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夜中の薔薇 の商品レビュー

4.2

52件のお客様レビュー

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2019/03/02

自分に似合う、自分を引き立てるセーターや口紅を選ぶように、ことばも選んでみたらどうだろう。ことばのお洒落は、ファッションのように遠目で人を引きつけはしない。無料で手に入る最高のアクセサリーである。流行もなく、一生使えるお得な「品」である。ただし、どこのブティックをのぞいても売って...

自分に似合う、自分を引き立てるセーターや口紅を選ぶように、ことばも選んでみたらどうだろう。ことばのお洒落は、ファッションのように遠目で人を引きつけはしない。無料で手に入る最高のアクセサリーである。流行もなく、一生使えるお得な「品」である。ただし、どこのブティックをのぞいても売ってはいないから、身につけるには努力がいる。本を読む。流行語は使わない。人真似をしないーー何でもいいから手近なところから始めたらどうだろうか。長い人生でここ一番というときにモノを言うのは、ファッションではなく、ことばではないのかな。(本文より) 向田邦子 最後のエッセイ集。 ことばが美しい人だ。

Posted byブクログ

2018/10/20

人の心を動かす文章とはこういうことかと思った。 向田邦子の「夜中の薔薇」をよんだ感想である。 そもそも私は、これだけ沢山ブログやホームページに文章を書いているだけあって、書くのは好きだし、本を読むのも大好き。 それでも、最近、仕事上で他人の書く文章に手を入れる立場になって急に自...

人の心を動かす文章とはこういうことかと思った。 向田邦子の「夜中の薔薇」をよんだ感想である。 そもそも私は、これだけ沢山ブログやホームページに文章を書いているだけあって、書くのは好きだし、本を読むのも大好き。 それでも、最近、仕事上で他人の書く文章に手を入れる立場になって急に自分の書く文章に自信がなくなってきた。 なので、「人の心を動かす文章術」なんていう本を借りて読んでみたのだ。 「人の心を動かす…」、大変為になることが多く、その感想を以前書いたのだけど、その本の中で良い文章として数多く取り上げられていたのがこの向田邦子の「夜中の薔薇」というエッセイ集からの抜粋であった。そこで、SF・推理小説読みの私が、普段だったらまず読まないジャンルの本だけど図書館から取り寄せて読んでみたというわけだ。 読み始めてすぐに気づく、えび茶色の上質なベルベットのような向田邦子の文。 最初は「人の心を動かす文章術」で紹介されていたテクニックの分析などをしながら読んでいたのに、途中でエッセイ自体に惹かれ、テクニック分析などそっちのけでのめり込んで読んでしまった。 あたかも、優れた音楽家の演奏を聴くとき、最初は音楽家のテクニックや曲の構成・解釈など分析していたのに、結局は音の波に翻弄され、曲の分析などどこへやら、演奏家のつむぎ出す世界へ漂流していってしまうように。 昭和4年生まれ、私の母より年上の彼女が、ちょうど私が生まれた頃に書いた文章なのに、微塵も古さを感じさせず、スキーに熱を上げ、手軽で美味しい料理で友人達をもてなし、アマゾンに旅行する。そして、そこに織り交ぜられる、ほかの人には出来ない着眼点と人間への洞察。これを書いた頃、彼女はちょうど今の私と同じ40代、ただ感嘆するばかり。 「人の心を動かす文章」とはこういうことか、と得心がいったが、自分にはまぁ無理だろうと思うばかり。 せいぜいがマネをしてみようとしても、出来の悪い贋作ようになってしまい、がっかり。 ***備忘録*** ○Aを慰めるためにBを傷つけてしまう。私はよくこういった失敗をする。 原因は簡単で、つまりは不注意と思いやりに欠けているのである。そのたびに人を傷つけ、自分も自己嫌悪と後悔で傷ついてきた。 ○言葉で人を傷つけてしまう人間というものは、概して自惚れの強い人間が多いので、得てして相手の痛みに気づかぬことが多いのではないだろうか。それを思うと嫌になってくる。 ○どんな毎日にも、生きている限り「無駄」はないと思います。「焦り」「後悔」も、人間の貴重な栄養です。いつの日かそれが、「無駄」にならず「こやし」になる日が、「あか」にならず「こく」になる日が、必ずあると思います。真剣に暮らしてさえいれば−です。

Posted byブクログ

2017/12/08

大先輩の女性の書かれたものを読むと、ぴんと背筋が伸びます。ただし、普段着のままで。 鋭い観察眼と豊かな感性を持った方だったのだなぁと思います。

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2017/03/09

5年前「手袋をさがす」を読んで、向田さんが大好きになった。 痛いところをつかれた、と思った。なんど読み返しても胸のあたりが「うう」と詰まる。もっともっとと上ばかりを見ていた自分。さらに上をいく人に憧れて、がむしゃらに追いかけては疲弊していた。かといって、妥協をして、手頃な手袋で我...

