道ありき 青春編 の商品レビュー
作家三浦綾子の心の歴…
作家三浦綾子の心の歴史。人生の深みを感じる。クリスチャンでもある著者の人生に対する真摯さ・真剣・生真面目さが、とても好感を持てる。敗戦による混乱、虚無感、肺結核の長期療養。人情、愛、知恵が溢れる感動の自伝。
文庫OFF
もともと気になっていた三浦さんだが「母」きっかけで一気に自伝まで。戦中の教員としての経歴から教科書墨塗りをへて、キリスト教に出会ったという大まかな経歴は知ってはいたが、現代の私たちには想像のできない闘病の凄まじさ。その中で、自身は妖婦だと書かれているが、友人がひっきりなしに見舞い...
もともと気になっていた三浦さんだが「母」きっかけで一気に自伝まで。戦中の教員としての経歴から教科書墨塗りをへて、キリスト教に出会ったという大まかな経歴は知ってはいたが、現代の私たちには想像のできない闘病の凄まじさ。その中で、自身は妖婦だと書かれているが、友人がひっきりなしに見舞いに来る三浦さん、きっと話も人柄も魅力的だったのだろうなあ。そんな自暴自棄で、そして傍目に自由奔放な彼女が求道者としてキリスト教と向き合い、洗礼を受け、前川正との別れを経て三浦光世と出会うまでを描いている。
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著者の自伝小説。 教師時代からお話は始まるが、綾子氏も熱心な教師であったことが覗える。 折しも時代は戦中、戦後の動乱期。そんななか、敗戦した日本はアメリカの指示の元、綾子氏が教えていた国定教科書の至る所に墨を入れ、修正させる場面がある。 生徒は黙々と墨をすり、修正箇所に黒く修...
著者の自伝小説。 教師時代からお話は始まるが、綾子氏も熱心な教師であったことが覗える。 折しも時代は戦中、戦後の動乱期。そんななか、敗戦した日本はアメリカの指示の元、綾子氏が教えていた国定教科書の至る所に墨を入れ、修正させる場面がある。 生徒は黙々と墨をすり、修正箇所に黒く修正をいれる。その姿を見るに絶えず、“わたしはもう教壇に立つ資格はない。近い将来に一日も早く、教師をやめよう”とある。 ここに時代背景を感じるが、それ以上に綾子氏の意思の硬さに驚きを隠しきれない。 自身が情熱を傾けていた七年間は何だったのか?日本が間違っていたのか、もしくはアメリカがおかしいのか?一体何が正しいのか? 生徒を想うばかり葛藤し、間違ったことを純粋な生徒に教えてきてしまった自身が許せない、ならば潔く教壇から退こう。 熱心で慕われていた綾子先生像が目に浮かぶようです。その当時でも、誰も彼もが就ける仕事でもないものを、キッパリ断つ。なかなか出来る代物でもない。 そしてその後まもなく肺結核を患い、十三年間に渡る長き闘病生活が始まる。 闘病生活の間に師や療友、前川正や三浦光世、キリストの教えと出会う。 失意の底を経験したからこその神の教え、ここらへんは少し共感し難いものに感じたが、著者は様々な人に出会い、そして別れ、苦悶し葛藤し尽くした結果の洗礼。それは大いに素晴らしいことだと思った。 これはこれで良いお話ではあったが、個人的には物語を通じて三浦綾子を知る方が好きだ。 自伝ともなれば、どうしてもキリスト色が濃厚となり、少しとっつきにくいところではある。 しかしながら、著者の生い立ちあっての物語。 残りの第二部、第三部も日を改めて追ってみることにします。
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偶々出くわした小説が興味深く、「同じ作者による他の作品」と幾つかの作品を紐解く中で出会った作品である。なかなかに興味深く拝読した小説である。 「小説」というモノは、作者が自由自在に想像の翼を羽ばたかせて綴るモノであろう。作者本人の経験や見聞、人生と然程関連が無くても何らの支障もな...
