金閣寺 の商品レビュー
「行為」というものがいかに尊いか。私は主人公の行動に美を感じる。正しい感情ではないのかもしれない。しかし、私は主人公に対し、ある種の畏敬を抱く。今の私にとって金閣寺とはそういう作品。 柏木の「行為ではなく、認識だけが、世界不変のまま、そのままの状態で変貌させるんだ。認識から見れ...
「行為」というものがいかに尊いか。私は主人公の行動に美を感じる。正しい感情ではないのかもしれない。しかし、私は主人公に対し、ある種の畏敬を抱く。今の私にとって金閣寺とはそういう作品。 柏木の「行為ではなく、認識だけが、世界不変のまま、そのままの状態で変貌させるんだ。認識から見れば、世界は永久に不変であり、そうして永久に変貌するんだ。認識は生の耐え難さがそのまま人間の武器になったものだが、それでいて耐え難さは軽減されない。それだけだ。」と述べている箇所がある。この口述の正当性は主人公も認めていた。 主人公の金閣寺に対する認識は、永久で完全な美から、美の概念そのものが怨敵となることで怨念となり変わる。そして美を虚無に求めるようになった。ここまでは認識だった。 しかし最後には、燃やすという「行為」を選んだ。彼は認識を飛び出して「行為」を選んだ。その後自死するでもなく、「生きようと思った。」という極めて希望的に締めで終わっているのが印象的だ。とても自由だった。 私は、認識に溺れる方が幸せだと思う。しかし行為とはいかに自由か、やはり魅了されてしまうのだ。 私にとっての美は何か。金閣寺になり得るものはあるか。永久を求める執着は怖い。 昔よりだいぶマシになったけど、やはりこの本は毎回理解しきるのには少々難しい本。また読む。 また全く違う感想を持ちそう。
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重苦しく陰鬱な主人公の告白。 なのにどうしてか一気に読んだ。 自らの美を燃やし、主人公は「生きよう」と言った。
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モチベーションが上がらずに諦めようかと思いましたがなんとか読み切りました。プラトンのイデア論が頭を過ぎったり、狡猾な障害者には妙にリアルな世界を感じたり、儚いモノほど美しく見えるなんて感覚には凄く共感してしまったり(描写が素晴らしい)、兎にも角にも考える事が非常に多い作品で、自分...
モチベーションが上がらずに諦めようかと思いましたがなんとか読み切りました。プラトンのイデア論が頭を過ぎったり、狡猾な障害者には妙にリアルな世界を感じたり、儚いモノほど美しく見えるなんて感覚には凄く共感してしまったり(描写が素晴らしい)、兎にも角にも考える事が非常に多い作品で、自分のレベルでは一度読んだだけでは正直全然分からないと感じてしまいました。色々な人の感想を読んだりしながら、また人生のどこかで読み返す機会があれば読み返したいと思います。
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美の象徴、金閣寺に狂気の妄想と現実を重ね合わせつつ、我が幸福を追求する主人公。一言一句が重く独特。あらゆる無茶苦茶な思考も論理が通っていて、納得してしまう。風景×心理描写も超秀逸。初・三島由紀夫、ただただ圧倒されました!
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
実際にあった金閣寺放火事件をモデルに、住職の息子である主人公が独善的な美の妄想に駆られ、行為に及ぶまでの出会いや葛藤を書いた作品。 想像力を掻き立てられる表現がいくつかあったが、自分の知識不足により思い描けない部分は流して読んだ。 ようやく結末が近づいて、これからどうなるのかと思っていたら、物語の終わりを意味する『注解』の文字が…虚を衝かれて思わず吹き出していた。それだけ引き込まれていたのか、予想が先走り過ぎていたのかは分からないが、今言えるのはその先は無いということ。 虚無がこの美の構造だったのだ。(作中より)
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難しかった。ぐるぐるぐるぐる自分で考えて破滅へ進んでいくのは分かった。滅ぶとき、美しさが最骨頂になるというのは少しだけわかるような気がする。いつかわかるときが来るんだろうか??
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2回目だけど内容殆ど忘れててびっくりした。 重い。自分には難しすぎた。 情景描写がとにかく非凡なことはわかったけど回りくどさも感じられた。登場人物の行動の意図も思想もわかりそうでわからない。 でもそのめっちゃ難しいじゃん!この表現すげー!みたいな楽しみは物凄くあった。 また読み直...
2回目だけど内容殆ど忘れててびっくりした。 重い。自分には難しすぎた。 情景描写がとにかく非凡なことはわかったけど回りくどさも感じられた。登場人物の行動の意図も思想もわかりそうでわからない。 でもそのめっちゃ難しいじゃん!この表現すげー!みたいな楽しみは物凄くあった。 また読み直したい。 70点
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美、認識、行為。 吃りが生んだ「私」の粘度の高い、蠢く心情が、自分の胸元をどんよりさせた。 絶対に単純な描写は許さないような、言葉を尽くした三島由紀夫の表現に脱帽。
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なんとか頑張って読んだ。 主人公が金閣寺に火を放つまでの、内面の独白が永遠に続く。もちろん、他の描写もはいるのだが(そこは、なかなか面白く読めた)、主人公の孤独と絶望による内面形成は、きっとそうであろうと思いながらも、理解するのは難しかった。 これを読みながら、秋葉原の連続殺傷...
なんとか頑張って読んだ。 主人公が金閣寺に火を放つまでの、内面の独白が永遠に続く。もちろん、他の描写もはいるのだが(そこは、なかなか面白く読めた)、主人公の孤独と絶望による内面形成は、きっとそうであろうと思いながらも、理解するのは難しかった。 これを読みながら、秋葉原の連続殺傷事件を思い出したりした。 三島由紀夫の語彙表現力に圧倒されながら、それについていけない自分が非常に残念…。 作家が生きた時代と、自分の生きている時代、若い人たちの生きている時代も全く違い、そこを超えての普遍的な価値はあるのだろうが、理解し深く共感できる人は徐々に少なくなっていくのだろう。 2020.2.6
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震災後、価値観のぐらつきの中を生きざるを得ない僕ら世代が読むべき一冊。勝手に理解した気になっていたあらすじと、読後感が異なった。 戦中戦後、行動基準がガラリと変わらざるを得ない時代をたまたま生きてしまった青年が、絶対的な美という危険なものさしを持つことで、懸命に翻弄される物語。
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