5年前「手袋をさがす」を読んで、向田さんが大好きになった。 痛いところをつかれた、と思った。なんど読み返しても胸のあたりが「うう」と詰まる。もっともっとと上ばかりを見ていた自分。さらに上をいく人に憧れて、がむしゃらに追いかけては疲弊していた。かといって、妥協をして、手頃な手袋で我慢したところで、結局は気に入らなければはめないのだ。本当にそうだと思った。周りの友人達の幸せそうな姿が、なんだか遠くの世界の出来事のように見えた。 大学の卒業旅行でイタリアで買った大好きな傘を5、6年使っていたが、それが壊れてから、まだ気に入ったものが見つからない。値が張ってでもこれは、と思うものが欲しい。でも、どこにも見つからないから、今は雨が降るたび「いけてないな」と思う傘をここ何年も使っている。 手袋に関して言えば、この小説を読んだ直後に友人がミトン作家になっており、オーダーメイドで思う通りの手袋を作ってもらった。こういう手もあるのか、と思った。あるものを探して見つからないのであれば、自分に合う形を作り出せば良い。手袋であれ、人であれ、仕事であれ、職場であれ。今はそう思っている。 それでも、私が時折この小説を読み返して胸を「うう」とさせたくなる理由は、向田さんが二十二歳のあの冬の晩にした決意が、あまりに男前で涙が出るほど格好良いから。運命の神様にけんか腰でタンカを切ってじたばたしながら「手袋をさがしつづけて」いた向田さんに、喝を入れてほしくなるからだと思う。 ——————————————————————— 十人並みの容貌と才能なら、それにふさわしく、ほどほどのところにつとめ、相手をえらび、上を見る代りに下と前を見て歩き出せば、私にもきっとほどほどの幸せはくるに違いないと思いました。そうすることが、長女である私の結婚を待っている両親にも親孝行というものです。 —今、ここで妥協をして、手頃な手袋で我慢をしたところで、結局は気に入らなければはめないのです。気に入ったフリをしてみたところで、それは自分自身への安っぽい迎合の芝居に過ぎません。本心の不満に変りはないのです。 —でも、この頃、私は、この年で、まだ、合う手袋がなく、キョロキョロして、上を見たりまわりを見たりしながら、運命の神さまになるべくゴマをすらず、少しばかりけんか腰で、もう少し、欲しいものをさがして歩く、人生のバタ屋のような生き方を、少し誇りにも思っているのです。 ———————————————————————

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2016/05/01

地元の図書館で何気なく手に取って「手袋をさがす」を読んだ時は衝撃だった。内容はもちろん、綴り方は揉まれてきた人のとる距離感で、本当にこういう生き方だったことの裏付けなように感じる。やるせないもやもやをかかえながら生きられるのはこうして、やるせなさが確かにあることをアウトプットして...

地元の図書館で何気なく手に取って「手袋をさがす」を読んだ時は衝撃だった。内容はもちろん、綴り方は揉まれてきた人のとる距離感で、本当にこういう生き方だったことの裏付けなように感じる。やるせないもやもやをかかえながら生きられるのはこうして、やるせなさが確かにあることをアウトプットしてくれる人がいるからで、わたしはこの文に救われた、たくさんいるだろう女性のうちのひとりです。

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2016/03/23

キャリアを重要視し、働く女性はみな「手袋をさがす」が好きだと思う。 自分が自分らしく生きることを、潔く自分で認めることの難しさよ。 結婚、出産、専業主婦で〜みたいな「女の幸せ」を手放して、 頑張っていると、ふと前も後ろも見えず佇みたくなる。 これで良かったんだっけ?と自問自答して...

キャリアを重要視し、働く女性はみな「手袋をさがす」が好きだと思う。 自分が自分らしく生きることを、潔く自分で認めることの難しさよ。 結婚、出産、専業主婦で〜みたいな「女の幸せ」を手放して、 頑張っていると、ふと前も後ろも見えず佇みたくなる。 これで良かったんだっけ?と自問自答して、夜眠れなくなる。 そんな眠れない夜に読みたい1冊。

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2015/02/09

向田邦子は名前だけで、作品や人柄は全く知識がない。読んで、こんな人が近くにいたならば、発されるエネルギーに逃げたくなるか元気をもらうか、どちらだろうと思った。 「男性鑑賞法」と最後の3編が好き。当たり前なのだろうけど、人間を描く言葉選びが上手。男に対して採点甘めというか敬意、(き...

向田邦子は名前だけで、作品や人柄は全く知識がない。読んで、こんな人が近くにいたならば、発されるエネルギーに逃げたくなるか元気をもらうか、どちらだろうと思った。 「男性鑑賞法」と最後の3編が好き。当たり前なのだろうけど、人間を描く言葉選びが上手。男に対して採点甘めというか敬意、(きっと自身も含め)女に厳しいという印象。テレビって男社会なのかなあ。

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2015/01/07

まだまだ続くマイ邦子ブーム。だが自身が書いたエッセイ、小説の類はあとは『眠る盃』でそろそろおしまいか。暮れにCS、TBSチャンネル2にて向田邦子のエッセイなどをもとにこしらえたドラマの再放送を一挙に放送、ぽちぽちとみているが、知っているエピソードがあってうれしいのだけれど、やはり...

まだまだ続くマイ邦子ブーム。だが自身が書いたエッセイ、小説の類はあとは『眠る盃』でそろそろおしまいか。暮れにCS、TBSチャンネル2にて向田邦子のエッセイなどをもとにこしらえたドラマの再放送を一挙に放送、ぽちぽちとみているが、知っているエピソードがあってうれしいのだけれど、やはり自身が書いたストーリーではないので、ドラマ自体はいまいちなのである。

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2017/11/06

正直はだらだらと読んでいた。可でも不可でもなくといった塩梅で。 けれども最後の三編特に「手袋をさがす」を読んで、ああいい本を読んだなあとしみじみ思うことができた。素敵なエッセイです。

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2014/04/11

自身のことを書いているエッセイの部分が好き。とても感性豊かでいいセンスを持っていたのが伺える。しかしだからといって高飛車ではなく、人間くささもあって読んでいて心地いい。

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