死者の奢り・飼育 の商品レビュー
社会的な立場や状況によって規定される人間関係の揺らぎみたいのが、生々しい。理不尽さとか、いらだちとか、期待とか。
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六篇の作品の中で面白いと感じられたのは三篇。 死者の奢り、他人の足、不意の唖。 同年代に生まれていたら、印象が違ったかもしれない。 飼育は終わりが良かった。 死者の奢り 冒頭の描写の重厚さに引き込まれる。粘液質に覆われた生者が≪物≫と違って張りのある感情を持ち得ることがこの上な...
六篇の作品の中で面白いと感じられたのは三篇。 死者の奢り、他人の足、不意の唖。 同年代に生まれていたら、印象が違ったかもしれない。 飼育は終わりが良かった。 死者の奢り 冒頭の描写の重厚さに引き込まれる。粘液質に覆われた生者が≪物≫と違って張りのある感情を持ち得ることがこの上なく素晴らしいことのように感じられる一方、とてつもなく煩わしい。僕が経験する出来事には多くのテーマが内包されているが、共通して表現されているのは生きていく上での面倒、煩雑さであるように思う。 作中で一番心に残ったのは、なぜか、僕がギプスを躰中にはめた‘少年’の顔を覗き込む場面である。
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すごくどきどきした。 描写がすごく丁寧だ。閉鎖された空間の中で登場人物の移り変わっていく心情がぞわぞわと伝わってきて、気持ちが動かされる。特に、恥ずかしさを感じるところや黙り込むようなところの描写がじわじわと印象に残る。戦後の作家だと感じる部分も多い。全体的にとても緻密というかふ...
すごくどきどきした。 描写がすごく丁寧だ。閉鎖された空間の中で登場人物の移り変わっていく心情がぞわぞわと伝わってきて、気持ちが動かされる。特に、恥ずかしさを感じるところや黙り込むようなところの描写がじわじわと印象に残る。戦後の作家だと感じる部分も多い。全体的にとても緻密というかふわっとしたところが一切ない文体と構成で、読んでいて緊張感がある。と感じた。濃密。
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長いあいだ途中放棄してたが急に興味が出てきて読み終わった。 「閉じ込められている」…まさにそんな感じだ。空気が濃密になりすぎている。正直、だんだん嫌になってくる短篇集。 しかしそれだからこそ訴える力があるのだろうとも思う。この抗議と敵対心を、どう解するか。この伝染してくる、陰湿な...
長いあいだ途中放棄してたが急に興味が出てきて読み終わった。 「閉じ込められている」…まさにそんな感じだ。空気が濃密になりすぎている。正直、だんだん嫌になってくる短篇集。 しかしそれだからこそ訴える力があるのだろうとも思う。この抗議と敵対心を、どう解するか。この伝染してくる、陰湿な敵意を どう受け止めるのか。 敵意と和解。繰り返し繰り返し。ここに弁証法は機能しない。。 「他人の足」「飼育」がひどく印象に残っている。敵味方、偽者、マジョリティ。子ども、親密性の境界線、恭順。
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全編において閉塞感が漂う。 大学の死体置き場、サナトリウム、村、バス、世相の中で。 閉じた場所に於いて外部から自分とは違う異質なものと邂逅した時、 人は何を考え感じるのか。 読んでいて何かがどろどろと絡みついてくる。 不快な物のような、怖い物のような、或る種の虚しさのような。。
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読む前は大江健三郎さんのことを歴史書を書くような古臭い人だと勝手に思い込んでいた。実際は写真で見る限り容姿は優しそうだし、作品は歴史でもなければ、古臭くもない文学作品なのだがら、少し拍子抜けしてしまった。 数ページをパラパラと眺めてみて、遠藤周作みたいな感じかなと思ったが、読ん...
読む前は大江健三郎さんのことを歴史書を書くような古臭い人だと勝手に思い込んでいた。実際は写真で見る限り容姿は優しそうだし、作品は歴史でもなければ、古臭くもない文学作品なのだがら、少し拍子抜けしてしまった。 数ページをパラパラと眺めてみて、遠藤周作みたいな感じかなと思ったが、読んでみるとどうも違う。 遠藤さんほど静寂さと心の救済がなく、もっと水っぽく生暖かい湿った感じの作品だった。 臭いを想像してしまうような文章で、やるせないものの終わり方をするのに、不快な気持ちにならない。 なんだか登場人物の主人公たちのように、「そうれなら仕方ないんだ」と疲れてうなだれているが、それでも仕方なしに他人と接しなければいけない時の心境にこっちもなってくる。 面倒だし疲れるが、結局私はこの本が好きになってしまった。
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6つの短編それぞれが人間のエゴ、不条理な行動、憎しみ、復讐心と、復讐を果たしたあとの虚しさを綴り、読み手の心を揺さぶる。 物語りの背景や、多数出てくるの差別用語に時代を感じる。 極限の状況が人間の狂気を目覚めさせることを強い説得力を以って語られる。
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表題の短編を含むが、どちらもシチュエーションの設定が(少なくとも現在から見れば)奇抜。 その奇抜な設定の中で、鬱屈とした感情をどんよりと描いている。 環境に抑圧された爆発寸前の、でも決して大きな爆発はしない、歪んだような人間性が描かれております。
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これが生きるということだとおもう。わたしはわたしでしかありえなくて、それは他のすべてのひとももちろんそうで、人間存在の根本的な孤独は暴力を孕んでいて、生きるというのは暴力に晒され続けることだと。もしかしたら暴力を超えて何かを共有しようと試みることでもあるのかもしれないけど、とにか...
これが生きるということだとおもう。わたしはわたしでしかありえなくて、それは他のすべてのひとももちろんそうで、人間存在の根本的な孤独は暴力を孕んでいて、生きるというのは暴力に晒され続けることだと。もしかしたら暴力を超えて何かを共有しようと試みることでもあるのかもしれないけど、とにかく、本書に刻印されているのは孤独と暴力のかたちだった。敗戦による屈折もあちらこちらに読み取れるが、92年生まれのわたしにとって最も響くのは歴史や当時の社会状況、精神的在り方を越える、もっと根本的なもの。 「生きている人間と話すのは、なぜこんなに困難で、思いがけない方向にしか発展しないで、しかも徒労な感じがつきまとうのだろう、と僕は考えた。教授の躰の周りの粘膜をつきぬけて、しっかりその脂肪に富んだ躰に手を触れることは、極めて難かしい気がした。僕は疲れが躰にあふれるのを感じながら、当惑して黙っていた。」
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大学入試の直後(最中だったかも)に読んで、その文体に衝撃を受けました。「ブンガク」のパワーってすごい、と感動した記憶があります。 長崎大学:環境科学部 教員 正本忍
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