午後の曳航 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
少年の求める美は海の男にすらなく、少年にとってそれは罪ですらありました。今日の不可解な少年犯罪を彷彿とさせるまでの三島由紀夫の予言的作品です。
Posted by
成長と大人を悪だと決め込み、それを拒絶するために危ないことを行う少年たち。 私も小学生くらいのころに、大人と自分は異なる生き物で、絶対にそうならないと思っていた。 でも現在、私は当時忌み嫌っていた大人になってしまった。 大人になると、かつて自分もそうだったはずの子どもが怖くなるな...
成長と大人を悪だと決め込み、それを拒絶するために危ないことを行う少年たち。 私も小学生くらいのころに、大人と自分は異なる生き物で、絶対にそうならないと思っていた。 でも現在、私は当時忌み嫌っていた大人になってしまった。 大人になると、かつて自分もそうだったはずの子どもが怖くなるなんて、奇妙な感じ。 純粋さと、信じ深さと、残酷さは、もう忘れてしまった。
Posted by
昭和37年に発表された作品だが、今読んでもとても瑞々しい。そして、三島由紀夫の他の作品よりも、本書は比較的読みやすいと感じた。 描かれている男女の関係、親が子に対して抱く幻想、子供の冷静さや残酷さ、あらゆることが現代にも共通しているように思う。そして、子供が海の男に幻滅していく...
昭和37年に発表された作品だが、今読んでもとても瑞々しい。そして、三島由紀夫の他の作品よりも、本書は比較的読みやすいと感じた。 描かれている男女の関係、親が子に対して抱く幻想、子供の冷静さや残酷さ、あらゆることが現代にも共通しているように思う。そして、子供が海の男に幻滅していくあたりは、男も一人の人間であり、人間は動物の一種だったことに幻滅しているのではないだろうか。やはりいつの時代も、早熟な子供というのは、とても生きづらいのかなと思う。 大人も子供も含めた人間の本性が、怖いくらいにとてもリアルに描かれていると思うので、星4つ。
Posted by
新聞の書評に載っていたので読んだ本。久々の三島作品。破壊的な内容。たまには純文学も読んだ方がいいのかもしれないなあ。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
とにかく三島由紀夫の文体に触れたいときがあって、たしかそういうときに買ったもの。 でもよくわかりませんでした…子供世界と大人世界の対立?無邪気って残酷だね、という月並みなことしか覚えてない。後味が悪かった。。
Posted by
曳航の栄光。 早熟な少年達が内部まで「内的関聯の光輝」を見通せる力があったら良かったのに。 うーん、美しそうな言葉の表面をこねくり回してる感が青い!
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ひねくれていて早熟した少年は有名作家の小説にはよく出てくる気がする。もっと若かった頃はこの少年に共感する部分もあったかもしれないが、今では全く共感しない。大人になったということか。。。これもエディプスコンプレクスの話なのか?
Posted by
ベストセラー作家と文豪との境界はかくも深いものかと驚いた。三島由紀夫のイメージは、変態、だったのだけど、(失礼な話w)この話はそこまで変態は爆発していなかった。いや、変態に変わりはないのだけど、こう、あまりにも美しく崇高な日本語と表現により、変態すら一つの文化となっている、高みに...
ベストセラー作家と文豪との境界はかくも深いものかと驚いた。三島由紀夫のイメージは、変態、だったのだけど、(失礼な話w)この話はそこまで変態は爆発していなかった。いや、変態に変わりはないのだけど、こう、あまりにも美しく崇高な日本語と表現により、変態すら一つの文化となっている、高みに昇華されている…って感じ。すごく難しい言い回しで心理描写をしているようだけど、登場人物の心情っていうのはなんとなくわかる。フィーリング的だけど。あと、最後の放り投げ方がすばらしい。「えええー!?この後どうなったのー!?」と思わせたかったのだろう。はい、それ、成功していますよ、由紀夫さん。
Posted by
仮面の告白や金閣寺より読みやすく感じた。三島作品に慣れてきたのか、もともとこの作品が読みやすいのか…。 メロドラマ的一部を曳航する狂気に満ちた二部。 栄光を手放した男の処刑を試みる現代的な少年達。 少年の心のリアル。 描写自体は仮面の告白の方が心臓に来る感じがあったけれど、や...
仮面の告白や金閣寺より読みやすく感じた。三島作品に慣れてきたのか、もともとこの作品が読みやすいのか…。 メロドラマ的一部を曳航する狂気に満ちた二部。 栄光を手放した男の処刑を試みる現代的な少年達。 少年の心のリアル。 描写自体は仮面の告白の方が心臓に来る感じがあったけれど、やっぱり心情や情景の表し方が凄い。 惹き込まれた。
Posted by
成熟した自意識と未成熟な殺意。13歳の明晰と崩壊。海、汽笛、若く美しい未亡人である母と船乗りの男との情事…と、設定や小道具は大衆的ラブロマンスでありながら、潔癖なほど青く、硬質。 なぜミシマは、この設定を選んだのだろうか。 海、潮の香り、汽笛、船乗り、未亡人と思春期の一人息子…...
成熟した自意識と未成熟な殺意。13歳の明晰と崩壊。海、汽笛、若く美しい未亡人である母と船乗りの男との情事…と、設定や小道具は大衆的ラブロマンスでありながら、潔癖なほど青く、硬質。 なぜミシマは、この設定を選んだのだろうか。 海、潮の香り、汽笛、船乗り、未亡人と思春期の一人息子…これだけ並べたら、安手のラブロマンスである。演歌にだってなり得そうだし、Vシネだっていけそうである。 しかしその設定でありながら、爛れたり緩んだりしていないのが、ほとんど奇跡的である。 おそらくミシマ作品の中では、王道とは言えないであろう。 そもそも短い。そしておそらく主人公の内的世界と歩調を合わせているのかと思われるが、未成熟感が漂っていて、それが魅力ともなっている。計算なのか、そうであれば計算勝ちだし、そうではないとしたら、恐ろしい天性と言ってもいいかもしれない。(それこそ、この主人公の如く。) これだけべったり情緒に陥りがちな設定なのにそこに陥らないのは、ラブロマンスのアイテムと、少年期のエッジ感のバランスが適度なためではなかろうか。 そしてそこが海外にも受け入れられ易かったのかと思われる。 (こちらと映画はまた別物と思っているけれど、映画はいささかポップなラブロマンス感もあったように記憶している。単にクリス・クリストファーソンにあまり思い入れが出来ず、そう見てしまっただけかもしれないが。)
Posted by