死者の奢り・飼育 の商品レビュー
「死者の奢り」「飼育…
「死者の奢り」「飼育」のほかにも「他人の足」「人間の羊」「不意の唖」「戦いの今日」といった短編が収録されています。「死者の奢り」に出てくる女学生の台詞にとても共感しました。
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『飼育』は芥川賞受賞…
『飼育』は芥川賞受賞作で『死者の奢り』は候補作に。難しい文体で読みづらい。
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ノーベル賞作家として名高い大江氏による芥川賞受賞作も含む初期短編集。どれも政治的・社会的テーマで、とても二十代が書いたとは思えない内容であった。好き嫌いの分かれる作家のようだが、共感する部分は多く、個人的には面白く読めたので、他の作品も読んでみたいと思う。
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ある日突然貸してくれた本。初めて一緒に働いた日に、私が伊丹十三の話をすると彼は大江健三郎を私に教えてくれた。マニュアルの端に急いでメモをとり、マニュアルに書くのはあんまよくないかってそのあと自分のメモ帳に書き写した。今もそれを使ってる。少し朽ちている。 当時芥川賞を受賞したときの...
ある日突然貸してくれた本。初めて一緒に働いた日に、私が伊丹十三の話をすると彼は大江健三郎を私に教えてくれた。マニュアルの端に急いでメモをとり、マニュアルに書くのはあんまよくないかってそのあと自分のメモ帳に書き写した。今もそれを使ってる。少し朽ちている。 当時芥川賞を受賞したときの年齢が23歳。それぐらいの年齢の子たちと今暮らしてる。朝椅子に座って、夜ソファに転がって、同じ空気を吸いながら読んでた。海で読んだら気持ちいいだろうなって港へも連れて行った。読みたがっている女の子がいたけれど、彼女は借りずに帰った。 彼に読んだことを伝えると急に人が死ぬでしょって笑ってた。本を貸してくれたことをどれだけの人に自慢しちゃったかな。初めて読んだ彼の本。
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生々しくて厳しい世界観。その中で生きていく人間の、生物としての生命の躍動をどくどくと感じられる。 場面は端から一つ一つ丁寧に、そして正確に表現されていく。それによりじわじわと空気感が体に染み渡っていく読書感がクセになる。 文体に関しては熟語が多く、厳格でかちっとしていて、これも世...
生々しくて厳しい世界観。その中で生きていく人間の、生物としての生命の躍動をどくどくと感じられる。 場面は端から一つ一つ丁寧に、そして正確に表現されていく。それによりじわじわと空気感が体に染み渡っていく読書感がクセになる。 文体に関しては熟語が多く、厳格でかちっとしていて、これも世界観にマッチしていて好み。 大江健三郎いいな。この作品で初めて読んだが、かなり好きだなと思える作家で、出会えて嬉しい。
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義父の本棚にあったので何気なく手に取ってみた 人間が複数存在する状況において否応なく発生する緊張感や暗黙の了解についての、解像度や描写力がバケモンすぎる…
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著者の作品は初めて読んだが、特に“飼育“では遠藤周作みを感じた。黒人を“獣“として見物する描写が特に。飼育の前半は少し読みずらかった。 死者の奢りは芥川賞特有の雰囲気があり、まさか死体整理のバイトの話とは、題材が衝撃であったが、妊娠中の女学生が登場するのは取ってつけたように感じた。段取りが異なるとして作業がやり直しになるなど、面白いことは面白いが。 他人の足では、同士としてどんな話をしようが例え仲良くなろうが、あくまで同士だからという前提がとても強く、同士ではなくなる(足を得る)と根底が崩れ、もう元の関係には戻れないという当たり前ながらも複雑な現実について。 一番好みの話だった。
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1950年代後半から1960年代にかけて、戦後の鬱屈とした社会が生々しく描かれている。 実存主義から構造主義に移行していくような、社会規範のあり方が大きく変わろうとしていた時代。 どの短編にも共通するのは、変わりゆく時代に敏感な(何かを期待されている)若者たちが主人公ということだ...
