Yの悲劇 の商品レビュー
なんと、まあ。 誰が予想できただろうか、この結末。 ゆったり話がすすむので、じゃっかん警部のイライラがうつったりしたけど、この感じが、古いミステリーって気がした。そんなに古くないけど。 読みやすかった。 是非、シリーズ全て読みたい!
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行方不明だった富豪ヨーク・ハッターの死体が ニューヨークの湾口で引き揚げられたのを皮切りに、 ニューヨークに住むハッター家で惨劇が繰り返される。 一家の人間から、使用人にいたるまで、 奇矯な人物がそろっているハッター家での事件。 サム警部らとともに事件に捜査に関わったレ...
行方不明だった富豪ヨーク・ハッターの死体が ニューヨークの湾口で引き揚げられたのを皮切りに、 ニューヨークに住むハッター家で惨劇が繰り返される。 一家の人間から、使用人にいたるまで、 奇矯な人物がそろっているハッター家での事件。 サム警部らとともに事件に捜査に関わったレーンの表情は 事件が進むにつれて悲しみの色を帯びていき、 ついに彼は何も語ることなく事件は終わったかに見えたが――。 エラリー・クイーンがバーナビー・ロス名義で発表した、 ドルリー・レーン四部作のうちの第二作。 ラストで明かされる意外すぎる真相と、 見事な構成、推理の鮮やかさなど 海外ミステリのベストテンの常連となっている名作。 原題「The Tragedy of Y」。 これは小学校低学年の頃に、児童向けの本で一度読んでいて、 今回、創元推理文庫の完訳で再読したというわけ。 最初に読んだときからずいぶん時間は経っているが、 やはりその真相の意外性のためか印象は強かったらしく、 だいたいの話の筋は再読する前に思い出せたし、 「マンドリン」「ストリキニーネ」といった単語は この作品で覚えたというような記憶まで残っている。 やはりクイーンの小説らしくしっかりした構成で、 真相は意外だが、伏線はちゃんと張られているし、 推理の過程も説得力があってとても面白い。 またこの作品では、三重苦の女性ルイザや、 ヨーク・ハッターの残した小説の筋書きなど、 風変わりで特徴的な要素が絶妙の働きをしていて、 絡み合った謎に一味加えているところが実に素晴らしい。 前作では終始自信満々だったレーンが 今回はずっと悲痛な様子であったのも良いギャップだ。 ラストでサムが呈した疑問に対する解答は、 果たしてどのようなものなのか、というのが気になるが…。 再読であったため、結末に対する驚きはなかったが、 これはやはり古典の中でも十指に入る名作だろう。
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プロの作家にもリスペクトする向きが多い作品なので、約30年ぶりに突然再読してみようと思い立った。クイーンの中では(実はバーナビー・ロス名での作品だが)「重厚な作風」と好意を持って評価されることが多いが、改めて読んでの率直な感想はただ単に「重い」。 理由は、一つには探偵の推理が当人...
プロの作家にもリスペクトする向きが多い作品なので、約30年ぶりに突然再読してみようと思い立った。クイーンの中では(実はバーナビー・ロス名での作品だが)「重厚な作風」と好意を持って評価されることが多いが、改めて読んでの率直な感想はただ単に「重い」。 理由は、一つには探偵の推理が当人の重苦しい葛藤と相まって進められて、真実に迫るある種の喜びが排除されている点にあり、もう一つは表現の深みを増そうとしているのか逆にまだるっこしく感じられる記述が多く、なかなか作品に入り込めずに空回りしてしまう点にあると思われる。読んで行くのに大変労力を要するのである。そして、ラストの驚きの真実も積み重なったやるせない気持ちを助長し、通常の推理小説を読んだ後の心地良い解決感とはおよそかけ離れた後味が、さらに重苦しさを増すことになる。以前読んだ時もなんとなくいい印象を持てなかった理由を読み進めるうちに思い出した次第だ。 しかし、読み切った後になって「このような真実であるならば、あの時あの場面の記述はどのようなものだったのだろうか」と、とても気になってしまうということは、やはり推理小説として読者に挑戦している感覚が成功しているのだと思う。 感想を文字にするとネガティブなことばかり並べてしまうが、読んで損はしない、いや読むべき一冊である、と言えてしまう変な作品。 クイーンの歴史的名作に「変な作品」って言ってしまった(^^)。
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読み進むにしたがって、どんどん、どんどん重っ苦しい感情に取り巻かれる。 それでも、ページを繰る手は止められないわけで、全ての謎が解けた時に、最大級のやるせなさと悲しい気持ちが襲ってくる、…って感じでした。 小説としては十分楽しめけれども。 スカッと鮮やかに謎にチャレンジして明かそ...
読み進むにしたがって、どんどん、どんどん重っ苦しい感情に取り巻かれる。 それでも、ページを繰る手は止められないわけで、全ての謎が解けた時に、最大級のやるせなさと悲しい気持ちが襲ってくる、…って感じでした。 小説としては十分楽しめけれども。 スカッと鮮やかに謎にチャレンジして明かそうとする、Xの方が私は好み**
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読んだのは3回目以上、犯人もわかっていてなおかつ楽しめる。現代から見れば問題もあるがミステリーとしては申し分がない。ミスリードのさせ方もすばらしい。
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さすがに日本で評価の高いミステリー、納得という感じだった。でもXの悲劇の方がシンプルで読みやすかったかな。
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中学1年のときの担任が絶賛した、エラリー・クイーンの悲劇シリーズ。 Yの悲劇>Xの悲劇>レーン最後の事件>Zの悲劇 「Y」で、海外ものの推理小説の面白さを知りました。 ここから、クリスティとかクロフツ、ヴァンダインやマーガレット・ミラーなど、じわじわとミステリーに触手を伸ばし...
