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刺青・秘密 の商品レビュー

4.1

226件のお客様レビュー

  1. 5つ

    73

  2. 4つ

    71

  3. 3つ

    44

  4. 2つ

    5

  5. 1つ

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2022/03/12

再読です。言わずもがな有名な「刺青」「少年」を収録し、なにゆえ谷崎文学が耽美派と呼ばれているのか、その作風が大体わかる一冊になっています。私の場合、谷崎はこの本からのめり込んでいったので、非常に思い入れのある話が多いです。「刺青」や「秘密」は大好きな話ですが、谷崎文学では異色の「...

再読です。言わずもがな有名な「刺青」「少年」を収録し、なにゆえ谷崎文学が耽美派と呼ばれているのか、その作風が大体わかる一冊になっています。私の場合、谷崎はこの本からのめり込んでいったので、非常に思い入れのある話が多いです。「刺青」や「秘密」は大好きな話ですが、谷崎文学では異色の「異端者の悲しみ」や、幻想的な情緒を醸し出す「母を恋うる記」なども好きです。まあ要は全部好きです(笑)。

Posted byブクログ

2021/12/30

面白かった〜「刺青」「幇間」「少年」あたりは本当にThe性癖と言わざるを得ない文章だった。圧倒的に美しい女に、天性の加虐性や性質をぶつけられて心身が捻くれることに喜びを見出している男ばっかり出てくる。なおかつ相手も同じ(ただしベクトルは反対の)喜びを感じていてほしいという... ...

面白かった〜「刺青」「幇間」「少年」あたりは本当にThe性癖と言わざるを得ない文章だった。圧倒的に美しい女に、天性の加虐性や性質をぶつけられて心身が捻くれることに喜びを見出している男ばっかり出てくる。なおかつ相手も同じ(ただしベクトルは反対の)喜びを感じていてほしいという... 文章が上手いのでそういう心理がさらさら入ってきますね。 「異端者の悲しみ」も良かったな。最後主人公が芸術を発表したくだり、ねじれて澱んで、しかしそれを悲しいと思わないわけでもない主人公の性質が花開いたかんじがする。好きな終わり方でした。

Posted byブクログ

2021/10/14

今読んでも全く色褪せることのない独特な世界観にページを捲る手が止まらなかった。 書き方を間違えると「キモい」方向に行ってもおかしくない題材が多いのだが、それを美しい描写とともに神聖な雰囲気さえ感じられる物語にまとめていてすごい。 生涯でかなりの数の作品を出している模様。 人...

今読んでも全く色褪せることのない独特な世界観にページを捲る手が止まらなかった。 書き方を間違えると「キモい」方向に行ってもおかしくない題材が多いのだが、それを美しい描写とともに神聖な雰囲気さえ感じられる物語にまとめていてすごい。 生涯でかなりの数の作品を出している模様。 人形橋が地元っておしゃれでいいな〜

Posted byブクログ

2021/10/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

異端者の悲しみ」が自伝的要素の強い作品だと聞いていつの時代にも同じような人間はいるものだと思ったが大半の章三郎のような人間と違って谷崎は本物だった。 「死んだ体はまだ微かに動いて居た。もくもくと肩の筋肉を強直させて、唇の間から、葉牡丹のように色の褪めた舌を垂らした。」 妹の死にさえ耽美を見出すのか。自身の「「自分には優秀な才能がある。」そう信じながら、彼は一向その才能を研こうとはせず、暇さえあれば安逸を貪り、昼寝と饒舌と飲酒と漁色とに耽って居た」「母よりも一層懶惰で、虚栄家で、父よりも亦無気力な、薄志弱行な」精神への葛藤と逃避の中で生まれた狂気なのだろうか。

Posted byブクログ

2021/09/02

細身のシャイボーイのアコラジで朗読を読んで興味を持って読んでみた。朗読の方が迫力があって面白かったかな。旧仮名遣いの影響かな。いずれにしても思ったより響かなかった。

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2021/07/25

六つのストーリー別に簡単に述べた後、最後に全体の感想を書こうと思います。 「少年」 学校では目立たない信一は、ある金持ちの家の次子であり、家では姉や馬丁の子である仙吉をいじめて遊んでいた。「栄ちゃん」も、その仲間に加わって遊ぶようになるのだが、あるきっかけを機に姉と信一の立場が...

