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行人 の商品レビュー

4.1

105件のお客様レビュー

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    32

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2010/09/09

前半、次々と謎を提示したり、尋常ではない展開(夫が妻の貞操を試すように弟に依頼する)を作ったりしながら読者の興味を惹いていく力量はさすが。その展開の中で、語り手の兄・一郎を中心とした人々の心理を克明に描写していく。ここでもやはり「男性の目から見た女性」の姿しか描かれないのだが、自...

前半、次々と謎を提示したり、尋常ではない展開(夫が妻の貞操を試すように弟に依頼する)を作ったりしながら読者の興味を惹いていく力量はさすが。その展開の中で、語り手の兄・一郎を中心とした人々の心理を克明に描写していく。ここでもやはり「男性の目から見た女性」の姿しか描かれないのだが、自分で袋小路に入ってしまう一郎の心理が、今回は読み応えあった。個人的には、『明暗』には及ばないものの、『こころ』くらいには好きな作品。こうしてみると、前期三部作はからっきしうけつけない私にとっても、作家人生後半の漱石はそれなりにスマッシュヒットを飛ばしている気もする。

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2010/08/04

後期3部作の2作目。なんか漱石読んでみようという気になったので、「こころ」が好きなので、このあたりからと読んでみる。 内向的で思慮型な一郎の精神世界が主テーマだと思うが、この辺が漱石の特徴なのかねぇ。昔読んだ「こころ」の印象が強すぎるのか、「こころ」ほどひきこまれなかったが漱石...

後期3部作の2作目。なんか漱石読んでみようという気になったので、「こころ」が好きなので、このあたりからと読んでみる。 内向的で思慮型な一郎の精神世界が主テーマだと思うが、この辺が漱石の特徴なのかねぇ。昔読んだ「こころ」の印象が強すぎるのか、「こころ」ほどひきこまれなかったが漱石文学はもうすこし読んでみたいねぇ。そもそも「こころ」を読んだのが中学生ぐらいなので、自分の中の基準となっている「こころ」からまず読み返してみるかな。

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2010/03/16

10年以上ぶりに読んだ。記憶では台風で和歌山の旅館に嫂と閉じ込められた場面がピークだったけど実際にはその後も延々と物語は続く。むしろ出来事は些細なことでしかなく、兄一郎の『こころ』の問題がメイン。

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2009/10/26

前半は、兄嫁の苦悩と色気を感じさせる絶妙の描写で、後半は「死ぬか気が狂うか宗教にはいるしかない」という兄の苦悩の深さが明らかになる秀作である。 この兄の苦悩がそのまま漱石の苦悩であったらしい。

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2009/11/08

後期三部作の真ん中。そうとも知らず、彼岸過迄も読まずに手に取ってしまった苦い思い出。まあこころは更に以前に読んでしまったので、今更っちゃ今更だけど。 名作の一部分をカットして教科書に載せるの、やめませんか?いじめ? 門読んだ後だったんで、とっても能天気に感じた。視点が違うからっ...

後期三部作の真ん中。そうとも知らず、彼岸過迄も読まずに手に取ってしまった苦い思い出。まあこころは更に以前に読んでしまったので、今更っちゃ今更だけど。 名作の一部分をカットして教科書に載せるの、やめませんか?いじめ? 門読んだ後だったんで、とっても能天気に感じた。視点が違うからってだけだろうけど。兄貴寄りになれば、門より暗くなるのは明白だ…。もっと精神的にも重症そうだし。 ラストは確かに『こころ』に通じている。これが発展していったものなのね。

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2009/10/04

一郎のような性格の人、いますね。愛されたいんだけど、自分からは愛想よくできなくて、相手に「なんで近づいてきてくれないんだ!」ってイライラする。 漱石自身がこんな感じだったとも言われているそうです。息子に「父が隣の部屋にいるのは虎が横たわっているようなものだ」とか書かれています。 ...

