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行人 の商品レビュー

4.1

105件のお客様レビュー

  1. 5つ

    32

  2. 4つ

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  3. 3つ

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2021/01/03

結婚前にして、とても勉強になった。 ムハンマドが山を呼んで動かそうとする話が、未だに心に残っている。

Posted byブクログ

2020/12/19

心配性の兄を持つ「自分」の日常をつらつらと書き記した一冊。 大きい山場はないのだけれど、不思議に頁をめくる手が止まらない。 兄から、兄嫁の節操を試すために一夜の旅をしてくれ、と言われるところが山場といえば山場。 その依頼を断り、ただ出掛けで話を聞くだけという妥協案を出したものの、...

心配性の兄を持つ「自分」の日常をつらつらと書き記した一冊。 大きい山場はないのだけれど、不思議に頁をめくる手が止まらない。 兄から、兄嫁の節操を試すために一夜の旅をしてくれ、と言われるところが山場といえば山場。 その依頼を断り、ただ出掛けで話を聞くだけという妥協案を出したものの、荒天により結局旅先で兄嫁と宿で一夜を過ごすことになる。 自宅へ帰った後も兄の猜疑は消えず、彼の言動が狂い始める。 その兄に旅を勧め、共に旅をした兄の友人から自分に手紙が届く。そこには心配性どころでなく、深く神経を病んだ兄の姿があった。 近代知識人が急速な社会の変化に惑う姿を、兄という装置を使って描いたのかも。 手紙の中で一人の人物の言動をつぶさに著し、その人間性を浮かび上がらせる手法は、次作の『こころ』に結実する。 父が語った盲目の女性の挿話は本筋とは薄い関わりながら、後味悪く一番胸に残った。 ということは、それをその場で聞いていた兄の精神の歯車を狂わせる一助となった可能性も?

Posted byブクログ

2020/11/26

【兄さんがこの眠りから永久覚めなかったらさぞ幸福だろうという気がどこかでします。同時にもしこの眠りから永久覚めなかったらさぞ悲しいだろうという気もどこかでします】(文中より引用) 知識人の一郎を兄に持つ二郎は、旅行先でその兄が妻に不信を抱いていることを知る。心の内の疑いを晴らす...

【兄さんがこの眠りから永久覚めなかったらさぞ幸福だろうという気がどこかでします。同時にもしこの眠りから永久覚めなかったらさぞ悲しいだろうという気もどこかでします】(文中より引用) 知識人の一郎を兄に持つ二郎は、旅行先でその兄が妻に不信を抱いていることを知る。心の内の疑いを晴らすため、一郎は二郎に対し、彼女と旅行に出て欲しいと頼み込むのだが、一夜を過ごした二郎は兄に結果を報告する時宜を逸してしまい......。著者は、近代日本を代表する作家・夏目漱石。 焦点が当てられる登場人物がパートによってずいぶん異なるため、どこに主眼を置くかでずいぶんと印象が異なってくるのではないかと思います。やはり圧巻だったのは兄・一郎を軸とした最終章。進歩や自我といった近代的な概念を身につけた、というよりも「身につけてしまった」人物の煩悶がよく伺える作品でした。 ラストの歯切れの良さには舌を巻くものがあります☆5つ

Posted byブクログ

2020/08/05

夏目漱石の作品は、作品ごとにかなり好き嫌いが出てしまう。これまで読んだ中では、一番『門』が好きだったけれど、これも読むまではドキドキしていたくらいだ。 行人は、二郎を主人公としたストーリーで、何か大きく突き動かされるような内容ではなかった。しかし、当時の情景や習慣が、夏目漱石と...

夏目漱石の作品は、作品ごとにかなり好き嫌いが出てしまう。これまで読んだ中では、一番『門』が好きだったけれど、これも読むまではドキドキしていたくらいだ。 行人は、二郎を主人公としたストーリーで、何か大きく突き動かされるような内容ではなかった。しかし、当時の情景や習慣が、夏目漱石という作家によって上手に表現されていて、あたかもその時代に生きているかのような感覚にさせてくれる。 そういう点では『キレイな』小説だなぁという印象は残っている。 友人の入院、下女の結婚、兄の病気という日常の中で二郎が生きていく姿は、見ていてリアルな感じがするけれど、あまり没入できなかったので、この点数とした。

Posted byブクログ

2020/05/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

(個人的)漱石再読月間の12。残すは3。 初読は高校生の時だと思うが、当時は哲学書や思索的なものが好きで、この作品もとても面白く読んだ記憶があるのだが…いやこれは高校生には無理でしょ!特に男女、家族、夫婦の問題は時代を超えて無理。齢を重ねてから読むべし。 後半の兄の友人の手紙は、漱石再読を始める直前に読み返した埴谷雄高「死霊」の三輪4兄弟を思い起こさせた。思索を重ねに重ね、狂うか、死か、宗教しかないと苦しむ兄。 軽薄な父とその性質を受け継いだ語り手である弟の方が生きやすい。思索的であるとはなんと生きづらいことか。 …自分が本来好きな読書の形とは何なのか、それを考えることができて、再読月間はとても有意義なものになってきました。

Posted byブクログ

2020/04/29

二郎の目を通して伝わってくる、兄の苦悩と孤独。 それを思うと、やるせない気持ちになる。 何となくそれを感じていたからこそ、もう少し親しい言葉を掛けてあげて下さいと、嫂に言ったのかも知れないけど…夫婦間のことって二人にしか分からないこともあるから… 何と言うか、上手く言えないんだ...

