悪魔が来りて笛を吹く の商品レビュー
横溝正史の面白さがわかって6冊目が本作です。最初は展開がゆっくりで、なかなか読み進めなかったが、金田一耕助が西に行くあたりから、どんどん読み進めました。生きているはずがない人が、生きているかもしれないという不気味さがじわじわと感じられてきて、新しいことがわかると、○○と○○は、本...
横溝正史の面白さがわかって6冊目が本作です。最初は展開がゆっくりで、なかなか読み進めなかったが、金田一耕助が西に行くあたりから、どんどん読み進めました。生きているはずがない人が、生きているかもしれないという不気味さがじわじわと感じられてきて、新しいことがわかると、○○と○○は、本当の親子なのだろうかとか、○○の素性がはっきりせず怪しいとか、いろいろ考えながら読めました。そして、クライマックスも、想像を上回る展開でした。また、ラストで、犯人の手記が出てくるところで、島田荘司の「死者が飲む水」を思い出しました。犯人がそうしなくてはならなかった事情が丁寧に描かれています。その一方で、事件の舞台が田舎の閉鎖的な村ではなく、都会の華族社会である分、怖さはあまり感じませんでした。それでも、至る所に事件の伏線が隠されていて、読みながら考えられる面白さがあると思います。
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横溝正史らしい血縁関係の乱れに起因する動機でした。 大体そうですがこういった話が出てくるとホント好きですね……という感情になります。金田一シリーズってこの味を求めて読んでるとこあるな〜
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#読了 キャラクターも時代背景も舞台設定もとても好みだった。夢中で読んだ。 読んでいる途中で「自殺へ追い込むほどの秘密って何?」って見当もつかずに読んでいたんだけど、途中でもしかして……と思い始めてからは、ますます重苦しい気持ちになってしまう。 自覚をもって一線を越えてしまう二人...
#読了 キャラクターも時代背景も舞台設定もとても好みだった。夢中で読んだ。 読んでいる途中で「自殺へ追い込むほどの秘密って何?」って見当もつかずに読んでいたんだけど、途中でもしかして……と思い始めてからは、ますます重苦しい気持ちになってしまう。 自覚をもって一線を越えてしまう二人はどうかしてるし、知らずに踏み越えてしまった二人はただただ悲しい。前者の二人だったら「そういうことをしそうだね」って読者を納得させる描写はすごいなー。
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金田一耕助シリーズ5冊目。タイトルは知っていたが、内容は全くの初見である本作、『悪魔が来りて笛を吹く』を手に取ってみた。 「美禰子よ。父を責めないでくれ。父はこれ以上の屈辱、不名誉に耐えていくことは出来ないのだ。由緒ある椿の家名も、これが暴露されると、泥沼のなかへ落ちてしまう。...
金田一耕助シリーズ5冊目。タイトルは知っていたが、内容は全くの初見である本作、『悪魔が来りて笛を吹く』を手に取ってみた。 「美禰子よ。父を責めないでくれ。父はこれ以上の屈辱、不名誉に耐えていくことは出来ないのだ。由緒ある椿の家名も、これが暴露されると、泥沼のなかへ落ちてしまう。ああ、悪魔が来りて笛を吹く。父はとてもその日まで生きていることは出来ない。美禰子よ、父を許せ。」―――娘・美禰子へこのような遺書を遺し、命を絶った椿元子爵。しかし、美禰子の母・秌子は夫がまだ生きているのではないかと疑っており、その疑惑を裏付けるように、元子爵に似た人物が周囲で目撃される。そして不気味に流れるは、元子爵が最期に遺したフルート曲「悪魔が来りて笛を吹く」。退廃した旧華族が生み落とした"悪魔"による惨劇が幕を開ける―――。 戦後日本の混乱期を舞台に起こる惨劇、明かされるは旧華族の忌まわしき罪業。ざっくりとした事件の全体像は予想し易く、そこまで意外性のある展開ではなかったが、「悪魔が来りて笛を吹く」―――この曲に込められたメッセージは全く予想できなかった。これが明かされるラストシーンには総毛立った。読者の記憶に刻みつける至高のラスト。
