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の商品レビュー

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304件のお客様レビュー

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  3. 3つ

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  4. 2つ

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  5. 1つ

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2022/04/02

壁を隔てた向こう側に行ったら、そんなに理不尽なことに合うんだろうか、というような物語。 それは、夜中と未明の間にある壁であり、地面と空中の間にある壁かもしれない。 実態と影の間にある壁もあるかもしれない。 壁のこちら側でよかったな、あちら側には行きたくないな、という感想。 でも行...

壁を隔てた向こう側に行ったら、そんなに理不尽なことに合うんだろうか、というような物語。 それは、夜中と未明の間にある壁であり、地面と空中の間にある壁かもしれない。 実態と影の間にある壁もあるかもしれない。 壁のこちら側でよかったな、あちら側には行きたくないな、という感想。 でも行きたいとか行きたくないとか、私情を挟ませないのもまた壁である。

Posted byブクログ

2022/03/29

 第一部〜第三部、全六作が収録された短編集。どれも荒唐無稽、意味不明、奇想天外な世界観で、入り込めるものと全く入り込めないものとあった。個人的には代表作かつ芥川賞受賞作の「S・カルマ氏の犯罪」が圧巻だった。読み始めてしばらくは頭の中がクエスチョンマークで覆われる。でも次第にその世...

 第一部〜第三部、全六作が収録された短編集。どれも荒唐無稽、意味不明、奇想天外な世界観で、入り込めるものと全く入り込めないものとあった。個人的には代表作かつ芥川賞受賞作の「S・カルマ氏の犯罪」が圧巻だった。読み始めてしばらくは頭の中がクエスチョンマークで覆われる。でも次第にその世界観に馴染んでくる。  ある朝、突然「名前」を失った男が、途方に暮れて公園を歩いていると、自分とそっくりの姿をした自分の「名刺」が、職場のタイピストのY子と仲睦まじく過ごしているのを目撃する。右目だけでみるとそれは自分と瓜二つの人間、しかし左目だけでみると一枚の名刺・・・え?  さらに男は、名前とともに身体の「中身」も失ってしまったようで、目の前のものを欲するとそれを体内に「吸収」してしまうという現象が起こり始める。最初に吸収したものは本で見た曠野(こうや)風景。次は動物園のラクダ。そして彼は吸収した罪で裁判にかけられ、傍聴しにきた人々は彼に吸収されまいと法廷内を逃げ惑う・・・え?  ナンセンスに次ぐナンセンスなのだけれど、読んでいるうちじ、徐々に受け入れ可能な態勢になってしまう。お笑い芸人のZAZYがネタのつかみで「ただ今、ZAZYに見慣れていただく時間です」と言ってしばらくニヤニヤしながら無言で壇上を歩き回るあの、妙な空気感のような。一旦入り込んでしまえば、あとはもうおもしろくて仕方ない。わたしは特に72-75ページが最高だった。だからこの本を読み始めたけれど頓挫しそうになっている人がいたとしたら、なんとかしてそこまでは読んでみてほしいと思う。  安部公房は高校時代の相棒がよく読んでいた。頭が良くてイケメンで「孤高」という言葉がとてもしっくりくる素晴らしい彼の世界に少しでも首を突っ込みたくて、頑張って読もうとしたのだけれど、伊坂幸太郎を崇拝していた当時のパッパラパアなわたしには全く対応できないタイプの作家だった。心が折れたまま10年以上経ち、先日たまたま通りがかった神保町の「神田古本まつり」でこの本を見つけ、もう一回挑戦してみようと思って購入した(100円だったからというのもある)。さすがに高校のときよりはいろいろと免疫がついたらしく、6つの短編のうち少なくとも3つはおもしろいと感じるようになった。成長!  今回もなお読めなかったものは、50歳くらいになったらまたチャレンジしたい。  第一部 ◎S・カルマ氏の犯罪  第二部 ×バベルの塔の狸  第三部 ○赤い繭      ○洪水      ×魔法のチョーク      ×事業

Posted byブクログ

2022/02/12

常人が生み出せる作品ではない。人間をあらゆる視点から定義づける試み。彼の思考が物語に息を吹き込むことで、読み手の五感に強烈な後味を残す。

Posted byブクログ

2022/01/14

第25回 芥川龍之介賞受賞作 彼の眼に映る現実が奇怪な不条理に変貌し、やがて自身も無機物の壁に変身する物語で、帰属する場所を失くした孤独な人間の実存的体験と、成長する固い壁に閉ざされる空虚な世界と自我の内部が、安部公房特有の寓意や叙事詩的な軽さで表現されている。ある朝、突然自分の...