1950年代後半から1960年代にかけて、戦後の鬱屈とした社会が生々しく描かれている。 実存主義から構造主義に移行していくような、社会規範のあり方が大きく変わろうとしていた時代。 どの短編にも共通するのは、変わりゆく時代に敏感な(何かを期待されている)若者たちが主人公ということだ。 社会正義を押し付けられ、何者かにならなければならないような空気感に抑圧されている学生や、残酷で不寛容な社会で成長せざるを得ない子どもたち。 当時の人たちが外国人をどのように客観していたのか、令和に生きる私は、私たちの主観で、大江健三郎の文体によって、それを生々しく、悲しく体感させられた。
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※このレビューにはネタバレを含みます
芥川賞受賞の表題作「飼育」を含む初期の短編をまとめたもの。 ほかにもノーベル賞も受賞。受賞理由はからっきし意味不明ですが、ネットに落ちているNHKの方の解説を読むと、どうやら現代日本社会を描いたから、ということ!? よくわからん。 ただ、本作を読んでありありと感じたのは、偽善へのシニカルな目線・退廃的ムード・諦めと閉鎖性、このようなワードが思い浮かぶ作品群であったと思います。 ・・・ 以下は作品と寸評です。 「死者の奢り」・・・表題作。解剖用死体を大型水槽からもう一つへ移し替えるというバイトをした「僕」。場面設定が特殊であるものの、得も言われぬ退廃的なムードが印象的な小品。 「他人の足」・・・未成年の脊椎カリエス患者を収容した一種の閉鎖病棟の話。退廃的な慰みを看護師に強要?しているような病棟であったものの、とある「新入り」大学生患者が皆を感化し良化していく。しかし、最後にこの大学生が何とかここを出ることが出来るとなると、もとよりいる患者を汚らわしいものを見るかのように突き放す。ここに善意の欺瞞の薄っぺらさが見て取れる。 「飼育」・・・とある隔絶された村に不時着した米軍飛行機。生きていた黒人兵を指示があるまでその村にとどめおく(まさに「飼育」)様子を綴る。牧歌的な交流が大部分を占めるも、移送される段になり、黒人が逆上し、最後はあっけない結末に。 「人間の羊」・・・占領下のバスでの出来事。米兵に屈辱的な仕打ちを受けた「僕」と、眼前では無抵抗の観客であるも、事後の「僕」に告発させようと躍起になる「教員」との偏執狂的やり取り。居合わせた当事者としては何もしなかった「教員」の第三者的物言いが鼻につく。これもまた「外野」の偽善的欺瞞が匂う作品。 「不意の唖」・・・上記の「飼育」を彷彿とさせるとある山村。今度は米兵とその通訳がこの村に訪れる。強い側についた通訳の高飛車な態度が次第に村人の気持ちを逆撫でし、遂に通訳は。。。ホラーチックな作品。 「戦いの今日」・・・朝鮮戦争時の日本で、米兵に脱走を唆すビラを配る兄弟。ちょっとしたバイト感覚のビラ配りも、脱走志望者が出てきてたじろぐ兄弟。引き受けたくない兄と、何とかしたい弟。結局かくまうことになるも、とある晩に脱走兵に潜むアジア人蔑視を嗅ぎ付けた兄は当の兵士をぼこぼこにして。。。 ・・・ ということで久方ぶりの大江作品でした。 とんがっていてなかなか面白かったです。他の作品もまた読んでみたいと思います。
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まだ読み切っていないが、表題作を読んだので残しておく. 生々しくジメジメした描写は良いが、結局何を主張したいのかが不明瞭. そして、これは恐らくどんなに文学的知識をつけても自分にはわからない気がする. 短編ではなく長編の大江健三郎を読んでから、彼の自分の中での評価を定めたい...
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