眠れる美女 の商品レビュー
世間的には枯れた、と分類された老人たちが、若くはつらつとした眠る少女たちと一晩を過ごす話。 美しい腕と共に過ごす話。 少女たちと女性の腕の美しさが執拗なまでに細かくリアルに描写され、そのどちらとも平行線で交わることのない男達のひたすらに不思議な物語だった。
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表題作は、川端康成61歳の作品。作中の主人公江口老人は67歳だから、来るべき自身の老境を見据えての作だろうか。そんな家が、どこかに確かにありそうな強いリアリティを持って迫る小説だ。ここで追求されているのはエロスの本質なのだが、誰しもすぐに気がつくように、それは死のタナトスと隣り合...
表題作は、川端康成61歳の作品。作中の主人公江口老人は67歳だから、来るべき自身の老境を見据えての作だろうか。そんな家が、どこかに確かにありそうな強いリアリティを持って迫る小説だ。ここで追求されているのはエロスの本質なのだが、誰しもすぐに気がつくように、それは死のタナトスと隣り合わせにしか存在し得ないもの。しかも、逆説的なのだが、それは性の不能性とさえも隣接したところにある。また、性の対象の固有性への挑戦と問いかけでもあった。そして川端自身の生への強烈な執着と、これまた逆説的に諦念とが同居する物語だ。
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2014年3月の課題本です。 http://www.nekomachi-club.com/schedule/124
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設定、構成、文章力に至るまで非の打ち所がない、退廃文学の金字塔。「片腕」の宙に浮いたようなラストといい、なんともいえない余韻を感じる。
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若さを目にすることで、自己の老いを自覚するか はたまた否定するか 結末は え? と、あっけないけれど 老い=時間の流れ 眠り=時間の停止 の対比のような感じがしました 結局、時の流れに逆らうようなことをすれば、 どこかに歪みが出てくる。。とか
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久しぶりに読み返して、やっぱり好きだなぁと思いました。 本を淘汰しても残る一冊。 --------------------------------------------------------------- こういう作品を書いていたなんて知らなかった。 川端康成のイメ...
久しぶりに読み返して、やっぱり好きだなぁと思いました。 本を淘汰しても残る一冊。 --------------------------------------------------------------- こういう作品を書いていたなんて知らなかった。 川端康成のイメージが変わりました。 なんとなくスリリングで、 古びた清澄なにおいのする三作品でした。
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川端康成の変態小説を読むのは初めて! どれも良かったのですが、散りぬるを、には何とも言えず引っかかる。滝子の生命力と、蔦子の浮遊感と。 何度も塗り重ねていくように語られる手法も、とても良かった。
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2011私的夏の文庫フェア第4弾。 ついでに今さらながら初・川端康成。 解説の三島由紀夫曰く、「真の頽廃」。 薬か何かで“死んだように”眠る少女(「眠れる美女」)、男が娘から借りた右腕(「片腕」)、養っていた娘の他殺死体(「散りぬるを」)、その姿や体の描写はどこまでも執拗で、ほ...
2011私的夏の文庫フェア第4弾。 ついでに今さらながら初・川端康成。 解説の三島由紀夫曰く、「真の頽廃」。 薬か何かで“死んだように”眠る少女(「眠れる美女」)、男が娘から借りた右腕(「片腕」)、養っていた娘の他殺死体(「散りぬるを」)、その姿や体の描写はどこまでも執拗で、ほとんど偏執狂的。 3つの短篇全てに漂う死のにおいと、そこから却って感じられる生という倒錯に、川端康成の堂に入った変態っぷりをまざまざと見せ付けられる。 深く深く屍か生きた人形の如く眠る少女と添い寝をするために、男としての機能の尽きた老人が集まる秘密クラブのような海の近くに建つ1軒の家。 閉塞的でグロテスクな世界を描きながらもいわゆる「エログロ」に陥っていない、それどころか美の域に達している文章は、さすがはノーベル文学賞受賞と言うべきなのかな。 ネクロフィリア的フェティシズムに溢れた、至高の変態芸術小説。 川端康成を見る目が変わる。
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小川洋子さんの「ミーナの行進」で小学生のミーナは図書館から借りて読んでいたのが、この本である。小川洋子さんも小さい時にこの本を読んだのだろうか。 表題作は、裸で眠る若い女性と添い寝する話である。女性は意識なく寝ており、主人公のことを全く知らない。最初、乳呑児の匂いを覚えたのは、...
小川洋子さんの「ミーナの行進」で小学生のミーナは図書館から借りて読んでいたのが、この本である。小川洋子さんも小さい時にこの本を読んだのだろうか。 表題作は、裸で眠る若い女性と添い寝する話である。女性は意識なく寝ており、主人公のことを全く知らない。最初、乳呑児の匂いを覚えたのは、若さに対する憧れなのだろうか。 男として終わったわけではないという主人公であるが、あまり文章にエロチックな印象はない。訪ねる度に寝ている女性は変わる。過去の女性との交情を思い出したり、自分の娘の恋愛顛末を頭に浮かべたりしている。老いを見つめるとはそういうことなのだろうか。よく判らない。 女性が飲んだ睡眠薬が欲しいと何度かねだったり、徐々に話が死の影を帯びてくる。もっと、穏当な幕引きを予想していたのだが。 正直、文章が流れていかず、もどかしく、共感するところはあまりなかった。 片腕 こちらの方が幻想性が強い作品で、文章が素晴らしく練れている。対象を自分のものとしたいが、満たされない欲望の末の哀しさだろうか。 散りぬるを 殺された女性2人と獄中で死んだ犯人の物語。若い頃の作品らしい。知らないうちに死を迎えるところに前2作品と共通性があるのかもしれないが、何のために書かれた作品だか判らない。 3作全体を通して、著者の幻想の在り処がよく判らないというのが正直な感想。小学生のミーナちゃんに負けているなあ。 追記 眠れる美女の中に椿寺の散椿(ちりつばき)を鑑賞するくだりがあったが、速水御舟の描いた「名樹散椿」と同じ椿だろうか。
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「眠れる美女」 性的な機能(意欲?)を失った老人のために、少女を「死んだように」眠らせておく娼館のようなものに出入りするようになった江口老人。眠る美女の傍で、過去の女性遍歴を思い出す。 眠っている女性は殺したりしないかぎり、ちょっとのことでは目覚めない。あまたの老人は、そんな無...
「眠れる美女」 性的な機能(意欲?)を失った老人のために、少女を「死んだように」眠らせておく娼館のようなものに出入りするようになった江口老人。眠る美女の傍で、過去の女性遍歴を思い出す。 眠っている女性は殺したりしないかぎり、ちょっとのことでは目覚めない。あまたの老人は、そんな無抵抗で寝言しか言わない女性の傍で過去を思い出すことになる。 川端康成は匂いフェチだろう。 「片腕」 「片腕を一晩お貸ししてもいいわ。」娘の片腕を借りていくという特異な作品。最後には、自分の右腕を外して、娘のものとつけ替えてしまう。聖書の言葉の引用も散見。また、娘は母体らしい[p136]。不倫であろうか。妊娠した相手を持っていくわけにはいかないから、片腕を借りたのだろうか。 「散りぬるを」 二人の娘を殺したり男の供述を中心にその殺人を再現し、再考証する。二人の娘の面倒をみていた小説家(川端康成?)が書いているという設定らしい。ときどき、小説家の自問自答も会話形式で挿入される。行きつ戻りつの時間軸で、何回も同じことを言っているような感じ。何回も死の場面その他が再現され、異様な執着と不思議な構図の短編。
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