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行人 の商品レビュー

4.1

104件のお客様レビュー

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2012/08/01

ある神社に貼ってあった「行人」の引用がきっかけて、高校時代に読んだはずだけど再読。ところがたぶん途中までしか読んでいなかったようで、後半は全く知らなかった。 「兄」の葛藤は自分が高校生当時でも理解できたはずだけれど、やはり完読できなかったということは、難しかったのかもしれない。で...

ある神社に貼ってあった「行人」の引用がきっかけて、高校時代に読んだはずだけど再読。ところがたぶん途中までしか読んでいなかったようで、後半は全く知らなかった。 「兄」の葛藤は自分が高校生当時でも理解できたはずだけれど、やはり完読できなかったということは、難しかったのかもしれない。でも今ならすっかり理解できる。 周りの人たちがあまりにも自分と違う気がする。理解できないから理解してもらえない。 漱石はだからどうすればいいという結論を教えてくれないので、自分で考える。思考するとてもいいきっかけをもらった。

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2012/07/28

主な登場人物は、二郎と二郎の兄一郎、兄嫁の直、両親、岡田夫妻、妹の重、家の厄介者のお貞さん、二郎の友人三沢、あの女呼ばれる入院中の芸者 まだ結婚の気配のない二郎の視点から、上手くいかない兄夫婦の問題を中心に話が展開してゆく。 その中で、色々な種類の「家」のあり様、上手くいって...

主な登場人物は、二郎と二郎の兄一郎、兄嫁の直、両親、岡田夫妻、妹の重、家の厄介者のお貞さん、二郎の友人三沢、あの女呼ばれる入院中の芸者 まだ結婚の気配のない二郎の視点から、上手くいかない兄夫婦の問題を中心に話が展開してゆく。 その中で、色々な種類の「家」のあり様、上手くいっている夫婦の岡田、とんとん拍子で結婚に向かうお貞さん、嫁いだ後に不縁になり精神病になった女など、が書かれている。 それぞれの人物が互いに対比されているため、話に明暗・緩急がつき、リズムが生まれている。 また、舞台が東京、大阪、和歌山、その他となっており。海、山、都市、田舎、観光地の描写が話の展開と共に入れ替わり、情景を楽しむ事ができる。 行きつく所は理智の過ぎている一郎の性質が引き起こす苦悩であるが、希望の持てる終わり方で、読後感もすっきりしている。

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2012/02/04

 Hさんからの手紙で明らかになる一郎の根源的な悩みを読んでいると、100年も前に書かれた小説とは思えない。『人間の不安は科学から来る。進んで止まることを知らない。徒歩から俥、俥から馬車、馬車から汽車、汽車から自動車、それから航空船と、何処まで行っても休ませてくれない。何処まで伴わ...

 Hさんからの手紙で明らかになる一郎の根源的な悩みを読んでいると、100年も前に書かれた小説とは思えない。『人間の不安は科学から来る。進んで止まることを知らない。徒歩から俥、俥から馬車、馬車から汽車、汽車から自動車、それから航空船と、何処まで行っても休ませてくれない。何処まで伴われて行かれるか分からない。実に恐ろしい』。一郎のこのセリフ、完全に2010年代に生きる私たちに向けて語られているんじゃないかと思う。  インターネットの発展と普及によって、座り慣れたイスにふんぞり返って膨大な量の情報と思索のいらない娯楽を得ることができる。facebookで人脈作らなきゃ! ツイッターで友達にコメントしなきゃ! mixiで充実してる日記かいて、読む友達に自分は幸せだと思わせなきゃ!小説なんか読んでる場合じゃない!!  そうやって、現代人は読書するとか、何も考えずに散歩するとか本来心の平穏のために自然にできていたことができなくなってしまったような気がする。これは一郎の「普段何をしていてもそこに安住することができない。」「自分のしていることが自分の目的(エンド)になっていない」という状態に近いのではないか。 このまま国民皆一郎化してしまったらかなり恐ろしい。

Posted byブクログ

2012/01/26

他人にこころを開かない一郎の姿を周りの人からのことばで綴っています。 考えに考えを重ねながら、それが一層周囲との感覚の断絶につながり、深い孤独にはまってゆく一郎のくるしみが痛いほど伝わってきました。 文学も哲学も知らない自分でも味わうことが出来ました。 名作だと思います。

Posted byブクログ

2013/09/11

漱石の小説を読んでいると、良く出会う言葉があります。それは「真面目」という言葉。真っすぐか、誠実か、嘘偽りはないか、正面から向き合っているか。自らに、他者に、何度も問いかける漱石の姿が見える。 あまりにも明晰な知性を持つが故にどうしようもない孤独に堕ちていく一郎。他の心を信じら...

