午後の曳航 の商品レビュー
『日ましに竜二には忌まわしい陸の日常の匂いがしみついた。家庭的な匂い、隣り近所の匂い、平和の匂い…陸の人間が多かれ少なかれ身につけているこれらの屍臭』と辛辣です。 貨物船とタグボートのイメージがタイトルにも繋がってたりしてて技巧が凝らされてます。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
午後への曳航・・・・・・なんだかジーンとくる感じのお話なのかなと思ったら、意外にも劇的で激しい思考のぶつかり合いでした。ちょっとグロッキーなのも新鮮な印象を受けましたね。ですが、流石は三島由紀夫。持ち前の美しい文体で、数々の場面を名立たるものにしていきます。大人を「腐敗」したと蔑む子供たちの叛骨心。この世界を変えるには血が必要なのだ!――と革命を夢見、その犠牲となった子猫。変わりゆく母への違和感。父親という存在への厭悪。子供の持つ純粋で悍ましい狂気。社会に阿ることへの反駁・・・・・・子供の持つ二面性、醜いもの、抑圧の中の闇。それらをここまで清々しく、綺麗に書くことが出来るその文章は『金閣寺』で見せたように、ほんとうに壮麗なもの。まさに文章の表現の、人間そのものの真理を掴んだように凝らされた一文一文に、終始心を奪われっぱなしでした。三島由紀夫の書く文章にはこの世の美が凝縮されている。誰かが言ったその言葉に、とても共感した一冊でした。
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三島由紀夫が亡くなる7年前の作品。 美しい描写と少年の狂鬼。栄光と曳航。栄光と死。この死は三島の抱えていた死と重なっていたのだろうか。
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ネコが……ッッッッ!!!!!!!!! 子どもって浅慮で残酷で嫌だな~って思った。 私も浅慮で残酷な嫌な子どもだったな~って思う。 ネコはダメ!ネコはダメ!!にゃーん!! 竜二が海のロマン……っていうか、 「船の上で生きている自分」に酔うのをやめて陸に上がるまでの 感情の変化が...
ネコが……ッッッッ!!!!!!!!! 子どもって浅慮で残酷で嫌だな~って思った。 私も浅慮で残酷な嫌な子どもだったな~って思う。 ネコはダメ!ネコはダメ!!にゃーん!! 竜二が海のロマン……っていうか、 「船の上で生きている自分」に酔うのをやめて陸に上がるまでの 感情の変化が良かった。 あと、三島由紀夫あんま詳しくないから分からんけど、 繁殖のための性交が好きじゃないんだろうな~っていうのがにじみ出てて おもろかった。
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「血が必要なんだ!人間の血が!そうしなくちゃ、この空っぽの世界は蒼ざめて枯れ果ててしまうんだ」 世界の不整脈が、少年を震わす。 窒息しそうな恐怖。 成長とは、腐敗することか? 海を見る。 許しうるべき、光る黒い蒼を。 「あしたはお天気だろう」
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言葉が美しい… 初めてそう思ったかもしれない。 少年たちの13歳とは思えない会話に少し 笑ってしまった。 ただ、内容は笑えない、凄まじく深く、複雑な思考の中を覗き込んでいる感じ。 色々と思うことはあったけど、それを言葉にするのも難しい。だけど、三島はそれを言葉にできる文才があ...
言葉が美しい… 初めてそう思ったかもしれない。 少年たちの13歳とは思えない会話に少し 笑ってしまった。 ただ、内容は笑えない、凄まじく深く、複雑な思考の中を覗き込んでいる感じ。 色々と思うことはあったけど、それを言葉にするのも難しい。だけど、三島はそれを言葉にできる文才があるんだと知らしめられた…
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ページ数こそ少ないが深く密度の濃い作品だった。三島作品の中でも特に、情景描写の緻密さ、美しさは抜群であった。特に船乗りである竜二が次の航海のために、陸を去っていくシーンは、現実から離脱して夢想の世界へと旅立つ理想の男として、永遠の存在となる象徴が描かれており、読んでいて素晴らしい...
ページ数こそ少ないが深く密度の濃い作品だった。三島作品の中でも特に、情景描写の緻密さ、美しさは抜群であった。特に船乗りである竜二が次の航海のために、陸を去っていくシーンは、現実から離脱して夢想の世界へと旅立つ理想の男として、永遠の存在となる象徴が描かれており、読んでいて素晴らしいと感じずにはいられなかった。 少年特有の純粋さから来る脆さと残酷さが上手く描かれいた。最後には、少年たちが、大人の世界がもつ狡猾さを許さず、理想を永遠の形にするところは読んでいて、ゾッとしたが、同時に何処か共感できると感じさせてしまうところが三島由紀夫の凄さであると感じた。
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紅茶を飲む手前で終わらせる、お約束が守られる清々しさ。二重構造を持った物語の物語、なるほど確かに。文庫本の背表紙あらすじを見る前に読み終えられた僥倖、以後も気を付ける。
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少年らに秘められた狂気性の暴発。三島文学の隠れた名作。登にとって男性的完璧性を具えた隆二と母としての神聖さと女性の甘美さを兼ねた房子が目合う姿をみることは、憤怒と背徳を齎すある種の恍惚であったのかもしれない。そうした屈折した少年の性質は、毎夜外側から鍵をかける家庭環境の細微に描か...
少年らに秘められた狂気性の暴発。三島文学の隠れた名作。登にとって男性的完璧性を具えた隆二と母としての神聖さと女性の甘美さを兼ねた房子が目合う姿をみることは、憤怒と背徳を齎すある種の恍惚であったのかもしれない。そうした屈折した少年の性質は、毎夜外側から鍵をかける家庭環境の細微に描かれる。自己正当化を試みながら、冬の午後の淡い陽を浴びながら首領に曳かれ子猫と同じ価値観で義理の父を殺める終幕で本作の美と狂は頂点で結実する。 あまり有名な作品ではないが三島由紀夫氏の天才さを感じさられる。
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・なんだか特権階級的な話だなぁと思った。 ・登は首領たちとの集まりで、感情のないことの訓練をしていた。彼らが目指す大人とはなんだったのかな ・房子と竜二の恋物語でありながら、それを盗み見る登の話であったなぁ。 ・なんか遠い世界のことみたいだった ・退廃的なかんじがした
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