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白痴 の商品レビュー

3.8

140件のお客様レビュー

  1. 5つ

    35

  2. 4つ

    42

  3. 3つ

    37

  4. 2つ

    7

  5. 1つ

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2019/01/24

『不連続殺人事件』が割と面白かったので、この人の代表作に手を出してみた。 まぁ~……面白くない。 太宰や芥川の時代の人らしく、薬漬けの頭から生まれる文章は理解できないところが多い。 短編集だったので、何とか読めたけど。 そのうちの2作は女性が主人公で、少し読みやすかった。

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2018/12/09

哲学とか思想というとあいまいで ファッションとか姿勢というほうがよりちかい 在り様ひとつのありかたとしてあこがれる向きの多い立ち方 それを短い文章でかつある程度の時代を越えてあり続け差閉めていることについて 文句なしの作品

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2018/06/28

ジャンクなまぜそばみたいな作品。デカダン派、無頼派というジャンルの先駆者だそうで、ねじ曲がった男女の情愛をもつれさせて絡ませてぐちゃぐちゃに混ぜて一気に飲み込ませようとする。無骨で野卑。だからまぜそば。あと読むと何だかやるせなくなるところも一緒。 7編あるうち毛色が違うなと感じ...

ジャンクなまぜそばみたいな作品。デカダン派、無頼派というジャンルの先駆者だそうで、ねじ曲がった男女の情愛をもつれさせて絡ませてぐちゃぐちゃに混ぜて一気に飲み込ませようとする。無骨で野卑。だからまぜそば。あと読むと何だかやるせなくなるところも一緒。 7編あるうち毛色が違うなと感じたのは「母の上京」で、これは動きがあるだけでなく考えさせられることが多かった。なかでも「花咲く木には花の咲く時期がある(86項)」は名言。坂口安吾の痴情がふんだんに盛り込まれているし、こんな文章実体験でもないと本当に書けない、ある意味ルポルタージュの域にあると思う。 と、同時に母に対する情愛が描かれているのも特徴的。「世の常の道にそむいた生活をしていると、いつまでたっても心の母が死なないもので、それはもう実の母とは姿が違っているのである。切なさ、という母がいる。苦しみ、というふるさとがある(98項)」もぐっとくるなー。解説にもあるとおり、観念と現実の対比を鮮やかに描き出しているのは他作品にも共通するところ。 観念と現実の対比。自分の欲望を他人に通して生きやすくすることが観念だとするなら、その通りに行かずもがき苦しむのが現実。噛み砕きすぎなのは重々承知。結果そりゃぁ退廃的で厭世的にもなりゃあな。ことそれが男女間であればよりビビッドに描けるぞということで、ことあるごとに狂った女性が出てくるのではないか。邪推にもほどがあるけど。 事前に堕落論を読むことをおすすめします。作者が言いたいことを具体に落とし込んだものがこの「白痴」だと思うので。

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2018/04/08

当たり前だけど戦争がこの時代の文豪に与えた影響では計り知れないなあと 世界が終わるかもしれないという恐怖とある種の期待のようなもの、、これって三島が感じていたのと同じだとおもった。

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2018/03/30

引用 頁六一〜  「私はあなたを嫌っているのではない、人間の愛情の表現は決して肉体のものではなく、人間の最後の住みかはふるさとで、あなたはいわばそのふるさとの住民のようなものだから、などと伊沢も始めは妙にしかめつらしくそんなことも言いかけてはみたが、もとよりそれが通じるわけでは...

引用 頁六一〜  「私はあなたを嫌っているのではない、人間の愛情の表現は決して肉体のものではなく、人間の最後の住みかはふるさとで、あなたはいわばそのふるさとの住民のようなものだから、などと伊沢も始めは妙にしかめつらしくそんなことも言いかけてはみたが、もとよりそれが通じるわけではないのだし、いったい言葉が何者であろうか、何ほどの値打ちがあるのだろうか、人間の愛情すらもそれだけが真実のものだという何のあかしも有り得ない、生の情熱を託すに足る真実なものが果たしてどこに有り得るのか、すべては虚妄の影だけだ。」 頁一六四〜  「私は女が肉体の満足を知らないということの中に、私自身のふるさとを見出していた。満ち足りることの影だにない虚しさは、私の心をいつも洗ってくれるのだ。私は安んじて、私自身の淫慾に狂うことができた。何物も私の淫慾に答えるものがないからだった。その清潔と孤独さが、女の脚や腕や腰を一そう美しく見せるのだった。」

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2017/12/27

いくつかの短編でできています。 中でも『青鬼の袴を洗う女』に綴られている、込み入った、それでいて淡白な文章がたまらなく好きです。戦争経験者ではないけれど、戦時中の生々しい雰囲気がそこはかとなく伝わって来て、面白かったです。

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2017/09/09

昭和の時代において、いや、現代にとってもこのような作品を排出するのはとても勇気がいりそうな感じ。特に戦争と一人の女はかなり不謹慎で、戦争を体験していなければ考えつかない心情だし、経験していない自分にとっては共感しにくい。だけどこんな感情を持つ人は少しはいたはずだし、そういう意味で...