一郎のような性格の人、いますね。愛されたいんだけど、自分からは愛想よくできなくて、相手に「なんで近づいてきてくれないんだ!」ってイライラする。 漱石自身がこんな感じだったとも言われているそうです。息子に「父が隣の部屋にいるのは虎が横たわっているようなものだ」とか書かれています。 そういう人が家族や上司だったら、ヒロインの直のような行動をとるのは一つの対処法かもしれません。 表面上では従順に従うけれど、本心は見せない。直は「座ったまま足が腐っていくのを笑って受け入れているような女」と表現されています。 「私はいつ死んでもいい」とも発言しています。失うものがない、と思えば逆に、自分を傷つける相手に全てを搾取されずに、心の自由を保てるのかもしれません。

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2009/10/04

最近、漱石を読みなおしたり、まだ未読のものを読んだりしてる。 どれも、やはり、ぐいぐい引き込まれ、最後にどひゃーっとやられる。 これも、どひゃー、が来そうでドキドキしながら読んだ。 結果は、内緒。(R)

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2009/10/04

『こころ』の次に好きなというか、ぐっとくるものがある作品かなーと思う。まず舞台がはじめ近畿方面で語られ、そこから東京へという設定がいい。大阪市天王寺やら、訪れたことはないにしてもどこか近いように思い描いていた土地が出てくるところにまず哀愁みたいなものを思ったりする。いやまあたぶん...

『こころ』の次に好きなというか、ぐっとくるものがある作品かなーと思う。まず舞台がはじめ近畿方面で語られ、そこから東京へという設定がいい。大阪市天王寺やら、訪れたことはないにしてもどこか近いように思い描いていた土地が出てくるところにまず哀愁みたいなものを思ったりする。いやまあたぶんそこまで深刻なものではないが。情景描写がやはり緻密で、そこに登場人物を置くとぐっと迫りくるものを感じる。そしてそこにすれ違う人間のこころ。すれ違うというのかどうか。もうそれぞれがそれぞれの方向を見ることしかできないのかもしれない。人間の息苦しさが、なぜか読んでここちよいようなリズム、鼓動をおぼえてしまうという。

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2009/10/04

『彼岸過迄』を読み終えて『行人』へ。読み終わったとき嘆息してしまった。 漱石は途中で修善寺に倒れ、間に5か月休んで新聞発表を再開している。 漱石の人格を分け持つかのような学者一郎と弟二郎。二郎は感情をあまり出さない嫂と気が合う。にぎやかで陽気な妹重子と両親を中心に家庭のな...

『彼岸過迄』を読み終えて『行人』へ。読み終わったとき嘆息してしまった。 漱石は途中で修善寺に倒れ、間に5か月休んで新聞発表を再開している。 漱石の人格を分け持つかのような学者一郎と弟二郎。二郎は感情をあまり出さない嫂と気が合う。にぎやかで陽気な妹重子と両親を中心に家庭のなかでのあれこれが書かれるが、出来事自体には表立っての変化はない。 大きく波立つのは一郎の頭の中である。 寝ている一郎が目を覚まさなかったら「さぞ幸福だろう」と思うと結ぶ兄の友人からの手紙が重い。 独特の比喩表現が漱石らしい。自然描写も新鮮だった。 作成日時 2008年02月09日 11:40

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2009/10/04

 「彼岸過迄」から始まって「こころ」へとつながる漱石後期三部作の第二作である。人を信じられず神経衰弱に陥ってしまった長男一郎が、弟二郎(自分)に、妻である直の真意を探るべく、彼女と一夜を過ごして欲しいと話を持ち込む。チャンス、到来!「嵐の一夜in和歌山」、果たして人妻と義弟の不倫...

 「彼岸過迄」から始まって「こころ」へとつながる漱石後期三部作の第二作である。人を信じられず神経衰弱に陥ってしまった長男一郎が、弟二郎(自分)に、妻である直の真意を探るべく、彼女と一夜を過ごして欲しいと話を持ち込む。チャンス、到来!「嵐の一夜in和歌山」、果たして人妻と義弟の不倫場面の展開か!、と思いきや何事も起こらなかった。(なんでやねん!)  ここまでは、読者に期待を抱かせてとても面白かったが、最後はいつものとおり、朝日新聞の編集者に「早よ、終わらさんかい」といわれて、漱石先生、H先生の書簡という形で締めくくってしまった。お手紙を書くというこの小説の形式、当時の読者に好評だったのか、次の「こころ」でも使う事になったが、それにしても、二郎の結婚話とか、三沢の「あの女」とか、どうなったのか?

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