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死者の奢り・飼育 の商品レビュー

4.1

197件のお客様レビュー

  1. 5つ

    63

  2. 4つ

    68

  3. 3つ

    41

  4. 2つ

    6

  5. 1つ

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2023/12/01

この手ごたえだけ重い、 不可解な縺れをとくことはできないな。 生きている人間を相手にしているのでは、 決してそれは、やれないな。

Posted byブクログ

2023/10/24

テーマがすごい。描写がすごい。 冒頭の一節から、足し引きのない形容によって衝撃的な光景が生々しく描かれ、作者独特のその描写は最終話まで途切れることなく続きます。閉鎖された空間、そこに置かれた人たちの心理、行動、息遣い、発する言葉、見えないけれども確かに存在する外界との境界、その全...

テーマがすごい。描写がすごい。 冒頭の一節から、足し引きのない形容によって衝撃的な光景が生々しく描かれ、作者独特のその描写は最終話まで途切れることなく続きます。閉鎖された空間、そこに置かれた人たちの心理、行動、息遣い、発する言葉、見えないけれども確かに存在する外界との境界、その全てに生臭い人のさがが見え隠れします。ページをめくる度にその隙間から体臭の混じる湿り気を帯びた空気が漏れ出てくるようです。 好みはさておき、すごい作品群です。気になる一節を読み返してみると、作者の意図する世界感を体温や感触をともなって自分なりに体現できて、よくこんな文章が書けるものだと感心してしまいます。芥川賞、ノーベル文学賞受賞は伊達ではないな、などと偉そうに思う次第です。気が向いたら是非ご一読ください。 追伸 食事の前後と就寝前は避けて読んでいただいたらと思います。折角の料理が美味しくいただけなくなるかもしれません。美味しくいただいたはずの食事が残念なデザートで台無しになったような気持ちになるかもしれません。妙に頭が冴えて寝つきが悪くなったり、目覚めの悪い朝を迎えたりするかも知れません。 余計なお世話でした。

Posted byブクログ

2023/10/11

死者の驕りはすれ違った老人のシーンがビシッと印象に残ってる。1番好きなのは飼育で、短編として完璧すぎると思ったのは他人の足、最後の一文が忘れられないのは人間の羊、でしょうか。

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2023/09/17

芥川賞受賞作「飼育」を含む6編の短編集。 初めて大江健三郎氏の作品を読んだが、大変良かった。 時代を背景に、生と死、田舎の村の閉塞感、米兵と日本人の関係、子どもの好奇心と残酷さ、罪悪感と勝手な正義感、大人になるという事…などが描かれている。 ジワジワ追い詰められていく感じが、たま...

芥川賞受賞作「飼育」を含む6編の短編集。 初めて大江健三郎氏の作品を読んだが、大変良かった。 時代を背景に、生と死、田舎の村の閉塞感、米兵と日本人の関係、子どもの好奇心と残酷さ、罪悪感と勝手な正義感、大人になるという事…などが描かれている。 ジワジワ追い詰められていく感じが、たまらない。 本作のテーマを理解できたかどうかはわからないが、共感、納得できる箇所は随所にあった。 どの作品も深くて、読後は余韻が残り考えさせられる。文学の良さって、こういう事か。 印象深かったのは、「死者の奢り」「飼育」「人間の羊」 今後は、大江氏の作品を少しずつ読み進めながら、 追悼の意を表したい。

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2023/09/11

末尾の江藤淳の解説を読むと、暗さの中に美が〜、という評があった。しかし私はこの短編集を読んで、粘り気の強い暗さが終始付き纏う感覚があった。どの短編も結末が好きで、久しぶりにスッキリした読み応えだった。 特に、「死者の奢り」「他人の足」が好き。けれど粘っこいセクスは好きではない。 ...

末尾の江藤淳の解説を読むと、暗さの中に美が〜、という評があった。しかし私はこの短編集を読んで、粘り気の強い暗さが終始付き纏う感覚があった。どの短編も結末が好きで、久しぶりにスッキリした読み応えだった。 特に、「死者の奢り」「他人の足」が好き。けれど粘っこいセクスは好きではない。 全体を通して20代に発表した作品とは思えない。 障害を持つ人々、外国兵や人種に関して、大江の抱く考えが知りたい。

Posted byブクログ

2023/09/05

初めて大江健三郎を読んだ。 彼の文章からは、グロテスクとも言えるほどの迫力と緻密な論理表現が共存している感じを受ける。人間の中のドロドロとした感覚をここまで明確に表現できるのかと、鳥肌が立つ。 そして、大江が抱えている問題意識や鬱積がまざまざと伝わってくるストーリー。価値観の転回...

初めて大江健三郎を読んだ。 彼の文章からは、グロテスクとも言えるほどの迫力と緻密な論理表現が共存している感じを受ける。人間の中のドロドロとした感覚をここまで明確に表現できるのかと、鳥肌が立つ。 そして、大江が抱えている問題意識や鬱積がまざまざと伝わってくるストーリー。価値観の転回やコンプレックスを社会に引き起こした戦後に青年期を過ごした大江の描く物語は、平穏な時代をのうのうと過ごす私にとって、得体の知れない獣のように迫ってくるものがあった。

Posted byブクログ

2023/07/13

初・大江健三郎。国語の教科書に出てきそうなくらい文章が上手。一言で簡潔に言えるものを、叙情的かつ具体的に例えて言い換えているのがすごい。「かわいい」をもっと詳しくどんなふうにかわいいのか説明してる的な。その言葉が何を指しているのか考えなければならず、頭を空っぽにしてボーッと読める...