六つのストーリー別に簡単に述べた後、最後に全体の感想を書こうと思います。 「少年」 学校では目立たない信一は、ある金持ちの家の次子であり、家では姉や馬丁の子である仙吉をいじめて遊んでいた。「栄ちゃん」も、その仲間に加わって遊ぶようになるのだが、あるきっかけを機に姉と信一の立場が逆転する。マゾヒスティックな誘いは妖艶である。信一は次第に姉の前に屈していくのだった。 「幇間」 幇間の三平は、人に面白可笑しがられるのが大好きな性分であった。好いたおなごに言い寄ろうとするも笑いを取るネタにされてしまう。それでも彼は、「卑しいprofessionalな笑い方」をしてかれの性分を貫いた。その姿は、可笑しくもあり、悲しくもあった。 「秘密」 秘密に憧れ、隠居した主人公。ある時彼は、女装して外出することに快感を覚えるようになり、顔に塗りたくった化粧の下に隠れた秘密を密かに楽しむようになっていた。 ある日、昔恋に落ちた女と出会すのだが、彼女の美しさは健在で名も所も知らない彼女は正に「夢の中の女」であった。そんな中、所を暴きたいという好奇心が抑えきれなくなってそれを実行してしまう。その瞬間、女の秘密は暴かれ「夢の中の女」ではなくなった。 「秘密」は「秘密」であるからこそ魅惑的で美しい。しかし、「秘密」を暴くのは簡単で、それを見てしまった時、その美しさは幻と化す。 彼は、「秘密」などという手ぬるい快楽には満足しなくなって、血だらけな歓楽を求めるようになった。 「異端者の悲しみ」 谷崎の懺悔の記だが、そこにも美しさは確かに存在する。 友人の死、妹の死に軽薄な自分に罪悪感を抱き、それをうやむやにしてしまう悪夢。彼の文学はここから生まれ、生き続けているのだ。 彼の見た美しさを、私も見たい。 「二人の稚児」 それほど仏に嫌われて居る女人が、どうして菩薩に似て居るのだろう。それほどの容貌の美しい女人が、どうして大蛇よりも恐ろしいのだろう。(229) 寺で育った二人の稚児は、女というものを知らない。その未知の世界への好奇心は日々膨らむばかりで、千手丸はとうとう下界へ降りてしまう。 浮世の愉しさを知った彼は、共に育った瑠璃光丸をその世界へ誘うが、瑠璃光丸は仏の教えを守り続けるのだった。 浮世を知らなかった千手丸は、初めて目の当たりにした景色を、どう感じただろうか。 二人の稚児の、果たしてどちらが本当に幸せだったのだろうか。 「母を恋うる記」 美しい日本語で描かれる幻想的な光景。あたかも目の前に存在するような景色が懐かしくもあった。そんな情景を夢の中で歩く、子供だった「私」も「今年で三十四歳になる」。「そうして母は一昨日の夏以来この世の人ではなくなっ」た。母を想う心と、母を思わせる光景とを、夢の中の世界で描いた秀作。 シンプルなストーリーの中に、彼の独特の美的描写とマニアックさが見えた。 特に、「秘密」が面白いと思った。主人公は秘密に快感を見出す人であり、秘密を探したり、作ったり、暴いたりしていた。そして他人から向けられる目を楽しみ、優越感を感じていた。ここから、主人公が秘密に快感を見出していることわかった。 人は秘密というものに魅力を感じたりする。主人公はそれがさらにエスカレートした人なのだと感じた