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横溝正史とはこんなに時代の先を見ていた作家だったのか。 正直なところ横溝正史の作品をじっくりと読んだのは初めてだった。 映像化された作品は観てきたけれど、よくありがちな原作にはあたらないというムーブばかりしていたのである。 今回読むきっかけになったのは9月4日にNHKで『シリーズ深読み読書会/悪魔が来りて笛を吹く』が再放送されたからである。 横溝正史は『八つ墓村』『犬神家の一族』『本陣殺人事件』など田舎の因習ものという作品を立て続けに発表し、その後で都会の貴族ものである『悪魔が来りて笛を吹く』を書いたのだと番組内で言っていた。 そういうわけで私はこの番組を見て、いわゆるネタバレを受けた状態で読むことにした。それぐらい引力が強い作品だった。 これは結末を言ってしまえば愛した女性と自分が異母兄妹だったことが発覚し、女性が自殺したことがきっかけでその原因となった自分たちの父親を含む一族を殺害した青年が最終的に自殺をする。 近親相姦故によって生まれた子どもたちが、そのことを知らず惹かれ合った自分たちも近親相姦をしてしまったというやるせない悲劇の話だ 番組ではこの作品を深読みし、横溝正史はこの時代にこの作品によって何を言いたかったのか、隠されたメッセージは?という深読みをしていく内容だった。 近親相姦はめずらしいことではない。日本でも繰り返されてきた歴史もある。天皇家でも行われてきたことだ。じゃあ近親相姦が生まれる土壌とは何か?というと家父長制だと言う。家という形、共同体を何がなんでも守るため、そこに外部の血を入れないという排他的な思想が近親相姦の土壌だと有識者たちは語っていた。 それを考えると確かに横溝正史の作品はいわゆる『家』というものにフォーカスした話が多い。 『悪魔が来りて笛を吹く』は舞台は都会で貴族の話だけれど、『八つ墓村』『犬神家の一族』なんかは田舎ものだけど確かに一族や〇〇家の話だ。 そしていずれも悲劇の発端はその家の家長である人間の身勝手な振る舞いである。 そもそもこいつらが何もやらなければ、何も起こらなかった。 そういう話が本当に多いなと気づかされた。 有識者の島田雅彦氏は「日本の小説は家庭小説が多い。家庭とは、家とは暖かく優しい場所ではなく逃れようのない地獄であり、そこで苦しむ人達がいるからこそ家庭小説が多く生まれている」ということを言っていた。 そう考えるとずっと横溝正史は家(家族、家父長制)と戦う小説を書いてきたのかもしれないと思った。 令和の今でも残念ながら家父長制から解放されたとは言いづらい状況だと思う。少なくとも私はそう感じている。 家父長制を倒さねば、戦わねばという志を持った男性作家があの時代にすでにいたのだとすればこれほど心強いことはない。 今回の『悪魔が来りて笛を吹く』で一番好きな台詞を引用してみる。 金田一耕助に調査を依頼したストーリーの起点、この作品のヒロインである椿美禰子(みねこ)のこの台詞だ。 『この家はできるだけはやく処分しましょう。そして、あたしたち、どんなにせまい家でもよいから、明るい、よく陽の当たる場所に住んで、身にしみこんだこの暗いかげを洗いおとしましょうねえ』 戦後没落していく貴族。殺人事件なんてものが起こったあとに残されたその家の当主が若い女性で、その女性にこんな台詞を言わせるのは横溝正史が家と戦ってきたということを踏まえると非常に示唆に富むものだと思う。 まさか横溝正史を家父長制批判をした作家だという視点を得ることになるとは思わなかったけれど彼や彼の作品に対する見方がガラリと変わった。 もっと横溝正史に触れたいと思う。
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東京のお屋敷が舞台だから、おどろおどろしい雰囲気は無いなぁと思っていたら、とんでもなくおぞましく悲しい結末が待っていた。後味の悪さでは他を凌駕しているかも……。 すべて終わった後に、椿元子爵の遺したメッセージの意味が分かったのが切ない。特定の指を使わずに演奏できる曲というのはまったく想像していなかった。正にタイトルの通り、最後にこの曲の謎を解いて死んでいく治雄が哀れだ。
