死者の奢り・飼育 の商品レビュー
みんなそろって気持ち悪い気持ち悪いなんていうから読むのをためらっていたわけなんだけど、これが素晴らしい。 世界を人間の色で描いている。抽象的な意味でなく、動脈血の赤、肝臓の茶色、膵臓の白のような色が小説にあふれる。 こう表現するとグロテスクだが、人間を感動させるのは人間だけなので...
みんなそろって気持ち悪い気持ち悪いなんていうから読むのをためらっていたわけなんだけど、これが素晴らしい。 世界を人間の色で描いている。抽象的な意味でなく、動脈血の赤、肝臓の茶色、膵臓の白のような色が小説にあふれる。 こう表現するとグロテスクだが、人間を感動させるのは人間だけなのである。
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高校時代に講演に来られたことがあり、拝読しました。文体や時代設定は古いのですが、本質的なテーマは色褪せていません。閉ざされた世界での生を通して人間の性(さが)を、精緻な文章で読み手は押し付けることなく直視させられます。上質な本は、各々の時代から生まれ流されず遺ります。
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1957〜58年、東京大学在学中の作品群。最初期の短編集。<収録作品> 死者の奢り 他人の足 飼育 人間の羊 不意の唖 戦いの今日
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人間の醜い部分、死を目の当たりにした人間の変貌。。 救いがない。 どれも短い話なのに重くて暗くて閉鎖的。
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黒人兵と寒村の子供たちとの惨劇を描く「飼育」等6編。豊饒なイメージを駆使して、閉ざされた状況下の生を追究した初期作品集
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芥川賞受賞作品「飼育」を含む、大江健三郎の初期短編集。「他人の足」「飼育」など、少年達の世界(とその崩壊)がみずみずしい文体で描かれている一方で、「人間の羊」「戦いの今日」など、戦争に関連したグロテスクな大人の世界を描いたものも存在する。
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短編集。 べたべたと張り付くような表現をしながら死についての物語。 物質的な死と精神的な死。 体が死んでから魂の生が始まるのだ。
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物語の主人公は、医学部で募集中のアルバイトに応募し、採用される。 彼が案内されたのは、大学の地下の死体置場であった。 仕事は、一緒に採用された女子学生と2人で、古くなったプールから 新しいプールへと、死体を移し替えることだった。 物言わぬ死体を相手に、黙々と作業をこなしな...
物語の主人公は、医学部で募集中のアルバイトに応募し、採用される。 彼が案内されたのは、大学の地下の死体置場であった。 仕事は、一緒に採用された女子学生と2人で、古くなったプールから 新しいプールへと、死体を移し替えることだった。 物言わぬ死体を相手に、黙々と作業をこなしながら、彼はやがて 死後もなお、「物」として存在し続ける死体達に、疑問を抱き始める・・・・。といった内容です。都市伝説で有名な「死体洗い」のバイトの噂が、ここから広まったのではないかという説もあり、非常に興味深いです。
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青年期である”僕”の純粋でありながらも危うさを伴った感情の変遷があまりにも綺麗だなって思いました。 心の奥底の”何か”を確かに感じていながら、それをわが手中に収めることのできないもどかしさと、あきらめにもにた少し乾いた空気とが妙にリアルです。
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陰湿感漂う文章でここまで魅せるのはさすが。特に『飼育』は戦時中日本人の子供の視点で見た黒人捕虜の話で、圧倒的表現力に引きずり込まれるばかり。
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