第九軍団のワシ の商品レビュー
サトクリフの物語は読んでは忘れ、また読んでの繰り返しだったけれど、これは初めてだった。背景にブリテン島で謎の消失を遂げた第9軍団のエピソードがあるので、初耳、と思ってわくわくしながら読んだのだが、作者の創作と知ってがっかり。彼女は史実とフィクションを自在に組み合わせているので、史...
サトクリフの物語は読んでは忘れ、また読んでの繰り返しだったけれど、これは初めてだった。背景にブリテン島で謎の消失を遂げた第9軍団のエピソードがあるので、初耳、と思ってわくわくしながら読んだのだが、作者の創作と知ってがっかり。彼女は史実とフィクションを自在に組み合わせているので、史実と思って読むと痛い目に遭うのだった。痛いといえば、彼女の話には血気にはやる主人公が若くして不治の戦傷を負い、戦士から脱落、第二の人生を探る、というものが多い。彼女自身の不自由な体が投影されているのだろうな。主人公は作者の分身なのだと改めて実感。
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イギリスの児童文学作家、ローズマリ・サトクリフ著の、ローマン・ブリテン四部作の1作目。 イギリスがローマ帝国に支配されていた時代の話。 ブリテン氏族の反乱、ドルイド僧、奴隷、動物や奴隷が戦わせられる闘技場等、 児童書の分類で良いのか? という様な生々しい様子が語られます。 主...
イギリスの児童文学作家、ローズマリ・サトクリフ著の、ローマン・ブリテン四部作の1作目。 イギリスがローマ帝国に支配されていた時代の話。 ブリテン氏族の反乱、ドルイド僧、奴隷、動物や奴隷が戦わせられる闘技場等、 児童書の分類で良いのか? という様な生々しい様子が語られます。 主人公は、百人隊長としてブリテンに派遣されたばかりの、若いローマ兵「マーカス」。 これから出世するぞ!という所で、蜂起した氏族との戦いで負傷して退役。 その後、かつて霧の中で消息を絶った、父の率いる第九軍団の旗印である鷲の像を探す旅に出ます。 共に旅をするのは、奴隷の「エスカ」。 エスカは氏族の族長の息子で、ローマ軍との戦いに敗れて奴隷となるも、主人のマーカスと友情が芽生えて親友になります。 鷲を探す旅では、第九軍団(とマーカスの父親)の最後が明らかになり、敵に追われて逃げるシーンではヒヤヒヤさせられっぱなしでした。 歴史の知識が無くても、物語としても楽しめる本です。
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圧巻。1900年ほど前に、あったかもしれない命がけのドラマ。エトルリアで生まれた男がブリテン島に渡り、北壁の向こうケルト人の国(現スコットランド)へローマ軍のシンボルを求めにいく道筋を、タイムスクープハンター要潤のように横で見ることができます。『ともしびをかかげて』のファミリーの...
圧巻。1900年ほど前に、あったかもしれない命がけのドラマ。エトルリアで生まれた男がブリテン島に渡り、北壁の向こうケルト人の国(現スコットランド)へローマ軍のシンボルを求めにいく道筋を、タイムスクープハンター要潤のように横で見ることができます。『ともしびをかかげて』のファミリーのルーツがここにあります。 4部作と言われる『辺境のオオカミ』『銀の枝』もよまなきゃ。
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ローマ時代のブリテンが舞台の物語。ローマ軍団百人隊長のマーカスは足を負傷し退役する。マーカスは行方不明となった父の軍団の象徴である「ワシ」を求めて、元奴隷のエスカと共に北の地に旅立つ。 何とも骨太の物語でした。まず、この時代の風物がしっかりと描写され世界に引き込まれます。そしてロ...
