死者の奢り・飼育 の商品レビュー
心情の表現がすごい 一つ一つの動作や感情の起伏が生々しく芸術的に感じるけれど、結局意味を理解しきることは私には困難でした
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大江健三郎は初読。 1作目から度肝を抜かれた。背景描写や心情描写があまりにも生々しい。作中の非日常世界をまるで自分が体験しているような錯覚に襲われる。これはノーベル賞を獲れるなと感嘆せざるを得ない。 芥川賞受賞の『飼育』を含む6作から成る短編集である。いずれも非常に読み応えがあ...
大江健三郎は初読。 1作目から度肝を抜かれた。背景描写や心情描写があまりにも生々しい。作中の非日常世界をまるで自分が体験しているような錯覚に襲われる。これはノーベル賞を獲れるなと感嘆せざるを得ない。 芥川賞受賞の『飼育』を含む6作から成る短編集である。いずれも非常に読み応えがある。そして読みやすい。どれも珠玉の作品であることに疑いはないが、私は『人間の羊』『戦いの今日』が気に入った。 駐在米軍兵に羊のような辱めを受け、それをただ眺めていた教員を嫌悪する『人間の羊』。 朝鮮戦争を恐れる米兵を助ける羽目になった兄弟を描く『戦いの今日』。 どちらもされるがままの抑圧された人間と、抑圧する強者の関係性が強調されている。 大江の思想には共感できないが、彼の文章には政治的思想を超えた普遍的文学性があるように思える。
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表題の2作を読んだ。飼育は芥川賞受賞ということだが、自分にはそれほど優れているようには思えなかったが、それは自分の理解度が低いということの証だと思う。
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私の感じるところでは、大江健三郎の文体は非常に冷淡でありながら、吐き気を催すほど生々しく肉薄してくるところがある。 読むという行為を、ただ読むという行為に収めさせないほどの膂力を感じる。他の作家でも感じなかった訳ではないが、この程度は初めてだ。 今まで彼の本を読んでこなかったこと...
私の感じるところでは、大江健三郎の文体は非常に冷淡でありながら、吐き気を催すほど生々しく肉薄してくるところがある。 読むという行為を、ただ読むという行為に収めさせないほどの膂力を感じる。他の作家でも感じなかった訳ではないが、この程度は初めてだ。 今まで彼の本を読んでこなかったことを後悔している。他の著作も読んでいく。
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かつて、繰り返されるモチーフや同じテーマに新鮮味を感じなくなり、次第に飽きてしまった。 今読み返すと、社会の閉塞感や戦後のどうにもならない感情の息詰まり、それらと青年が対峙する世界をひしと感じる。 他の作品も読んでみようかと思う。
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比喩的表現に圧巻。 ただあまりに多用にされるため、時に読みづらさを感じてしまう場面もあった。 個人的に整理したテーマは以下の通り。 『死者の奢り』:生と死の曖昧さ、その中間に生きる人間の葛藤。自分で生きているのすら曖昧なのに、新しくその上に曖昧さを生み出さなければならない重大...
比喩的表現に圧巻。 ただあまりに多用にされるため、時に読みづらさを感じてしまう場面もあった。 個人的に整理したテーマは以下の通り。 『死者の奢り』:生と死の曖昧さ、その中間に生きる人間の葛藤。自分で生きているのすら曖昧なのに、新しくその上に曖昧さを生み出さなければならない重大さ。という女学生の言葉が刺さった。母になるとはすごい事だなと改めて感じたが、管理人が言うように人が生まれて死ぬ事にはなんの意味もない無駄なことなのかもしれない。 『他人の足』:障害者としての劣等感•隔絶•放棄→希望の創出→裏切り→隔絶 明るい方向性で話が終わるのかと思えば、少年の裏切りによってより深い悲しみへと追いやられる主人公。障害と共に生きることの厳しさを見せられたような気がした。 『飼育』:個人的には一番好き。『他人の足』同様、黒人兵への接近•裏切りを通して、主人公の少年が自身のアンファンテリズムと決別する。(大人)社会の厳しさを教えられた気持ちになる。映画、『グリーンマイル』を彷彿とさせる。 その他、傍観者に対する嫌悪と侮蔑。エゴイズムなど。 大江作品は初めて読んだが、現実世界に目を背け、夢物語で終わらない所が好き。他の作品も買ってるので早く読んでみたい。
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芥川賞受賞作「飼育」を含む、最初期の短編集。戦中、戦後GHQ統制時代の色濃い背景の作品が並んでます。 大江健三郎未読だったので、今回、主要作品をおとな買いし、少しずつ読んでいきたいと思ってます。20代前半でこれだけ濃密な小説を書けるなんて、ほんと凄いですね。まあ、芥川賞を取る人は...
