午後の曳航 の商品レビュー
思いのほかオモシロかった。 なんというか、うわずった感じの下に確かな不穏。その対比がスゴイ。 あとは例えが変わっててオモシロい。 終わり方もスッパリしてて良い。 あの後、処刑が行われたのか行われなかったのか、余韻が残る。
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さて、映画(アメリカ映画、’76年)をリアルタイムで観たのが先だったか、とにかくその前後、おそらく私の三島由紀夫初体験。私が早熟だったのか否か、もはや判然としないが、この原作のほうがいいな、濃密だな、と感じたことだけは憶えている。「ミシマが好きか」と訊かれたら、とても困る。好きな...
さて、映画(アメリカ映画、’76年)をリアルタイムで観たのが先だったか、とにかくその前後、おそらく私の三島由紀夫初体験。私が早熟だったのか否か、もはや判然としないが、この原作のほうがいいな、濃密だな、と感じたことだけは憶えている。「ミシマが好きか」と訊かれたら、とても困る。好きなのもそうでないのもある、あちこちで聞くことのできる本人に関するエピソードについても私には好悪の判断すらできない。「なんにもわからない」と答えるしかないかもしれない。作品だって、新潮文庫のを10冊ぐらい読んだだけ。ただ、国際的に「ミシマ」が何らか評価される要素がたくさんあるということは、わかるような気がする。(これだけが「ニッポンだ」と思われても、ちょっと困るけれども)。でも私は、この『午後の曳航』と『音楽』と『春の雪』は、なぜだか定期的に読み返したくなるんである。就中、『午後の曳航』。映画の印象が強烈だったということもあるけれど、「曳航」という言葉が好きだという、とても単純な理由が最も大きい。だってとにかく、全編、潮の匂いと波の音が漂っているような小説だから。「(恐るべき)子供」「少年による父親殺し」など、敢えていえば「お決まりの」(そして「俗っぽい」と言ってもいいほどの)要素を、このような物語にする、…やっぱりすごいのかも(って私が評価するまでもないんだが)。アナタはミシマが好きですか?わかりません、でも『午後の曳航』は私には大事な作品です。
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「世界はある種の決定と、単純な記号でできている。」 首領が素敵 すべからく、男は大義のために生きなくてはならないそうです。
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早熟な子供から一歩大人へと歩んだ青年と、その一歩を軽蔑する少年の対比が良いです。 本来ならば、青年は少年の一番の理解者であったろうと思います。 青年と未亡人のメロドラマの裏で、少年達の残虐性が渦巻いている様は恐ろしい。 母親が一番可哀想でした。
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栄光あれ!というのが読後すぐの感想。そして曳航と栄光の掛け合わせにようやく気がついた。 神戸の事件を思い出す。 浅田次郎の短編より先にこちらを読んでおけばあちらのいやみったらしい面白さ、わかったろうな。
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ヘンツェのオペラを聴きながら、ストーリーを再確認。 かなり昔に読んだ記憶があるが、ディテールを確かめ、オペラの場面に合わせて鑑賞。 1963年の作品。十代の犯罪など、時代を先取りする点も見られていたのだ・・ と、改めて実感。
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こう言った話も書けるのかと思いました 船乗りである竜二、船乗りに憧れる少年、昇、昇の母である房子の三人称描写で物語は進んでいきます。 心理描写がさすがというか言い回しに独特のタッチがあります。 一見軽い内容ですが、昇の心理描写で見ると、その世界観が変わってしまうのも面白いなと。
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あっという間に読めてしまった。 登が母親の部屋を覗いているところは、豊饒の海の本多を連想してしまう。 竜二は、豊饒の海4巻の主人公のようだ。 三島由紀夫らしいエッセンスが詰まっている作品だなと思った。 ラストはちょっとぞくっとする。
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主人公の登は、歳不相応に鋭く賢いが、その思想は稚拙でやっぱり子どもを思わせるへんな少年たちの一員。その登の新しい父親になろうとする竜二が自分たちの美学から外れていくことを裏切りととらえ少年たちは復讐を計画する。 こういう早熟な子どもってクラスに1人くらいはいそう。でも結局こん...
主人公の登は、歳不相応に鋭く賢いが、その思想は稚拙でやっぱり子どもを思わせるへんな少年たちの一員。その登の新しい父親になろうとする竜二が自分たちの美学から外れていくことを裏切りととらえ少年たちは復讐を計画する。 こういう早熟な子どもってクラスに1人くらいはいそう。でも結局こんな子どもたちもやがて普通の大人になっていくんだろうな。そんな過程をこの作品の続編として読んでみたい。
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