中学1年のときの担任が絶賛した、エラリー・クイーンの悲劇シリーズ。 Yの悲劇>Xの悲劇>レーン最後の事件>Zの悲劇 「Y」で、海外ものの推理小説の面白さを知りました。 ここから、クリスティとかクロフツ、ヴァンダインやマーガレット・ミラーなど、じわじわとミステリーに触手を伸ばし始める…。ふっふっふっ。(意味不明)
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『傑作』と評されることの多い作品であるとともに、事実、ミステリとして一級品の素晴らしき一冊です。 前半200ページ程は読むのに多少の骨を折ることになるかと思いますが、後半~ラストにかけて物語へと一気に引き込まれていくのが分かります。 衝撃的な事件の真相もさることながら、著者ク...
『傑作』と評されることの多い作品であるとともに、事実、ミステリとして一級品の素晴らしき一冊です。 前半200ページ程は読むのに多少の骨を折ることになるかと思いますが、後半~ラストにかけて物語へと一気に引き込まれていくのが分かります。 衝撃的な事件の真相もさることながら、著者クイーンによって描かれる謎解き役のドルリー・レーンの人柄がとても魅力的です。 彼の性格について最もよく表れているのが、事件に関わりのある資料の調査から帰宅したシーン(メリアム医師にカルテを見せてもらった直後の場面)にあると思うのです。 物語のラストでは、この時点でドルリー・レーンの頭にはある人物が犯人として浮かんでいることが明かされているのですが、このシーン… ドルリー・レーンは、この事件に首を突っ込んでしまったことを心底、後悔するとともに自身に腹を立てているのです。 聡明で冷静な謎解き役、というオーソドックスなトリックブレイカーとは比べモノにはならない程に、人間らしいと思えるのは、私だけでしょうか。 人間味のあるドルリー・レーンは腹を立て、落胆し、失望し…全ての謎を解き終え、事件が終わりを迎えた頃。 ある行動に出ました。 この行動ゆえ、彼は恐ろしい程に人間らしいと思うのです。 衝撃のラストシーン。ここに含まれる行動は戒めや厳しさと同時に、あるいはドルリー・レーンの優しさではなかったのか…と思います。 読了後、余韻の中で様々なことを思案せずにはいられない作品です。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
(実際に読んだのは新潮文庫「大久保康雄訳」) 犯人はなんとなく予想がついたものの、その犯行を暴くロジックがしつこいとさえ思うほど綿密で圧巻だった。 4部作のうち当作品しか読んでいないので分からないが、最後のレーン氏の言葉「私が悪かったのです」の意味を考えたとき、最後、どうしてもレーン氏が能動的に手を下したとは思えず。 むしろ犯人がルイザに効かなかった毒薬を自分で飲んで確かめてみようとしているのをレーン氏は黙認したのではないか、と思った。 いくら『悪魔』とはいえ、遺伝の犠牲者である犯人を殺害する行為は行きすぎな気がしてしっくりこないし、かといって犯人が自殺をするとも思えない。 それとも4部作最後の作品まで読めば納得できるのかな。 とりあえずハッター家の異様さ・暗さにぞっとした。
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事件は“きちがい”ハッター家の主、ヨーク・ハッター(とおぼしき)の水死体が発見されたことに端を発する。 毒殺未遂、あろうことか楽器のマンドリンで撲殺されたハッター夫人…次々と不可解な謎に見舞われるハッター家。それに立ち向かう元俳優の名探偵ドルリィ・レーン… ワクワクする筋書き、...
事件は“きちがい”ハッター家の主、ヨーク・ハッター(とおぼしき)の水死体が発見されたことに端を発する。 毒殺未遂、あろうことか楽器のマンドリンで撲殺されたハッター夫人…次々と不可解な謎に見舞われるハッター家。それに立ち向かう元俳優の名探偵ドルリィ・レーン… ワクワクする筋書き、綿密に計算されたロジック、そして意外過ぎてまず予想出来ない犯人(自分は作者のミスリードに完璧にはめられました、2名とも笑)。とても鮮やかな一冊でした。 そしてこのラスト! 個人的ミステリ史上最もショッキングであろうこのラスト6行に、戦慄するとともに、なんというか、とても深く考えさせられた。 この小説の犯人に限らず、救いようのない悪が深く根付いている人間がいることは事実で、それ自体どうしようもない悲劇であるし、それに対する審判のやり方が“これ”しかないというのも悲劇であるかもしれない。 うーんそれにしてもこのラストでかなり独特の存在になったドルリィ・レーン。こんな探偵は、本来ミステリのなかにいてはいけない存在ではないか。探偵はあくまで探偵であり、運命の審判者であるべきではない。 そういうタブーをまんまとやらかした、とんでもない探偵である。 しかし魅力的だからとても嫌いになれず、参った。
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