昭和の時代において、いや、現代にとってもこのような作品を排出するのはとても勇気がいりそうな感じ。特に戦争と一人の女はかなり不謹慎で、戦争を体験していなければ考えつかない心情だし、経験していない自分にとっては共感しにくい。だけどこんな感情を持つ人は少しはいたはずだし、そういう意味で人間という生き物の新しい発見でした。登場する女性は「青鬼の褌を洗う女」以外はどこか変な人ばかりだが、それを客観的にみる側にも変であり人間の赤裸々な内情が彫りだされています。支離滅裂感のある作品もあり「青鬼の~が顕著」途中でいい加減な気持ちになるが、読み返して楽しむ類の本かとも思う。

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2017/09/06

『私はそのころ耳を澄ますようにして生きていた』 極度に物を所有したがらなく、1か月の給与を1日で無理にでも使い切ろうとする語り手は、複数の女たちの間で爛れるような生活を送る。  /いずこへ 『その家には人間と豚と犬と鶏と家鴨が住んでいたが、まったく、住む建物も各々の食べ物もほと...

『私はそのころ耳を澄ますようにして生きていた』 極度に物を所有したがらなく、1か月の給与を1日で無理にでも使い切ろうとする語り手は、複数の女たちの間で爛れるような生活を送る。  /いずこへ 『その家には人間と豚と犬と鶏と家鴨が住んでいたが、まったく、住む建物も各々の食べ物もほとんど変わっていやしない』 井沢の住む町は安アパートが立ち並び、淫売や山師や軍人崩れが住んでいた。 井沢の隣人は気違いで、気違いの母はヒステリイで妻は白痴だ。その白痴の妻が井沢のアパートに転がり込んできた…。  /白痴 『母親の執念は凄まじいものだと夏川は思った』 郷土の実家との関係を断ち切ろうとする夏川だが、その母はどうやったか夏川のアパートを突き止める。 アパートに帰るか帰らないか…そしてその生活を顧みる。  /母の上京 『二人が知り合ったのは銀座の碁席で、こんなところで碁の趣味以上の友情が始まることは稀なものだが、生方庄吉はあたり構わぬ傍若無人の率直さで落合太平に近づいてきた』 一人の女を巡る男たち。 脱がなかった外套とその向こうの青空。  /外套と青空 『私はいつも神様の国へ行こうとしながら地獄の門を潜ってしまう人間だ。ともかく私は初めから地獄の門を目指して出かける時でも神様の国へ行こうということを忘れたことのない甘ったるい人間だった』 元女郎と暮らす男。私は一人の女では満足できない。私は不幸や苦しみを探す。私は肉欲の小ささが悲しい、私は海をだきしめていたい。  /私は海をだきしめていたい 『カマキリ親爺は私の事を奥さんと呼んだり姐さんと呼んだりした。デブ親爺は奥さんと呼んだ。だからデブが好きであった』 私は昔女郎だった。今はある男と暮らしている。戦争中だけの関係。 日本が戦争に負けて、男が全員殺されてもきっと女は生きる。 でも可愛い男のために私は可愛い女でいようと思う。 私は夜間爆撃に浮かぶB29の編成、そして被害の大きさに満足を感じている。 男たちは日本中が自分より不幸になればいいと思っている。 だから戦争が終わった時には戸惑いを感じたのだ。 『私たちが動くと、私たちの影が動く、どうして、みんな陳腐なのだろう、この影のように!私はなぜだかひどく影が憎くなって胸が張り裂けるようだった』  /戦争と一人の女 『匂いってなんだろう? 私は近頃人の話を聞いても、言葉を鼻で嗅ぐようになった』 私の母は空襲で死んだ。 私は私を迎えに来た男のオメカケになっている。 私は避難所の人ごみで死ぬのなら、夜這いを掛けてきた青鬼に媚びて贅沢してそしていつか野垂れ死ぬだろう。 すべてがなんて退屈だろう、しかし、なんて、懐かしいのだろう。  /青鬼の褌を洗う女

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2017/04/30

七編から成る本だけど、最初の五編を読むのに2週間くらいかかった。 あとの二編は女性視点で書かれているためかぐいぐい読んで、面白くてもういっかい読んだ。なのでこの二編についての感想になるけど、愛情に関して、精神的なものと肉欲的なものの捉え方がとても腑に落ちるなあと思った。

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2016/11/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 坂口安吾という人は天才だ。文章が本当に美しい。誰もこのような形で戦争や生活を描けないと思う。美しいのだけれど感情が爆発している。なんというか、書きなぐっている感じがする。だけれどその文章の優れた部分に誰も太刀打ちすることができないように思う。精緻を重ねた文章では恐らくないのにも関わらず、だ。  まるでのんべんだらりとしている浮浪者の体の男が、オリンピックの会場で堂々と金星を挙げている趣がある。重ねていうが、この人はやはり天才なのだろう。  表題作の「白痴」には、どこか清々しい匂いが漂っている。文字通り白痴の女と、空襲に生活を追いやられる一人の男を描いた作品なのだけれど、爽快感がある。読んでて気持ちが良い。これって、すごくないですか?

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