ローマ時代のブリテンが舞台の物語。ローマ軍団百人隊長のマーカスは足を負傷し退役する。マーカスは行方不明となった父の軍団の象徴である「ワシ」を求めて、元奴隷のエスカと共に北の地に旅立つ。 何とも骨太の物語でした。まず、この時代の風物がしっかりと描写され世界に引き込まれます。そしてローマ人であるマーカスが他の民族と出逢い、自分たちとは違う民族のこと(それは征服者と被征服者であったり、侵略者であったりするのですが)を知っていくにつれ、世界が広がります。 そして終盤ワシを奪取して逃走する際の緊迫感。またマーカスとエスカの主人と奴隷という立場から解放され、友情を深めて親友となる様子も素敵です。 実に濃密な読書体験でした。
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ローマ帝国を背景とした小説を探していて、偶然この本を見つけました。 最初は、児童文学という事で軽い気持ちで読んでいましたが、魅力的な登場人物と良く練られたプロットそして、ブリテン島の美しい情景の描写に引き込まれてしまいました。 物語の中で、主人公であるローマ人のマーカスに彼の友人...
ローマ帝国を背景とした小説を探していて、偶然この本を見つけました。 最初は、児童文学という事で軽い気持ちで読んでいましたが、魅力的な登場人物と良く練られたプロットそして、ブリテン島の美しい情景の描写に引き込まれてしまいました。 物語の中で、主人公であるローマ人のマーカスに彼の友人であるブリトン人のエスカが、ローマの文化とブリトンの文化が相容れないことを マーカスの身に着けている短剣の鞘の規則正しい模様と彼の持っている楯に彫られた流動的で生命のある曲線を比較して説明するシーンがありましたが、この部分が非常に印象的でした。
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挫折、障害、そこからの出発。人生のことは目先で判断してはいけない。非常に重厚な物語。歯応え満点。 マーカスとエスカの「いい狩りだった」の言葉のやり取りには震えた。 生まれでなく、行い。過去でなく、今が重要という軸を揺るぎなく打ち立てたのが名作の所以か。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
紀元2世紀のブリタニアを舞台にした歴史冒険小説。60年前に出版されてるけど全く古さを感じさせない。児童文学に分類されているけど大人のほうが楽しめると思う。 上質なファンタジーは、読んでいる間は周りの音が聞こえなくなるほど没頭出来て、読み終わって現実に戻ってくると世界が少し良くなって見える。これもそういう一冊でした。
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冒頭、翻訳の硬さに馴れず、挫折しそうだったけど、マーカスが負傷して軍を引退した後ぐらいから、読みやすくなり、エスカが登場してからは、面白くなった。 児童文学とは思えないほど、難しいが高校生の頃、読みたかった。
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面白かった! 話はかなり淡々と展開するものの、骨の太い、芯の強い登場人物に圧倒される。 魔法もなければ、派手な戦いもない。おまけに苦労を重ねた主人公たちの望みが叶っていくようなご褒美もない。 それでも、マーカスたちが得たものは、得難く、かけがえない。 男子にすすめてみたい話だ。...
面白かった! 話はかなり淡々と展開するものの、骨の太い、芯の強い登場人物に圧倒される。 魔法もなければ、派手な戦いもない。おまけに苦労を重ねた主人公たちの望みが叶っていくようなご褒美もない。 それでも、マーカスたちが得たものは、得難く、かけがえない。 男子にすすめてみたい話だ。 後半のどきどきする感じは、忘れられない。 ローマの軍団についてちょこっとだけ予備知識があるとか、世界史の1ページが手元にあるとかするととっつきやすいかも。 このあとDVDになってる「THE EAGLE」をみましたが、やっぱ本の方が数倍いいねえ。
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ローマ軍進駐時代のブリタニアで、行方不明になった第九軍団の象徴の黄金のワシをそれを守っていたはずの隊長の息子が探すお話。素晴らしい歴史小説。軍団の話だが、決して血なまぐさい場面ばかりじゃないところが、この作品の文学性の高さを示している。全4冊のシリーズの最初の巻。
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