる。 腐敗寸前の街が、ある瞬間パチンとはじけるように崩壊していく様は、虚実だからこその爽快さがある。 言語にのよる物語がある世界に生まれてよかった。そう思える。
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解説ありがたかった。読後に一気に世界が広がり、ぼんやりした視点が定まるようであった。 視点といえば、文字通り視点を軸に様々な登場人物に主役が移り変わっていくが、その導入が見事。人の言葉さえも鍵括弧を無くし、読点のみで構成された移り変わり。淡々と言葉と情景が入り交じって、リズム感を...
解説ありがたかった。読後に一気に世界が広がり、ぼんやりした視点が定まるようであった。 視点といえば、文字通り視点を軸に様々な登場人物に主役が移り変わっていくが、その導入が見事。人の言葉さえも鍵括弧を無くし、読点のみで構成された移り変わり。淡々と言葉と情景が入り交じって、リズム感を得ながら場面変更されていく様はさながらカメラワークのよう。
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きつかった。 一番好きな作家だし大好きな1作目と3作目の間の本なのでとても期待して読んだ。 村上龍の作品は読むのにとても体力を使うのだけれど本作は途切れることなく主人公が入れ替わるところや最後まで各々の物語の意味を読み取れなかったこととどこか外国人作家の本を読んでいるような感覚に...
きつかった。 一番好きな作家だし大好きな1作目と3作目の間の本なのでとても期待して読んだ。 村上龍の作品は読むのにとても体力を使うのだけれど本作は途切れることなく主人公が入れ替わるところや最後まで各々の物語の意味を読み取れなかったこととどこか外国人作家の本を読んでいるような感覚になりなお疲れた。 解説にあるような戦争への作者の意図のようなものを感じることができなかったが祭りと戦争が同じような作用を持っていることはなるほどなと思った。 しかし当時20代でこんな小説を書くとは…すげーよ。 個人的には前作よりもグロテスクさを感じた。
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3回ほど手にした本ですが、個人的には一番好きな本「小説家とは何かという後書きをヒッピー的に書かれているところには物凄い異端児だなあと思っていました」次の小説で、大爆発するのですが、新装版では、解説が何だか納得がいかなかった。それを私は敢えて評価しました。
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前作、「透明に限りなく近いブルー」の作風そのままに、浜辺にいる「主人公」と、「海の向こうの世界」を交互に描く。 二つの世界が、区切られること無く、入れ替わる表現が面白かった。
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海の向こうに視点が移るとき、カメラのフォーカスがギューーーっと絞られていくような描写に度肝を抜かれた。 内容は難解で、正直おもしろかったとは言えませんが、ほんとにその描写がすごくて読後何年もたった今でもそのときの衝撃を憶えています。
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天国と地獄の話だ。 主人公は皮膚の張り詰めた乳の尖ったチャンネーと ホテルのプライベートビーチでじゃれあいながら 海の向こうの地獄を夢想する。 海の向こうの世界は、戦争でつぶされるために構築された世界だ。 読んでいて戦争が一刻も早く始まれば良いと言う気分になる。 そして海の向こ...
天国と地獄の話だ。 主人公は皮膚の張り詰めた乳の尖ったチャンネーと ホテルのプライベートビーチでじゃれあいながら 海の向こうの地獄を夢想する。 海の向こうの世界は、戦争でつぶされるために構築された世界だ。 読んでいて戦争が一刻も早く始まれば良いと言う気分になる。 そして海の向こうで戦争が始まる 破壊や死には解放が内在していると思い込まされる小説 これ危なない?
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