1,800円以上の注文で送料無料

の商品レビュー

4

307件のお客様レビュー

  1. 5つ

    101

  2. 4つ

    83

  3. 3つ

    67

  4. 2つ

    19

  5. 1つ

    2

レビューを投稿

2019/12/16

短編集と知らずに読み始めたが、この本は短編集である。壁をモチーフにして、ちょっと変わった世界に足を踏み入れた主人公たちが奮闘する。ちょっと寓話的な雰囲気もある。物語がどんどん現実離れした世界へと転がっていくので途中で何度も置いてけぼりになってしまったが、人間の孤独と空想みたいなテ...

短編集と知らずに読み始めたが、この本は短編集である。壁をモチーフにして、ちょっと変わった世界に足を踏み入れた主人公たちが奮闘する。ちょっと寓話的な雰囲気もある。物語がどんどん現実離れした世界へと転がっていくので途中で何度も置いてけぼりになってしまったが、人間の孤独と空想みたいなテーマがあるのかな?と感じた。シュールレアリズムという哲学の用語が深く関係してるようなので、それについてしっかり知識を持てばもっと深く読み解けるかも。一番最後に載っている短編『事業』のインパクトが強すぎて、それまでの物語の印象が吹っ飛んでしまった感はある。

Posted byブクログ

2019/12/08

「壁」と「砂漠」という安部公房のキーワードが、今回の一冊にも盛り込まれた芥川賞受賞作。現実からかけ離れた設定は、シュールレアリスムそのものだが、背中合わせてで現実を非難している覚悟が見えてくる。

Posted byブクログ

2019/10/15

初めての安部公房。 「既視感」のある小説だった。 シュールレアリスムの世界である。 またあらためて読み直したい。

Posted byブクログ

2019/09/10

幻想小説なのか、ディストピア小説なのか。 「理性」が問われていた時代。人々が活字を欲し、娯楽を欲し、小説を欲していた時代の小説。 理性或いは論理が暴力的に主人公に襲いかかる。全く了解不能の論理によって主人公たちは窮地に陥り、そして絶望へ至る。 この物語を通してどういう体験があ...

幻想小説なのか、ディストピア小説なのか。 「理性」が問われていた時代。人々が活字を欲し、娯楽を欲し、小説を欲していた時代の小説。 理性或いは論理が暴力的に主人公に襲いかかる。全く了解不能の論理によって主人公たちは窮地に陥り、そして絶望へ至る。 この物語を通してどういう体験があったかをはっきりと言語化するには自分の読書力が不足している。 しかし、物語として奇妙でおもしろい。 p.126『両極という概念・・・(中略)北極と南極との関係がそのいい例です・・(中略)みなさんの部屋もそれに対する極としての世界の果を発見することによって、はじめて真の世界の果たりうるというわけなのであります。』(pp.127) 『この両極という新しい性質の附加にもかかわらず、世界の果てへの出発が壁の凝視にはじまることには変わりないということ、そして旅行くものはその道程を壁の中に発見しなければならぬということ・・』(p.128) 『考えるは休むに似たし』(p.141)

Posted byブクログ

2019/05/27

読了。 「S・カルマ氏の犯罪」「バベルの塔の狸」「赤い繭収録。 芥川賞受賞。 凄くシュールだ。 混乱する。

Posted byブクログ

2019/03/16

まだ10代の頃読もうとして挫折してしまって以来ずっと本棚で眠っていたのを今なら読める気がして何年かぶりに読んでみた。 そしたらすらすら読めるし面白いしで一体なんで昔は読めなかったのかわからないくらい良かった。 それでも今まで読んできた他の安部公房作品よりは馴染みづらくて、自分が...

まだ10代の頃読もうとして挫折してしまって以来ずっと本棚で眠っていたのを今なら読める気がして何年かぶりに読んでみた。 そしたらすらすら読めるし面白いしで一体なんで昔は読めなかったのかわからないくらい良かった。 それでも今まで読んできた他の安部公房作品よりは馴染みづらくて、自分が内容をどれくらい理解できてるのかちょっと不安だけど…。 第二部のバベルの塔の狸が一番読みやすかったし面白かった。

Posted byブクログ

2019/03/02

かなりシュールで理解するのが難しい。「砂の女」よりも難しいと思った。面白い部分ももちろんあったが、結論的なところがわからず、正直言って立ち往生してしまった。これが芥川賞とは、その時代は読み手のレベルが今より高かったのだろう。現在のライトなものがもてはやされる感じは好きではないが、...

かなりシュールで理解するのが難しい。「砂の女」よりも難しいと思った。面白い部分ももちろんあったが、結論的なところがわからず、正直言って立ち往生してしまった。これが芥川賞とは、その時代は読み手のレベルが今より高かったのだろう。現在のライトなものがもてはやされる感じは好きではないが、ここまで難しいと…。

Posted byブクログ

2019/02/15

こんなに訳わからん世界なのに、分かる言葉で分かるかのように書いてくれてる事がもう天才。凄い面白かった。 ちょっとずつちょっとずつ、でも確実にズレていって、最後はとてつもなく変なところに居るのに納得してしまう。なんて天才なの。凄いな〜〜

Posted byブクログ

2019/02/05

さてさて昭和26年の芥川賞の受賞作である事と小学校か中学校の国語の授業で安部公房氏の他の作品(何かは忘れた)に少し触れた以外の一切下準備がない状態で本書の第1部Sカルマ氏の犯罪を読んだ感想を以下に述べる。 一読しただけではなんとも全く訳の分からない展開であり、かつ何かの喩えに満...

