暁の寺 の商品レビュー
2019.12.07読了。 今年42冊目。 豊饒の海第三巻。 ストーリーも一番面白かったけど、インドのベナレスのくだりが興味深くもう一度そこだけ読み直したいw が、とりあえず最終巻天人五衰を早く読もう。
Posted by
〈悲恋〉と〈自刃〉に立ち会った本多繁邦は、タイで日本人の生れ変りだと訴える幼い姫に出会う。壮麗な猥雑の世界に生の源泉を探る。
Posted by
主人公の本多は47歳。もう若い力は残っていない。そんな折タイで「自分は日本人の生まれ変わりだ」という幼い姫に出会う。その姫に惹かれていく本多を描く。本多のタイ・インドでの体験と輪廻の話も出ており、これまでのそしてこれからの輪廻転生の物語を考える上で重要な部分のよう。ただ前の巻より...
主人公の本多は47歳。もう若い力は残っていない。そんな折タイで「自分は日本人の生まれ変わりだ」という幼い姫に出会う。その姫に惹かれていく本多を描く。本多のタイ・インドでの体験と輪廻の話も出ており、これまでのそしてこれからの輪廻転生の物語を考える上で重要な部分のよう。ただ前の巻よりは劇的ではなかった。
Posted by
三島由紀夫「暁の寺 ~豊饒の海(第三巻)」 そして、村上春樹への影響をめぐる個人的仮説。 大東亜戦争が刻々と迫る中、弁護士として成功を収めている本多は、出張先のタイで「日本人の生まれ変わり」だと主張する幼い王女、ジン・ジャンと出会うことになる。第2巻で切腹した飯沼勲は今度は女性...
三島由紀夫「暁の寺 ~豊饒の海(第三巻)」 そして、村上春樹への影響をめぐる個人的仮説。 大東亜戦争が刻々と迫る中、弁護士として成功を収めている本多は、出張先のタイで「日本人の生まれ変わり」だと主張する幼い王女、ジン・ジャンと出会うことになる。第2巻で切腹した飯沼勲は今度は女性に転生しているのだった。 前半のクライマックスは日米の開戦だが、著者がこの瞬間を以て日本の精神(らしきもの)の死を予感していることがよくわかる。開戦に沸く皇居の前で日露戦争の弔いの写真を思い出す場面が鮮烈。 「本多の目はこの幻を歴然と見た。ふたたび万歳の声と、目に鮮やかな日の丸の手旗の波がよみがえってきた。そのことは、しかし、いいしれぬ悲傷に充ちた感銘を本多の心に残した」(P114)。本多をつうじて、三島はほとんど日本を「弔って」いるのである。 それだけに戦後のどさくさで巨万の富を得た本多を描く後半はつらい。第1巻、第2巻で日本の精神主義をあれほど嫌っていた本多は、今度は戦後の拝金主義のおぞましさ、米国(というよりそこにおもねる日本)への嫌悪感からひたすら退廃的に生きている。朝鮮戦争の好景気の中、負傷した米兵を芸者があざ笑うシーンは強烈。そして来日しているジン・ジャンを守りたいという感情がいつしか欲望に変わっていく描写の救いのなさもすさまじい。 この空虚さに、仏教の根本問題、すなわち「我を否定し、したがって霊魂の存在を否定している一方で、前世の業(カルマ)による輪廻転生もあるのだとしたら、転生しているのは一体なにものなのか」という問いについての考察が絡み合うのだ。三島すごすぎ。 蛇足だが。以前から村上春樹は三島由紀夫の影響を受けている(本人は「日本文学はほとんど読んだことがない」と力説しているが)、というのが私のひそかな確信だったのだが、今回改めて実感した。つぎの二つって同じことを言っている気がしてならないのですがどうでしょうか? 「自分が望むものは・・・もし手に入ったら瓦礫と化するに決っているから、望む対象にできうる限り不可能性を賦与し、少しでも自分との距離を遠くに保つように努力すること、・・・いわば熱烈なアパシーとでも謂うべきものを心に持すること」(P292) 「東京について寮に入り新しい生活を始めたとき、僕のやるべきことはひとつしかなかった。あらゆる物事を深刻に考えすぎないようにすること、あらゆる物事と自分のあいだにしかるべき距離をおくこと―――それだけだった」(「ノルウェイの森」、上巻P47-8)。 なんか、いろんな意味ですげーな、二人とも。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
