津軽 の商品レビュー
読んでいて楽しい。戦争末期であり日本未曾有の非常事態に、この人はなぜこんな明るい紀行文というか自分探しの感傷旅行が書けるのかしら?不思議な作家です。序文において“愛”の専門家として津軽を旅すると述べていた。太宰がこのように自分を語るのも珍しいし、冗談なのかと思っていたが、確かにこ...
読んでいて楽しい。戦争末期であり日本未曾有の非常事態に、この人はなぜこんな明るい紀行文というか自分探しの感傷旅行が書けるのかしら?不思議な作家です。序文において“愛”の専門家として津軽を旅すると述べていた。太宰がこのように自分を語るのも珍しいし、冗談なのかと思っていたが、確かにこの作品は故郷への“愛”で溢れていました。太宰の人格の負の側面が、戦前の田舎の名家に内包される闇に侵されたという見解もあるかもしれないがこの作品からはほとんど窺い知ることができない。紀行文としてみた場合、食べる事にほとんど執着しない割には食事の場面が魅力的で、酒ばかり飲んでいるのも面白い。最後の一番懐かしい人に会いにいくエピソードもとても良かった。
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地方の片田舎の町でも人情と活気があり、どんな地域にも独特の個性のあった昔の日本へ行って、色々な土地を時間をかけて旅してみたい。時代が変わりもはや叶わないことだけれども、著者の人間味もありコミカルでもある筆致がそういう思いを自分の中に呼び覚ました模様。紀行文はもともと好きだが、本作...
地方の片田舎の町でも人情と活気があり、どんな地域にも独特の個性のあった昔の日本へ行って、色々な土地を時間をかけて旅してみたい。時代が変わりもはや叶わないことだけれども、著者の人間味もありコミカルでもある筆致がそういう思いを自分の中に呼び覚ました模様。紀行文はもともと好きだが、本作も期待通りだった。
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太宰治 「 津軽 」自伝的な紀行文。死と虚構の中にいる 作家 太宰治から 津軽人の津島修治 に戻り 人間の幸福を取り戻ていく姿を描いているように感じる 著者が 虚飾を行わず 伝えたかったのは *津軽の生きている雰囲気=津軽人の心の触れ合い *津軽、育ての母、家族に対する自分の気...
太宰治 「 津軽 」自伝的な紀行文。死と虚構の中にいる 作家 太宰治から 津軽人の津島修治 に戻り 人間の幸福を取り戻ていく姿を描いているように感じる 著者が 虚飾を行わず 伝えたかったのは *津軽の生きている雰囲気=津軽人の心の触れ合い *津軽、育ての母、家族に対する自分の気持ち 最後の文 「さらば読者よ〜絶望するな」は 読者への遺書なのか? 昭和19年だから 戦争と関係あるのか?
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晴子三部作が津軽・木造の筒木坂という地で描かれたのに触発されて、久しぶりに太宰治を再読。 生まれ故郷である津軽の各地を巡りながら、さまざまな善良なる人たちと行き会い、最後に乳母であった越野タケさんと再開するストーリーを小説と呼んでいいのかためらいますが、戦時下に別天地のような生活...
晴子三部作が津軽・木造の筒木坂という地で描かれたのに触発されて、久しぶりに太宰治を再読。 生まれ故郷である津軽の各地を巡りながら、さまざまな善良なる人たちと行き会い、最後に乳母であった越野タケさんと再開するストーリーを小説と呼んでいいのかためらいますが、戦時下に別天地のような生活が営まれていた津軽は、まさに小説のような地であったと、地元民は誇りに思います。
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作者自身が故郷の津軽へ里帰り中の紀行文。生まれた家柄にコンプレックスを抱えたまま生涯を閉じる彼だが、この作品を書き上げるに辺り津軽の歴史や気質を調べ新たな発見をしたのか土地、すなわち津軽人としての誇りを持ったようである。作者の人格的な部分が見られる作品。
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長いこと読みたい、読まなければ、と思い続けていた『津軽』を遂に読了。 「汝を愛し、汝を憎む。」 故郷に贈る言葉としてのこのフレーズが印象的であり、長年私が故郷に感じていた気持ちにぴったりと当て嵌るラベルを見付けたような心持ちだった。 同じ東北人として、とでも言ったら良いのだろう...
長いこと読みたい、読まなければ、と思い続けていた『津軽』を遂に読了。 「汝を愛し、汝を憎む。」 故郷に贈る言葉としてのこのフレーズが印象的であり、長年私が故郷に感じていた気持ちにぴったりと当て嵌るラベルを見付けたような心持ちだった。 同じ東北人として、とでも言ったら良いのだろうか。故郷への言いようのない愛憎が形にされている文章に共感してばかりだった。 旅に出たくなる小説であり、故郷を訪ねたくもなる小説だった。また近いうちに、自分の故郷と、そして太宰の故郷を訪ねたい。
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本棚整理のため、11年ぶりに再読。評価変更☆4→3 津軽(生家と知人)紀行。生家がでてきてクライマックスで”たけ”に会うシーンを中心に太宰にしては爽やかな印象を与える作品。
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驚いたとともに、心の深いところで感動しました。ここには、人を愛し、また、自身愛すべき人である、太宰治の姿があります。こんなふうに平らかに自分や自分の生い立ちを開き、人と風土への愛を書いたものは、もしかして初めて読んだんじゃないかしらと思ったほどです。
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津軽の地理、文化、歴史、人全てが愛おしく感じられる描かれ方で、太宰らしく無いくせにとても太宰らしい作品。
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太宰のお国自慢紀行記。隣県に住んでいるし深浦や鰺ヶ沢にも数回行ったことがあるので、まあそんな感じかなという感想。巻末に書かれた初期短編「思ひ出」の女中たけさんとの再会のところがいい。この作品、この部分だけまた読み返したくなった。
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