初・大江健三郎。国語の教科書に出てきそうなくらい文章が上手。一言で簡潔に言えるものを、叙情的かつ具体的に例えて言い換えているのがすごい。「かわいい」をもっと詳しくどんなふうにかわいいのか説明してる的な。その言葉が何を指しているのか考えなければならず、頭を空っぽにしてボーッと読めるわけではないけど、文章のリズムが非常によくメッセージ性もある。さすがノーベル賞を受賞するだけのことはあると感じた。 死者の奢り:大学生の僕が死体運搬のアルバイトをしたときの話で、水槽に浮かぶ死体や妊娠中の女子大生、12歳の少女の死体に漂う性的魅力など「生」と「死」の対比が見事。何より文章が上手。人生の真理や滑稽さも考えさせられる。 他人の足:脊椎カリエスの病棟で閉鎖的な日々を送る少年たちの元に新しく学生が入院し、外部との関わりを持つよう働きかけるが…。障害者と健常者、異常と正常という対立から人生の真理を追求。そこには厚い壁があってお互いに関わろうとしていないのが現実。自分の足で立つ人間は非人間的だ。 飼育:「町」か差別的な扱いを受ける谷底の村の人々が、黒人兵に対してまた差別的な扱いを行うという構造がおもしろい。短いけれど黒人兵との交流を通して親睦を深める様子がよくわかり、時には情欲的な何とも言えない感情が起こる描写も見事。生と死、子供と大人の違いなど、オチまで読むといろいろと考えさせられる。 人間の羊:当事者の気持ちを無視して勝手に盛り上がる外野との対比が見事。フィクションなのにノンフィクションかのようなリアルな心情描写で、ああいう教師みたいな迷惑おせっかいの人っているなと感じた。 不意の啞:外国兵に対する興味関心が、あるできごとをきっかけに急速に失われる。それは戦後の日本がどうなっていくのかという期待がなくなっていく様を表しているのかもしれない。権力・暴力を盾にするのは人間として非常に滑稽で、対等に語り合おうとしないのは穢らしい。 戦いの今日:読み終わってからタイトルをあらためて見ると「なるほど」と思う。戦いはまだ終わっていない。左翼は煽るだけ煽って責任を取らずただそのときの鬱憤をビラを撒くという行為で晴らしていたのかなと少し思った。米国人に情欲が掻き立てられても、結局日本人は米国人から侮辱され、対等の立場にはなり得ない。いつまで経っても日本人は負けるのだ。

Posted byブクログ

2023/06/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

死体処理のアルバイトの話「死者の奢り」、山奥に墜落した黒人兵と村人との間に起こった悲劇「飼育」のほか、「他人の足」「人間の羊」「不意の唖」「戦いの今日」の計六編収録。 これらの作品は「監禁されている状態、閉ざされた壁のなかに生きる状態を考えること」だったという。(「解説」より) 隔離病棟で鬱屈と暮らす少年たちのもとに新しい患者がやってきて、社会の注意を寄せようと活動を行うさまを描いた「他人の足」はわかりやすく面白い。 また、バスのなかで外国人兵から辱めを受けた青年に、その様子を傍観していた教員が、社会に公表するために恥をさらす犠牲を迫る「人間の羊」も、ぞっとする読後感。 「人間の羊」「不意の唖」「戦いの今日」は他者からの圧力に耐える(静かに反抗する)様子を描いている。(「戦いの今日」では耐えきれずに爆発してしまうが) 文節の順序、読点の少なさと位置などの影響で、修飾・被修飾の関係や目的語がわかりづらく、スムーズに読み進めるのが難しい。

Posted byブクログ

2023/06/15

これまで大江健三郎を読んだことがなかった。メガネをかけたいかにもものかきといった風貌が好きなれず、確か万延元年のフットボールを購入したが、読まずにそのまま本棚に突っ込んでいる。(はず)大江が亡くなられてこの際読んでおかなくてはと処女作を購入してみた。飼育、人間の羊、不意の唖、戦い...

これまで大江健三郎を読んだことがなかった。メガネをかけたいかにもものかきといった風貌が好きなれず、確か万延元年のフットボールを購入したが、読まずにそのまま本棚に突っ込んでいる。(はず)大江が亡くなられてこの際読んでおかなくてはと処女作を購入してみた。飼育、人間の羊、不意の唖、戦いの今日と戦中から戦後の占領下の状況とその中で翻弄される人々の生活に目を向ける視点が印象的だった。これから少しづつ大江も読んでいこうと思わせる大江ワールドの幕開けだった。

Posted byブクログ

2023/06/01

短編集ですが、後の作品になるにつれてどんどん面白く感じました。主人公は、みんな怒っていますね。最初の方の作品は、読点の位置が変わっていて読みづらく感じました。

Posted byブクログ