ドグラ・マグラ(下) の商品レビュー
初出:1935(昭和10)年 読んだら精神に異常を来たす?日本小説の『三大奇書』とは? 人間の細胞は30兆個(現代では一般的には「60兆個」、範囲としては60〜100兆個とされている)、人類20億人とされた時代。←これは事実。 精神障害者(疾患者を含む)に対する虐待の古今東西...
初出:1935(昭和10)年 読んだら精神に異常を来たす?日本小説の『三大奇書』とは? 人間の細胞は30兆個(現代では一般的には「60兆個」、範囲としては60〜100兆個とされている)、人類20億人とされた時代。←これは事実。 精神障害者(疾患者を含む)に対する虐待の古今東西の歴史。←これも事実。 主観的時間こそ絶対、記憶は個々の細胞に宿る、精神遺伝説、夢の原理、・・・。 「奇書」と銘打っているが、文章そのものは読みやすく、筋が通っている。 そして、描写が詳細で具体的という、「洗脳文章術」に出てきた手法で、説得力のある物語になっている。 昭和10年の時代背景から、差別的表現が満載されている。そして「血統」が子孫を精神的に支配して行くという考え方。DNAが遺伝子であり、物理的な遺伝に影響するということが証明されていなかった時代、仏教の輪廻転生を全面に押し出している。「犯罪者の血統は遺伝する」という観点からすれば、「黒死館殺人事件」と共通するものがある。 さて、ネタバレを以下に。 ・文章構造 ブーン→「ドグラ・マグラ」(リカーシブ)→ブーン(リピート) M博士の資料開始:19%〜終了:66% (全体の47%を占める) ・主人公の名 これが初めて登場するのは、ページ数でいって全体の42%のところである。もっとも、主人公が実際にその名なのかはまだ本人は疑っている。 ・二転三転する結末 最終的には、結局自分自身の過去の生活の記憶が描かれなかったわけだから、最後の「胎児の夢」が結論である。事実、「巻頭歌」にも出てくる。そして先祖の行いや記憶がインプットされていく経過であった。これが「心理遺伝」であり、出生後潜在意識に潜り込んでしまう、という理論(ドグマ)。 ・文章に出てくる「エロ・グロ・ナンセンス」・・・昭和10年にすでにこの言い回しがあったとは。 グロ・ナンセンスは出てくるのだが、一通り読んでもエロに該当するものが見当たらない。しかし、実はこの物語の冒頭から始まる描写が「エロ」(アナロジー)であったのだ。童貞であることからくる赤面、牛乳、妊娠中の性交と母体のエクスタシーからくる突然の幸福感。赤く太い腕、W博士の長身と小さな籐椅子・・・。 ・「ブーン」について 最初のページに「ボンボン時計」とハッキリ書いてある。普通、時刻を知らせるのなら「ボーン、ボーン」だろう。だからこれは「水中で聞こえる音」を意味しているのだろう。そして、この「夢」が1時間の間に見られたものであることを示す。「前よりもこころもち長いような」ブーンとは、主観的な時間経過が現実の(体外の)時間経過に近づいていることを表わしている。 ・何番目の「夢」か 主人公が見ている「胎児の夢」は、前の世代かその前の世代の祖先が経験した記憶である。だから、M博士とのやりとりと出来事、その後また何年もたった後の「遺稿」を確認することになる。Kの血統はGに始まり(ラスト)、代々Kとして引き継がれるが、K.Iの父親はM博士でもあるので、その経験は特に詳しく「心理遺伝」し、物語の大部分を占める。ありありとした「フルカラー3D映像」もそれによっている。 しかし、主人公本人はまだ生まれていないのだから、名前はまだない。だから、自分についての記憶も名前も空白なのである。 産業革命による「唯物資本主義」の時代を否定して、唯心論を説く著者の父親は九州の大物右翼である。「国体を憂う」という文章も出てくる。戦前の昭和時代は心霊現象の研究が流行り、まじめに議論されていた時期がある。
Posted by
上下巻読了。 三大奇書の一つで「読むと発狂する」とまで言われた作品。ある事件に巻き込まれ記憶喪失になってしまった主人公に沢山の資料を読ませて記憶を取り戻してもらうというシンプルな筋書きですが、正木敬之教授が提唱した学説「胎児の夢」や「脳髄論」、精神病院における患者への虐待を告発す...
上下巻読了。 三大奇書の一つで「読むと発狂する」とまで言われた作品。ある事件に巻き込まれ記憶喪失になってしまった主人公に沢山の資料を読ませて記憶を取り戻してもらうというシンプルな筋書きですが、正木敬之教授が提唱した学説「胎児の夢」や「脳髄論」、精神病院における患者への虐待を告発するために路上で行ったパフォーマンスの内容をパンフレットにした「キチガイ地獄外道祭文」など非常に難解で真相を見破れず、二度以上の再読を余儀なくされます。スケールと奇怪さが圧倒的な怪作です。
Posted by
なめてました。 気が狂うなんて大げさなって思って読んでいましたが、相当来ました… まあ、さすがに狂うことはないです。 怖いわけではないけど、破壊力は高いです。 頭にズドンと来て、しばらく他のことが考えられなくなりました。 ですが、素晴らしい小説です。 ぜひ、読むことをおすすめ...