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一番おぞましい話だった。想像とどうか違ってくれ~と思ったら当たってしまい最悪な気分。ていうか過ちを知らなかったならまだしも、現在進行形でやってるところが本当に気持ち悪い。そりゃ椿子爵も病みますわ! すごい読み進めるの遅かったのは、なんででしょうか。 誰のことも好きになれなかったからかしら。 最後の笛を吹くシーンはぞくりとしました。 すごい……。
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★3.5くらい 金田一耕助シリーズのおどろおどろしさを余り感じられなかったのが残念。ストーリーや謎解きは期待通りだったので残念。
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爛れた人間関係の中で殺人事件を起こすことでは右に出る者がいない横溝正史。今作も見事なまでに、いくら創作とはいえ、ここまでケダモノじみた人間ばっかり出てくる世界を終戦直後の日本に置いていいのか?というような状態になっている。この人の小説だけ読んで、戦後の没落、衰亡しつつある華族の生活を読み取ろうとすると、歴史をひどく読み違えてしまうのではないか、と不安になったりもする。 今作は、実際に起きた天銀堂事件という毒殺事件もストーリーに織り込まれているので、余計に「本当に起きた事件なのではないか」という気にさせられてしまう。舞台は70年以上も昔の日本なので、事実と創作が交じり合い、真実を読み切れないという意味で、当時のことが全く分からない2022年の今になって読むのがちょうどいいのかもしれない。 フルートを吹くことぐらいしかできず、戦後の世の中に馴染めない旧華族の子爵の失踪。子爵が失踪前に作曲したフルートの曲が流れるたび、子爵の家の者が次々と殺されていく。殺人は子爵の家に留まらず、遠く関西にまで広がっていく。金田一耕助は殺人を追い、子爵の家族の来歴を追い、姿の見えない殺人犯を追っていく。 今作の登場人物たちはほとんどが子爵の家に限られているのと、かなりの人数が殺されて姿を消していくのがあり、終盤になれば殺人犯を指摘するのはそう難しくない。序盤から中盤にかけ、殺人犯を特定できる「あるヒント」が何度か出てくることもあり、「犯人を探し出す」という推理小説の目的の一つは達成できる読者も多いと思う。 しかし、犯人の生い立ちや子爵家の人々を殺していく動機までを読み切るのは難しいだろう。それぐらい、この作品には横溝正史の尋常ならざる想像力と「エグさ」が満ち溢れている。 最後の幕引きの場面は、いかにも金田一耕助モノらしい犯人の末路が描かれる。というか、横溝正史は「この幕引きの仕方」しか知らないんじゃないか、というぐらい、他の作品と同じような運命を辿っていく。この儚さが、ややマンネリとも言えるが金田一耕助モノの読後感を寂寥としたものにする一つの理由だろう。
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はじめての横溝正史。犬神家の一族を読みたかったが、図書館になかったので、タイトルだけ聞いたことのある本作を読むことにした。舞台が戦後であり文体も少し古いが、今も衰えない名作だな、と思った。 伏線だろうな、というところが分かりやすく、それをきちんと回収してくれて読んでいて楽しかった...
はじめての横溝正史。犬神家の一族を読みたかったが、図書館になかったので、タイトルだけ聞いたことのある本作を読むことにした。舞台が戦後であり文体も少し古いが、今も衰えない名作だな、と思った。 伏線だろうな、というところが分かりやすく、それをきちんと回収してくれて読んでいて楽しかった。 斜陽一族というのがミステリーとの相性がいいのか面白かった。他作品も読みたい。
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