1,800円以上の注文で送料無料

眠れる美女 の商品レビュー

3.8

204件のお客様レビュー

  1. 5つ

    44

  2. 4つ

    69

  3. 3つ

    49

  4. 2つ

    10

  5. 1つ

    4

レビューを投稿

2015/04/27

「眠れる美女」 この作品を読み、まず文庫の裏表紙から想像させる耽美・官能 の感情は浮かばなかった。老人の、削げ落ちかけた、それゆえ客観的に人間の性を見つめる半ば諦観の表現は冷酷にさえ感じる。老人にとって失われかけた性は過去のエッセンスであり生の証であった。一方で死は音を立てて近づ...

「眠れる美女」 この作品を読み、まず文庫の裏表紙から想像させる耽美・官能 の感情は浮かばなかった。老人の、削げ落ちかけた、それゆえ客観的に人間の性を見つめる半ば諦観の表現は冷酷にさえ感じる。老人にとって失われかけた性は過去のエッセンスであり生の証であった。一方で死は音を立てて近づく老人の傍にある不可避の未来であるが、それは確かにまだ見ぬ想像のもの、掴み所のない言い換えれば恐怖の異名なのである。眠る美女は一時的な生と死とが混在し、老人にそのどちらをも激しく連想させ、その混沌が読後にじわじわ迫って来た。 肌のぬくもりや血の通う赤みのある肌の描写は崇高で、それは死迫る老人の命への渇望の叫びか。

Posted byブクログ

2015/01/16

デカダンス文学の名作と銘打たれた表題作は、なんとも強烈な読後感でした。前後不覚に眠らされた裸の若い女と添い寝をする老人。若く瑞々しい肉体はもの言うことなく意思の疎通を図れない対象となる。しかしだからこそ男性機能を喪った男たちの慰みとなる。この設定だけでもクラクラとさせられます。そ...

デカダンス文学の名作と銘打たれた表題作は、なんとも強烈な読後感でした。前後不覚に眠らされた裸の若い女と添い寝をする老人。若く瑞々しい肉体はもの言うことなく意思の疎通を図れない対象となる。しかしだからこそ男性機能を喪った男たちの慰みとなる。この設定だけでもクラクラとさせられます。そこにまだ男性機能を維持している主人公が現れ、その気になれば眠る女たちを犯すことができるという想いが男の中でうごめきます。そのうごめき自体が男の記憶を刺激し安寧をもたらす。しかし不意に訪れる死にかき乱される終焉に、どう捕らえたらいいのか混乱させられました。 また「片腕」では女から右腕を借りた男という突飛な出だしから始まり、腕のみを慰撫するのかと思えば、そのもの言わぬはずの腕が話し意志を伝え男の右腕と取り替えられるのです。これは先の「眠れる美女」と対を成すものとして読み取るのか、今もモヤモヤとしたものが疼いています。 「散りぬるを」は殺人犯の供述調書にまつわる話。ミステリとして読んでも面白いかと。果たして真実は何処なのか。

Posted byブクログ

2017/01/17

☑ 眠れる美女 ☑ 片腕 □ 散りぬるを □解説 三島由紀夫『眠れる美女』(昭和35年1月―36年11月「新潮」)

Posted byブクログ

2014/08/20

川端康成が1961年に発表した中編小説。他に"片腕(1965年)"、"散りぬるを(1933年)"を併録。"眠れる美女"は、ネクロフィリア的な雰囲気を色濃く漂わせる退廃的な作品です。全部で6人の少女が出てきますが、意識がな...

川端康成が1961年に発表した中編小説。他に"片腕(1965年)"、"散りぬるを(1933年)"を併録。"眠れる美女"は、ネクロフィリア的な雰囲気を色濃く漂わせる退廃的な作品です。全部で6人の少女が出てきますが、意識がないそれぞれの少女の書き分け方が凄いです。肌の質感や匂い、指や口など、やはり日本語の官能的な描写は奥が深い。"片腕"はホラーテイストの不思議な作品ですが、官能的な雰囲気を感じます。"散りぬるを"は1つの殺人事件を中心に犯罪者と被害者の保護者の心境を綴った作品です。

Posted byブクログ

2014/08/10

『眠れる美女』谷崎潤一郎の描く老人の性欲と比較すると、静的で抑えられている。設定が大いに面白く、美的である。 『散りぬるを』のいくつかの証言ヴァージョンの巧みさ、内省の声が印象深い。

Posted byブクログ

2014/07/15

男性としての機能を失った老人達が薬で眠らされている娘と共に一夜を過ごす宿に、まだ男性としての機能は失っていない江口老人が訪れる。 老人は6人の少女と共に眠るが、それぞれの少女の特徴がうまく書き分けられていると感じた。 美しい少女、娼婦的な少女、まだあどけない少女など… 老人は決...

