失敗の本質 の商品レビュー
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第二次世界大戦の日本の敗戦を元に,日本軍参謀の失敗の本質に迫る。戦略の目的の曖昧化,情報フィードバック機能不全など,いまに生きる教訓。 組織はゆらぎを包含し続け,それが一定以上をこえると不安定領域から新たな創造を生む。 これは何かで読んだな。 このゆらぎの大元でありたい
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ずばり日本軍の失敗の本質は、環境に適応して自らの目標と構造を主体的に変えることのできる組織、すなわち自己革新組織たりえなかったという点である。 そして、そのような欠陥の原因として挙げられるのが、教育システムの硬直性や分権的システムの構築の失敗、陸海軍を統合するシステムの失敗(大...
ずばり日本軍の失敗の本質は、環境に適応して自らの目標と構造を主体的に変えることのできる組織、すなわち自己革新組織たりえなかったという点である。 そして、そのような欠陥の原因として挙げられるのが、教育システムの硬直性や分権的システムの構築の失敗、陸海軍を統合するシステムの失敗(大本営は統合システムとは呼べなかった)である。 感想として、組織の目標を定義できなかったという点がおもしろいなと思った。大東亜共栄圏っていうのは結局政治的なイデオロギーに過ぎず、軍事組織としての目標には成りえなかった。 国家としてのグランド・ストラテジーを持ち、そのグランド・ストラテジーを実現するための手段として、軍事組織の目標を規定する必要がある。しかし、そもそも日本は国家としてのグランド・ストラテジーを持たず、 そのため軍の目標を規定することが出来なかった(陸・海それぞれの仮想敵国が異なることにも端的に表されている)。 国のグランド・ストラテジーをもつことができなかったというのは、やっぱり今も当てはまる状況なのかなと思う。グランド・ストラテジーがないから、どこに向かえばいいのか分からずみんなが混乱している。そんな状況は今も続いているんじゃないかと思った。
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各地での戦いについての分析は、今ひとつピンとこなかったが、最終章の組織分析が秀逸。この本が書かれてから二十年以上経つが、ますます日本の政治と企業の組織にこの本で指摘された課題が深刻化していると思う。そして最近の世界や外部環境の変化のスピードは加速している。CHANGE、って言うは...
各地での戦いについての分析は、今ひとつピンとこなかったが、最終章の組織分析が秀逸。この本が書かれてから二十年以上経つが、ますます日本の政治と企業の組織にこの本で指摘された課題が深刻化していると思う。そして最近の世界や外部環境の変化のスピードは加速している。CHANGE、って言うは易しだが…
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組織論について学ぶ時に、究極の組織と言えるのは、軍事組織だと思う。 この本では、ノモンハン以降の日本軍の失敗について各専門家が述べているが、組織の硬直化など、失敗から学ぶことはたくさんある。 もちろん、負けた事が分かっているから、書けることではあるけれど、人間は、失敗から多くを学ぶべきだ。 この本自体が書かれたのは、少し前になるけれども、戦争経験者も少なくなり、社会構造自体が閉塞感でいっぱいの今の日本は、改めて歴史から学ぶことがあるのではないか。 そう思わされる本でした。
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読み終わって日本軍とアメリカ軍を一言で言うと 日本軍=魔法 アメリカ軍=科学 だと思った。 魔法とは、特定の人間のみが行って得られる結果。 科学とは、どんな人間でも同じ手順、同じ方法で行えば望む結果が得られる。 という意味で。 戦略レベルでいうと、日本人は概念とか“ふわっ...
読み終わって日本軍とアメリカ軍を一言で言うと 日本軍=魔法 アメリカ軍=科学 だと思った。 魔法とは、特定の人間のみが行って得られる結果。 科学とは、どんな人間でも同じ手順、同じ方法で行えば望む結果が得られる。 という意味で。 戦略レベルでいうと、日本人は概念とか“ふわっ”っとしたものが好きだ。 「ね。なんとなくわかるでしょ?」という目標を戦争の目的としてしまった気がする。 そこでまず軍全体での、戦争の最終目的の認識がずれた。 また、戦術レベルでいうと、作戦立案の際に基準にする兵士のスキルのレベルがおかしい。全員が熟練兵の上に気力体力も十分あるという前提で作られている気がする。 そして精神至上主義と義理人情の文化。 平時には何も問題がないものも、戦争という異常事態の際には切り離して考えなければならなかった。 必罰信賞も行われず、戦略・戦術の失敗は現場の努力でどうにか誤魔化される。 これで、勝てるわけがない。 このようなことは、今でもそこかしこで行われている失敗の原因だと思う。まさに失敗の本質だなあと思った。
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旧日本軍の組織的な課題を大東亜戦争での各作戦を振り返りながら、最後に総括している。日本軍組織の課題というのは、現在の企業組織にも共通のものであることを強く感じた。「組織学習」というのは、企業組織でも非常に難しく、さらに「イノベーション(自己破壊)」は、異質なヒトを排除することで効...