漱石の小説を読んでいると、良く出会う言葉があります。それは「真面目」という言葉。真っすぐか、誠実か、嘘偽りはないか、正面から向き合っているか。自らに、他者に、何度も問いかける漱石の姿が見える。 あまりにも明晰な知性を持つが故にどうしようもない孤独に堕ちていく一郎。他の心を信じられない。他人のことを完全に理解するのなんて不可能で、みんなその寂しさをそれぞれ自分なりに消化して、誤摩化して、馴らして、どうかにか生きているのに。真面目に苦しんでしまう一郎が哀しくて愛おしい。

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2011/09/15

漱石の小説を人に薦めるときはこれにしてます。漱石の作品の中では比較的事件性もあるし,(草枕や虞美人草なんかと比べてだが)文章が軽妙で読みやすい。 「あの山は僕の所有だ」などの言い回しも単純に読めば滑稽でちょっと笑ってしまう。 これ以上の感想はもう何度か読まないと何ともいえないので...

漱石の小説を人に薦めるときはこれにしてます。漱石の作品の中では比較的事件性もあるし,(草枕や虞美人草なんかと比べてだが)文章が軽妙で読みやすい。 「あの山は僕の所有だ」などの言い回しも単純に読めば滑稽でちょっと笑ってしまう。 これ以上の感想はもう何度か読まないと何ともいえないので,また読みたい。

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2011/08/11

8月11日読了。精神を病んだ未亡人への思慕に一人悦に入る友人、嫁との不仲に思い悩む兄や家族の間で悩みつつも気楽に生きる主人公・二郎の生活。漱石自身が近代日本の中で感じていたであろう居心地悪さ・思想と実践が伴わない歯がゆさ・女性への畏怖みたいなものが大いに投影されているようで読み応...

8月11日読了。精神を病んだ未亡人への思慕に一人悦に入る友人、嫁との不仲に思い悩む兄や家族の間で悩みつつも気楽に生きる主人公・二郎の生活。漱石自身が近代日本の中で感じていたであろう居心地悪さ・思想と実践が伴わない歯がゆさ・女性への畏怖みたいなものが大いに投影されているようで読み応えはあるが、寸止めの連続というか?何か起こるぞ起こるぞ不幸がくるぞくるぞと脅かしつつも結局何も起こらない、というこの展開は甚だ尻の座りが悪い。もとは新聞連載小説だというからそのせいかもしれないが・・・。近代の人間とは、自分で「テキトーに生きよう」と思えばいくらでも生きられるし、「人生は不幸だ」と思ってしまえば他人のアドバイスくらいではその負の連鎖を振り切ることはできない、というものなのか。

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2011/07/06

学問だけを生きがいとしている一郎は、妻に理解されないばかりでなく両親や親族からも敬遠されている。孤独に苦しみながらも、我を棄てることができない彼は、妻を愛しながらも、妻を信じることができず、弟・二郎に対する妻の愛情を疑い、弟に自分の妻とひと晩よそで泊まってくれとまで頼む…。「他の...

学問だけを生きがいとしている一郎は、妻に理解されないばかりでなく両親や親族からも敬遠されている。孤独に苦しみながらも、我を棄てることができない彼は、妻を愛しながらも、妻を信じることができず、弟・二郎に対する妻の愛情を疑い、弟に自分の妻とひと晩よそで泊まってくれとまで頼む…。「他の心」をつかめなくなった人間の寂寞とした姿を追究して『こころ』につながる作品。

Posted byブクログ

2011/06/14

「西洋文明の“非人間的な加速”」という言葉に導かれ出逢った一冊。 時のことをずっと考えている。 時間の概念が狂ってる。これを取り戻すことを誰かがやらなくてはならない。それから、本当に大切なことを言葉にできない息苦しさを抱えたまま、社会は本当によい方向に向かうのだろうか・・・。...

「西洋文明の“非人間的な加速”」という言葉に導かれ出逢った一冊。 時のことをずっと考えている。 時間の概念が狂ってる。これを取り戻すことを誰かがやらなくてはならない。それから、本当に大切なことを言葉にできない息苦しさを抱えたまま、社会は本当によい方向に向かうのだろうか・・・。 そういう思いがずっと心を巡っている。

Posted byブクログ

2011/06/03

『こころ』よりもこちらの作品のほうが、個人的に好きです。読んだ後、胸がぐっと締め付けられる思いがしました。

Posted byブクログ