男性としての機能を失った老人達が薬で眠らされている娘と共に一夜を過ごす宿に、まだ男性としての機能は失っていない江口老人が訪れる。 老人は6人の少女と共に眠るが、それぞれの少女の特徴がうまく書き分けられていると感じた。 美しい少女、娼婦的な少女、まだあどけない少女など… 老人は決して少女に手を出してはいけないという制約があるが、その制約があるからこそかえって官能的で、神秘的であった。 また、老人が共に一夜を過ごした少女で、一人だけわきががあり、肌が油っぽいと多少醜く?描かれていた少女が死に、その少女をどう始末したのかも気になった。 …ある意味、死体のような少女を愛する、少し歪んだ性愛を書いているように感じた。

Posted byブクログ

2014/06/12

初めての川端康成。 噂に聞いていたけど、確かにアブノーマルだ。 こう言う世界観を自分の中に持つのも、それを文字に起こすのも、読み手にその気持ち悪さを伝えるのも、やっぱり生半可な作家では無いんだろうな、と心底思った。

Posted byブクログ

2014/05/31

眠れる美女。寒い冬に電気毛布。もわんとした女の子の匂いが立ち込める寝室。 やっぱり女たるもの柔らかく白い肌であってなんぼ!夏だからいっかーと思って切れたまんまにしてたボディークリームを買いました。 片腕。きっとこっちは今とおんなじ季節。春のあいだにかくれながらうるおって、夏に荒...

眠れる美女。寒い冬に電気毛布。もわんとした女の子の匂いが立ち込める寝室。 やっぱり女たるもの柔らかく白い肌であってなんぼ!夏だからいっかーと思って切れたまんまにしてたボディークリームを買いました。 片腕。きっとこっちは今とおんなじ季節。春のあいだにかくれながらうるおって、夏に荒れる前のつぼみのつや。 そんなに湿っぽい視線で見ないでほしい、と思いつつ、優しく愛でるような表現にうっとりした。 「またこういう夜は、婦人は香水をじかに肌につけると匂いがしみこんで取れなくなります」ラジオの言葉も素敵。 「いいわ。いいわ。」たまらん!うっとり。 でも片腕をはずして、一晩お貸ししますわ、なんて作品を書いちゃうのはすごく怖い。そして自分につけちゃう。その姿を想像したら、さらに怖い。 全体的にへんたいじーじ!

Posted byブクログ

2014/05/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「眠れる美女」は助平爺の話だったのか?!(笑)でも川端康成が書くと美しいねえ。「江口」「江口老人」と書き分けているのが面白い。「江口」は「エロ」とも読める、みたいな。 「片腕」の少女の右腕は、男性の身体に取り付けられる前は処女、取り付けられた後は身を任せた、と私には読めたけど、時間をあけて読んだら、また違う読み方が出来そうだ。

Posted byブクログ

2014/05/11

友達が「変態な本を見つけた」といって紹介してくれたのがコレ。 やなぎみわの写真展で表題作をモチーフにしたであろう作品を見た。 ああ、超一流のインスピレーションの源はここなんだ。 表題作ももちろん良いけど、おじさんが片腕を一晩借りる話もオススメ。自分説明下手すぎてびっくり...

友達が「変態な本を見つけた」といって紹介してくれたのがコレ。 やなぎみわの写真展で表題作をモチーフにしたであろう作品を見た。 ああ、超一流のインスピレーションの源はここなんだ。 表題作ももちろん良いけど、おじさんが片腕を一晩借りる話もオススメ。自分説明下手すぎてびっくりしたけど、本当にこんな話。 艶かしいわねえ。なんだか匂ってきそうだ、ぷんぷんと。 表現力の次元でなく、もっと根本的な感受性の面で、時代性なのかなんなのか。本当に、今は亡き愛すべき作家たちは、どうしてあと100年生きてくれなかったの。

Posted byブクログ