豊饒の海、第3巻。 美しい華族の清顕、右翼テロリストの勲ときてタイの月光姫に物語は流れ着きました。 解説にもありますが正に起承転結の「転」である本作は、タイ・インドから物語が始まり、三島由紀夫の思う輪廻転生の核について様々な形で描かれていました。 阿頼耶識という一瞬一瞬の識を、水の飛沫が連なって一本の線に見せている「滝」を例にしており、 「滝の下で」と言った清顕の一瞬の美しさを引き継いで滝の下に現れまた一瞬で消えてしまった勲。 今西の変態主義的な「柘榴の国」のコミカルな台詞の中にも、美しいものは死ぬべきことや一瞬の性的な絶頂こそ最上であるという設定の描写があり、 =人生の1番美しい瞬間に死んでいった清顕と勲 の運命について納得させられる重要な文章が非常に多かったです。 流れ行く一瞬を清顕、勲、月光姫と受け継いで 三島由紀夫曰く「世界解釈」の解答が最終巻に向けて一気に加速した第3巻でした。
Posted by
豊饒の海、第3巻。これまでと少し異なって、生と死がとても緊密に隣り合っている。タイでの風景、戦後の混乱、男女の絢爛。個人的には好きだが、何にせよ文章が豊潤すぎて読むのに難儀している。次は最終巻。この豊潤で絢爛で長い物語がどう締め括られていくのか。
Posted by
まさに起承転結の転の部、前2巻までの空気感から一転。タイからインドへと輪廻転生の本質を考察する難解な第1部。官能と耽美な世界の第2部。バンコク市内やバンパインなど行ったことのある場所が出てきてなんとか読み通せたが、インドからは私の理解力では雰囲気を味わっただけ。途中、懐かしい人達...
まさに起承転結の転の部、前2巻までの空気感から一転。タイからインドへと輪廻転生の本質を考察する難解な第1部。官能と耽美な世界の第2部。バンコク市内やバンパインなど行ったことのある場所が出てきてなんとか読み通せたが、インドからは私の理解力では雰囲気を味わっただけ。途中、懐かしい人達が登場しほっとする場面もあったものの、フィナーレは怒涛の展開に息をつく暇もなく圧倒された。いよいよ次の巻で完結だが怖しいことになりそうな予感が。
Posted by
輪廻転生を題材にしている。まさか、舞台がタイのバンコクから始まりから度肝を抜かれた。月光姫がまさか松枝清顕の生まれ変わりであった。
Posted by
考えて見るとちょうど20年前、これを読んでその後にインドに行き、ヴァラナシも訪れた。自分はこんな場所があることを受け入れること自体も世界だと思い、人生を変えるほどの衝撃を受けるとまではいかなかったのを覚えている。 時代が下るにつれて俗っぽくなる本多とその周りは作者の眼に映る日本そ...
考えて見るとちょうど20年前、これを読んでその後にインドに行き、ヴァラナシも訪れた。自分はこんな場所があることを受け入れること自体も世界だと思い、人生を変えるほどの衝撃を受けるとまではいかなかったのを覚えている。 時代が下るにつれて俗っぽくなる本多とその周りは作者の眼に映る日本そのものだったのだろうか。それとここで本多の戦中の研究として急に観念的に現れてくる仏教観とのあまり精妙でもない混ざり具合がこの巻を読みにくくさせてているように思う。前巻では仏教をすごく否定する剣道の師匠が出てきたように思うし、もうちょっと良く考えてみたいのだけど…
Posted by
己の理性のみ拠り所に生きてきた裁判官がインドのベナレスで生と死の究極の形に出会い、価値観をぼろぼろにされてしまう。現世のすべての努力は虚しいものなのか。人は輪廻転生し、この世の辛苦を味わい続けるのだろうか
Posted by