Posted byブクログ

2021/07/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

江戸の文化が残っている時代、清吉という腕利きの彫り師である彼にはある宿願があった。彼の年来の宿願は、光輝ある美女の肌を得て、それへ己れの魂を刺り込む事であった。美女に渾身の刺青を彫り込むためには、まず美女を探さねばならない。清吉は4年目にして、自分の魂を込めた刺青を彫るに値する美女を見つけた。美女の脚を見て、清吉はこのように反応する。 『その女の足は、彼に取っては貴き肉の宝玉であった。……(中略)……この足こそは、やがて男の生血に肥え太り、男のむくろを蹈(ふ)みつける足であった。』 この表現から、谷崎本人の、あるいは清吉のマゾヒスト的思考があらわれている。 件の美女を取り逃がしてしまった清吉であったが、刺青師5年目にして、今度は美しい小娘を見つける。その娘に対して、清吉はある絵を見せ、こう言うのだ。 『「この絵の女はお前なのだ。この女の血がお前の体に交って居る筈だ」』 それは「肥料」と云う画題であった。画面の中央に、若い女が桜の幹へ身を倚せて、足下に累々と斃れて居る多くの男たちの屍骸を見つめている。物騒な題名であるが、男はみな若い女に踏みつけられながら桜の肥料にされてしまうのだ。 娘は絵をしまうように清吉に嘆願し、 『「私は確かにこの絵の女のような性質を持っています。認めましたからそれをしまってください!」』 と言う。怯える娘に、清吉はそっと近づいて麻酔を嗅がせ、麻酔で眠る娘の背中に刺青を施した。 刺青ができあがり、放心状態の清吉は『「男と云う男は、皆お前の肥料になるのだ」』と呟く。娘は目を覚まし、激痛に苦しむが、娘は 『「親方、早く私に背せなかの刺青を見せておくれ、お前さんの命を貰った代りに、私はさぞ美しくなったろうねえ」』 と、昨日までの臆病な人物とは別人のように言う。 刺青の色仕上げに湯に入った娘は、 『「親方、私はもう今迄のような臆病な心を、さらりと捨ててしまいました。お前さんは真先に私の肥料になったんだねえ」』 と、娘は剣のような瞳を輝かして言った。 主人公の清吉は男に対してはサディストであり、女に対してはマゾヒストである。この相反するはずの嗜好を両立している清吉の心情が実に興味深い。清吉は刺青を彫るとき、客のうめき声に快楽を感じるというのだ。『彼が人々の肌を針で突き刺す時、真紅に血を含んで脹れ上がる肉の疼きに堪えかねて、大抵の男は苦しき呻き声を発したが、その呻きごえが激しければ激しい程、彼は不思議に云い難き愉快を感じるのであった。』とある。 ところで、清吉はなぜ脚ばかりを見ているのだろうか? ふつう刺青を彫りつけるのは背中である。女性の背中を直接見る機会は少ないにしろ、うなじや首筋からその女性の背中が美しいか否か、想像できないものだろうか。刺青師であれば、美女の背中やうなじや首筋に注目がいきそうなものである。 しかし清吉は脚に注目する。ここに、作者本人の性癖が出ているのではなかろうか。谷崎は、「自分の墓石を好きな女の脚の形にしてほしい」と頼んだという逸話を残すほど女性の脚への執着が強い人物で、死んだ自分が納められている棺を、永遠に踏まれていたいという欲望が前面に出ている。本作でも、『顔を見たことはないけど脚は見たことがある』という発言から、脚にしか興味がないことや、踏まれることへの願望が現れていて、そんな谷崎の嗜好が色濃く出た作品だと思った。また、娘の背中に彫られた女郎蜘蛛の雌の特徴は、雄よりも最大で5〜6倍の大きさがあった。身体に黄色い模様が入っていて、非常に目立つ印象だった。一方で、雄は雌に比べてかなり小さく、色も地味だった。女郎蜘蛛の雌は、雄を捕食することもあるという凶暴な一面も持っており、女郎蜘蛛の刺青は、艶やかで美しく、今後男を食い物にするであろう娘の象徴なのだと考えた。 谷崎は、1886年に江戸情緒の残る東京の蠣殻町(現・人形町)に生まれた。代表作は、『刺青』『卍』『痴人の愛』『春琴抄』『細雪』などがあり、流派は江戸川乱歩・夢野久作・三島由紀夫と同じ耽美派。戦時中も執筆を辞めることなく活動し、63歳で文化勲章を受賞。73歳のころから口述筆記で創作活動をし、79歳のときに病気で亡くなった。

Posted byブクログ

2021/07/24

・読んだきっかけ 刺青を友だちにおすすめされて ・感想 刺青は艶かしい綺麗な話だった。最後自分で作り出した強い女の屍となるっていうのがまた良い。秘密は最初は「こーゆーのあるよなー、分かる」とか思いながら読んでたけど最後の方に行くにつれて男の狂気も見え始めて最後の分の理解が難しかっ...

・読んだきっかけ 刺青を友だちにおすすめされて ・感想 刺青は艶かしい綺麗な話だった。最後自分で作り出した強い女の屍となるっていうのがまた良い。秘密は最初は「こーゆーのあるよなー、分かる」とか思いながら読んでたけど最後の方に行くにつれて男の狂気も見え始めて最後の分の理解が難しかった。

Posted byブクログ

2021/07/07

谷崎潤一郎氏の処女作(本人談)『刺青』を含む7作品を収録した短編集。明治・大正の作品群とは思えない妖美で洗練された物語で今読んでも色あせない御洒落ささえ感じさせる。表題作もさることながら、自伝的作品『異端者の悲しみ』と『二人の稚児』に谷崎氏の天才的才能の本質をみる。

Posted byブクログ

2021/06/14

刺青・秘密 谷崎潤一郎 2020/12/20 嗜虐と被虐、その逆転、同性愛、汚物嗜好など耽美な要素が盛りだくさん。 刺青を掘りながら苦痛に呻く声に快感を得ていたと思ったら最後は女の肥やしになったり、 少女を虐めていたと思ったらその少女に蝋燭を垂らされていたり、サドとマゾの逆転が...

刺青・秘密 谷崎潤一郎 2020/12/20 嗜虐と被虐、その逆転、同性愛、汚物嗜好など耽美な要素が盛りだくさん。 刺青を掘りながら苦痛に呻く声に快感を得ていたと思ったら最後は女の肥やしになったり、 少女を虐めていたと思ったらその少女に蝋燭を垂らされていたり、サドとマゾの逆転があるのは谷崎のなんらかの主張だろうか。

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