偶々出くわした小説が興味深く、「同じ作者による他の作品」と幾つかの作品を紐解く中で出会った作品である。なかなかに興味深く拝読した小説である。 「小説」というモノは、作者が自由自在に想像の翼を羽ばたかせて綴るモノであろう。作者本人の経験や見聞、人生と然程関連が無くても何らの支障もない。それでも、場合によっては作者本人の人生が色濃く反映される小説というモノも登場する。 三浦綾子作品に関しては、丁寧に取材をして様々な人達の話しを参考にしながら綴られている作品が見受けられると感じられる他方、御自身の人生の中での経験や、考えて来た事柄等が色濃く反映されていると想像させる面も大きいように感じる。小説家として登場した当初から、活躍を続ける中、晩年近くに発表されている作品に至る迄、一貫して「取材成果」と「御自身の人生の中での経験や考察」とを巧みに織り交ぜるような感じで作品を綴り続けたのではないかと、一読者としては思う。 本作『道ありき(青春編)』は三浦綾子の「自伝」と言われている。戦前に勤めていた小学校教員の仕事を辞めた戦後間もなくの頃、病を得てしまって療養生活に入ることとなる。長く療養生活を続けるという中で、幾つかの出会いや別れが在って、やがて結婚に至ったという経過は知られている。本作もそうした、少し知られた経過の物語である。 が、それでも作者自身の「自伝」というよりも、「小説家として少し知られるようになった主人公の“堀田綾子”が来し方を回顧する物語」というような、「純粋な小説」という感覚で読んだ。そういうように「読まされた」と言い換える方が妥当かもしれない。 小説によく在るような感じで「堀田綾子は…」というような叙述が早目な段階に出て来るのでも何でもなく、「私」という第一人称での語り、「御自身の心の移ろい」を一部に旧い記録等も少し引っ繰り返しながら綴っている。眼前の他の人から「綾ちゃん」、「綾子さん」、「堀田さん」という程度に呼ばれている描写が出て来ることから、綴られている物語、読み進めている物語の主人公が「堀田綾子」と知れる訳である。本作の最終盤で結婚し、「三浦綾子」となるのである。 20歳代から30歳代の通算13年間程を療養に費やしたというのは、凄く特異かもしれない人生のようにも思う。その中の概ね半分程度は、症状の関係で自由に身体を動かせない羽目で、御手洗を使う、食事を摂るという動作にさえ不便していたのだという。そういう中、不自由さを呪うというようなことに終始する、または不運であると何もかも諦めるということではなく、出逢った人達との交流の中に様々な可能性を拓こうとするような様子に心動かされる。更に、周辺で「誰が何と言おうと…」という感じで「堀田綾子」を支えようとする人達の様子にも驚かされる。 本作の物語は、昭和20年代、昭和30年代を背景としている。当然ながら、その様々な状況は現在とは大きく異なる。それでも、苦難を嘆く、呪うに終始しない生き様、苦難の中に在る人を何とか支えようとする人の様というのは、時代や場所を超えて心揺さぶるモノが在ると思った。 三浦綾子作品の多くは長く読み継がれて「古典」という存在感を放っていると思う。本作もそうした「古典」の一つに上げなければならないであろう。
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文章が侍(?)のように、きりりっとしていて、真面目。色々と、悩んだり、困難にぶつかったり、悲しみにくれたりもするけど、どこかカラッとしていて、明るい。 前川正をはじめ、稀有な人格者がたくさんでてくるが、同じ人間なのか、怪しくなると同時に、素直に頭が下がる。
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10年以上、折に触れて読み返している。 内容は重たいが、深く悩んだ時や落ち込んだ時に読み返すと孤独が紛れる。閉塞感や低調なテンションの語り口が寄り添ってくれることもある。 誰かを愛するとは、誰かが自立して生きていけるようにすることだという言葉が印象的であった。
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大病を患いながらも、まさに青春時代における精神的な潔癖さで、倫理観や人生観を悩み、さまざまな物事を拒絶したり受け入れていったりする様は、誠実かつ情熱的で、ご本人の人格を少しでも理解出来たと思います。 三浦綾子さんの小説を読むのであれば必読です。
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※このレビューにはネタバレを含みます
三浦綾子さんの本は塩狩峠ぶり2冊目 だいぶ重なるところがあった 良い人すぎてこそばゆくなる感覚、キリストにまつわるお話には付き纏う。苦手。 道ありきの方が塩狩峠よりも僕には読みやすい 渡道、来札 道ありき 旭川 羽幌
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父の勧めで『塩狩峠』を読み感銘を受け、 「次は彼女の自伝三部作を読むと今後の作品がまた面白く読めるよ」 というこれまた父のアドバイスを受け、 『氷点』を読みたい気持ちをグッと堪えて読み始めました。 三浦綾子さんの自伝三部作の第一作目、『道ありき』。 本作は青春編となっており、...
父の勧めで『塩狩峠』を読み感銘を受け、 「次は彼女の自伝三部作を読むと今後の作品がまた面白く読めるよ」 というこれまた父のアドバイスを受け、 『氷点』を読みたい気持ちをグッと堪えて読み始めました。 三浦綾子さんの自伝三部作の第一作目、『道ありき』。 本作は青春編となっており、 教職を辞してから13年にも渡る闘病生活が描かれています。 壮絶な病気との闘いの中で 様々な出会い、別れ、愛や信仰について綴られていて、 『塩狩峠』ほどの名作を生み出した彼女の芯に 少し触れることができたように感じます。 確かに自伝を読んでから作品を読むと さらに理解が深まり面白さも増します。 父のアドバイスに感謝! 続いて自伝二部の『この土の器をも』も読みます。
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つらい事も自身の道であり、生きる希望や人との出会いに勇気つけられていること。 優しさに溢れた作品で何度読んでも感動する。
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