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眠れる美女 の商品レビュー

3.8

204件のお客様レビュー

  1. 5つ

    44

  2. 4つ

    69

  3. 3つ

    49

  4. 2つ

    10

  5. 1つ

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2012/04/23

 〈秘密の家〉で過去の性を振り返る江口老人が、薬で眠らされた娘である〈体温を持つ死体〉に寄り添う場面では、ふつうは若い娘が生で、老人が死を暗示しているはずなのに、娘がぴくりとも動かないことで生と死の照応関係が逆転しているところが印象的だった。娘に性的に触れることが禁忌であるこの家...

 〈秘密の家〉で過去の性を振り返る江口老人が、薬で眠らされた娘である〈体温を持つ死体〉に寄り添う場面では、ふつうは若い娘が生で、老人が死を暗示しているはずなのに、娘がぴくりとも動かないことで生と死の照応関係が逆転しているところが印象的だった。娘に性的に触れることが禁忌であるこの家で、母との関係や末娘の痛みを伴う思い出など、性の記憶を辿っていくのがいい。厭世的で死を恐れていないような江口老人が、最後に浅黒い肌の少女が突然死んだことでかなり慌てふためく場面は、単純には乗り越えられない生への妄執を感じた。  同時収録の〈片腕〉といい〈散りぬるを〉といい、完全にトワイライト・ゾーンに入っていった川端の作品群はインパクト強いなあ。

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2012/04/17

最後にくるあの展開には寒気がしました。 『片腕』と『散りぬるを』の二作品も独特な空気感に包まれています。

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2012/04/01

割とエッチな本だと聞いて読んだ高校時代…。あの時の私はホントにアホだった…。 内容自体は非常にまともでした。

Posted byブクログ

2012/04/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

『眠れる美女』は、川端康成の小説。 深い眠りに落ちている美女と一晩を共にすることを許された館に通う男の話である。 しかし、この男というのは皆「老人」である。文章中で「安心できる」と揶揄されている、男としての肉欲を失った男たちが集まるのである。 死期の近づいた老人と、若々しい生命力を全身に湛えた美女。その組み合わせは対照的であるが、美女が決して目を覚まさないという点が妙なグロテスクさを醸し出す。睡眠の状態は静的な状態であり、死を想起させるが、現実的に死に直面する老人の前では、むしろその静的な状態が生命の息吹を感じさせる。 正にデカダンス文学の名作と称されるにふさわしい小説であると感じた。

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2012/03/06

川端康成の背徳的でエロティシズムあふれる短編。 ちまたには文学賞などを含め、「過激な性描写で人間の本質を描いている」なんて書評を書いている人をたまに見かけますが、せっかく文学の土俵で表現するのならこれくらいのことはしてくれないと! さすがは川端康成。 直接的な表現を抑えて描く、老...

川端康成の背徳的でエロティシズムあふれる短編。 ちまたには文学賞などを含め、「過激な性描写で人間の本質を描いている」なんて書評を書いている人をたまに見かけますが、せっかく文学の土俵で表現するのならこれくらいのことはしてくれないと! さすがは川端康成。 直接的な表現を抑えて描く、老人の醜さと悲しさ、人形のように意志を持たぬものへの執着。人間のエゴと少女に代表される無垢なものへの憧憬。「命」の対比が、これほど鮮やかに浮かび上がる光景もありません。 迫ってくる「老い」に、だれもが背負っている人間としての「性(さが)」 思わずため息が出てしまいました。 目に見えることを書くなら誰でもできますからね。 表面的な美しさやお涙頂戴ものでは表現できない、バタイユの『目玉の話』にも通じる腐臭を描いた名作だと思います。

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2012/03/06

今まで好きでも嫌いでもなかった(「みずうみ」は嫌い)川端康成を急激に好きになった。 「眠れる森」「片腕」「散りぬるを」の3編入り。 眠れる森…老いと執着のグロテスク 片腕…孤独のグロテスク 散りぬるを…空隙のグロテスク といった感じでした。「片腕」の生々しさが素晴らしかった。

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2012/03/01

川端康成の作品は久々です。あまり前衛的な作品を読んだ印象がなかったので、少し驚きました。ねっとりとしています。数人の乙女の寝姿をベースに、良くもここまで妄想を逞しくして何十頁も仕上げたものです。さすがは大作家。あまりにも淫靡な話の展開と湿度の高さに参りかけたところで、意表を突く結...

川端康成の作品は久々です。あまり前衛的な作品を読んだ印象がなかったので、少し驚きました。ねっとりとしています。数人の乙女の寝姿をベースに、良くもここまで妄想を逞しくして何十頁も仕上げたものです。さすがは大作家。あまりにも淫靡な話の展開と湿度の高さに参りかけたところで、意表を突く結末。名手ならではです。でも僕の好みからすると2篇めの話のほうが好きです。洒落ているし、結末も皮肉が効いていて良い。3篇目は、う〜ん。ともかくみんな総じてエッチな天才爺さんの文学です。

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2012/02/22

純文の看板を背負っていれば、フ○チでもヘン○イでも高尚になるのか、と思った一作。 まー男の欲を生々しく書けば、ただのエ○ノベルになるところを、人間描写にしてるところは流石ですが。 薄暗いとか、ほの暗いとか、綺麗に表現しようと思えばできるのでしょうが、あえて言おう。ねちっこいと!...

純文の看板を背負っていれば、フ○チでもヘン○イでも高尚になるのか、と思った一作。 まー男の欲を生々しく書けば、ただのエ○ノベルになるところを、人間描写にしてるところは流石ですが。 薄暗いとか、ほの暗いとか、綺麗に表現しようと思えばできるのでしょうが、あえて言おう。ねちっこいと! どっちかとゆーと、同時収録の「片腕」のほうが好みだった。

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2011/12/28

人工的な眠れる美女はある種の死体愛好的趣味にあたるのだけれども、それこそタナトスとエロスの複合性を求むるのだ。綺麗で、なお日本的な小説なのだろうと思う。性的ないたずらはしねいでね。

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2020/12/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

(1968.04.10読了)(1968.04.08購入) (「BOOK」データベースより) 波の音高い海辺の宿は、すでに男ではなくなった老人たちのための逸楽の館であった。真紅のビロードのカーテンをめぐらせた一室に、前後不覚に眠らされた裸形の若い女―その傍らで一夜を過す老人の眠は、みずみずしい娘の肉体を透して、訪れつつある死の相を凝視している。熟れすぎた果実の腐臭に似た芳香を放つデカダンス文学の名作『眠れる美女』のほか二編。 ☆川端康成さんの本(既読) 「雪国」川端康成著、新潮文庫、1947.07.16 「伊豆の踊り子」川端康成著、新潮文庫、1950.08.20

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