さてさて昭和26年の芥川賞の受賞作である事と小学校か中学校の国語の授業で安部公房氏の他の作品(何かは忘れた)に少し触れた以外の一切下準備がない状態で本書の第1部Sカルマ氏の犯罪を読んだ感想を以下に述べる。 一読しただけではなんとも全く訳の分からない展開であり、かつ何かの喩えに満ちたものでもありそうだったのだが、結局話の要点が分からないまま主人公が壁になったところで話が終わってしまった。いまこの時点でいくつか言えることは別に読みにくい文体ではなかった(古臭い文体ではない)ということと、創作とはかくも自由な発想で良いのか(一見脈略のない荒唐無稽なものも認められる)ということと、なぜこの作品が評価されてるのか知りたいということだ。もしかしたら話の要点などなく、単にSカルマ氏がユニークな体験をした、という話なのかも知れない。しかしこの作品が傑作と呼ばれるからには、何かあるのだろうと期待して最後まで読み進めた。他のレビューを見る前に背表紙の次の文章からこの作品が何を示していたのか考察しよう。 背表紙からの引用: ある朝、突然自分の名前を喪失しつしまった男。以来彼は慣習に塗り固められた現実での存在意義を失った。自らの帰属すべき場所を持たぬ彼の眼には、現実が奇怪な不条理の塊としてうつる。他人との接触に支障を来し、マネキン人形やラクダに奇妙な愛情を抱く。そして…。独特の寓意とユーモアで、孤独な人間の実存的体験を描き、その底に価値逆転の方向を探った芥川賞受賞の野心作。 ■ どうせ大した考察はできないのだが、確かにSカルマ氏は名前を失ったお陰で、転落人生とでもいおうか、世界の果に旅に出るまでに人間社会の隅っこに追いやられ、恋人やパパなどの愛する人とも決別させられて最後はただ見渡す限りの荒野にぽつんと1人、成長を続ける壁になってしまったのだ。もう1度カルマ氏の足取りを記録しよう。会社、病院、動物園、裁判、Y子と自宅に帰る、物たちの革命集会、パパの訪問、動物園の約束すっぽかし、マネキンとの会話、世界の果の映画と講演会、部屋の壁を吸い込む、酒場。 朝起きたらSカルマ氏は名前を失っていた。と同時になぜか胸の空洞の陰圧でモノを吸収できる能力を得ていた。また、同時にモノの声を聞くことができる能力も得た。それらはSカルマ氏から平穏な日常を奪い怪奇な人体転落劇に巻き込まれるキッカケになったと言える。これを裏表紙では現実が奇怪と不条理の塊にうつる、と表現されている。Sカルマ氏がハミ出し者にはったのかと言えば、そうではなく、現実が元から可笑しなものだったという表現に聞こえる。また、孤独な人間の実存的体験を描きその底に価値逆転の方向を探った、という下り。これはおそらくこの物語のエッセンスを凝縮したものであるのだろうが、壁になるという一見悲しいオチには価値逆転の芽が含まれているという意味なのだろう。そもそも壁になるといことはどういうことなのだろうか。壁については随所に触れてその意義が書かれている。答えを見たようなものだが、巻末の解説にも目を通した。 解説には壁は内外の仕切りで、砂漠と同質のものであり、安部公房氏は内外の同質性を発見したと書かれている。ふつうは壁の中はこちらの世界、壁の外はあちらの世界で全く別の意味として捉えられる。壁を壊すということは自分の殻を破り、知らない世界に理解を示すような意味で使われる。つまり壁のむこうは実は壁のこちらとあまり変わらないという、純粋さが安部公房氏の作品の特徴であると述べられている。こうなると巻頭の壁は世界を仕切るものではなく、世界への扉というようなことが書かれている事に対しては、壁を壊せば世界が拓けるという事にも捉えられる。Sカルマ氏は壁になったことをどう捉えているのだろうか。文章中では肯定も否定も出てこない。世界の果の映画と講演会から家に帰ったときに彼は壁を見て涙し、壁の営みを讃えた。そして最終的には彼自身が壁になってしまった。最後の一節は「見渡す限りの荒野です。その中で僕は静かに果てしなく成長してゆく壁なのです。」壁になったことを認めた上で楽観も悲観もない。どちらかと言うと営みを讃えた壁になれて嬉しいというニュアンスを感じなくもない。たとえ人間社会から逸脱することになっても彼は自由を手に入れたのかも知れない。 よく分からない事について書くとこういう酷いことになる。本当に難しい作品だ。芥川賞を取ったということだけではこの作品、作風、著者には迎合できないが、何か魅力がある作品だということは分かった。

Posted byブクログ

2018/10/14

高校生以来の再読。ストーリーはほとんど忘れていた。Sカルマ氏の犯罪だけでなく、他の短編も悪夢的なもので、つげ義晴に通じるものもある。

Posted byブクログ