芥川賞受賞作「飼育」を含む、最初期の短編集。戦中、戦後GHQ統制時代の色濃い背景の作品が並んでます。 大江健三郎未読だったので、今回、主要作品をおとな買いし、少しずつ読んでいきたいと思ってます。20代前半でこれだけ濃密な小説を書けるなんて、ほんと凄いですね。まあ、芥川賞を取る人は総じてお若い方が多いのだけど。 で、ネットでコメント見てると、大江さんの初期作品は難解だとか読みにくいとか結構出てますが、この1冊に限って全然それはなく、楽しく短時間で読めました。 確かに昔、「同時代ゲーム」にトライして音を上げた経験もあるのだけど、安部公房氏に比べると格段にわかりすいというのが個人的感想。 まあ自身の読解力が向上したせいだと思うようにしたい。 どれも読み応えのある短編6短編編だけど、表題となっている、「死者の奢り」「人間の羊」が特によかった。いくつかの作品に、黒人兵に対する差別表現や感情が出すぎていることは、進駐軍や朝鮮戦争動員での影響があるのかもしれないけど、今の時代での読書の隔世感という点で少し気になりました。 なかなか根が深くて感想らしい感想を書けません。自分にも大江健三郎を十分読めることがわかったのが最大の収穫ということでいいかとw
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閉鎖的な環境にいる人々の心の動きを描いた短編集。こういう重たい本久しぶりに読んだ。 お目当てだった『飼育』は、ごちゃごちゃした文章でとっても読みにくかった。読みにくくて眠くなるのをこらえてどうにか読み切ったって感じ。この文体が味なんだろうけど私には合わなかった… 全編通して主人公...
閉鎖的な環境にいる人々の心の動きを描いた短編集。こういう重たい本久しぶりに読んだ。 お目当てだった『飼育』は、ごちゃごちゃした文章でとっても読みにくかった。読みにくくて眠くなるのをこらえてどうにか読み切ったって感じ。この文体が味なんだろうけど私には合わなかった… 全編通して主人公の閉塞感とか虚無感が描かれており、中でも『人間の羊』はズンとくるお話だった。他の話は時代の違いを多分に感じたけど、正義感を振り回す傍観者への嫌悪みたいなのは今でもあるあるだよなぁと思う。 昭和34年発行ということで今ではありえない差別描写のオンパレードだった。人種差別がやばい。
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最近の文学だけではなく、幅広く現代文学を…と思い手に取った本作。 昭和中期から平成後期までの日本文学を牽引したとされる、大江健三郎さんの芥川賞・受賞作品。 うーーーん…正直ちょっと面白さは良くわからなかったかなぁ… 圧倒的な文章の美しさっていうのは何となく感じることができたん...
最近の文学だけではなく、幅広く現代文学を…と思い手に取った本作。 昭和中期から平成後期までの日本文学を牽引したとされる、大江健三郎さんの芥川賞・受賞作品。 うーーーん…正直ちょっと面白さは良くわからなかったかなぁ… 圧倒的な文章の美しさっていうのは何となく感じることができたんですけど、なにせ文章自体の読みにくさと、全体的な暗さがシンドくて… 加えて、時代背景の分かりにくさというのも要因としてはあったのかもしれませんが… ただ、この作品を若干23歳で書き上げる非凡さというか…そのエグさは体験することができたかもなと(笑) 調べてみると、中期以降(「万延元年のフットボール」以降)から作風が変わっていて、そこからは前向きで明るい作品多いらしいです。 なので、再度そっちにはトライしてみようかな…と(´∀`) <印象に残った言葉> ・これらの死者たちは、死後ただちに火葬された死者とはちがっている、と僕は考えた。水槽に浮かんでいる死者たちは、完全な《物》の緻密さ、独立した感じを持っていた。死んですぐ火葬される死体は、これほどまでに完璧に《物》ではないだろう、と僕は思った。あれらは物と意識との曖昧な中間状態をゆっくりと推移しているのだ。それを急いで火葬してしまう。あれらには、すっかり物になってしまう時間がない。(P19) ・僕はもう子供ではない、という考えが啓示のように僕をみたした。兎唇との血まみれの戦、月夜の小鳥狩り、橇あそび、山犬の仔、それらはすべて子供のためのものなのだ。僕はその種の、世界との結びつき方とは無縁になってしまっている。(P156) ・僕は唐突な死、死者の表情、ある時には哀しみのそれ、ある時には微笑み、それらに急速に慣れてきていた、村の大人たちがそれらに慣れているように。(P160) <内容(「BOOK」データベースより)> 屍体処理室の水槽に浮き沈みする死骸群に託した屈折ある抒情「死者の奢り」、療養所の厚い壁に閉じこめられた脊椎カリエスの少年たちの哀歌「他人の足」、黒人兵と寒村の子供たちとの無残な悲劇「飼育」、バスの車中で発生した外国兵の愚行を傍観してしまう屈辱の味を描く「人間の羊」など6編を収める。学生時代に文壇にデビューしたノーベル賞作家の輝かしい芥川賞受賞作品集。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
初めて大江作品を読んだが、具体的かつ特異な舞台設定に引き込まれる。 短編集ということもあり、閉塞→嫌悪や恐怖を孕んだ壁外からの刺激→親しみや恐怖の融解→猟奇の再発→死等をきっかけとした主人公の成長・解放という流れがとてもわかりやすく、無駄なく感情移入しやすい。 特に『飼育』『他人の足』『戦いの今日』が好きでした。 大江作品にハマるきっかけになりそうだ。
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