二郎の目を通して伝わってくる、兄の苦悩と孤独。 それを思うと、やるせない気持ちになる。 何となくそれを感じていたからこそ、もう少し親しい言葉を掛けてあげて下さいと、嫂に言ったのかも知れないけど…夫婦間のことって二人にしか分からないこともあるから… 何と言うか、上手く言えないんだけど、読むのに体力を使う小説だった。でも、面白かった。 兄はこの後どうなるんだろう。 兄の苦悩の孤独を思えば、Hさんの言うように、このまま目が覚めなかったら、永久に幸福なのかも知れない。

Posted byブクログ

2020/03/23

漱石の考えていることがわかりやすく、小説という形で示されている。小説としては、ややわかりやすすぎるかもしれない。それでも、最後までおもしろく飽きさせずに読ませる。しかもきっちりまとまっている。やはり漱石はすごい。

Posted byブクログ

2019/12/12

十数年ぶりに再読。父親と似て呑気な二郎とその対極な性質を持つ兄の一郎。一郎が家族からどんどん孤立して苦悩を深めていく様は酷く痛ましく感じました。人を信じることが出来ない、人の心が解らないというのは何という不幸だろう。一郎に必要だったのは宗教や学問、ましてや死でもなくて身近な人から...

十数年ぶりに再読。父親と似て呑気な二郎とその対極な性質を持つ兄の一郎。一郎が家族からどんどん孤立して苦悩を深めていく様は酷く痛ましく感じました。人を信じることが出来ない、人の心が解らないというのは何という不幸だろう。一郎に必要だったのは宗教や学問、ましてや死でもなくて身近な人からの心底からの暖かい言葉、相手と遠慮なく言葉を交わすことだったのでは(作中ではHさんがその役目を引き受けてますが)。一郎の精神的病理を勝手に考察するに、彼は不安障害、強迫性障害、睡眠障害、被害妄想かなと。Hさんの手紙は不穏な言葉で終わってますが、一郎は果たしてこの後どうなったのか。何となく無事に帰宅したイメージが浮かびません。

Posted byブクログ

2019/11/21

朗読CDにて再読中。 少しづつ聞いているが、新聞連載小説だっただけあって、その聞き方にあっているように思う。 夢中で読み飛ばさないせいか、本筋に関係ないところで驚くことも多かった。 「花は上野から向島、それから荒川という順序で、だんだん咲いていって段々散ってしまった。」などなど季...

朗読CDにて再読中。 少しづつ聞いているが、新聞連載小説だっただけあって、その聞き方にあっているように思う。 夢中で読み飛ばさないせいか、本筋に関係ないところで驚くことも多かった。 「花は上野から向島、それから荒川という順序で、だんだん咲いていって段々散ってしまった。」などなど季節のうつりかわりの繊細さ、鮮やかさ(上引用文は今なら「花は九州から東京、それから北海道という順序で、だんだん咲いていって段々散ってしまった。」といったところか?)、 親を通さず見合いをしたり、しかもその見合いはたぶん誰一人として口に出して打ち合わせていない。それでいて立ち会った人は皆承知していたりする阿吽の呼吸、 一方、雅楽の発表会にだされた「御茶」は「珈琲とカステラとチョコレートとサンドイッチ」であったりすること・・等々。

Posted byブクログ

2019/06/26

学問だけを生きがいとしている一郎は、妻に理解されないばかりでなく、両親や親族からも敬遠されている。孤独に苦しみながらも、我を棄てることができない彼は、妻を愛しながらも、妻を信じることができず、弟・二郎に対する妻の愛情を疑い、弟に自分の妻とひと晩よそで泊まってくれとまで頼む……。「...

学問だけを生きがいとしている一郎は、妻に理解されないばかりでなく、両親や親族からも敬遠されている。孤独に苦しみながらも、我を棄てることができない彼は、妻を愛しながらも、妻を信じることができず、弟・二郎に対する妻の愛情を疑い、弟に自分の妻とひと晩よそで泊まってくれとまで頼む……。「他の心」をつかめなくなった人間の寂寞とした姿を追究して『こころ』につながる作品。

Posted byブクログ