津軽 の商品レビュー
太宰独特の言い回しと心情描写の上手さに感嘆す。こんなにも取り繕わず自分の意をいい意味でネガティブに書ける人はいないであろう。
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郷里津軽半島を廻る、戦争中とは思えないのどかな紀行。 死に囲まれた時代ほど豊穣な作品を生み出した太宰らしい不思議な安息感に満ちている。 旧知の人々との再会や交歓に重点が置かれいる。終盤彼が特に望んでいた大切な再開を果たす場面 の描写は美しい、本土の北の果てで遭遇する万国旗がはため...
郷里津軽半島を廻る、戦争中とは思えないのどかな紀行。 死に囲まれた時代ほど豊穣な作品を生み出した太宰らしい不思議な安息感に満ちている。 旧知の人々との再会や交歓に重点が置かれいる。終盤彼が特に望んでいた大切な再開を果たす場面 の描写は美しい、本土の北の果てで遭遇する万国旗がはためく運動会がまぼろしのようだ。
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太宰文学の根底に潜む津軽での生活を述懐しつつ取材旅行の記録をまとめたもの。 鬱屈したイメージの太宰だが、郷土での振る舞いはとても溌剌としていて爽快だった。 「元気で行かう。絶望するな。では、失敬。」
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太宰が生まれ育った津軽を、忘れ得ぬ人を訪ねながら語る。 太宰は序編で「私には、また別の専門科目があるのだ。世人は仮にその科目を愛と呼んでいる。人の心と人の心の触れ合いを研究する科目である。」と語る。 太宰の忘れ得ぬ心の触れ合った人々は、旧家に仕える下女や書生。 そこに太宰は太...
太宰が生まれ育った津軽を、忘れ得ぬ人を訪ねながら語る。 太宰は序編で「私には、また別の専門科目があるのだ。世人は仮にその科目を愛と呼んでいる。人の心と人の心の触れ合いを研究する科目である。」と語る。 太宰の忘れ得ぬ心の触れ合った人々は、旧家に仕える下女や書生。 そこに太宰は太宰自身の本質を感じ取る。 生まれた家と、自分の本質との間の葛藤。 そんな葛藤から、いくつかの作品が生まれたのだと感じ入った一冊。
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津軽の光景が目に浮かぶ。 なつかしい地名もあり、県は違うが、自分もその近くで育ったということを改めて感じさせてくれた。 太宰治のルーツが記された書だ。人物形成の過程も見えるような気がする。
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津軽風土記の執筆のため、生まれ故郷である本州の最北端を旅した太宰治の記録と回想と再会。 図書館で借りて読了。友人に薦められて読んだ。 太宰治の小説はは教科書に載っていた「走れメロス」しか読んだことがなかったので、この「津軽」を読んで、他の作品ももっと読んでみたいと思った。 本編...
津軽風土記の執筆のため、生まれ故郷である本州の最北端を旅した太宰治の記録と回想と再会。 図書館で借りて読了。友人に薦められて読んだ。 太宰治の小説はは教科書に載っていた「走れメロス」しか読んだことがなかったので、この「津軽」を読んで、他の作品ももっと読んでみたいと思った。 本編の二、蟹田のくだりは思わず声を上げて笑ってしまった。 卑屈、あるいは他の小説から「私はいつでも何かの態度をつくっていたのである。」と引用されているように、道化っぽさというか文章中でもあえて演じているような素振りがあるので、果たしてどれが本心なんだろう、と読みながら惑ったりもしたけれど、故郷の友人知人、そして最後のタケとの再会の心境で、これが太宰治という人の本質なんだと信じたいなぁ、と思った。つまり好きです。 東北を旅したい気持ちが再発しました。
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・太宰さんのおちゃめが光る ・ふいの「〜しちゃった」が超かわいい!! ・なんだかんだで友達たくさんいいなあ ・孤独おにいちゃんもえる ・全体に軽快なかんじ。まあ津軽の名の通り。文のテンポいいから。 ・情景がうかんできて行った気分になった
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ユーモラスな太宰治。旅行記。 人間失格の太宰しか知らなかったので、印象ががらりと変わり、彼が好きになった。 津軽帰りの夏に読んだ。
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「それから好むものは、酒である。飲食に於いては何の関心もなかった筈の、愛情と心理の使徒も、話ここに到って、はしたなくも生来の貪婪性の一端を暴露しちゃった」 という一文の通り、とにかく旅先で酒、酒、酒なこの男。しかも多分全部人からもらったものばっかで自分で買ってないよね?w ていう...
「それから好むものは、酒である。飲食に於いては何の関心もなかった筈の、愛情と心理の使徒も、話ここに到って、はしたなくも生来の貪婪性の一端を暴露しちゃった」 という一文の通り、とにかく旅先で酒、酒、酒なこの男。しかも多分全部人からもらったものばっかで自分で買ってないよね?w ていうか、「しちゃった」ってまあ、なんてチャーミングなんでしょう。 芦野公園駅でのエピソードが好き。切符を口に咥えた娘さんが、まるでキスをするように目をつぶって改札の若い駅員さんに顔をそっと差し出し、それにはさみを入れる駅員さんってシーン、なんとも絵になる。 最後の有名な結びの言葉は本当に大好き。元気をもらえる。
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太宰36歳のときの作品だそう。自分が今ちょうど36なのでそう考えると何かちょっと不思議な気がする。時代が違うのでなんとも言えないし、作者には失礼だがちょっと太宰の方がおじさんっぽいんじゃないかな(笑)。小説と違って著者がどういう人間なのかがストレートに出てる気がする。かなり周りに...
太宰36歳のときの作品だそう。自分が今ちょうど36なのでそう考えると何かちょっと不思議な気がする。時代が違うのでなんとも言えないし、作者には失礼だがちょっと太宰の方がおじさんっぽいんじゃないかな(笑)。小説と違って著者がどういう人間なのかがストレートに出てる気がする。かなり周りに気を使い、家族の中ではあまりくつろげない等々。東北の津軽が舞台だが予想していたよりも全然暗い感じではなかった。「人間失格」とか「斜陽」の暗いイメージが自分の中で強かったからかもしれないが・・・
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