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眠れる美女 の商品レビュー

3.8

204件のお客様レビュー

  1. 5つ

    44

  2. 4つ

    69

  3. 3つ

    49

  4. 2つ

    10

  5. 1つ

    4

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2011/12/25

以前「雪国」や「伊豆の踊子」を読み、文章が洗練されているとは思ったものの、そこまで惹かれなかった。あるいは、私がまだそれらを読める段階ではなかったからなのかも知れない。 ところが今回読んだ、「眠れる美女」。この作品はいい。ぐいぐいと引き付けられた。 解説で三島が、ネクロフィリー...

以前「雪国」や「伊豆の踊子」を読み、文章が洗練されているとは思ったものの、そこまで惹かれなかった。あるいは、私がまだそれらを読める段階ではなかったからなのかも知れない。 ところが今回読んだ、「眠れる美女」。この作品はいい。ぐいぐいと引き付けられた。 解説で三島が、ネクロフィリー(死体愛好症)的肉体描写が見られると指摘しているが、この作品が面白いのは、設定が老人と少女であることや、少女が“眠れる美女”であることによるのではない。 そうした奇抜で極端な設定が、物語の振幅を大きくしていることは間違いないが、それだけのことならば「眠れる美女」のあらすじを読むだけで十分であろう。この作品の引力はそうした設定の過激さに起因するよりもはるかに、三島も指摘したようにその描写によるものなのである。 「眠れる森の美女」はたとえば“眠れる美女”の描写に代表されるように、「生/死」の関連について幾重にも逆説的な効果を発揮しているのである。「生」をたたえる少女達の描写は、彼女たちが眠っておりほとんど語らないことによって、まるで「死」体や物の場合のごとく克明に、それゆえ残酷に描く。「生」を求め「死」を避けて訪れた宿で、老人はむしろ一層「死」に近付くこととなっている。 滞りなく読みやすい文章を追うなかで、知らず知らずに「生/死」の逆説的構造へ取り込まれてしまう。すると読者はもう抜けられない。そこに拒絶感を覚えつつも、やはり作品と同様に、離れようとする思いによって一層この作品に近付いてしまうことであろう。

Posted byブクログ

2011/12/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「眠れる美女」と「片腕」を読む. 「眠れる美女」は眠っている少女と一緒に寝るというアイディアだけでもうグロテスクと思えて拒否反応が出てしまった.老人になるとこういうのが安らぎと感じられるようになるのか.主人公と同じくらいになったら読み返そうかとも思うが,こういう小説に興味がなくなっているきもする. 一方の「片腕」は一種のフェティシズムだろうから,まだ理解可能.ただ私の思考は常に具体的で,借りてきた腕の付け根はどういう状態なんだろうかと想像してしまってこれまた芸術(?)の世界に入り込めないのだった.

Posted byブクログ

2011/10/23

強く「和」を感じた。デカダンよりはシュルレアリスムに近いと思う。エロスとタナトスの融合。眠れる美女はハンスベルメールの人形を、片腕はマン・レイの写真を連想させる。散りぬるをは蒲団を想い起こした。三編に共通する「物」への愛。 先に読んでしまったけどガルシア=マルケスの「わが娼婦た...

強く「和」を感じた。デカダンよりはシュルレアリスムに近いと思う。エロスとタナトスの融合。眠れる美女はハンスベルメールの人形を、片腕はマン・レイの写真を連想させる。散りぬるをは蒲団を想い起こした。三編に共通する「物」への愛。 先に読んでしまったけどガルシア=マルケスの「わが娼婦たちの悲しき思い出」は「眠れる美女」にヒントを得て書かれたらしい。マルケスもよかったけど川端康成のほうが好きだ。

Posted byブクログ

2011/10/18

描写の濃度と湿度が高い。耽美のようで実用的? 3編とも、少女が都合の良い愛玩対象のようでありながら、冷たい人形じゃなく温かい人間であるのは何故だろう。男を優しく受け入れているようにも、徹底的に無視しているようにも見える不思議。「生きている」少女って、そんなに良いものだろうか。

Posted byブクログ

2011/10/15

本当は傑作なのかもしれないけど、気持ち悪くなってはじめの1話しか読めなかった。 川端康成を初めて読んだので、衝撃・・・

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2011/09/08

「眠れる美女」の他に「片腕」「散りぬるを」の三編を収録した川端康成の作品集。最初の二編は幻想的で、なおかつ死の香りが漂うデカダン文学の傑作。生と死を美しく幻想的に表現されていて読んでて怖くなりつつも美しさにうっとりする不思議な本だった。さすがは川端康成だわ。

Posted byブクログ

2011/08/21

何よりも表題作「眠れる美女」の魅力に尽きます。 眠っていて決して起きない美女を「見られずに見る」「気づかれずに触る」というエロティシズムと、普段は相手にされないような若い娘を自由にできる倒錯した所有欲を川端の美しい日本語で描いています。 作中に出てくる6人の眠れる美女が、性格描写...

何よりも表題作「眠れる美女」の魅力に尽きます。 眠っていて決して起きない美女を「見られずに見る」「気づかれずに触る」というエロティシズムと、普段は相手にされないような若い娘を自由にできる倒錯した所有欲を川端の美しい日本語で描いています。 作中に出てくる6人の眠れる美女が、性格描写もないのにそれぞれ魅力的に書き分けられているのも素晴らしい。 「片腕」「散りぬるを」は実験的な作品で、文学的な意図はともかく小説としてはあまり面白いものではありませんでした。

Posted byブクログ

2011/07/11

これこそ(それから「掌の小説」と)が川端康成、と、私はそう感じます。 もちろん『伊豆の踊り子』でも『雪国』でもいいのですが。 でも私は、まずこれを。 新潮文庫の変わらぬカバーデザインの魅力も大きい。

Posted byブクログ

2011/06/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「死」の世界に近しい老人の昏い悦びから始まった「性」を巡る追憶の旅が、最後には命の誕生、つまり「生」を象徴する母の存在に辿り着いてしまった驚き。 私が思うに、この小説の深みは、強烈に比較すればするほどその境界が曖昧になってしまう「生」と「死」の関係性(エロスとタナトスの表裏一体性)を暴いてしまう「性」の本性を、読者に理屈抜きで体感させる点にある。 一見すると眉を顰めかねない背徳的な舞台設定だが、「生と性と死」を巡る物語の思想性と抑制の効いた描写のおかげで、嫌悪感を催す卑猥さや汚らわしさとは無縁である点も驚異。 ガルシア・マルケス『わが悲しき娼婦たちの思い出』と併せた感想の詳細→http://takatakataka1210.blog71.fc2.com/blog-entry-26.html#more

Posted byブクログ

2011/06/18

こういうのは通勤電車では読むのはちょっとはばかれる。「眠れる美女」はドイツで映画化されていた。そして、「片腕」は日本で映画化されていた。どちらも映画でみたいとは思わない。

Posted byブクログ