第25回 芥川龍之介賞受賞作 彼の眼に映る現実が奇怪な不条理に変貌し、やがて自身も無機物の壁に変身する物語で、帰属する場所を失くした孤独な人間の実存的体験と、成長する固い壁に閉ざされる空虚な世界と自我の内部が、安部公房特有の寓意や叙事詩的な軽さで表現されている。ある朝、突然自分の名前を喪失してしまった男。以来彼は慣習に塗り固められた現実での存在権を失った。自らの帰属すべき場所を持たぬ彼の眼には、現実が奇怪な不条理の塊とうつる。他人との接触に支障を来たし、マネキン人形やラクダに奇妙な愛情を抱く。そして……。独特の寓意とユーモアで、孤独な人間の実存的体験を描き、その底に価値逆転の方向を探った芥川賞受賞の野心作。

Posted byブクログ

2023/09/19

徐々に切り離される現実と侵食してくる空想 広大な曠野にそびえ立つ壁 世界観が独特すぎて半分夢を見ているよう

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2021/11/04

独創的な世界観に満ち溢れた作品でした。 安部公房の作品は、どこか不条理で、どこか無意識な部分が作品に抽出されているなと、私は感じていて。あまり言い表すことのできない難しい作品だったと感じました。そこも安部公房の素晴らしい部分でもあるのですが。シュルレアリスムの世界観を味わってくだ...

独創的な世界観に満ち溢れた作品でした。 安部公房の作品は、どこか不条理で、どこか無意識な部分が作品に抽出されているなと、私は感じていて。あまり言い表すことのできない難しい作品だったと感じました。そこも安部公房の素晴らしい部分でもあるのですが。シュルレアリスムの世界観を味わってください。私的には「砂の女」の方が読みやすいと思います。

Posted byブクログ

2021/11/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

シュールでアイロニカルでユーモアのある短編集。 なんだか存在が揺らぐ。 NOTE記録 https://note.com/nabechoo/n/nad867fb84596 1951年 第一部 「S・カルマ氏の犯罪」1951年 第二部 「バベルの塔の狸」1951年 第三部 「赤い繭」「洪水」「魔法のチョーク」「事業」1950年 (序文、石川淳 解説、佐々木基一) だいぶ以前に読んだことあったんだけど、また読み直すと全然記憶がないことに気づく。初めて読むような感じ。うっすらチョークの話のイメージがあったくらい。たぶん当時、なんとなく流し気味で読んだんだな。よく分からない話だし、面白みを感じなかったんだろう。 改めて今回読んでみると、やっぱりよく分からない笑 おおかた話の筋は分かるんだけど、深いところの理解まで至れない。難解っぽい。とはいえ、以前よりはちゃんと読めたので、短編それぞれに面白みは感じた。さほど強くはないけれど。

Posted byブクログ

2021/09/26

文章の構成が面白い。物語はナンセンスを掠めるがアイロニーとユーモアで絶妙なバランスを保っている。きもいほどに美しい言語表現とそれを支える阿部公房の特異性。物語をから意図を解釈するのではなく文学そのものを楽しむ作品。

Posted byブクログ

2021/09/12

2021/09/12 村上春樹の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」と池澤夏樹の「スティルライフ」を足したような世界観ですが、内容はこちらがまるで哲学的。 読む人によって解釈が分かれそうです。

Posted byブクログ

2021/07/12

芥川賞を受賞した作品。 ある選考委員が言っていたことですが、ある意味童謡らしい作品。 ❇︎ ものすごく安部公房らしく、そして、読み応えがある…しかし、感想を書くのはものすごく難しい。言語化できない、何かものすごいものを読んでしまった感じと言おうか。 ❇︎ 読んだことがない...

芥川賞を受賞した作品。 ある選考委員が言っていたことですが、ある意味童謡らしい作品。 ❇︎ ものすごく安部公房らしく、そして、読み応えがある…しかし、感想を書くのはものすごく難しい。言語化できない、何かものすごいものを読んでしまった感じと言おうか。 ❇︎ 読んだことがない人には、是非読んで欲しいと思う。

Posted byブクログ