旧日本軍の組織的な課題を大東亜戦争での各作戦を振り返りながら、最後に総括している。日本軍組織の課題というのは、現在の企業組織にも共通のものであることを強く感じた。「組織学習」というのは、企業組織でも非常に難しく、さらに「イノベーション(自己破壊)」は、異質なヒトを排除することで効率的組織としている「官僚制」とは相容れない。かといって、「人間関係・組織内融和」が逆に組織行動に悪影響を与える事例も紹介されている。やはり、「戦略」と「管理システム」が有効に機能するよう、チェック機能を持つ組織が、強い組織を作っていけるということを痛感。
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日本人の今も続く本質的精神構造による欠陥を太平洋戦争の実例をもとに紹介。 成功は必ず報復する。 残念ながらインパールを止められる雰囲気の無い組織は必ず失敗する。 どうすれば精神構造を継承しつつ前進できるのだろうかと考えさせてくれる。
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ガダルカナル第三次ソロモン海戦後、日本軍の戦闘の巧緻により戦略のまずさを補完。オペレーション(戦術、戦法)の戦略化。しかし、本来戦術の失敗は戦闘で補えず、戦略の失敗は戦術で補えない。状況に適した最適の戦略を戦略オプションから選択することが重要課題。日露戦争、日本海海戦の勝利が戦略...
ガダルカナル第三次ソロモン海戦後、日本軍の戦闘の巧緻により戦略のまずさを補完。オペレーション(戦術、戦法)の戦略化。しかし、本来戦術の失敗は戦闘で補えず、戦略の失敗は戦術で補えない。状況に適した最適の戦略を戦略オプションから選択することが重要課題。日露戦争、日本海海戦の勝利が戦略の硬直化を招いた。 日本軍の組織構造上の特性は集団主義。個人の存在を認めず、集団への忠誠を重視するという意味ではなく、組織とメンバーの共生を志向し、対人関係重視という意味。目標と目標達成手段の合理的、体系的な形成、選択ではなく、間柄に配慮する姿勢。ノモンハンにおける中央の統帥部と関東軍首脳の関係、ガダルカナル島撤退決定の遅れにかかる陸軍海軍、インパールなど。 これに対し、米軍は、豊富な生産力、補給力など物的人的資源の優位性とともに、迅速な意思決定。各自に精一杯仕事をさせるには有能な少数者に多くの仕事を与えるのがよいという考え方。選抜による競争性が緊張感、スピードアップを可能にした。官僚制の状況変化への適応力の低下という欠陥を是正しダイナミズムを導入。 日本軍の作戦行動上の統合は組織構造やシステムではなく、個人によって実現される例が多い。作戦目標が曖昧、帰納的なインクルメンタリズムなため、現場の微調整によって判断の曖昧さを克服。集団主義が個人による統合を可能に。融通無碍な対応を可能にする一方、原理原則を欠いた組織運営を助長、計画的体系的な統合を不可能にする。 学習を軽視した組織 精神主義が組織的な学習を軽視。敵戦力の過小評価と自己の戦力の過大評価に起因。一方、米軍は理論重視。与えられるものではなく、作るものという意識。事実を直視し、情報と戦略を重視=組織学習を促進する組織。 日本軍は結果よりもプロセスを評価。個々の戦闘でもリーダーの意図ややる気が評価。個人責任の不明確さは評価を曖昧にし、評価の曖昧さが組織学習を阻害し、論理よりも声の大きさを評価。これが作戦結果の客観的評価、蓄積を制約した。 組織の環境適応は環境の変化に合わせて、戦略や組織を主体的に変革する必要あり。自己革新能力のある組織は次の条件が必要。 不均衡の創造:絶えず組織に変異、緊張、危機感を発生させ、環境との情報、エネルギー交換プロセスを開放する。これにより、構成要素間の相互作用が生まれ、多様性が生まれ、進化のダイナミズムが誕生。 自律性の確保:柔構造組織。異質かつ多様な作戦を同時展開するには、組織の構成要素の主体的かつ自律的な適応を可能にするため柔構造をビルトインが必要。 創造的破壊による突出:組織がゆらぎ、一定のクリティカルポイントを越えれば、組織は不安定を超え、飛躍。 異端、偶然との共存:イノベーションは異端、偶然を取り込むことで始まる。官僚制はそれを徹底的に排除。 知識の淘汰と蓄積:進化のため新しい情報を知識に組織化=学習する組織。 統合的価値の共有:ビジョンが必要。構成要素の自律性を高めつつ、バラバラにならずに総合力を発揮するように、方向性を共有すべき。 日本企業の戦略は帰納的な戦略策定を得意とするオペレーション志向。ブレイクスルーを生み出すよりもアイデアの洗練に向いている。
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日本人が陥りがちな組織に飲み込まれる体質をあぶりだした名著。今でも色あせない普遍的内容。『海軍反省会』『なぜ、日本人はそれでも戦争を選んだのか』と併読おすすめ。
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