なめてました。 気が狂うなんて大げさなって思って読んでいましたが、相当来ました… まあ、さすがに狂うことはないです。 怖いわけではないけど、破壊力は高いです。 頭にズドンと来て、しばらく他のことが考えられなくなりました。 ですが、素晴らしい小説です。 ぜひ、読むことをおすすめします。
Posted by
理解に苦しむのでちょびちょび読み進めていたのが、とうとう読み終わりましたのでレビュー。 はっきり言ってよく分かりませんでした。 結局、呉一郎だったの? 違う人なの? と混乱状態です。 今まで出てきた脇役たちが実は、主人公の胎児の夢及び夢中遊行で一ヶ月前にあった出来事なんて…。...
理解に苦しむのでちょびちょび読み進めていたのが、とうとう読み終わりましたのでレビュー。 はっきり言ってよく分かりませんでした。 結局、呉一郎だったの? 違う人なの? と混乱状態です。 今まで出てきた脇役たちが実は、主人公の胎児の夢及び夢中遊行で一ヶ月前にあった出来事なんて…。 いや、それよりももっと前から繰り返していたのかもしれないなんて…。 世にも奇妙な物語に似ていますね。 もしかしてデジャヴも胎児の夢から来ているのかも?なんて自分に当てはめてみたり。 読めば精神を来すとありましたが、私はそうでもなかったです。 まだ理解していないからなのかもしれませんが。 でもこの小説みたく自分も夢中遊行状態だと思い込めばキケンでしょうね。 何も信じられなくなりますから。 そういった意味で奇書なのでしょうと私なりに解釈。
Posted by
難しい…執筆された年代を考えると仕方ないのかもしれないけど、ひらすらに読みずらく、難しい。…まだ精神はきたしてないです。
Posted by
古い本なんでしょう、と思いながら読み始めたのですが。 独特な漢字とカタカナによる表現が何とも新しくシャレている。 物語序盤で語られる、脳は物を考えるところに有らず、という脳髄論が、現代でも解明されてない、人として認めたくない、人間の真実を言い当ててしまっているように思う。 考え...
古い本なんでしょう、と思いながら読み始めたのですが。 独特な漢字とカタカナによる表現が何とも新しくシャレている。 物語序盤で語られる、脳は物を考えるところに有らず、という脳髄論が、現代でも解明されてない、人として認めたくない、人間の真実を言い当ててしまっているように思う。 考え、悩み、苦しんで生きているのが人間だが、その仕組みなんて実は…… 最初の数ページでタダならぬ印象を感じ……ワクワクしながら読んでいったのだけれど……身体が……自分の真実が解明されることを拒否しているのか……スグに眠くなって……遅々として進まない…… おまけにトテモ長い。 しかし作者は天才としか思えない。こんな小説が書けるなんて。 恥ずかしながら、今まで自分でも小説が書けるんじゃないだろうかと思っていたが、そんな考えが吹っ飛ぶほどに作家の知識量とアイディアと想像力と文章力を感じる作品でした。
Posted by
堂々巡り。読み終わった後には頭がくらくらするような感じ。わかったようなわからないような、奇書というのにふさわしいと思う。びっくりしたのは、こんな古い本にベターハーフという言葉が出てきたこと。
Posted by
とかく圧倒的な構成・物語と、読み手を泥酔させる文体を兼ね備えた超一級の小説です。「精神に異常をきたす」とか日本三大奇書とか言って、神格化して距離を置いてる場合じゃないですよ!
Posted by
なんか気になっていた本でちょっと時間が空いたときに、携帯で読み始めました。最初は今後の展開が面白そうで読めたのですが途中からよくわかんなくなり、最後の2割まではちょっと苦痛でした。最後の結末は半分は思った通りだった。評価は微妙・・・もう一回読まないと意味が分からないところも・・で...
なんか気になっていた本でちょっと時間が空いたときに、携帯で読み始めました。最初は今後の展開が面白そうで読めたのですが途中からよくわかんなくなり、最後の2割まではちょっと苦痛でした。最後の結末は半分は思った通りだった。評価は微妙・・・もう一回読まないと意味が分からないところも・・でももういいや
Posted by
読み応えたっぷりです。 気力体力絞り尽くされる一作。 あとがきにもあるように、 わかったつもりに何度もさせられる作品。 自分の意識を常に疑い、 疑い続けることでわからなくなっていく。 精神の崩壊というのがしっくりきます。 一人の人を、 真摯に向き合うすべての人を狂わせるための、 ...
読み応えたっぷりです。 気力体力絞り尽くされる一作。 あとがきにもあるように、 わかったつもりに何度もさせられる作品。 自分の意識を常に疑い、 疑い続けることでわからなくなっていく。 精神の崩壊というのがしっくりきます。 一人の人を、 真摯に向き合うすべての人を狂わせるための、 人を壊し、 命を奪うための一冊だとおもいます。 文章は、 言葉は、 どこまで人を壊せるのかに挑んだ絶望的な小説だと思います。 読んでいる途中で結末に気付けたことが、 私にとって唯一の救いでした。
Posted by